スクラップ・コング(遊戯王OCG)

登録日:2011/02/12 (土) 12:27:41
更新日:2024/03/23 Sat 22:25:15
所要時間:約 6 分で読めます





―せめて生きた姿を見てみたいもんだが、残念ながらこいつはすぐ壊れちまうのさ―


《スクラップ・コング》とは「EXTREME VICTORY」で登場したモンスターカードである。
スクラップ」はDUELIST REVOLUTIONから登場したカテゴリーで、その後も関連カードが生み出されている。

毎回専用シンクロモンスターがウルトラレア枠に収録されていたり、
限定パックにカテゴリーモンスターが入れられていたりとKONAMIから新規テーマとしてかなりプッシュされている。

今回のパックでスクラップカードはこれ1枚。
今までと比べるとやや寂しいが、同時期に登場した「エレキ」が関連カード0であることを考えれば贅沢は言えない。
関連カードを出してくれるだけでも有難く、マトモな効果であれば1枚だろうと使う側としては何も問題ない。







……そう、マトモな効果であれば。



スクラップ・コング
星4/地属性/獣族/攻2000/守1000
このカードが召喚に成功した時、このカードを破壊する。
このカードが「スクラップ」と名のついたカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、「スクラップ・コング」以外の自分の墓地に存在する「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択して手札に加える事ができる。





……うん?
何かテキストがおかしかったような。
もう1回よく見てみよう。












このカードが召喚に成功した時、このカードを破壊する
このカードが召喚に成功した時、このカードを破壊する……
このカードが召喚に成功した時、このカードを破壊する…………


…なぁにこれぇ(棒読み)

全てのスクラップ使いが絶望したことは言うまでもない。

壮絶な出落ちモンスター。出ただけで死ぬ。
「《スクラップ・コング》を召喚!」
と宣言したら最後、ゴリラはそのまま墓地へ送られるのである。
「《スクラップ・コング》のモンスター効果発動! このカードは召喚した時破壊される!」


一応「スクラップ」と名のついたカードの効果によって破壊されているのでサルベージ効果は発動される。
つまり自身と召喚権を引き換えに墓地のモンスターを回収することになる。

「うーん、墓地回収出来るんならそこまで酷評することもないんじゃない?」

と、思われる方もいるだろう。では、このカードを見ていただきたい。

スクラップ・オルトロス
特殊召喚・チューナー・効果モンスター
星4/地属性/獣族/攻1700/守1100
このカードは通常召喚できない。
自分フィールドに「スクラップ」モンスターが存在する場合に特殊召喚できる。
(1):この方法でこのカードが特殊召喚に成功した場合、
自分フィールドの「スクラップ」モンスター1体を対象として発動する。
その自分の「スクラップ」モンスターを破壊する。
(2):このカードが「スクラップ」カードの効果で破壊され墓地へ送られた場合、
「スクラップ・オルトロス」以外の自分の墓地の「スクラップ」モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを手札に加える。

これが絶望の正体。
このカードは頭に説明した限定パックに収録されたモンスター。《スクラップ・コング》にある回収効果はもちろん、
召喚権を使わず場に出せて、自身を含むスクラップなら自由に破壊できる同レベル同種族。おまけにチューナー。
つまり《スクラップ・コング》よりも《スクラップ・オルトロス》の方が圧倒的に使い勝手がよい。
しかもこのパック、応募者全員に配布されるためそこまで高レアリティという訳でもない。
一応、《スクラップ・コング》は他のスクラップが場にいなくても使えるという長所はあるが……。


かといってスクラップのカテゴリ名を持った、墓地回収を兼ねた攻撃力2000の下級カテゴリアタッカーとして差別化しようにも、ものすごく使いにくい。ていうか実質不可能。
だって召喚した瞬間に死ぬんだもん……。

スキルドレイン》でも使えば自壊は避けられるが、スクラップとスキドレの相性は微妙である。

しかもスクラップにはもともと攻撃力2100の《スクラップ・シャーク》という下級カテゴリアタッカーが既にいる。
こちらも死にやすい事で有名だが流石にゴリラ程ではない。*1

せめてバトルフェイズ終了時、いやダメージステップ終了時まででいいから寿命があったら良かったのだが……。

限定パックに関連モンスターが収録されて
「きた!KONAMI様のプッシュきた!これで勝つる!」
と、テーマとしての繁栄を確信したと思ったところでこのゴリラ……。
ゴリラに見習ってコンマイにうんこでも投げつけてくれようか*2

かくして、ゴリラは世に召喚された途端スクラップ使いの希望それ以外のギャラリーの腹筋、そして自身を破壊する存在となったわけである。
まさに「3つ」の絶望を体験したアポリアの登場するゴッズ時代を象徴するカードである事は間違いない。

効果が判明した途端、TCG板の遊戯王本スレの話題はこのゴリラ一色に。
このゴリラの話でスレ数本を消費する異常事態と化した。

かたやスクラップスレはお通夜状態。
「もう海外新規に懸けるしか…」
「強いのは最初だけだったな…」
「コングって文字見るだけで悲しくなってくる…」
と絶望に満ち溢れていた。



ちなみにあのデュエリスト御用達サイトであり、どんなカードでも基本的にポジティブな書き方を推奨する方針で有名な「遊戯王Wiki」ですらも、
当初は流石にこのカードのフォローは出来なかったらしく「採用の余地無し」と一蹴していた。
おまけに
「ゴリラは警戒心が強く、またストレスに非常に弱いので心臓の負担から死にいたることが明らかになっている。このカードがすぐに自壊してしまうのはそれを意識したのだろうか。」
「イラストでは胸を叩くドラミングのポーズをしているが、あろうことかこのモンスターの片腕はチェーンソーになっている。これでは自壊してしまうのもやむなしである。」
などと、Wikiを見に来た人の哀愁を誘う考察を述べていた……。




大先輩

酷評の原因たるこの効果も、実は先駆者がいた。
かつてspell of maskに収録された《女邪神ヌヴィア》がそれである。

「このカードは召喚された場合破壊される」…、攻撃力とレベルは同値。
しかもこの《女邪神ヌヴィア》…。なんとウルトラレアだった。

この《女邪神ヌヴィア》の登場はあくまでまだ遊戯王初期に近い時期であり、高攻撃力の下級モンスターのデメリットが重い時期であった。

ノーマルのゴリラもウルトラの《女邪神ヌヴィア》も等しく投げ捨てられる効果を持つとは珍しいことである…。
小学生の頃、少ない小遣いで買ったらコイツが来たときの衝撃はもう……。

一方同じステータスにして自壊効果を持つ《怒れる類人猿》は同じゴリラでも、エースアタッカーゴリラとして遊戯王の歴史に名を刻んだというのに…。
同じゴリラ、どこで差が付いてしまったのか…。

え?《ボアソルジャー》?知らんな。


タッグフォースにて

タッグフォース6では、プレイヤーが禁止カードを投入した際のNPC制限解除デッキにて、
ホモコーン……ゲフンゲフン! 直感的カードプレイングセンス♂なアンドレが使用している。

主役では無いが、自壊効果持ちの獣族として目を付けられ、《スクラップ・オルトロス》や《スクラップ・ビースト》等、
他の獣族スクラップと共に、結束型《森の番人グリーン・バブーン》の特殊召喚トリガーという役割を担っている。

ゴリラゴリラを引っ張ってくるという、かなりシュールな戦法だが、油断するとボコボコにされるので注意しよう。

なお、あまりにもネタにされ過ぎた為か、近年は公式にもネタにされている。
スクラップと関連のない《プレゼント交換》のイラストに写っていたりする。













だが奴は……弾 け た 。

スクラップ・ファクトリー
フィールド魔法
このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):フィールドの「スクラップ」モンスターの攻撃力・守備力は200アップする。
(2):フィールドの表側表示の「スクラップ」モンスターが効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。
自分はデッキから「スクラップ」モンスター1体を特殊召喚する。

補給部隊
永続魔法
(1):1ターンに1度、自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合にこの効果を発動する。
自分はデッキから1枚ドローする。

時は経ち、“モンスターが破壊される事”がトリガーとなるフィールド魔法や永続魔法が増えて来た。
それらのカードの効果を発動する為に、無条件で出せて、無条件で自壊し、回収効果でディスアドを最小限に抑える、
このゴリラは実にうってつけのカードだったのだ。

ゴリラ1枚が《ローンファイア・ブロッサム》になったり《成金ゴブリン》になったり……。
癖の強いカードではあるが、決して「どう足掻いても使えないカード」「文字通りの産廃(スクラップ)」などと揶揄出来るようなカードでは無くなったのだ









スクラップ・ラプター「あぁ、コング先輩!どうぞご指導・ご鞭撻の程、宜しくお願い致します。」

スクラップ・ラプター
チューナー
星4/地属性/恐竜族/攻1400/守1000
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):自分フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを破壊する。
このターン、自分は通常召喚に加えて1度だけ、自分メインフェイズに「スクラップ」モンスター1体を召喚できる。
(2):このカードが「スクラップ」カードの効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。
デッキから「スクラップ・ファクトリー」1枚またはチューナー以外の「スクラップ」モンスター1体を手札に加える。 

LIGHTNING OVERDRIVEで登場した超大型新人。
ここに来て新たなに扱いやすい下級モンスターが登場した。


《スクラップ・ファクトリー》が無ければ召喚権を食いつぶす墓地回収カードになる《スクラップ・コング》と違って、こちらは自力で《スクラップ・ファクトリー》を調達可能かつ墓地にリソースが無くても効果を使える。
《スクラップ・ファクトリー》が既に場にあるなら、召喚権を温存したまま後続をデッキからサーチもでき、自爆タイミングも自分で選べる、と至れり尽くせり。
おまけにチューナーなので、《スクラップ・キマイラ》をサーチしてから蘇生してもらい、《スクラップ・ドラゴン》につなぐ動きが単体で可能。

《スクラップ・ラプター》は1ターンに1度しか効果を使えないのでサーチに効果を使うとそのターンは動けず、一人でなんでもかんでもできるわけではない。
むしろ、《スクラップ・ラプター》で《スクラップ・ファクトリー》をサーチし《スクラップ・コング》で起動するという連携もとれることを考えれば、《スクラップ・ファクトリー》が無いと動けなかった《スクラップ・コング》の安定性を高めてくれた、と言える。

ちょっと優秀すぎる後輩の支援を受けて活躍の場が広がった《スクラップ・コング》さん。
彼のこれからの活躍に期待である。


《スクラップ・コング》の活かし方

今も昔も、《スクラップ・コング》はコンボ前提のカードであり、まともに運用するなら少々ギミックがいる。

コンボの一例として、場に《スクラップ・ファクトリー》《補給部隊》があり、手札にグリーン・バブーンがある状態ならば、
自壊をトリガーに《スクラップ・ファクトリー》→《森の番人グリーン・バブーン》→《補給部隊》の順でチェーンを組むことで、
1枚ドローしつつ攻撃力2600の《森の番人グリーン・バブーン》を呼び出し、デッキからスクラップをリクルートできる。

さらに、この時《スクラップ・ゴーレム》をリクルートして墓地からチューナーを拾って来れば、《スクラップ・ドラゴン》や《スクラップ・デスデーモン》が出せる。
エクストラデッキから使い切っていれば、《スクラップ・コング》のサルベージ効果をチェーンに組み込んで回収すればよい。
墓地にチューナーがいなければ、自壊した《スクラップ・コング》自身を拾って来ればいい。《スクラップ・コング》の攻撃力は2000、
《スクラップ・ファクトリー》の影響下では2200と下級アタッカーとしては高い部類なので、序盤の攻防には結構役立つ。

また《森の番人グリーン・バブーン》でなくとも、機皇帝の召喚トリガーに使える。
三種類の中なら、属性の一致する《機皇帝グランエル∞》が第一候補だろう。



これからも破壊をトリガーとするカードが出る度にこのゴリラは使い道を増やしていくのだろう。
頑張れゴリラ、君は産廃界の希望の星だ!

余談

このようにネタにされたことを公式も知ってか知らずかカードイラストに登場することが多い。
同じ攻撃力2000のゴリラである《怒れる類人猿》や、猿繋がりか《紫炎の寄子》と仲が良いらしくよくつるんでいる。
《千六百七十七万工房》でゲーミングゴリラにされてノリノリだったり《獣湧き肉躍り》では3人まとめてコアラに挑むも《獣烈な争い》では返り討ちにあってたりとコミカルな存在として描かれている。
《スクラップ・コング》のファンはそういったカードを探してみるのもありかもしれない。




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コング「……駄目じゃんッ!」ガビーン

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最終更新:2024年03月23日 22:25

*1 こちらも「カードの効果が発動されたら自壊」という異常な脆さから「敏感鮫」とネタにされていた

*2 ちなみにこれ、ゴリラが「手を上げる程ではないが割と頭に来た」時に行う攻撃行動…らしい。