SCP-2658

登録日: 2017/02/22 Wed 00:27:15
更新日:2024/02/19 Mon 17:03:35
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いい考えがある。俺は公立校卒だから経済学をしっかり理解してるわけじゃないけどさ。
もし今今しい(fukken)コレクターや投機家が抱え込んでるのを譲って引退すれば、モノは安くなるだろ?
需要は減るし、供給は増える。ただ奴らにそうさせればいいだけ。だから西海岸を行ったり来たりしながらこいつを取引してるんだ 8D


SCP-2658はシェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクト(SCiP)である。
オブジェクトクラスはSafe。

項目名は『A Convincing Proxy (説得力ある代用品)』。

概要の前に

読者は『トレーディングカードゲーム(TCG)』というものはご存知だろうか。多分多くの人が知っていると思うが、少しだけ解説しよう。

トレーディングカードゲームというのはメーカーが独自にデザインしたカード(紙片)を用いて、
それらを組んだもの(デッキ)を作り、対戦する遊びである。
そして、ここでトランプやUNO、あるいはドミニオンと違う点として、「プレイヤーが各自自分の使う札を用意する」というところが重要である。

当然、強力なカードはそれだけ人気が集まりやすいうえに、そういったカードは大概レアリティが高く設定されていることが多い。
更に廃版になっていればそれだけ価値も上がるため、コレクターも集まり非常に手に入りづらくなる。

これはそんなTCGの元祖であるMagic: The Gathering(以下、MtGと表記)のレアカードの一つ、《Mox Ruby》に関するオブジェクトである。


概要

SCP-2658は、手書きで乱雑に「Mox Ruby 0 Tap: Red」と書いてある、
約2.5×3.5インチ(63×88mm)に切り取られた罫線索引カードである。MtGの一般的なカードとちゃんと同じ大きさ。

…うん、画像が元ページにあるんだけどマジで雑。
この項目に貼る必要も薄いので気になる人は元ページに行ってみよう。

まあ所謂プロキシ*1ってやつなのだが、SCPなのでただのプロキシでは当然無く、
自分は『MtGのコレクター・投資家である』という自負のある人に向けて異常性が発生する。
コレクター・投資家である自覚のある人がこれを見ると、本物の《Mox Ruby》であると誤認する。
認識災害系オブジェクトなのである。

それも、『リミテッドエディション・アルファ版の《Mox Ruby》』である。*2
ベータ版や「アン」リミテッドエディションの《Mox Ruby》ではなく、よりにもよってTCGで史上はじめて印刷されたカードパックの《Mox Ruby》。
美品なら40万円近く、傷有りでも20万円近くという超高額カードである。

ただの紙切れを超レアカードだと思い込ませるという異常性だが、これだけでは収まらない。
コレクターは、0.25米ドル以下の価格で扱われるカードを高価だと判断するようになり、5米ドル以上は逆に価値がないとみなして他者に譲渡するようになる。
つまり、やっすいカードがレアで、逆にレアなカードを雑魚カードだと切り捨てるようになる。

周りから「おいこんなの貰っていいの!?」と言われても揶揄だと思うようになり、
更に蒐集をやめるようになる。「もうイカしたカードは持っている」と主張して。

え、MtGがわからんって?
じゃあ他TCGでわかりやすく言うと、《D2G ゴッドファーザー》には価値があると思い、
逆に《リーリエ》は他人に譲るようになっちゃうってことだ。
あるいは遊戯王で言うとゴキボール感覚でレアカードくれるようになるのだ。


ここで重要なのが、あくまで「コレクター」にしか効き目がないことである。
仮に「プレイヤー」がこれを見てもただのプロキシとしか見なさないし、価値判断にも影響を及ぼさないってことである。
コレクターとプレイヤーの判断基準は本人の自覚に依存し、
プレイヤーである人はたとえどれだけカード資産を持ってようが影響外である。

さて、あくまでMtGのコレクターにしか影響しないのは影響しないのだが、影響した場合は更に厄介なことに、
いくらかの割合で「自分のコレクションの高価なもの」を譲渡するようになる。

仮にそれがリーリエだろうがモルネクだろうがホルアクティだろうが、
それこそカードに限らずヴィンテージワインとか日本刀とか高級車とか。
そしてやはり理由を聞かれると、「もうイカしたカードは持っている」と主張する。
もっと言えばワインだろうが日本刀だろうが高級車だろうが、譲渡する場所は決まってゲームショップである。
カード屋に行っていきなり酒や刀やポルシェのキーを渡されたプレイヤーたちの心境や如何に。


作成者はコレクター嫌い?

さて、ある日のこと。

財団の自動セキュリティは素晴らしいものであるようで、『MtGのコスト問題をどうするの?』という雑談スレッドの中から
自動で怪しげな書き込みを見つけたようで、エージェントがそれを確認した。

いい考えがある。俺は公立校卒だから経済学をしっかり理解してるわけじゃないけどさ。もし今今しい(fukken)コレクターや投機家が抱え込んでるのを譲って引退すれば、モノは安くなるだろ? 需要は減るし、供給は増える。ただ奴らにそうさせればいいだけ。だから西海岸を行ったり来たりしながらこいつを取引してるんだ 8D

(誤字のfukkenは元ページ曰く『原文ママ』とのこと)

そこに一緒に添付されていたのは、「Mox Sapphire 0 Tap: Blue」と乱雑に書かれた紙片だった。

そのユーザーのアイコンは『SCP-248 - 110%』の実例の画像*3で、名前はWondertainmentDDS、
そして署名はゲーマーズ・アゲインスト・ウィードに当該ユーザーが忠誠を誓うことを示すものだった。

この財団とワンタメをおちょくったようなユーザーのアカウントを
財団は消去し、スレッドに書き込んだ人全員に記憶処理したあと、当該ユーザーのIPを逆探知してそこを訪れた。
…が、そこにいたのはそのスレッドどころかMtGすら知らない他人。どうやら別のユーザーのPCを踏み台にしていたようだ。
まあ財団を認知してるっぽいしそれくらいするか。踏み台にされた人は別に異常な物品を作る能力はないとのこと。

TCGをプレイしない読者向けに説明するなら、コレクターという人種は、しばしば価値ある物品を死蔵する……つまり、溜め込むだけ溜め込んで使おうとしないため、プレイヤーに嫌われることがある。
多くを死蔵されてしまえば、本当に必要なプレイヤーの手に届きづらくなるし、色とりどりのカードが大衆の目を楽しませることもなくなる。
そんな経緯から、このオブジェクトは創造されたのだろう。


なお、現状「見なきゃ影響ないし」でsafe扱いの本オブジェクトだが、いくつかの条件が重なった場合、 keter級の大災害 を巻き起こす可能性を秘めている。
このオブジェクトの効果をざっくりと解説すると、「MTGのコレクターが見ると自分のコレクション(カードに限らず)を他者(カードショップ)に譲渡させる」ものである。
そして、財団という組織はこれもざっくり解説すると「ヤバイ存在をコレクションする組織」である。
……そう、 財団所属のオブジェクトの管理権限を持つMTGコレクターがこれの影響を受けると、オブジェクトをカードショップに譲渡してしまう 現象が起こりうるのだ。大規模収容違反、K-クラスシナリオ待ったなしである。


追記・修正はカードコレクターの方にお願いします。

CC BY-SA 3.0に基づく表示


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最終更新:2024年02月19日 17:03

*1 何らかの理由で実物を使用できない場合の、代用となるカード。ただの紙切れを雑魚カードに貼り付けたりして用意する。

*2 世界初のTCGであるMtGの一番最初に発売したパックが「リミテッドエディション」。最初に刷られたカードが『アルファ版』で、後から追加生産されたのが『ベータ版』。

*3 貼ると性質が110%になるシール