一∞

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dangerousss

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一∞(にのまえ むげん)

設定

 一族中の魔人率が99%を超える戦闘破壊家族、一家(にのまえけ)の一人。
アンダーリムの眼鏡にショートカット、細身の美少女。この世で最も眼鏡に愛された、世界で一番眼鏡っ子。服装は丈が短めのセーラー服。
 クールな微笑を浮かべていても、おとぼけ大好きノリ重視。必殺技とか叫んじゃうタイプ。
 眼鏡を掛けているのを見れば分かる通り、非常に頭が良い。でもちょっと頭おかしい。
 一家の一族は可愛い子でも変人だったり変態だったりする。喋らなければいいのに。
「裸眼の人って、人生の100%を損してるんじゃないかな?」

【一人称】ぼく 【二人称】きみ
【所持品】いろんな眼鏡いっぱい

●戦闘スタイル
 体術と眼鏡を組み合わせて戦う全く新しい格闘術、メガネ=カタ。基礎の動きをマスターするだけでも攻撃力は少なくとも120%上昇、一撃必殺の 技量も63%上昇する。技量認定は下から順にInfraRed, Red, Orange, Yellow, Green, Blue,Indigo, Violet, Ultra-Violetの九段階に別れており、∞は最上級のUltra-Violet、すなわち達人級である。超近接~遠距離までをカバーするオールラウンドに対応した戦闘モードがある。
 気を整える⇒眼鏡を掛ける⇒正拳突き⇒眼鏡を外す、の1セットを1万回繰り返すのに1時間を要する程度の身体能力だが、疲れる&飽きるので1分もせずにすぐやめちゃう。単純な筋力や持久力は体育会系の女子高生程度。

魔人能力『眼鏡の王(Lord Of Glasses)』

眼鏡の持つ無限の潜在能力を開放し、眠れる力を解き放つ。眼鏡を操る事にかけては唯一無双。

眼鏡レーザー……レンズに光を集めて収束させ、高出力のレーザーとして発射する。連射し過ぎはオーバーヒートを招くので注意が必要。眼鏡は光学兵器。

眼鏡バリアー……レンズとの境界面において発生する空間の相転位により周辺とは異なる性質を形成する領域バリアー。通常の推進物、波動を一切受け付けない。強力な防御性能だが、効果時間は短め。Absolute Megane Field. 眼鏡は防御システム。

眼鏡サーチ………周囲100mの熱源・霊体・眼鏡を感知する。また、相手の眼鏡力などを測定する事もできる。眼鏡は索敵装置。

眼鏡イリュージョン……光を屈折させて光学的幻覚迷彩を作り出す。高度に進歩した眼鏡は魔法と区別が付かない。眼鏡はファンタジー。

眼鏡チェンジ……度が強い眼鏡に掛け替えることで戦闘力を大幅に増加させる。目が疲れるのであまり長時間は使用できない。眼鏡は最終兵器。

プロローグ

「にのまえっ! ∞の巻 可愛い子には眼鏡を掛けろ」

 「本気なの? トーナメントに出るなんて…………」
 心配そうな表情で、一一(にのまえ・はじめ)は彼の家族である少女に問い掛けた。
 部屋主の性格が分かる、きっちりと整理された部屋。
 「おや、これはこれは。なかなかに耳が早いじゃないか」

 ──────読んでいたカバーつきの文庫本をぱたん、と閉じて顔を上げ、少し皮肉げな笑みを浮かべた少女。年の頃は一とあまり変わらないと思われるが、何処となく落ち着いた雰囲気が彼女を年齢よりも大人びて見せていた。
 静かな雰囲気を感じさせる要因は、もう一つ。
 耳から耳へ、その整った容貌を横断する架け橋。
 計算され尽くした緩やかな曲線のフレームは、彼女の神秘的な造形を何ら妨げる事無く引き立てる。何処までも澄み渡る透明なレンズは、静かな知性の光を湛えた冷笑的な瞳を優しく包み、幾分柔らかく見せる事に成功している。
 彼女の美麗さは既に芸術の域に達していたが、それを更に一段上へ、幻想の神域にまで高めていたものもまた、一つの完全な芸術品であった。
 人は言う。自然の生み出した美に敵うものはない、と。
 それはたとえば雄大な麗峰を彩る紅葉であったり、或いは同じものの二つとない雪の結晶であったり、はたまた彼女のような絶対なる美を持って生まれてきた人間の姿であったりする。
 だが、彼女は常々思っている。人の生み出した芸術には、それらに勝るものがあると。
 官能的な麗しの女体を思わせる魅惑のフレーム。
 人の心を闇までも見透かさんばかりの無垢なるレンズ。
 その二つを引き合わせ、繋ぎ止める。恋人たちの手が二度と離れぬようにその身を捧げる尊きネジ。
 その完成形が、機能性を追求すべく生み出されたにも関わらず、なお人を魅了してやまないその姿。
 完全なる存在がそこにはあった──────。

 「あの……もういいかな?」
 遠慮がちに掛けられた声に、彼女は漸く口を閉じた。だが、それも一瞬の事。
 「折角人がブンガク的ナレーションに挑戦していたというのに、野暮な事をする。きみには芸術を解する素養が欠如しているようだね」
 「だって、待ってたらいつまで経っても話が進まないし…………」
 一は彼女の奇人っぷりには慣れてはいたものの、まだまだ自由にあしらえる自信は無かったし、そのつもりもなかった。濁流に抗っても打ち砕かれるだけであり、怪我をしないようにうまく流される事が最も賢い御し方と言えた。
 「さて、話の続きだが…………」
 「眼鏡の話なら、もういいよ?」
 「…………」
 「…………」
 「そもそも眼鏡の起源とは…………」
 「何なのこの精神力…………」
 先回りして突っ込まれれば普通は諦めるものだというのに。
 「まぁ、冗談はさておき、話を戻そうか」
 ようやく満足したのか、本題へ。
 「勿論、ぼくは本気だよ。トーナメントに出るつもりだし、更に言えば出るからには優勝するつもりだ」
 淡々と告げる口調には過剰な意気込みも過信もない。ただ、事実だけを口にしているようで。
 「で、でも…………」
 心配そうな表情で一がなおも言い募ろうとしたその時。
 「じゃすたーもーめんと! ちょっと待ったー!」
 ずばーん! と勢い良く扉を開け放ったのは、腰まで伸ばした艶やかな長い黒髪をお伽話のお姫様のようにカットした、勝ち気さと凛々しさを併せ持つ少女────── 一四(にのまえ・あずま)だった。
 「あの、四ちゃん? その二つは同じ意味だからね?」
 付け加えれば、アホの子属性も併せ持っていた。
 一のツッコミを無視して、四は部屋の中へずかずかと踏み入る。
 「あのね、悪い事は言わないからトーナメント出場なんてやめときなさい。あんたなんか勝てるわけないし、恥かくだけよ」
 「ふむ、親切な忠告ありがとう。ぼくもせいぜい恥を晒さないように頑張るとするよ。モヒカンを被ったりするのは御免だからね」
 「にゃんだとーっ!?」
 瞬間湯沸かし器のように頭から湯気を出しながら、四は激怒した。屈辱と羞恥を思い出したのか、ちょっと涙目になっている。
 「ふ、二人とも、落ち着いてっ!」
 必死になって一は二人の間に入り、争いを仲裁しようとする。このままでは命が危ない。主に巻き込まれる自分の命が。
 ふにっ。
 ぷにゅっ。
 「ひゃっ!?」
 「…………おや」
 分け入り、制しようと伸ばした両手の掌。それぞれに微妙に異なる、柔らかさと大きさの感触。
 「え、えーっと…………」
 どうやら、どちらにしても命が危ない事に変わりは無いようだった。

 「どうしても、って言うなら、私と勝負して勝ってからにしなさい」
 腕組みをしながら、四は目前の少女を睨み付ける。
 「まだそんなこと言ってる…………」
 「黙りなさい。椅子から絨毯に格下げするわよ」
 先程の罰として一は、四の為の人間椅子の刑に処されていた。と言っても、背中に感じられる柔らかな丸みのお尻の感触は人によってはご褒美と呼ばれるものだったかもしれないが。
 「まぁ、きみが納得するならぼくはそれでもいいが。じゃあ種目は…………眼鏡薀蓄クイズで良いかな?」
 「ばか! それじゃ圧倒的にあんたが有利じゃないの!」
 「それもそうだね。では、一くんに勝負方法を決めてもらうというのでどうかな?それなら公平だろう」
 ふむ、と考え込んだ後に唐突に一へと話を振る。急に決定権を与えられて戸惑う一だったが、二人に任せていても話は一向に噛み合いそうもない。四の顔を見ると不満そうではあったが、特に反対の言葉は出ていない。その代わり、変な提案だったら容赦はしない、という表情がありありと窺えた。
 「えーっと、じゃあ…………サイコロとかで、どうかな?」
 運任せなら公平だろうし、何より暴力的な要素もない。考えた末に出した結論に、どちらからも異論は出なかった。
 「あと、そろそろ椅子から出世したい…………」
 「仕方が無いわね。じゃあ、準備しなさい」
 とりあえず、雑用係までにはランクアップされた。人間っていいな。
 解放されると、なんだかんだでいそいそと勝負の用意を始める一。基本的に使われ気質なのである。
 「これでいいかな?」
 どうにか見付け出したサイコロが二つと、紙コップが一つ。
 「丁半一発勝負。恨みっこなしだよ」
 左手に紙コップ、右手にサイコロを持った一が二人に確認する。
 「ああ、いいとも」
 「いいからさっさとしなさい」
 それぞれ、異存はない。そして運命の一投。
 ──────勝った!
 四の瞳が猫のように見開かれると、彼女は勝利を確信していた。サイコロと紙コップの硬さと大きさ。サイコロを投げ入れる一の手首の角度、力加減。室内の温度や湿度。ありとあらゆる不可視の情報さえも四の瞳によって観測され、瞬時に脳裏で数式として再構成される。そうして生まれた数式が導き出す答は──────。
 「半! 一・四の半よ」
 絶対の自信を持ち、四は断言した。
 「では、ぼくは丁という事にしようか」
 対照的に落ち着いた声で眼鏡の少女は宣言する。
 「いいの? あんたも半にしたいなら、振り直しにしてあげてもいいのよ?」
 余裕の笑みを浮かべながら、四は相手に水を向ける。
 「ありがとう、でもこのままでいいよ。きりがないしね」
 だが、その好意はさらりと受け流された。
 「人の親切を無下にすると、後悔する事になるわよ…………じゃあ一、開けなさい」
 「おっと、ちょっと待ってくれるかな?」
 「何よ今更…………?」
 怪訝そうに四は眉を顰める。これでいい、と言ったばかりではなかったか。
 「きみが勝ったらぼくは出場を取り止める。それはいいとして、じゃあぼくが勝ったら? その場合を決めてなかったね」
 「まぁ、一理ある…………かな?」
 流れで審判役になってしまった一も、中立の立場から考えれば納得できないものでもない。
 「何か望みでもあるわけ?」
 「そうだね、じゃあぼくが勝ったら…………きみの写真でも取らせてもらおうかな。裸+白衣+眼鏡姿で!」
 きりっ、とこの上もなく男前の表情で要求した。
 「ちょっ、なんなのよそれは!?」
 「心配しなくても、ぼくの秘蔵のコレクションの中から、きみに一番似合う眼鏡を見繕ってあげよう。どうしても、って言うなら靴下も特別に許可してあげてもいいよ」
 うふふ、と妖しげな微笑を浮かべる。
 「へ、変態……! ちょっと、一も何か言ってやりなさい!」
 「え? う、うん…………いいんじゃないかな?」
 突然話を振られた所為で、思わず本音が出た。
 「もう! どいつもこいつも……」
 一に脳天チョップを加えて目を覚まさせてから、気を取り直して自分に言い聞かせる。
 大丈夫だ。問題ない。自分の勝利は既に決定されている。
 「いいわよ、写真撮影だろうが動画撮影だろうが好きにすれば! ほら、決まったんだからさっさと開けなさい、一!」
 びしっ、と伏せられた紙コップを指差す四。それに従って一が紙コップを持ち上げると──────。

 「さてと。動画サイトにアップする時のタイトルは『ぼくのツンデレ妹がこんなに眼鏡が似合うわけがない』か『とあるアホの子妹の眼鏡痴態』のどっちがいいかな?」
 「なんでどっちにしても妹なのよ!? 同い年の筈でしょ!」
 「突っ込むところ、そこなんだ……」
 呆れたように一は溜息をついた。
 「…………っていうか、イカサマしたでしょ、あんた! こんなのおかしい!」
 「人聞きが悪いね…………ぼくはサイコロどころか紙コップにすら触っていないのに」
 心外、とばかりに肩を竦める。
 「一つだけ言うなら。敵の情報を知り、自分の情報を秘すのは戦いにおいて基本だよ。ぼくはきみの能力を知っていたが、きみはぼくの能力の全てを知っているわけでは無かった。そういうことさ」
 読みかけの文庫本を机の上に置き、立ち上がる。
 「さてと、そろそろ出発の準備をしないとね。お楽しみ撮影会は帰ってからにしようかな」
 「ばか! あんたなんか負けちゃえ!」
 ひらひら、と手を振るその背中に、四の罵声が掛けられる。
 その性、何処までも不敵。その心、何処までも透明な闇。誰よりも眼鏡に愛されし少女──────その名は、一∞(にのまえ・むげん)。




                      <了>


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