リリス(悪魔)

登録日:2011/12/28(水) 23:42:57
更新日:2024/01/28 Sun 22:52:18
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「荒野の獣はジャッカルに出会い、山羊の魔神はその友を呼び、鳴きたてる梟(リリス)は、そこに休息を求め休む所を見つける」



●リリス●

「リリス(Lilith)」或いはリリト…etc.はユダヤ/キリスト教に於ける魔女の女王。
欽定訳聖書「イザヤ書」では「鳴きたてる梟」と翻訳され、転じて「夜の魔物」と呼ばれる。

タルムードのラビ伝承によれば、デーモン共の母親にしてアダムの最初の妻とされる。
イブを誘惑した蛇の正体ともされるが、やや根拠は弱い。
旧約聖書編纂の過程でおそらく誤ってアダムの妻の出自に二通りの食い違う説明がなされているのが由来。

現在の神秘学では魔王(ルシファー)の庇護下に置かれ、魔王の妻、或いは魔王の娘たる「地獄の花嫁」として伝えられる。
デビル全ての母親として知られるが、男権社会の「悪魔学」の系譜からは外れた存在として扱われる事も多い。

尚、彼女の堕天の理由は夫アダムが「男性上位の正常位」でしか交わろうとしない事に不満を抱いた為である。
ネタ的なエピソードにも思えるが、これには実はユダヤ/キリスト教の根本的な問題に関わる複雑な理由が隠されている。

ともかくも、アダムが正常位でしか交わらない事への不満を神(ヤハウェ)に訴え出たリリスだが、
その願いが神に聞き入れられる事は無かった(※そもそも正常位を「伝道の体位」として交わる様に命じたのは神である)。

すると、リリスの背から翼が生えたのでリリスはアダムを捨て紅海にまで逃れたと云う。
紅海に逃れたリリスは悪魔と交わり、害を為す様になった。
困り果てたアダムは神に依頼し、3人の天使を派遣したがリリスは聞き入れず、神はリリスに「毎日無数の子を産み、その内の100人が死ぬ」呪いを掛けたと云う。

……以上がリリス神話の基本的な概要だが、幾つかの異論もある。

また、リリスは妊婦と幼女を狙うとされた一方で新生児の運命を左右する力を持つとも云うが、これらはリリスの起源に関わる伝説からの発想であろう。


【夢魔】


「夜の女王」リリスは、夢魔(サキュバス)の女王としても知られる。
この、夜な夜な男の上に「女性上位」の騎乗位で跨がり精を奪う夢魔の伝承の元になったのがリリスであり、彼女とアダムの子孫である「リリン」である。
新世紀エヴァンゲリオン』でもお馴染みのこの存在は、我々「イブ」の子孫とは違うと云う意味か最初のデーモンと呼ばれている。
現在でこそ、後の夢魔のイメージから女淫魔とされる事も多い「リリン」だが、本来的には単純にそれだけの存在では無かったと云う事が理解できるであろう。

因みに、女性系の夢魔であるサキュバスに対して、男性系の夢魔をインキュバスと云い、サキュバスの奪った精を女性に授けると云う役割を担っている。

これは、異常な運命を背負った人間は「悪魔の種」により誕生したとされる俗説から誕生した存在だが、
欧州では他ならぬイエス・キリストもそうして生まれたとされる一人である。

同様の伝承は東洋にも残るが、故にリリスに七つの大罪の内の「愛欲」と「嫉妬」を背負わせるべきとの主張もある。


【由来】


さて、リリスの正体だが、一般的には古代バビロニアの、荒野に現れる吸血鬼めいた女悪魔キスキルリラ(キシキル・リルラ・ケとも)であったとされている。

……尤も、そんな説明では上記の伝承が誕生する萌芽すら見えないのは当然で、
本来のリリスはバビロニアの女悪魔が零落する以前の古代宗教の出産と月に関わる女神……即ち大地母神の系譜に連なる存在であった事が現在では判明している。
ユダヤ/キリスト教は徹底的に女性原理を破壊し、女神の神話を弾圧した事で知られており、
そもそもが人類最初の女性であるイブこそが「原罪」を背負い、出産と云う呪いを掛けられた罪人として扱われているのである。
(※イブがアダムの肋骨から生まれたのも、女性の永遠の隷属を象徴すると云う)

これは、元来はゼウスやバアル同様に父性を象徴する天空神でしか無かった神(ヤハウェ)を唯一の神としてユダヤ/キリスト教が女性原理をも含める、
全ての属性を帰属させようとしながら、含みきれなかった部分を全て「罪」や「悪」として目を背け断罪したからに他ならない。

……この、徹底した女性原理の弾圧は聖母マリアや大天使ガブリエルの伝承にも見られる。
例えば、現在でこそマリアは世界中で奇跡を起こしまくる代表的な聖人、カトリック教会の権威の象徴として扱われているが、
初期キリスト教ではキリストは母であるマリアを「婦人」と呼んだと説き、わざわざ母性の神秘性を剥奪しようとしていたのである。

そして、四大天使の一人であるガブリエルだが、彼女は現在でこそ天界で唯一の女性天使ともされるが、嘗ては男性天使であるとされていた。
……そもそも「御使い」でしかない天使の内で性別が問題になる事自体がおかしいのだが、これにはちゃんと理由があるのである。

それは、ガブリエルが神(ヤハウェ)の左に立つ天使である事。
そして、象徴として「百合」を持つ天使であるとされたからであった。

……ユダヤでは主の左に 立つのは「妻」であり、「百合(Lily)」は他ならぬリリスに由来する花であったからである。

……教会がガブリエルの起源を隠蔽し、属性を剥奪しようとした理由がお分かり戴けるだろう。

しかし、そうして奪われた女性原理を奪ったのも教会なら、復権させたのも教会であった。

そもそも、教会が復権させるより先に迫害により流浪する民であったユダヤ/初期キリスト教徒には、
生命の象徴たる地母神信仰が神母マリアの姿を借りた「黒いマリア」信仰として広まっていたのだが、
後には教会自身が聖母マリアに古代の地母神信仰、女性原理への信仰を背負わせ、布教の武器としたのである。


……更に、余談となるがユダヤ/キリスト教ではとにかく「処女」にこだわるが、
本来の処女は「乙女(若いおにゃのこ)」程度の意味であり「純潔」である必要は無かった。
歪めたのはやっぱり教会で、女性原理を否定した救世主(イエス)の神秘性をそこまでして知らしめたかったのである。

しかし、聖母信仰が盛んになった現在では、むしろ「処女懐胎」はマリアの神秘性を強調する結果となっているのは皮肉としか言いようが無いだろう。

※処女が純潔を意味しない証明の一つに、多産を象徴する無数の乳房を付けたギリシャ神話の処女神アルテミスの古代の像がある。
教会はアルテミスの属性をマリアに移植し、信徒を獲得するのに成功した後に純潔の象徴としての「処女」の概念を説いた。
故にマリアは勿論、アルテミスもまた永遠の処女なのだと云う。


【余談】


リリスは占星術に於いては女性原理の暗い側面を示す「黒い月」と呼ばれる。
これは、上記の様に元来は一つであった女性原理の神秘性の内、聖母マリアが捨てさせられた「母性の神性」を「悪魔」であるリリスが背負う事になったが故である。

【当wiki的解説】

ここからは二次元の話。

何かと都合のいい萌えキャラに改編されることの多い女悪魔の例に違わず、コイツも結構な数の作品に出ている。
モンスター娘の原点にして頂点であるサキュバスの上位種、または親として名前だけ借りてくる例も多い。

【主な登場作品】


◆ゲーム『女神転生』シリーズ
特に『真 女神転生』が有名。
主人公に恋するヤンデレゆりこちゃん。

◆アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ
物語の根幹たる第2使徒として名前が登場。
また、ヒロインの一人綾波レイの旧劇場版の描写は「大地母神」「黒い月の女神」に基づく。

◆漫画・アニメ『鬼灯の冷徹
ベルゼブブの嫁として登場。CV:本田貴子。
人妻なのに、鬼灯白澤に目移りしがち、その事でお目付け役のスケープを困らせている。

◆ゲーム『LORD of VERMILION』でも使い魔として登場
あの淫乱なので脱ぎますねと言ったサキュバスという設定。
その他詳しい事はこちらリリス(LoV)。
ちなみにツンデレなサキュバスに対してこちらはヤンデレ

◆ゲーム『ヴァンパイアセイヴァー
サキュバスのモリガン・アーンスランドの半身として名前が登場。
漫画『ヴァンパイアセイヴァー 〜魂の迷い子〜』では主役。
その他詳しい事はこちらリリス(ヴァンパイア)

小説『リリス』
元は天使でアダムの最初の妻だったが、夫を人間のイヴに奪われたことでアダムとイヴの子孫に対して憎しみを抱き、夜になると人間の赤ん坊をさらったり、血を吸ったりして不死ヒョウ(動物)に変身する能力を手に入れ、本作の舞台となる異世界の一部を支配して死んだ人間や動物を自分の配下とする。
自分の美しさと魅力で他者を利用したり騙すことに躊躇いがなく、自分の子供をも殺して不老不死を求める。ヘブライの母親たちは、リリスが子供に悪さをしないように、ララバイという呪文を唱えた。

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最終更新:2024年01月28日 22:52