SCP-699

登録日:2017/10/15 (日) 23:06:24
更新日:2024/02/03 Sat 14:22:40
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私は、我々が作り上げたデータベースをぶち壊してまで「これ」をSCP-17591などと言うつもりは全くありません。
「これ」はSCP-699です。追って通知があるまではね。

SCP-699は、シェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト (SCiP) のひとつである。
項目名は『Mystery Box (ミステリー・ボックス)』、オブジェクトクラスはEuclidである。

概要

SCP-699は、外見的には2.5m×1.5m×1mの大きさを有する直方体の透明な箱である。
SCP-699は、20██年█月█日の午前3時14分、サイト-83に突如出現した事から発見された。
その出現は突然であり、3階の休憩室に出現した直後、次々と床を貫通、地下2階で停止するまで落下した。
幸い人的な損失は無かったものの、█百万ドルの被害と、破壊された部屋に収容されていたSCP-███の収容違反を招いた。
もっとも、SCP-███はその直後、落下してきたSCP-699に潰され破壊された事で、収容違反は終了した。
それが財団にとって良かった事か悪かった事かは、何分伏せられているので不明である。

SCP-699は、2万4000kgと推定される異常な重量を持っており、これがサイト-83の大規模な破壊に繋がった直接の理由である。
あまりにも重すぎて移動にはサイト-83自体の改修が必要な事から、財団は移動をあきらめ、SCP-699の周りに収容室を新たに建設する事にした。
また、SCP-699は一見アクリル樹脂のように見えるが、透明な素材は現代の技術水準をはるかに上回る超高密度ポリマーであり、破壊はおろか、サンプルの採集すら成功していない。出現時の落下と破壊でも全くの無傷であるこの超高密度ポリマーが、SCP-699の異常な重量の理由でもある。

だが、SCP-699で一番驚くべきは、どうやらこれを作ったのは当の財団らしい事である。
側面には財団が使用するシンボルで「Keter」と「SCP-17591」と掘られていた為である。
無論、この世界の財団はSCiPを1万個以上も割り当てていないし、自力でサンプル採集すらできない素材を作れたりはしない。
この事は、未来ないし平行世界の財団がこちらの世界に飛ばしてきたSCiPである事を意味している。
もっとも、いくらSCP-17591と掘られていたとしても、財団は今の命名ルールから外れた名前を入れる事はしないようなので、このSCiPはSCP-17591ではなくSCP-699である。

中身

ところで、SCP-699は、項目名が「ミステリー・ボックス」であるように、箱であると認識されている。
箱ならば中身があるはずだが、SCP-699は透明な素材で出来ているにも関わらず、なぜか中身に関しては見る人によって違う。
複数人が同時にSCP-699を見ても、観察者はそれぞれ各々に違った回答を出す。
SCP-699の中身は、自身の姿についてテレパシックな特性、つまり認識を改変する能力を有しているらしい。
映像や写真については言及されていないが、恐らくは同様の効果があるのだろう。

見た人の90%は、中身について好意的な反応を示す。その中身を聞かれると、貴金属、美術品、優れた技術、宗教的な遺物、あるいは家族やペットという回答になる。
家族やペットが本当に破壊不能な箱の中にあったらそれはそれでホラーなような…。
何にせよ好意的な反応を示した人は、その中身を所有したい、あるいは開放したいと望み、SCP-699を開けようとする願望を持つ。
開封に対する強制力はないものの、その精神感応はそれなりに強い物らしい。

見た人の9%は、中身について否定的な反応を示す。その中身を聞かれると、ヘビ、クモ、人型の悪魔、SCP-███のような他の危険なSCiPという回答になる。
何にせよ、それは恐怖感を抱かせたり、危険な物であると考えさせるものであり、当然ながら開けようとは全く思わなくなる。

これ以外に、SCP-699を見た財団職員の内、たった2人だけは、中身は空であると答えている。
「だってさ、こりゃどう考えてもタチの悪いイタズラだよ」 - ████博士

SCP-17591

とりあえず破壊不能、かつ蓋はおろか継ぎ目すら見当たらないSCP-699を開封する手段は、今のところ財団は持ち合わせていない。
と言っても、開けたいという欲求で収容や研究が妨害されては困るので、SCP-699の特別収容プロトコルにはこのような記載がある。
隔室にはSCP-699に「否定的」で、その内容物に「関心を持っていない」かつ、「開けて確かめようとしない」レベル1職員を2名、常時監視要員として置く。さらに隔室内外に常時監視用カメラを複数台設置し、その映像記録を保存すること。

しかしながら、続く文章はかなり不穏である。
無許可の人員がSCP-699を開封しようとする行為、及びその兆候が認められた場合には、いかなる場合であっても即時解雇を含めた厳しい懲戒が科せられねばならない。また、SCP-699の内容物が外に出ようとする行為、及びその兆候が認められた場合には、いかなる場合であっても独断で対処しようとせず、直ちに専属のレベル4職員に報告され、しかる後に適切な対処が為されねばならない。SCP-699内容物の開封、脱出、監視異常、格納障害、保管障害等は、いかなる場合であっても全力で阻止されねばならない。
当面は開封する事が出来そうに出来ない箱に向かって、ずいぶん物騒な事が羅列されている。
無許可で開けようとする人は、例え兆候であっても厳しい罰が課せられ、中身がもし開こうとする試みをしたなら上級職員に即時伝達、そして実際に開いたと見られた場合には全力で阻止せよとある。

それは、SCP-699、もとい別の世界の財団がSCP-17591と名付けたこのSCiPについて書いたレポートが元になっている。これはSCP-699と同時に発見された。
残念ながらこの文章はこんな箱を作れる割に激しく損傷しており、読める箇所が少ないが、部分的ながらも内容を推察する事は可能となっている。

アイテム: SCP-17591
オブジェクトクラス: Keter
捕獲の日付: 2455年7月6日

のっけからおかしい。このSCiPが見つかったのは、今から400年以上も未来である。
しかも、この時代ともなれば、SCiPは1万番以上が振られる程発見されているらしい。もうやだこの世界。
そしてこのSCiP、箱にも彫られているようにオブジェクトクラスは最も厄介なKeterであるとの事である。

2455年7月6日 SCP-17591は[損傷箇所]と呼ばれる[損傷箇所かつ判読不能]の欲求を手段として[損傷箇所]自身を[損傷箇所]

報告[損傷箇所]では「プロトコルZ」として知られています。それと同様に、明らかに欲求されない被験者には、出来得るように与[損傷箇所]

[損傷箇所]標準的Keterクラス格納容器に収容されました。

断片的過ぎて推定が多くなるが、とりあえずSCP-17591は人に何らかの欲求を与え、自身に関する何かを行わせるように仕向けるらしいSCiPである事が分かる。
これは「プロトコルZ」と呼ばれているようであり、その内容は分からないものの、SCP-699の反応から推定すると、恐らくは対象に対してSCP-17951は何か好意的な反応をするような姿や認識を取らせるのかもしれない。
更にプロトコルZは、欲求を直接与えるだけでなく、例え欲求されていない被験者にも出来るように何かを仕向ける様子である。
「明らかに欲求されない被験者には」と書かれているからには、SCP-17591に直接何らかの欲求が与えられていない事を意味するのだから、恐らくは直接的に仕向けるというより、行動が結果的にSCP-17591に都合がよくなるように現実改変などを行っている可能性がある。
これが何を意味するのかは不明だが、わざわざKeterを指定し、それ専用の格納容器に収納している以上は、何かその影響がとんでもなくやばいという事なのだろう。

[データ削除済]が加えられた[損傷箇所]防止のための収容プロトコルを[損傷箇所]の脱走、および再捕獲後のサイト██に甚大な被害を及ぼしました。[損傷箇所]5[損傷箇所]離れていてもプロトコルZは[損傷箇所]響が可能なため[損傷箇所]が懸念されます。

2455年8月7日 脱走の試みは継続しています。サイト███の破壊は全職員に██████博士と██████研究員へ[損傷箇所]終了を強く要請させました。

このプロトコルZはかなり影響範囲が広いらしく、SCP-17591は捕獲した後に少なくとも1回の収容違反と、再捕獲後に1回サイトに甚大な被害を及ぼしている。
しかもSCP-17591は脱走をあきらめておらず、別のサイトを破壊した時点でSCP-17591の終了が強く要請されたのである。
何が何でも収容を試みる財団が、しかも技術がはるかに進んでいる未来で、僅か捕獲から1ヶ月で終了を検討させるくらいヤバい存在という事である。

2466年2月7日 脱走の危機は切迫しています。実験的収容手段「T」が直ちに実行されました。受信側時間軸の住人には[損傷箇所]が欠けているでしょうが、我々は信じます[損傷箇所]何年もの後に。

その後は何があったのかは不明だが、最初の捕獲から10年と5ヶ月の後、向こうの財団は実験的な収容手段である「T」を実行。
後に続く文章は、SCP-17591を別の時間軸へと転送するのが収容手段Tであるらしい事を示唆している。

つまり、SCP-17591ことSCP-699は、向こうの時間軸の財団があまりに扱いに困って、Keter級SCiPを次元ポータルにポイ捨てした結果こちら側に来てしまったものである。
実験的手段を使うくらい事態が切迫していたのだろうが、1万以上のSCiPを記録している未来の財団が、その超技術をもってしても収容に困ったものを過去に送り込まれても、困るのは受信側時間軸(こちら側)なのだが

しかも、現在SCP-699に対する反応を見ると、中身であるSCP-17591は、今でも欲求を与える力を持っているらしい。
その欲求とは、SCP-17591がこの状態から脱走するために開封を試みさせる事である。
今のところ脱走していないのは、少数ながらもSCP-699に対して否定的な考えを持つ人がいる人、そして開ける手段をこちらの財団が持ち合わせていないからに過ぎない。
それでさえ、絶対的に保証されている事ではない。何しろ中身が分からない以上、どういう手段をもって開封されるかもわからないからである。
信じた結果がこれだよ。


それをすてるなんてとんでもない!

SCiP、特にKeterクラスの物については、財団がポリシーを曲げて破壊や無力化を試みている物も少なくない。
そこでしばしば出されるのが、別の次元や時間軸に通ずる穴に捨ててしまえという考えである。
一見するとそれは良い考えである。しかしながら、実際には問題を別世界に移しているに過ぎない。
財団が収容している状態から野放しになってしまう事は、何が起こるかさっぱりわからないという事である。
全く手出しができない状態にする事が、多大な犠牲を払って収容する事より良いとは限らないし、今回はたまたま、今のところ外側からも内側からも破壊不能な箱に放り込まれているからいい物を、毎回そうであるとは限らないのである。
更に、次元ポータルは性質が良く分かっていないものも多く、時間軸や因果律が繋がっていない保証はないからである。
仮に過去に向かって危険なSCiPを放り込んで、それが大暴れした場合、時間軸が繋がっている未来に放り込んだ本人の世界が無いとは言い切れないのである。
壊しちゃいけない物でも壊す人達の手にかかってしまう恐れもあるし。
……シューターのwiki籠り諸兄ならば生体物理学、遺伝子工学、果ては魔導力学までも応用して合成された、かの生ける悪魔を真っ先に思い出したことだろう。

O5-█からの注: 手に負えない、あるいは、危険なSCP等を手近な次元ポータルなどに投げ込んだりしないでください。それは我々の管理下の多くのアイテムにとって、明らかに安全でありません。これをすべきか否かは、役員を含む熟練職員の間でも長い間なされて来た議論でもあります。


手に負えない、あるいは、危険な追記・編集を身近な次元ポータルなどに投げ込んだりしないでください。


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最終更新:2024年02月03日 14:22