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*パーソナルポイント  就活も随分様変わりした。今では昔のように履歴書を書いたり、一般常識試験を受けたり、面接を受けたりする必要が無くなり、企業が提示するステータスの数値を満たしているかどうかを照らし合わせればいい。心理学や脳科学など様々な分野での研究が進んだことで、あらゆる情報が数値化されるようになり、社会的にも信頼性のおけるものだと認識されるようになった。そこで就活の効率化を図るために個人のあらゆる側面を数値化した「パーソナルポイント」が導入されるようになった。学生側は煩わしい就活をする必要がなくなり、卒業まで学業に専念できるようになった。企業側も採用に多くの時間と費用をかける必要がなくなり大幅なコスト削減に繋がった。  パーソナルポイントは年金情報などを一元管理したマイナンバーのサイト上で確認することができる。学生は企業のサイト上でエントリーをするだけで、指定されたステータスを満たしているかどうか、不足しているなら何が足りないのかが分かる。技術系なら資格を取ったり技術を高めればいいが、性格・特性系は厄介だ。いわゆる性格試験なども含まれるが、それ以外に厚労省の特別公務員によってGPSと監視カメラから自動的にチェックされるものも含まれるからだ。もちろん拒否することも可能だが、そうすると後者のポイントは一切反映されなくなるため、エントリーできるところが極端に減ってしまう。結果的に受け入れざるを得ない状況なのだ。  泰尋も多くの学生と同様、エントリーとステータス結果の確認を繰り返していた。第一志望のモバイルゲームの制作会社は技術系、性格・特性系ともに全く足りていない。真面目に授業や研究に取り組んでこなかったツケが今になって重くのしかかって来ていた。  知り合いは泰尋と同じような人間が多いが、いわゆる将来をしっかり考えている人間は授業や研究をするしないに関わらず高いポイントを持っていて、エントリーするだけで何百社という数の企業のステータスをクリアしている。彼らを見ていると羨ましさを通り越して化け物にしか見えない。 「よう、どうよ調子は」  大学のパソコン室で企業を探していると、尚哉が気楽に声をかけてきた。 「全然」  尚哉も泰尋と大して変わらないと思うのだが、悩む様子を見たことがない。それどころか、就活をしているところを見たことも話を聞いたこともない。 「お前低そうだもんな」  まるで自分は優秀だとでも言うような口ぶりだ。泰尋は脳天気な尚哉が腹立たしかった。 「お前こそどうなんだよ。就活してるとこ見たことないけどさ」 「まー、何とかなるって」  就活が今のようになってから、学生が取りかかるのは四年の年明けになってからになった。優秀な人間は企業が求人を出したその日に内定が決まる。  あとは卒業式に出るだけという時期になっても決まっていない者は、今のポイントで満たしている企業に妥協するか、資格試験などを受けてポイントを上げ、志望する企業のステータスを満たすようにするしかない。ただ、そういう意味では新卒や既卒という概念がなくなり、卒業しても就職先がないということに対して後ろめたさはなくなってきた。  両親からは本当にやりたいのならポイントを上げる道を選べばいいと言ってくれている。 「まあ、今日のところは諦めて、気晴らしにどこか行こうぜ」  泰尋は尚哉とは一緒にいたくはなかったが、尚哉が来たことでやる気が萎えてしまったので、これからバイトだからと嘘を吐いて別れた。  それから卒業式の日まで色々探してみたけれどステータスを満たす企業は見つからなかった。 「決まったか?」  卒業式の日、スーツ姿の尚哉が声をかけてきた。 「いや」 「そうか、泰はダメだったか」 「決まったのか? どこに?」  尚哉の答えを聞いて、泰尋驚きを隠せなかった。尚哉が言ったのは誰もが知っている大手の自動車メーカーだった。  泰尋は何が起きているのかわけが分からなかった。尚哉のポイントがそんなに高いとは思えなかったし、仮に知らないだけで実は高いのだとしたら、なぜ今まで決まらなかったのか。  時代が変わったことで、泰尋のような人間には想像が出来にくくなっていたのかもしれない。尚哉は厚労省の高官を父に持つ、俗に言う「キャリア組」だった。昔で言うところのコネのようなもので、ポイントの認定が甘かったり、酷いものでは改竄することもあるという。  泰尋がそのことを知ったのは、久しぶりに大学の仲間と飲みに行ったときだった。 **みんなのコメント&宇賀持さんからのコメント返し #comment(,below) - 情報が数値がされるというデジタルな時代に、コネというアナログなことが残っているのはおもしろい。ただ気になったのが、性格のポイントを上げるために監視するっているのは問題ではないのかということ。性格をその人が行った場所や行動だけで知りたいのなら、相当長いスパンでやらないとわからないと思う。このパーソナルポイントは、就活に便利なのであって、就活のために行われるシステムではないんですよね? 監視を拒否することができるとはあったけど、もし子供のころからこの監視が行われているのであれば、たとえば15歳未満の子供にはまだ判断能力がないから、拒否も何もないはず。「エントリーできるところが極端に減るから結果的に受け入れざるを得ない」とあるから、幼いころから就職ということをずっと考えて生きていなければいけないのか? 就活の段階でポイントが足らないから初めて適用されるシステムだとしても、そんな短い期間に本当の性格なんてわからないだろうし、ポイントを上げるための監視なんだからよく見られようと行動するに決まっているから、冒頭にあるような信頼性などないはず。 -- 加藤 (2012-09-09 22:45:27) - 冒頭の「あらゆる情報が数値化」って、どんな情報かの実例を出したほうがいいと思う。あと、この書き出しだと小説ではなく社会情勢についてのコラムのような感じで誤解する人もいるかも。それからカメラと公務員で全就活生を監視するのはいくらなんでもコストがかかりすぎるのでは? むしろ実現できたとして、その監視による社会のぎすぎす加減のほうが問題になりそう(笑) あと、「尚哉が就職決まりそうにないのに意外と決まった」っていうのは中盤に持ってきて、それへの泰尋の疑問をもとひっぱってよいと思う。それから細かいですがキャリア組って、ここでは尚哉を指してるように書いてあるけど、元来は「国家公務員試験Ⅰ種」に合格した官僚候補とか高級官僚自身を指すのでは? -- トム・ヤムクン (2012-09-08 11:59:22)
*パーソナルポイント  就活も随分様変わりした。今では昔のように履歴書を書いたり、一般常識試験を受けたり、面接を受けたりする必要が無くなり、企業が提示するステータスの数値を満たしているかどうかを照らし合わせればいい。心理学や脳科学など様々な分野での研究が進んだことで、あらゆる情報が数値化されるようになり、社会的にも信頼性のおけるものだと認識されるようになった。そこで就活の効率化を図るために個人のあらゆる側面を数値化した「パーソナルポイント」が導入されるようになった。学生側は煩わしい就活をする必要がなくなり、卒業まで学業に専念できるようになった。企業側も採用に多くの時間と費用をかける必要がなくなり大幅なコスト削減に繋がった。  パーソナルポイントは年金情報などを一元管理したマイナンバーのサイト上で確認することができる。学生は企業のサイト上でエントリーをするだけで、指定されたステータスを満たしているかどうか、不足しているなら何が足りないのかが分かる。技術系なら資格を取ったり技術を高めればいいが、性格・特性系は厄介だ。いわゆる性格試験なども含まれるが、それ以外に厚労省の特別公務員によってGPSと監視カメラから自動的にチェックされるものも含まれるからだ。もちろん拒否することも可能だが、そうすると後者のポイントは一切反映されなくなるため、エントリーできるところが極端に減ってしまう。結果的に受け入れざるを得ない状況なのだ。  泰尋も多くの学生と同様、エントリーとステータス結果の確認を繰り返していた。第一志望のモバイルゲームの制作会社は技術系、性格・特性系ともに全く足りていない。真面目に授業や研究に取り組んでこなかったツケが今になって重くのしかかって来ていた。  知り合いは泰尋と同じような人間が多いが、いわゆる将来をしっかり考えている人間は授業や研究をするしないに関わらず高いポイントを持っていて、エントリーするだけで何百社という数の企業のステータスをクリアしている。彼らを見ていると羨ましさを通り越して化け物にしか見えない。 「よう、どうよ調子は」  大学のパソコン室で企業を探していると、尚哉が気楽に声をかけてきた。 「全然」  尚哉も泰尋と大して変わらないと思うのだが、悩む様子を見たことがない。それどころか、就活をしているところを見たことも話を聞いたこともない。 「お前低そうだもんな」  まるで自分は優秀だとでも言うような口ぶりだ。泰尋は脳天気な尚哉が腹立たしかった。 「お前こそどうなんだよ。就活してるとこ見たことないけどさ」 「まー、何とかなるって」  就活が今のようになってから、学生が取りかかるのは四年の年明けになってからになった。優秀な人間は企業が求人を出したその日に内定が決まる。  あとは卒業式に出るだけという時期になっても決まっていない者は、今のポイントで満たしている企業に妥協するか、資格試験などを受けてポイントを上げ、志望する企業のステータスを満たすようにするしかない。ただ、そういう意味では新卒や既卒という概念がなくなり、卒業しても就職先がないということに対して後ろめたさはなくなってきた。  両親からは本当にやりたいのならポイントを上げる道を選べばいいと言ってくれている。 「まあ、今日のところは諦めて、気晴らしにどこか行こうぜ」  泰尋は尚哉とは一緒にいたくはなかったが、尚哉が来たことでやる気が萎えてしまったので、これからバイトだからと嘘を吐いて別れた。  それから卒業式の日まで色々探してみたけれどステータスを満たす企業は見つからなかった。 「決まったか?」  卒業式の日、スーツ姿の尚哉が声をかけてきた。 「いや」 「そうか、泰はダメだったか」 「決まったのか? どこに?」  尚哉の答えを聞いて、泰尋驚きを隠せなかった。尚哉が言ったのは誰もが知っている大手の自動車メーカーだった。  泰尋は何が起きているのかわけが分からなかった。尚哉のポイントがそんなに高いとは思えなかったし、仮に知らないだけで実は高いのだとしたら、なぜ今まで決まらなかったのか。  時代が変わったことで、泰尋のような人間には想像が出来にくくなっていたのかもしれない。尚哉は厚労省の高官を父に持つ、俗に言う「キャリア組」だった。昔で言うところのコネのようなもので、ポイントの認定が甘かったり、酷いものでは改竄することもあるという。  泰尋がそのことを知ったのは、久しぶりに大学の仲間と飲みに行ったときだった。 **みんなのコメント&宇賀持さんからのコメント返し #comment(,below) - また、康尋がまじめに勉強しなかったからポイントが低いとあるが、勉強してないのに将来のことを考えているからポイントが高い知り合いと、どこが違うのか。勉強せずに遊んでばっかりいたからポイントが低い、とかの方がわかりやすい気がする。それと、多くの人は「高成績=頭が良い」と考えているだろうから、人によっては意味がわからないかもしれない。あと「化け物」というのは言い方が大げさすぎる気がする。「そういう意味では新卒や既卒という概念がなくなり」とあるが、これの指す「そういう意味」がどういう意味なのかわからない。「両親からは本当にやりたいのならポイントを上げる道を選べばいいと~」とはどういう意味か? わざわざそんなことをいうくらいだから、ポイントを上げるのはそんなにも難しいことなのか? もしくは、卒業してもしばらくはポイントを上げるということに専念し、就職したい企業のポイントに達したら受ければいいということか? 後者なら、説明がないとわかりづらい。 -- 加藤 (2012-09-09 22:45:56) - 情報が数値がされるというデジタルな時代に、コネというアナログなことが残っているのはおもしろい。ただ気になったのが、性格のポイントを上げるために監視するっているのは問題ではないのかということ。性格をその人が行った場所や行動だけで知りたいのなら、相当長いスパンでやらないとわからないと思う。このパーソナルポイントは、就活に便利なのであって、就活のために行われるシステムではないんですよね? 監視を拒否することができるとはあったけど、もし子供のころからこの監視が行われているのであれば、たとえば15歳未満の子供にはまだ判断能力がないから、拒否も何もないはず。「エントリーできるところが極端に減るから結果的に受け入れざるを得ない」とあるから、幼いころから就職ということをずっと考えて生きていなければいけないのか? 就活の段階でポイントが足らないから初めて適用されるシステムだとしても、そんな短い期間に本当の性格なんてわからないだろうし、ポイントを上げるための監視なんだからよく見られようと行動するに決まっているから、冒頭にあるような信頼性などないはず。 -- 加藤 (2012-09-09 22:45:27) - 冒頭の「あらゆる情報が数値化」って、どんな情報かの実例を出したほうがいいと思う。あと、この書き出しだと小説ではなく社会情勢についてのコラムのような感じで誤解する人もいるかも。それからカメラと公務員で全就活生を監視するのはいくらなんでもコストがかかりすぎるのでは? むしろ実現できたとして、その監視による社会のぎすぎす加減のほうが問題になりそう(笑) あと、「尚哉が就職決まりそうにないのに意外と決まった」っていうのは中盤に持ってきて、それへの泰尋の疑問をもとひっぱってよいと思う。それから細かいですがキャリア組って、ここでは尚哉を指してるように書いてあるけど、元来は「国家公務員試験Ⅰ種」に合格した官僚候補とか高級官僚自身を指すのでは? -- トム・ヤムクン (2012-09-08 11:59:22)

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