SCP-2041

登録日: 2017/10/17 Tue 11:57:53
更新日:2024/04/04 Thu 11:54:03
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子供たちの安全を守るけれども、あまり楽しくはない。




SCP-2041は、シェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト(SCiP)である。
オブジェクトクラスはSafe。
また、本項では『壊れてしまった光ハブ』の他のオブジェクトにも合わせて触れる。

壊れてしまった光ハブ

SCP Foundationでは『カノンハブ』と呼ばれるものが存在している。
基本的に読者の皆様もご存知の通り、SCPにおいては「カノン(公式設定)はない」とされ、
一般的に正史とされるようなものも実際には正史ではなく、支持者の多いヘッドカノンであるのみだ、という世界観で各作品は執筆されている。

とはいえ、あまりに細かい設定を共有したい時に、それをまとめておきたいというのはあるし、
同じ世界観を共有したうえで書きたいという需要がないわけではない。
そのため、「カノンハブ」と呼ばれるいわばシリーズのまとめページみたいなものが存在する。
とあるハブは皆がよく知る世界観を補完し、あるハブは既存世界とは異なるパラレルワールドになっていたりする。

そして、「カノン」とまでは言わないものの共通のコンセプトの基に書かれた記事群もあり、
これをまとめたハブページも存在する。
壊れてしまった光ハブもその一つ。

コンセプトは「オブジェクトはいずれも遊具である」こと、「子供に何らかのメッセージを伝えよう」とするオブジェクトであること。
ただし個々のオブジェクトが伝えたいメッセージの方向性は異なっており、子供を守ろうとするものから子供を遠ざけたがるもの、どこかへ連れ去ってしまうものまである。
  • SCP-1562 - Tunnel Slide (隧道滑り)
  • SCP-2041 - Merry-Go-View (メリー・ゴー・ビュー)
  • SCP-2224 - Teeter-Pult (シーソーパルト)
  • SCP-2483 - Sad Swingset (悲しきブランコ)
現時点で上記4つのオブジェクトがこのシリーズに属している。なお全オブジェクトの作者はtrennerdios氏。

SCP-2041の概要

SCP-2041は、メリーゴーラウンド、といっても遊園地にあるお馬さんのあれではなく、公園にあるぐるぐる回る遊具である。
元々はデンマークの廃校舎に設置されており、その廃校舎の遊具は近隣の児童に解放されていたらしい。
赤のアクリル塗料でコーティングされた亜鉛めっき鋼製の遊具であり、子供たちはよくこれを使用していたのだが、
使用していた子供たちに幻覚症状が現れるという通報があったことが財団の注意をひいた。

他の遊具と比較して、SCP-2041は非常に真新しい状態におかれており、
財団はこのオブジェクトは廃校舎に後から持ち込まれたものではないかと推測している。

研究員の一人、パーシオ研究員が収容後に利用し、語るところによれば、
少なくとも毎時9kmの速度で10秒以上回転させたSCP-2041を使用した人間は、幻覚症状を訴える。
不思議なことに、多くの光景は非常にアニメ調に見えるようになり、太陽は笑い、木々は踊る。
そして速い速度で動いているのにも関わらず、周囲の人間を非常に鮮明に注目することが可能である。
不可解なことに、傍で観測していたエージェント・ヴェールの肌が黄色っぽく、そして怒っているように見えたという。

追加実験

さて、パーシオ研究員の上司格と思われるダリッツ博士は、SCP-2041の追加実験を財団に申請し、承認された。
ダリッツ博士はパーシオ研究員の提供されたアイディアに基づいて実験を進めた。

しかし実験は首尾よくいかなかった。そこでパーシオ研究員はその遊具をかつて利用した子供たちにインタビューすることにした。
そのインタビューを実際に担当したのがエージェント・ヴェールであったが、彼はどういうわけか、最初その記録を財団に渡そうとしなかった。
インタビュー記録はほとんど破損していたうえに筆記ノートを取っていなかったことからエージェント・ヴェールは叱責を受けている。
とはいえ、2つほどの記録は一部だけだが再現された。

序: ██████ ████ (12歳)へのインタビューからの抜粋。

エージェント ヴェール: それが、君にとっては怖かったのかい?

██████: ううん、怖くなかったよ。でも何だかおかしいなって思った。

エージェント ヴェール: : どういう風におかしかったのかな?

██████: うん、今までメリーゴーラウンドに乗っててあんな風になったこと、一度も無かったから。ちょっとカッコよかったとも思った。

エージェント ヴェール: : じゃあ、どうして君は怖がったんだ?

██████: あの、普段はオレがあれを回してる時、友達は皆幸せそうに見えるんだ。それで、あの時オレたちが校庭に行ったら、もうそこに1人、男の子がいたんだ。オレたちみんな、アイツのことが好きじゃなかったから、無視した。それで、オレがメリーゴーラウンドに乗ったら、アイツは黄色に見えたんだ。

エージェント ヴェール: : 黄色? どういう風に黄色に見えたんだい?

██████: えっと、肌が黄色、っていうより少しオレンジで、身体の周りを黄色みたいなオレンジみたいな光が包んでた。それでアイツ、その、怒ってるように見えたんだ。アイツ…普通には見えなかったよ。何だか恐ろしかった。普段よりちょっと背が高いみたいで、痩せてもいたし、それにオレ、あの時のアイツが少しヒゲを生やしてたって誓うよ。アイツがそこに居る時、お日さまは幸せそうに見えなかったし、鳥たちも怖がってるように見えた。友達が乗った時も、みんなオレと同じ物を見たっていうんだ。でもオレたち、その男の子には何も言わなかった。

エージェント ヴェール: でもそれは君の…症状を引き起こした原因じゃないんじゃないかな?

██████: : うん、そうだよ。オレたち、メリーゴーラウンドをいっぱい使うから、たまに違う黄色い人たちを見る事もあるんだ。たまにはオレンジの人もいるし。オレンジは黄色い人たちよりも怖く見える。背も高くてもっと痩せてるし、狡そうな目をして、すっごくデカい口をしてるんだ。アイツらがいると、お日さまは悲しそうだし、木も踊るのを止めるんだよ。

エージェント ヴェール: 君がメリーゴーラウンドに乗っていない時、この黄色やオレンジの人たちはどう見えた?

██████: : 分かんない。みんな見た目は違ってたよ。でも…でも、女の子はあんまりいなかったと思うな。多分、年取ったおばさんが1人か2人程度だと思う。あの、えっと、ホントにお年寄りなわけじゃないよ。オレの母ちゃんよりも少し年上ぐらい。他は皆男の人だった。オレンジは大体、年上の男の人。

エージェント ヴェール: 少年、君の話で本当に助かったよ。でも、君は病院に行くことになったその理由を本当は話したくないんだろう? 残念だけれど、僕はそれを君に話してもらわないといけない。それがもしかしたら命を救うことになるかもしれないんだ。僕のために勇気を出してほしい。

██████: : うん… オレ、見たんだ。赤いおと-

録音の残りは復元不可能でした

序: ██████ ████████ (8歳)へのインタビューからの抜粋。

█████: -もした。僕もうヤダよ。お願い、僕を家に返して。

エージェント ヴェール: すぐに帰れるさ、約束するよ。彼はどんな色をしてた? 僕は知らなきゃならない。

█████: 最初はオレンジだったよ。でも、友達のマーカスが-

録音の残りは復元不可能でした

これを見る限り、エージェント・ヴェール以外にもオレンジや黄色になる人がいるようだ。

パーシオ研究員の自殺とエージェント・ヴェールへの疑義

その後、突然パーシオ研究員は首をつって自殺。
更に、このオブジェクトについてインタビューを受けた少年も走行中のトラックに飛び込んで自殺した。

これについて、エージェント・ヴェールは「このオブジェクトに自殺を誘発する効果があるのではないか」と提言したことから、
実験は中断され、あくまでダリッツ博士の移動ラボによる調査のみが続行された。
とはいえインタビューする機会を当のエージェント・ヴェールによってメチャメチャにされてしまっている以上、大して研究が進まないのだが。

そんな折、ダリッツ博士の元に一通のEメールが届く。宛先は仮のメールアドレスで、タイトルには「pdf file」と書かれていた。

博士、あなたは学校に、公園に、子供たちに誘い寄せられるのはどういう類の人間か分かっていますか? あれを作った物が誰にせよ、そいつは天才です。いつの日か彼と握手できればと思いますよ。今は、私よりもご自身の後ろを気に掛けた方が良いのではないでしょうかね。

ここでダリッツ博士、気付いた。いやSCP-2041の正体ではなく、
SCP-2041がオレンジや黄色に見せていた存在が何者であるかに。

エージェント・ヴェールは、実験記録の改竄を疑われて停職処分になり、ダリッツ博士は追加の実験を要求した。


オレンジの肌は何者だったのか

少年たちを恐怖に陥れたオレンジの肌の人たち。
彼らは大概は大人であった。

彼らについて、「あなたは学校に、公園に、子供たちに誘い寄せられるのはどういう類の人間か分かっていますか?」というメール。
送り主は不明だが、このメールの内容、そしてタイトル…そう、トマト飛ばしタイトルが興味深い。

そう、「pdf file → paedophile」ということである。ペドファイル。
黄色い肌の人たちの正体は、チャイルドマレスター(child molester、小児性犯罪者)になり得る人である。
誤解を招かないよう書いておくが、ペドファイル全てが性犯罪をするわけではない。
ただ、学校や公園に入り浸って子供に注目するような大人は、確実にやべーやつであることは間違いないだろう。

で、エージェント・ヴェールもおそらくそういう危険人物であったのだろう。
彼はインタビューで会った少年に…恐らくは手を出しているのだ。
そして、インタビュー記録が自分の正体をバラしかねないことに彼は気付いたに違いない。
そこで彼はインタビュー記録をメチャメチャにしてしまうことにしたのだろう。
そうすれば、自分の危険な一面がバレずに済む。

だがパーシオ研究員はもしかしたらすぐに気付いてしまうかもしれないと判断したエージェント・ヴェールは、
彼を自殺に見せかけて殺害した。そして折しも、エージェント・ヴェールにとっては都合がいいことに、
インタビューした少年の一人が心に傷を負って自殺してしまった。
これ幸いとオブジェクトの研究を遅らせるために、「これ研究し続けたらどんどん自殺する人がでるんじゃね」と報告してみせたわけである。

…いやクズいなこいつ。「YesロリータNoタッチ」も知らんのか。
人間の屑がこの野郎…。

メールの送り主はヒントがなさすぎるために不明。
ただ、オブジェクトを設置した人は子供をある意味で守ろうとしたのかもしれない。
守ろうとしたにしてはやや方法が回りくどすぎる気はしないではないが…。

壊れてしまった光

SCP-1562 - Tunnel Slide (隧道滑り)

閉所恐怖症を貴方に。
とある公園に置かれていた滑り台。普通に滑るだけではただの滑り台だが、
腹ばいになって滑ると、異空間に連れ込まれてしまう。
消失した人を回収する手段はいまだに発見されていない。

SCP-2224 - Teeter-Pult (シーソーパルト)

空の落とし戸の向こう側へと君を打ち上げてあげよう。
一度に4人が利用できるように2つの板が取り付けられたシーソー。
ある2つの座席に座って利用すると、飛んだような感覚を覚え、対面のもう片方が席を離れるとおちるような感覚を覚える。

…本当に感覚だけなのだろうか?ただ、体験している方は視覚的・聴覚的な感覚を伴うが、
はたから見てるとただ乗っているだけにしか見えない。
でもある程度長い時間飛ぶと墜落した時死ぬようだ。

SCP-2483 - Sad Swingset (悲しきブランコ)

かつてあった幸せの形を忘れてしまったんだ。
4枚の座板が存在し、うち5枚が破損しているブランコ。
真新しい見た目をしており、時々鳥の糞が、錆びついた汚れのない表面に実体化/非実体化する。
乗っている人は、SCP-2483の幸福状態を懸念するが、降りるとSCP-2483についてのことを忘れる。
記憶処理をすることは効果をなさない。だって、いずれ誰からも忘れ去られてしまうのだから。


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最終更新:2024年04月04日 11:54