最新版ゲゲゲの鬼太郎

登録日:2017/11/30 Thu 19:51:52
更新日:2023/12/18 Mon 00:13:18
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『最新版ゲゲゲの鬼太郎』とは、アニメ第3期の放送期間中にコミックボンボン誌上にて連載されていた、水木しげるがほとんど関与していない鬼太郎漫画である。

水木しげるはほとんど関与していない。

大事なことなので2回(ry


【概要】

同時期に古巣の少年マガジンで水木本人が『新編ゲゲゲの鬼太郎』を連載していたのも決して無関係ではないだろうが、本作は作画を当時のアシスタントだった森野達弥、脚本を東映トランスフォーマー三部作(ヘッドマスターズマスターフォースビクトリー)で知られる金田益実が担当している*1
そのため本作は「水木プロ作品」という扱いになっており、水木しげるはあくまでも名義貸し原作者としての参加。

そんな本作だが、当時単行本全4巻が発売されて以降(終盤のエピソードは未収録)、一度も復刊されておらず、今では半ば封印作品となってしまっている。
KADOKAWAが一時期水木作品を大量に文庫で復刊していたが、同じボンボン連載の『鬼太郎国盗り物語*2』は全話収録で発売されたのに本作はスルー。
ボンボンの版元である講談社から刊行された『水木しげる漫画大全集』でも一切触れられていない(当時の児童誌のグラビア記事の再録はあり)。
理由としては「水木プロ作品だから(水木が直接関与しておらず、かといって森野の作品として扱うことも難しい)というのが公式見解だが、ファンの間では

丸投げされたのをいいことにあまりにも自由にやり過ぎてしまい、水木しげるの逆鱗に触れたのでは?

という噂がまことしやかに囁かれている*3
……が、水木しげるを怒らせそうな要素が作中に結構見受けられるのも事実だったりする。
  • 鬼太郎をあまりにもヒーロー然として描き過ぎている*4
  • 少年マガジン版の続編という体裁で原作(オリジン)に設定を付け足している*5
  • 地獄童子の存在……と言うか設定

しかしながら、3期直撃世代にとっては本作が初の漫画版鬼太郎だと言う人も少なくないはず。
一日も早い完全な復刊を祈るばかりである。


【主な登場人物】

ご存知幽霊族最後の生き残り。
アニメ3期に準じてヒロイックな面が強調されており、髪の色も灰色(ベタなし)ではなく茶(スクリーントーン)。
見開きで必殺技とか使っちゃったりもするし、特訓でパワーアップしたり車に乗ったりもする(車については完全な本作オリジナルというわけでもなく、児童誌のグラビア記事に描かれたイラストが元ネタ。ただしゲゲゲマシーンといういかにもな名前)。
本作は貸本『墓場鬼太郎』もしくは『鬼太郎夜話』から少年マガジン版を経た直接の続編という世界観のため、作中で当時しでかした喫煙や横領を暴露されて精神的に追い込まれるというシーンが存在する。

『墓場の鬼太郎』*6作中にて原始時代に流刑となったぬらりひょん本人。
お化けは死なないの歌詞通り、億単位の年月を生き抜いて現代に帰還した。一緒に古代流しになった蛇骨婆はどうしたって?気にするな。
その中で忠臣蔵、太平洋戦争、終戦直後の日本の混乱と高度成長による人心の荒廃──ともかく様々な理由で発生した人間の負のエネルギーを取り込んでおり、かつての小物っぷりはどこへやら、小さなビルと同程度の巨躯と強大な妖力を手に入れ、エンマ大王とガチで渡り合えるまでにパワーアップした。
日本各地の悪党妖怪を率いてぬらり帝国なる一大勢力を築き上げ、日本制覇を目指す。

格好は原作の背広やアニメの和服ではなく、胸に勲章をぶら下げた軍服姿。
このデザインは同時期に制作された月曜ドラマランド版でも用いられている。

ぬらりひょんの手によって各地に分断されてしまい、長らく鬼太郎と合流できず。
ぬりかべ、一反木綿、シーサー、猫娘のみ鬼太郎の下に残ったがほぼ空気。

うるさい目玉や砂かけが不在なのを良いことに、案の定ぬらりひょん側につき鬼太郎の社会的地位失墜に尽力する。
鬼太郎が住むゲゲゲの森の所在地は明かそうとしないが、これは良心からではなく、戦争を長引かせるだけ長引かせて美味い汁を吸おうという魂胆から。

  • 夜行さん
百鬼夜行衆を率いる実力者。
当初はぬらりひょんの配下だったが、元々ぞんざいな扱いを受けていたこともあり鬼太郎側に寝返る。
アニメでは発明家キャラとして知られるが、こちらではそんな設定は一切なく、鬼太郎のスパーリングに協力するなどバリバリの武闘派。

  • 天童ユメコっぽい少女
アニメ3期に登場したオリキャラ。3期直撃世代にとっては、まごうかたなきヒロイン。
が、本作での扱いは実質3期視聴者へのサービスのための顔見せ止まり。
アニメでは小学生だったが、本作では中学生で後述する山田の隣の席。

ちなみに水木しげるも、『続 妖怪画談』収録の「妖怪の森」を始め、ほんの数点ではあるがユメコちゃんのイラストを残している。

  • 山田健太
水木ファンにはもはや説明不要の「眼鏡出っ歯」。本作では中学生。
いじめを苦に自殺を図ったところを鬼太郎に助けられ、それが妖怪の仕業だったと知って以降鬼太郎と親交を持つ。

  • 鳥目刑事
かつて鬼太郎を無実の罪で逮捕した天狗ポリスに所属する特別捜査官。額に第3の目を持ち、それを使って幻術を見せる技が得意。
ぬらりひょんをはじめとする極悪妖怪たちの鎮圧のため、鬼太郎と協力関係を結ぶ。
その見た目と設定から、アニメ5期のオリキャラである黒鴉と蒼坊主のルーツなのでは?とする考察も。

  • 地獄童子
地獄で獄卒として働く少年。
ぬらりひょんに操られる西洋妖怪への対処法を求めて地獄に来た鬼太郎を襲撃するも、この時の騒動がきっかけで鬼太郎とは意気投合し友人に。
戦闘能力も非常に高く、首に巻いたマフラーを武器として使用する。だからと言って流派東方不敗波紋も使えないし男塾の生徒でもないが。

最初はただの亡者として扱われていたが、唐突に髪の毛針を使ったことから、なんと彼も第一期人類の血を引く存在「霊類」であることが示唆される*7
唯一の生き残りという鬼太郎の根幹に関わる設定は……*8

水木しげるが『新編』連載終了後に執筆した『ゲゲゲの鬼太郎 地獄編』がアニメ化された際、満を持してアニメにも登場。CVは堀川亮トーマスとヘンリー
鬼太郎の心強い強敵(とも)として人気を博し、鬼太郎版ガメラ4とも言うべき伝説の二次創作アニメ『女媧』でも鬼太郎、猫娘と並ぶ主役として扱われた。
アニメ5期で鬼太郎達のキャラデザが大幅に変更され、主に猫娘の薄い本が大量に出たことに不快感を示すファンもいたが、この当時腐女子向けに鬼太郎と地獄童子の薄い本が出回っていた事実を知る者からしてみれば、何を今さらという感じだったのは言わずもがな*9

アニメ3期をベースにしたSFCソフト『ゲゲゲの鬼太郎 復活!天魔大王』でもプレイアブルとして登場。
しかし隠しエンディングにて、本作オリジナルの宇宙妖怪に体を奪われるという後味の悪い結末を迎えたままフェードアウトしている。

彼の実質的な生みの親である森野は水木プロから独立した際、「のれん分け」のような形で地獄童子に関する著作権を譲り受けたとのことで、後に再び金田と組んで地獄童子が主役の漫画を発表。
一方、金田は書籍『ゲゲゲの鬼太郎 解体新書』収録の回顧録で
美形の母も、美少年ライバルも実際の水木漫画にはタブーである。
確立した世界に大きな変化が生じるのは、アニメスペシャルだけで良いだろう。
と、やや自虐的に書き記している*10*11
近年になってスマホゲーム『ゆる~いゲゲゲの鬼太郎 妖怪ドタバタ大戦争』に参戦、「令和3年の奇跡」と童子ファンを歓喜させた。

そんな地獄童子ではあるが、本作では『墓場鬼太郎』の水神のエピソードの焼き直し回にてコーヒーを飲もうとして体を溶かされ死亡するというあっけない最期を迎えてしまい、のちに最終回で鬼太郎の母・岩子や鬼太郎のご先祖様も暮らす「霊類の世界」に行ったことが明らかになる。
森野がファンクラブの会報誌で語ったところによると、
「3作目の鬼太郎は優等生になり、原作が持っていた暗さや毒が無くなってしまいましたね。
そういったものをかわりに持てるキャラクターを金田先生と一緒に作り上げました」

「おかげさまで人気者になりましたが、本来脇役だったのでストーリーでの扱いが難しくなり、
「じゃあ、溶かしちゃえ!」ということで…」
という身も蓋もない判断があったらしい。

  • 幽子
地獄童子の恋人。十二使徒に同じ名前の少女がいるが一切関係はない*12
彼女が登場する回は『墓場鬼太郎』の寝子のエピソードを一部流用しており、ねずみ男が連れてきた吸血鬼エリート、さら小僧、ぬっぺっぽうという史上類を見ないドリームチームによる指導を経て娑婆で歌手デビューを果たすが、案の定悲劇的な最後が待っている。
ちなみに、その回に敵として出てくる妖怪はよりによって五徳猫だった。


【エピソード一覧】

1巻

  • 「大妖怪がしゃどくろ復活の巻」
いじめを苦に自殺を図った中学生・健太を助けた鬼太郎は、彼が夏休みに富士山に行って以来いじめられるようになったと聞く。
青木ヶ原の樹海に眠る死者たちの無念が妖怪化したがしゃどくろが、樹海の中で立小便をした健太を呪っていたのだった。

本作のがしゃどくろのデザインは、後頭部が長く伸びているのが特徴。
3期「妖花の森のがしゃどくろ」に登場する個体に流用される。

近代的な街、日本文化の中心、そして世界が注目する都市、東京。
しかし、東京ほど人々の心が汚れた街はない。
それに目を付けた謎の「妖怪総大将」は、再び本所七不思議の呪いをよみがえらせ、邪魔な鬼太郎を倒そうと画策する。

3期最終回「鬼太郎ファミリーは永遠に」の原作エピソード。

  • 「妖怪コンビ!わいらとサガリの巻」
東京の裏側は、今や妖怪たちの戦場と化していた。
妖怪総大将の放った刺客・わいらとサガリによって、鬼太郎に味方する妖怪が次々と襲われていく。
わいらとサガリは、ねずみ男にゲゲゲの森と人間世界をつなぐ異次元の通路「ゲゲゲホール」*13の在り処を聞き出そうとするが……。

  • 「電木妖怪さかばしらの巻」
妖怪総大将によって復活した妖怪・逆柱は、とある村を占拠し、人間を食べる代わりに食べた人間の偽物を吐き出してすり替え、日本全土を侵略しようとする。
根切り虫の報告を受けて現地へ向かった鬼太郎も食べられ、コピー妖怪エレキタロウ+/-が生まれてしまった。

逆柱は原作にも登場する妖怪だが、そちらについては一切触れられない。

  • 「出現!妖怪総大将の巻」
人間世界はクリスマスの季節。
再びゲゲゲの森に招かれた健太は、鬼太郎誕生の秘密を聞かされる*14
それからしばらくは平和な日々が続いていたが、日本各地で怪事件が同時多発。
東京に残って暴れだしたカニ料理屋の看板と戦う鬼太郎の前に、ついに妖怪総大将がその姿を現す!

2巻

  • 「百鬼夜行軍団登場!の巻」
妖怪総大将=ぬらりひょんの念力爆弾によって、子なき爺は南方、砂かけ婆と呼子は北極へ飛ばされ、目玉おやじは行方不明に。
日本各地の有力な妖怪を集めて反撃に出ようとする鬼太郎に対し、日本妖怪の3分の2を手中に収めたぬらりひょんは、夜行さんを送り込む。

ゲゲゲマシーンが初登場。

  • 「霊界大決戦!の巻」
夜行さんを仲間に加え、行方不明になった仲間を探す鬼太郎。
一方の人間世界では、二人のサラリーマンが子供時代に行方不明になった友達と再会を果たしていたのだが……。

隠れ里」もののバリエーション。

  • 「地獄の妖怪獣出現!の巻」
子なき爺の無事が判明する一方、東京に巨大妖怪が出現、街を破壊し始めた。
ぬらり帝国の悪事で死者が増えすぎた日本地獄を手伝わせるため閻魔大王が呼び寄せた南米の妖怪・ヨナルデパズトーリが、ぬらりひょんに操られて巨大化したのだ。
閻魔大王から事情を聞いてヨナルデパズトーリと戦うことになった鬼太郎は、夜行さんから仲間や祖先の力に頼りすぎていると指摘され、特訓を開始する。

  • 「恐怖の地獄童子の巻」
西洋妖怪をも味方にし始めたぬらりひょんは、ロシアの妖怪・ブイイを使って不良中高生を操り、校内暴力といじめ自殺の嵐を巻き起こさせる。
ブイイのことをよく知っているという地獄童子からブイイの弱点を聞き出すべく、再び地獄へ向かう鬼太郎だったが……。

この回から地獄童子が登場。

  • 「再生妖怪軍団の反撃!の巻」
秘宝・妖怪香炉──この中には、何らかの理由で一時活動をやめた妖怪たちの魂の安息場所である「妖怪摩天楼」が隠されている。
その妖怪香炉をねずみ男が掘り出したことから、今まで鬼太郎に倒された妖怪たちが再びよみがえり、鬼太郎への逆襲を開始した。
これを利用して人員拡充を狙うぬらりひょんも話に絡み……。

3期「妖怪香炉 悪夢の軍団」の原作エピソード。

  • 「ゲゲゲの鬼太郎 妖怪決戦史」
アニメ3期の第1~46話までと、映画3作のダイジェスト(絵は一部除き原作となったエピソードのものを使用)。
戸田恵子声の鬼太郎視点で各話を振り返る。
例えば第2話は
鏡じじいは、人間が古いものを大切にしなくなったので、
おこってあらわれた。鏡の中にとじこめられたり、
たくさんの鏡じじいと戦ったり、苦しめられたよ。
この事件がきっかけで、ユメコちゃんと知りあえたんだから、
鏡じじいには感謝しなくちゃね!
……それでいいのか正義の味方。

3巻

  • 「ぬらりひょん、最後の戦いの巻」
ねずみ男とドイツ出身の妖怪・砂男を利用して鬼太郎を人間社会から孤立させ、味方に付けようとするぬらりひょん。
人間と妖怪の平和共存という理想を果たすまで、鬼太郎は負けるわけにはいかない。
鬼太郎の空いた左目を通して出る力が、ぬらりひょんを「幽霊族の聖地*15」へと誘った。
ついに一対一の決戦が始まる!

この話を最後に、ぬらりひょんが一時退場。
最後の1コマで行方不明だった目玉おやじが唐突に帰還する。

  • 「妖怪警察vs極悪しょうけらの巻」
日本にほど近い無人島にある「妖怪刑務所」には、妖怪同士の自由を束縛する罪を犯した者が投獄されている。
その中から脱獄した妖怪・しょうけらを退治するため、鬼太郎が立ち上がった。

「妖怪大裁判」の続編的な立ち位置のエピソード。
もし鬼太郎が当初の求刑通り溶解刑に処されていたら、溶かされて瓶に入れられたままこの刑務所の中で何千年も過ごしていたことになる。

  • 「霊界ビデオの逆襲!の巻」
近年流行りのレンタルビデオ屋でビデオを借りた人間が魂を抜き取られる事件が続発。
以前鬼太郎に倒された夜叉の姪・夜叉姫と夜叉一族が、魂をビデオカセットの中に閉じ込めるビデオ作戦で鬼太郎への復讐を企んでいたのだった。

「夜叉」の続編。
夜叉一族は動物と合体してそのパワーを数十倍に強化する能力を持ち、夜叉姫以外の4体はゾウ夜叉、トラ夜叉、タカ夜叉、クマ夜叉として襲い掛かる。
……元ネタは間違いなく劇場版スーパー1だろう。金田益実の趣味か?

  • 「無限増殖妖怪、どくろの怪の巻」
とあるデパートの建設予定地に、怪事件が発生。
犯人は増殖妖怪「どくろの怪」だった。どくろの怪は鬼太郎が得意のちゃんちゃんこ包みで動きを封じ、事件は解決したかに見えたが……。

どくろの怪は「目競」という名前で知られる。
そのままアニメに流用できそうな話だが、現在まで原作として使われたことはない。

  • 「妖怪以津真天、悪魔の契約の巻」
いじめられっ子・林田との約束で、彼のクラスメート全員を皆殺しにしようとする以津真天が現れた。
以津真天が最後の一人を殺した後になって、自分の命が惜しくなった林田は鬼太郎に助けを求める。

ラストで地獄童子が再登場。本格的な活躍は次回からとなる。

4巻

  • 「暴走!妖怪超特急の巻」
霊界テレビのクイズ番組で地獄旅行を当てた帰りのねずみ男とシーサー、そして休暇をもらった地獄童子を乗せた現世行き妖怪超特急がレールジャックされた。
獄卒のプライドを賭けて犯人の地獄鬼四天王を止めようとする地獄童子。一方、鬼太郎と元四天王の夜行さんもそれぞれ独自に動きだしていた。

地獄童子のデザインが変更。
夜行さんの過去も判明する一方、童子が毛針を使ったことが新たな波紋を呼ぶ。
3期第15話に登場した「妖怪手袋」も出てくる。

  • 「恐怖の妖奇病の巻」
前回の戦いで妖怪超特急から放り出され、人間界に流れ着いた地獄童子は、とある町医者に担ぎ込まれた。
その頃、東京の子供たちの間でも「妖奇病」、またの名を子供版エイズなる病気が流行。
病気の原因を探る鬼太郎の前に、妖怪・疱瘡婆が現れた。

鬼太郎(or地獄童子)が相手の輸血で一命をとりとめるという流れが3期「鬼太郎VS地獄童子」「二大妖怪の罠」に流用された。

  • 「世紀の妖怪アイドル、幽子の巻」
ねずみ男の売り込みにより、地獄から連れ出された亡者・幽子が歌手デビューした。
地獄の脱走者となり、しばらくゲゲゲの森に身を隠すことになった地獄童子も幽子に会いに行くが……。

  • 「妖怪水ころがしの巻」
地獄童子を抹殺するために送り込まれた水ころがしが、東京全土を恐怖に陥れる。
水道水に混ざって地獄童子を溶かし、目的を果たしたはずの水ころがしは、なおも暴れ続けるのだった。

地獄童子が溶解死を遂げる。
水ころがしのデザインは実写版『悪魔くん』に出てくる「水妖怪」の流用。

  • 「地獄の妖怪なべの巻」
いわれなき罪により、立ち寄ったラーメン屋を追い出された鬼太郎とシーサーは、荒れた古寺で一夜を過ごす。
その寺には、無銭飲食で件のラーメン屋から逃げてきたねずみ男がいた。
寺のある山は蟹坊主という妖怪の縄張りで、蟹坊主の餌として捕まったというのだが……。

3期のエンディングの開始1秒目で出てくる蟹坊主が登場。
シーサーが「こいつよく見る顔ですね」メタ発言をかます。

未単行本化

金田によると「ページが単行本化できる分量に満たなかった」というのが最後まで単行本化されなかった理由らしい。
後年、似たような問題で単行本化されなかった話が「どこかしらを怒らせて封印扱いになった」と誤解されるケースも発生しており、ボンボンKCにはよくあることだったようだ。
よってサブタイトルは仮題だが、これらの未収録作品が資料系同人誌として発売された折にその同人誌の編者によって新しく付けられており、「少年マガジン/オリジナル版 ゲゲゲの鬼太郎」などの一部資料でもこれらの仮題を引用しているため、当項目でもそれに倣った。

  • 「地獄の妖怪狩りツアーの巻」
山奥の寂れた旅館を盛り上げるためにねずみ男が仕組んだ「妖怪サバイバルツアー」企画のせいで、心無い人間に虐待される妖怪たち。
見かねた鬼太郎は、悪人たちを懲らしめるために一計を案じた。

3期「謎の妖怪狩りツアー」の原作エピソード。

  • 「武器をうばわれた鬼太郎の巻」
鬼太郎の髪の毛・霊毛ちゃんちゃんこ・リモコン下駄が、見上げ入道と見越し入道の「入道ブラザーズ」に盗まれた。
指鉄砲も体内電気も威力減退し、もはや打つ手なしの鬼太郎の前に現れたのは、あの迦楼羅様
迦楼羅様によると、かつて増え始めた人間に圧迫され、海へと逃れた霊類の一部が、武器を残していたというのだ。

新たな鬼太郎の武器として、「霊類のヨロイ」が登場。オリジナル設定ここに極まれりである。
  1. 兜になる先祖の頭蓋骨
  2. 鍔に隠れた敵を見通すスコープが付いているのだが正面からだといかがわしい形にしか見えない
  3. 盾(特に装飾があるわけでもない、ごく普通の盾)
から成る。黄金聖衣とかロココ様みたいなド派手でヒーローチックなデザインじゃないだけマシかもしれないが、確かに「水木サンも怒った」と言われればもっともな気が……。

  • 「ぬらりひょんの逆襲の巻」
死んだかに見えたぬらりひょんがまたまたよみがえった!
再び悪の妖怪たちを集めて人間世界への大攻勢を画策するぬらりひょんを食い止めようとする鬼太郎。
その前に、妖怪・黒坊主が人間の出した産業廃棄物を吸って変異した「黒雲主」が姿を現す。

最終章の前編。
黒雲主はファミコン用ソフト『ゲゲゲの鬼太郎2』にも登場するが、それ以降の作品で顧みられたことは一切ない。

  • 「大決戦!鬼太郎よ永遠にの巻」
ぬらりひょんが鬼太郎との戦いに敗れ、黒雲主もろとも三原山の火口に落下してから5年の月日が経っていた。
ある日、度重なった地殻変動によって大島が真っ二つに割れ、三原山山頂から黒いアメーバ状の物体が流れ出す。
その正体は、人間も、妖怪も、自然をも見境なく食い尽くす妖怪ですらない怪物「食妖鬼」としてもう何度目かもわからない復活を遂げたぬらりひょんだった。
敵も味方も関係なく暴れる食妖鬼には自衛隊でも全く歯が立たず、食妖鬼はただ妖気を求めてゲゲゲの森を目指し続ける。
そして食妖鬼に敗れ、魂だけとなった鬼太郎は、「霊類の世界」で母や地獄童子と再会するのだった。
岩子・地獄童子ならびに鬼太郎の先祖たちをまとめる古代霊類の王*16は言う。
「これがやつとの最後の戦いとなろう。今こそ霊類の力を一つにして戦うのだ、万類平和のために!」

最終回というだけあって、水木しげるらしさより森野の手癖が強く出たテンション高めの作画が特徴的。
食妖鬼も細部まで緻密に書き込まれ、非常にグロテスクかつ迫力満点。
ちなみに砂かけと子なきは扉絵にだけ出てくるが本編には一切絡まない
あと霊類のヨロイも一切出ません。やはり怒られたのだろうか……?



追記・修正は本作の完全版が出てからお願いします。

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最終更新:2023年12月18日 00:13

*1 両名は同時期の『最新版(ボンボン版)悪魔くん』にも参加している。

*2 初代ポケモンを堂々とパクったことで知られるアニメ4期版ゲーム『妖怪創造主現る!』の元ネタになった作品。こちらはちゃんと水木しげるが描いている。

*3 のちに京極夏彦が語ったところによると、水木は晩年まで本作の原稿を入れた封筒に赤い×を付けてしまい込んでいたという。

*4 水木は生前のインタビューにて「ヒーローは嫌い」という旨の発言を何度もしており、作品にも反映させていた。角川文庫『ねずみ男とゲゲゲの鬼太郎』巻末の荒俣宏との対談、短編『海坊主先生』、『鬼太郎の世界お化け旅行』『鬼太郎霊団』などでその片鱗に触れられる。

*5 後述するぬらりひょん関連の他にも、鬼太郎が以前に倒した妖怪の親族が復讐を挑んでくる話などがある。

*6 『ゲゲゲの鬼太郎』に改題する前のタイトル。『墓場鬼太郎』とは微妙にタイトルが違うので注意。

*7 本作では、「幽霊族」というのは人間が彼らを見て勝手に付けた名前という設定。

*8 実は鬼太郎には「雪姫」という妹も存在するのだが、現在は実質的に黒歴史化している。

*9 余談だが、山田秀一(3期大海獣)、一刻堂(4期)、蒼坊主(5期)などもそちら方面の人気が高い。

*10 アニメ3・4期に登場する鬼太郎の母は、原作の「ざんばら髪で、片目を患った」姿ではない(当然それぞれ別人が起こしたデザインだが、どちらにしろ原作の面影はゼロ)。原作そのままのデザインでは放送コードに抵触するというのも大きいだろう。

*11 この回顧録では水木プロに寄贈された、もしくは金田の個人所有と思しき前述の女性向け同人誌の現物写真が小さく載っている。これがトラブルに発展したというような話は特にないが、90年代がまだおおらかな時代だったことを感じさせるエピソードである。

*12 ちなみに本作には第三使徒も出てくるが、ただの巨大妖怪扱い。しかも妖怪獣・蛟龍と間違えられる。えぇ……

*13 本当にこういう名前なんです。

*14 水木青年も出てくるが、水神に溶かされたわけでも追い出されたわけでもなく、鬼太郎が自分の意思で水木家を出たことになっている。

*15 『妖奇伝・幽霊一家/鬼太郎の誕生』の、鬼太郎の父が幽霊族について水木に説明するシーンに出てくるバベルの塔が建っている土地。

*16続ゲゲゲの鬼太郎』で、目玉おやじが「確かわしの先祖が帝位についていたのが紀元前3800年前だったかなあ」と言う場面がある。マニアックな金田なのでこれを拾った可能性もなくはないが……。