長野電鉄長野線

登録日:2018/05/21 (月) 11:58:33
更新日:2023/09/11 Mon 19:31:13
所要時間:約 10 分で読めます




長野電鉄長野線は、長野駅と湯田中駅を結ぶ長野電鉄の鉄道路線である。
路線記号はN

概要

かつては長野~須坂間を指し、須坂~信州中野は河東線、信州中野~湯田中までは山の内線という名称だった。
その後2002年に実態に合わせ、現在の区間が長野線と呼ばれるようになった。
長野~善光寺下間は立体交差事業により、地方私鉄としては珍しい地下区間となっている。
信州中野~湯田中には長い坂が存在し、最大で40‰(1kmで40mの急勾配)に達する。

須坂駅構内に車両基地を持ち、ここで留置・検査・整備を行う。


運行形態

各駅に停車する普通列車、通過運転を行う特急の2本立てとなっている。
普通列車は原則として信州中野駅で運転系統が分断されており、長野駅からの普通列車は須坂か信州中野で折り返し、湯田中からの普通列車も信州中野で折返しとなる。
ワンマン運転を行っているが、無人駅であろうと全てのドアが開く。
長野から須坂・信州中野までは1時間に最大6本運転されているが、湯田中と信州中野の間は1~2時間に1本まで本数が減少する。
かつては長野口では昼間でも15分に1本というネットダイヤだったが、現在は半分程度になっており、間隔も割とバラバラ。

特急は原則長野から湯田中まで通し運転を行うものの、入出庫の関係などにより須坂・信州中野折返し便がある。
停車駅の違いでA特急B特急の2種類があり、前者は停車駅が少ない速達タイプ、後者は朝と夕方以降に運転される停車駅の多い通勤・通学輸送を担う列車である。
A特急は善光寺御開帳の期間中に善光寺下、信州なかのバラまつりの開催中だと中野松川に臨時停車する。
更に土休日を中心に運転される観光案内列車として『特急ゆけむり~のんびり号~』(※3号車は『北信濃ワインバレー列車』専用車両)*1*2が設定されている。
観光案内列車は&A特急と同じ停車駅だが、沿線風景の眺望に配慮して村山橋へ運転停車して徐行運転も実施するため、所要時間は各駅停車と殆ど変わらない*3
特急料金は大人100円/小人50円(※座席指定券と個室指定券は別途支払)。HiSEが導入されても、消費税率が上がっても、ずっと変わっていない。
A特急には座席予約サービス(大人・小人300円)が導入済みで、1000系は上り長野方面の4号車と下り湯田中方面の1号車、2100系は1号車が指定席車両となっている。

停車駅一覧

優等種別
(2021年3月13日現在)
駅名 駅名













































A特急
B特急
特急ゆけむり~のんびり号~


車両

かつては特急・普通用に自社発注車両も導入していたが、現在は全て他社からの譲渡車となっている。
湯田中駅まで乗り入れる車両は急勾配を上り下りする必要があるため、強力なブレーキを装備している車両に限られる。
今後は2028年度までに保有車両の73%を省電力車両にする予定。

現行車両

  • 8500系
元東急8500系。
3両編成6本が在籍しており、長電では自社発注の0系・10系OSカー以来の20m級車両。
外観は東急時代の面影を残しており、T1編成はHゴムをグレーにしており更に原型に近づいた。
一部の編成は東急よりも暗い赤帯に変更されたが、それも現在は元に戻されている。
T6編成は中間車に運転台を取り付けているが、外観は通常の先頭車に近い仕上げとなっている。
湯田中駅にはブレーキの関係で乗り入れることが出来ないため、長野~信州中野間の列車のみに使われる。
当初の計画では3連9編成を導入する予定だったが、最終的には6編成で打ち切られた。
T2編成は鉄道むすめ「朝陽さくら」ラッピング車両に指定されて、2019年5月31日から2023年6月9日まで運行された*4

  • 3000系
東京メトロ日比谷線の03系。
創立100周年の2020年5月30日に運行を開始し、2021年度までに3両編成5本が導入された。
3500系置き換え用として導入されたもので、奇しくも長電で日比谷線の世代交代が見られることに。
前面は赤帯に変更されており、雪かきを兼ねたスカートが設置されている。

  • 1000系
小田急ロマンスカーHiSE10000形。
老朽化していた2000系の置き換えを目的に、4両編成2本が導入された。
愛称はゆけむり
小田急電鉄の車両が他社に譲渡されるのは1985年以来22年ぶりで大きな話題となった。
譲渡に際して日本車輌豊川製作所で編成の短縮、補助電源装置の移設、ブレーキの強化、暖房関係の強化など改造を実施。車両限界の都合から、豊川から長野まで輸送するのにわざわざ東海道〜上越〜信越本線を経由したのは語り草。
ハイデッキの客室構造・連接構造はそのままで、カラーリングも小田急時代と殆ど変わっていないように見えるが、実際はワインレッドの部分が長野電鉄の赤色に変更されている。
トイレは車両基地に処理設備がないために存在しない。

  • 2100系
元「成田エクスプレス」の253系。
1000系ゆけむり同様、老朽化した2000系の置き換えを目的に導入された。
在籍数は3両編成2本。
愛称はスノーモンキーで、地獄谷温泉の露天風呂に入るニホンザルに由来する。
譲渡に際して東急車輛でワンマン運転用機器の追加、暖房関係の強化、前面貫通扉の閉鎖などの改造を行った。
内装はHiSEと同様に現車そのまんま。
ハットトラック式の荷物棚も集団見合い式シートも、グリーン個室(Spa猿~ん)も残っている。
個室は室料として特急料金に加えて1200円払えば使用できるが、普段はカギがかかっており乗る際に車掌に開けてもらう必要がある。
カラーリングは第1編成はほぼJR時代のまま、第2編成についてはオリジナルに変更されてロゴマークも貼られている。
トイレは車両基地に(ry

1000系・2100系共々、自動放送は信越放送の山崎昭夫アナウンサー*5が担当している。

過去の車両

  • 2000系
自社発注の特急用車両。4本が製造され、特急から普通列車まで幅広く運用された。
3両編成で、両側の先頭車がモーター付き、中間車はモーター無しとなっており、登場時は中間車を抜いた2両での運行も可能だった。
車体はセミモノコック構造を採用した軽量構造で、曲面を多用した形状となっている「日車ロマンスカー」のひとつで、近い構造の車両に名鉄初代5000系や富山地方鉄道14720系が存在する。
8500系の導入により第2編成が廃車、第3編成は1000系ゆけむりの運行開始後の2006年12月に運用離脱。
残った2本のうち、第1編成はカラーリングを登場時のマルーンと白帯に変更し、第4編成も冷房化改造前の旧標準色(りんご色)に塗り替えられ、運行終了まで活躍した。
第1編成は2011年3月に運行終了。
第4編成は2012年3月まで生き延び、屋代線の最終列車として最後を飾った。
第1編成は運行終了後も須坂駅の構内に置かれていたが、2012年3月31日の屋代線の最終列車通過後に3500系の牽引で信濃川田駅まで回送され、そのまま留置された。
現在はビニールシートをかけられているが、吹きさらしのため状態はあまり良くない。
第4編成は小布施駅併設のながでん電車の広場で保存された。

  • 0系・10系
愛称はOSカーで、Officemen & Students Carの頭文字に由来。
0系は逼迫する通勤・通学需要に対応するため、1966年に登場。
地方私鉄の車両では異例となる長さ20m、片側4ドアの車体構造で高い収容力と乗降性を確保した。
正面には貫通扉が付いており、ラッシュ時には2編成連結して4両でも運行可能としていた。
また、FRPを多用した前面や電動式の側面方向幕など、大手私鉄に先駆けて先進的な技術を採用していた。
1997年に3500系の導入に伴い引退。
1967年鉄道友の会ローレル賞受賞。

10系は長野~善光寺下間の地下化により、地下線を走ることが出来ない旧型車両の置き換えを目的として、1980年に登場。
冬季における車内環境改善のため、ドアは片側3箇所に減少し、前頭部のデザインも変更されている。
主電動機はMB-3068-A(135kW)からMB-3266-A(150kW)、主制御器はABFM-184-15MHからABFM-204-15MDH、台車は歯車比1:6.13のNA-18/NA-18A形とA-18T/NA-18AT形から歯車比1:5.31のNA-36形とNA-36T形へと仕様変更されていて、抑速発電ブレーキも装備された。
当初は旧型車の置き換えを全て10系で行う予定だったが、製造コストの関係で1編成だけに終わった。
ワンマン運転に対応できないことから、2003年に木島線の廃線で余った3500系に押し出される形で引退。

  • 2500系/2600系
元東急初代5000系で、2両編成が2500系、3両編成が2600系を名乗る。
東急時代は車体が緑色だったため青ガエルの愛称で親しまれたが、長電移籍後は標準色であるりんご色に塗り替えられたため、赤ガエルの愛称で親しまれることになった。
東急電鉄は車両運用の関係から5000系ではなく初代3000系を譲渡するつもりでいたが、
長電の強い要請や東急グループでもあり、長野県の経済の要衝でもあったながの東急百貨店の口添えもあって5000系の譲渡が実現した。
譲渡後は主力として活躍を続けたが、経年が進んだことや冷房化改造が不可能なこともあり3500系の導入に伴い引退。
2500系一本が「トレインギャラリーNAGANO」にて保存されていたが、当該施設の閉鎖に伴い引き取り手を探していたところ、先頭電動車は総合車両製作所に引き取られたうえで復原改造されることとなった。

  • 3500系/3600系
元営団3000系で、2両編成が3500系、3両編成が3600系を名乗る。
長野オリンピック開催に際して列車の増発および2500系・0系の置き換えを目的に導入され、最盛期には2両編成14本、3両編成3本が在籍していた。
このうち2両編成は、ワンマン運転用に車内に運賃箱などを装備した編成と運賃箱未装備の車両に分かれる。
主な改造内容は3両編成の湯田中側の先頭車のモーターの撤去、主抵抗器・暖房関係の強化。
2001年には一部編成を対象に京成電鉄から譲り受けたエアコンを取り付けて冷房化を行った。
8500系の導入で非冷房だった編成を対象に最初の廃車が行われ、3000系の導入で冷房車の置き換えも進められた。
2023年1月19日にさよなら運転を行い引退。
なお、譲渡された車両の中には3000系のトップナンバーも含まれていたことから、技術継承も兼ねて廃車後に東京メトロの千住検車区へ里帰りした。


主要駅

起点駅。
信越本線北陸新幹線、しなの鉄道北しなの線乗り換え。
JRの長野駅善光寺口の地下に設けられており、地下区間は善光寺下駅の先まで続く。
地上時代は国鉄と線路がつながっていた。
同駅の名物として105mm×148mmのジャンボ入場券が発売されており、2022年で発売50周年を迎えた。

  • N2 市役所前(しやくしょまえ)
長野大通りの地下に位置する地下駅。
名前の通り長野市役所の直ぐ側にある。

  • N3 権堂(ごんどう)
地下駅。
駅は綿半スーパーセンター権堂店(旧イトーヨーカドー長野店)と直結しており、イトーヨーカドー時代は買い物客に復路切符をプレゼントするサービスもあった。

  • N4 善光寺下(ぜんこうじした)
地下駅。
ここで地下区間は終了し、地上へと上がる。

  • N5 本郷(ほんごう)
地上に上がって最初の駅。

  • N6 桐原(きりはら)
昔からの駅舎が残っている。

  • N7 信濃吉田(しなのよしだ)
しなの鉄道北しなの線北長野駅とは徒歩で連絡できる距離にある。

  • N8 朝陽(あさひ)
この駅で複線区間は終了し、単線となる。
以前は長野駅方面に向かって折り返し運転ができるようになっていたが、現在は信号の関係でできなくなっている。
鉄道むすめ~鉄道制服コレクション~15周年キャラクター総選挙で朝陽さくらが第1位を獲得したため、彼女の記念等身大パネルが設置されていた時期もある。

  • N9 附属中学前(ふぞくちゅうがくまえ)
駅名の学校は信州大学教育学部附属のことを指す。他に同附属小などがあり、それらの敷地を貫くような場所に駅がある。

  • N10 柳原(やなぎはら)
市民病院の最寄り駅の一つ。

  • N11 村山(むらやま)
列車交換が可能。
カールやマーブルチョコレートで有名な明治のグループ会社の工場がある。
この駅と前の柳原駅の間にかかる村山橋は、道路と鉄道が一緒の鉄橋を共有している。

  • N13 須坂(すざか)
須坂市の中心駅であるとともに長電にとっても中心となる駅で、車両基地はこの駅の構内に併設されている。
キャッチコピーは蔵の街で、駅周辺には蔵造りの建物が多い。
桜の名所である竜ヶ池の他、動物園などを有する臥竜公園もここから。
一部の普通列車は、ここで長野駅方面に向かって折り返す。
かつては屋代駅に向かう屋代線が分岐していた。

  • N14 北須坂(きたすざか)
ちょっとした工業団地が隣接している。

  • N15 小布施(おぶせ)
葛飾北斎所縁の地であり、北斎館のある小布施町の中心駅。
駅舎に一番近いホームは臨時ホームとなっており、普段列車は発着しない。
駅構内には「ながでん電車の広場」があり、かつて活躍した2000系が保存されている。

  • N17 桜沢(さくらさわ)
1面2線の無人駅で、留置線を有している。
「さくらざわ」と読みは異なるものの秩父鉄道の駅名が一致することから、朝陽さくら桜沢みなのによる桜コラボ企画が実施される切っ掛けとなった。

  • N18 延徳(えんとく)
長野五輪での列車増発に対応するため交換駅となったが、2020年に交換不可の片面ホームに戻った。
シャボン玉の歌などで知られる作曲家・中山晋平の記念館の最寄りだが、徒歩20分と距離があるので信州中野駅からタクシーで行ったほうが早い。

  • N19 信州中野(しんしゅうなかの)
中野市の中心駅。かつてはここから木島駅へ向かう木島線が分岐していた。
普通列車の運転系統は当駅を境に分離されていて、少数の直通便を除いて相互に折り返している。
何気に駅名に「信州」が入る唯一の駅でもある*6

  • N20 中野松川(なかのまつかわ)
1面1線の無人駅。
駅から徒歩5分の中野市一本木公園で信州なかのバラまつりが開催されている間は特急が臨時停車する。

  • N21 信濃竹原(しなのたけはら)
最後の交換可能駅。

  • N22 夜間瀬(よませ)
志賀高原の山々を背景に電車がカーブする光景を拝められる。

  • N23 上条(かみじょう)
周辺は林檎畑が多い。

  • N24 湯田中(ゆだなか)
終点駅で有人駅。山ノ内町の中心駅かつ湯田中温泉の最寄り駅である他、志賀高原方面へのバスが発着する。
駅が急勾配を上りきった場所にあり、ホームの配置の関係で3両編成の列車はスイッチバックを行っていた。
スイッチバックの手順
1.長野方面から到着した列車は一旦ホームを通り過ぎて踏切を塞ぐ位置で停車
2.長野方向にあるポイントを本線から引き込み線方向に切り替え、運転手が反対の運転台へ移動
3.長野方向の先頭車が引き込み線に入るよう前進を開始
4.湯田中方の先頭車がホームに入りきった位置で停車してドアを開ける
発車する時はこの逆の手順を経ていた。

スイッチバックは、1000系ゆけむりの入線前に列車を1ヶ月全部運休して改良工事を行って解消された。
スイッチバックが解消されたのは、1000系が展望席の関係で運転台が高い位置にあり、運転士の移動に時間がかかって効率が悪いから。
スイッチバック時代はホームが2本あったが、普段から1本しか使用しておらず、改良工事後は1本のホームだけとなった。
なお、使用されていなかったもう1本のホームは現在は線路を撤去され、通路として現役である。

なお、歌舞伎好きの方にとっては戦前の名優にして美男子として知られた十五代目市村羽左衛門の終焉の地としても知られている。


追記・修正は長野駅でジャンボ入場券を購入してからお願いします。


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最終更新:2023年09月11日 19:31

*1 発車時刻表示器では、S特急という略称で表示されている。

*2 1000系が検査予備などで運用に就けない場合は、『特急スノーモンキー~のんびり号~』として2100系が代走し、個室指定席の販売も実施される。

*3 2021年3月13日のダイヤ改正時で、上りは1時間10分、下りは1時間24分の乗車時間になっている。

*4 当初は2020年5月8日までだったが、2021年5月7日→2022年5月6日→2023年5月8日→2024年5月8日まで延長予定だった。

*5 自他ともに認める鉄道ファンであり、「ゆけむり」のDVDのナレーションも務めた。若手時代、北陸新幹線が長野まで開業した日に長野駅からの中継で駅員の格好してモノマネをするなどノリノリでレポートしたことがある。

*6 私鉄では雲州、上州、武州など使われている例が多いが、国鉄は○州という駅名を基本的に避けている。例外として使用されているのは、JR赤穂線の播州赤穂駅だけである。