SCP-2557

登録日:2017/01/07 Sat 15:45:56
更新日:2024/01/24 Wed 16:07:11
所要時間:約 12 分で読めます





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SCP-2557とは、登録商標Envelope Logisticsの私有概念である。


何を言っているかわからないだろうが事実である。シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト(SCiP)のひとつではない。
項目名からして「SCP-2557はEnvelope Logistics®の私有概念です」である。

ただし最初からではなく、元々は財団の収容するオブジェクト……というよりナンバーだった。
オブジェクトクラスはKeter。

このオブジェクト、というかナンバーについては非常にややっこしいため、メタ的な視点も含めて解説することにする。


概要

そもそもSCPのアイテムナンバーとはオブジェクトそのものの名称ではなく、便宜的に割り振られた収容手順の呼称である。「特別収容プロトコル」の頭文字をとった略称である。

もちろんSCP-2557もそうであった。特別収容手順2557番。収容されたオブジェクトの取り扱い方であった。
ところが、現在このナンバーはどういうわけか「Envelope Logistics」なる会社の私有概念になってしまっている。財団には今、「特別収容手順2557番」が存在しないのである。
なぜこんなことになったのかというと、概要の部分には、

Envelope Logistics®が財団職員の方からSCP-2557を購入させていただいたのは、2011年第四四半期のことです。

とある。
が、財団職員はたまにバカもいるとは言え、基本的にはこの手の物事に対するプロの集団である。Dクラスの中にも際立って優秀な連中は時々いるほどだ。
財団がこんなよくわからない企業に、しかもよりによって収容手順ナンバーを売却するなど考えられない。
つまり、このEnvelope Logisticsが「SCP-2557」という概念を、気づかないうちに買収してしまったのである。しかも恐らくは一方的に。
そしてページ内容も企業の宣伝広告のように改変させられてしまっている。

では、この事態を引き起こし、SCP-2557の概念を私有するEnvelope Logisticsとはいかなる会社なのか?
端的に言うと、コイツら(恐らく)は投資信託を請け負う会社である。
ただし、SCP-2557の概念を買い取ったことと、その後に続く説明から、この会社は概念の売買を取り扱う、恐らく物理世界には存在しない企業であることが読み取れる。
何しろ、

Envelope Logistics®は概念の売買および保有を事業とする企業であり、トライユニバース・リージョンにおいては業界のリーディングカンパニーとしての地位を確立しています。

と堂々と記載されているほどである。
トライユニバース・リージョンは直訳すれば「三つの世界による国際社会」となる。おそらくはこの会社、異次元の企業であろう。
ただこの会社も、企業である以上彼らの社会における一定のルールに従って運営されているらしく、

概念運用の民営化と規制緩和がディヴァイネティック・アルシングで可決された1997年以来、Envelope Logistics®は新時代の革新的投資ビジネスを牽引し、お客様からの多大なご支持を受け続けています。

こんな記述がある。
1996年以前は概念運用は政府が行っており、97年に民営化したらしい。つまりこいつらは民間企業のようだ。
それが何でSCP-2557を買い取ったのかという点は不明だが、財団のシステムと理念からしてこんな推察が立てられる。

おそらく、元々このナンバーの手順が割り振られていたSCPオブジェクトは、Envelope Logisticsという企業そのものであった。
概念の売買を請け負うということは、財団からすれば明らかに異常な行動であり、さらに場合によってはKクラスシナリオにも繋がりかねない。
そういうわけで、収容手順を模索しつつ当座の対処を行い、この番号にこのオブジェクトを割り振ったのだ。

ところが、Envelope Logisticsは何をどうやったのか、自分たちに関する財団の接し方というべき「SCP-2557の概念」を買い取り、財団への窓口に変えてしまったのである。
この時点で財団はSCP-2557を復旧する手段を失い、収容不可能となった。

誰にとっての幸か不幸か、彼らはやってることは色々ブッ飛んでいるがそれでもプロフェッショナルの集団らしく、手腕と実績はある模様。
概念売買や投資を行ったお客様の声はというと、

私がトニー・ブレアの政治家としてのキャリアという概念に投資をしたのは、ブレアがセッジフィールド選出の下院議員だった1984年のことです。Envelope Logistics®から的確なアドバイスをもらえたおかげで、投資計画は見事に成功しました。ブレアが首相になってからは、ずっと配当金を受け取り続けています。-ダナ・G

私はEnvelope Logistics®のアドバイザーにお願いして、マニトバ州セルカークの癌の発生率という概念に投資しました。思っていたよりずっと安く済みましたよ。この投資で世界のヘルスポートフォリオに貢献したおかげで、私は仕事を引退して毎日趣味に打ち込めるようになりました。-カズノフ・Y

遠視サイズ黄色腫にインテンドしたダイヤの5のアーチバックが、バイコステイトなEnvelope Logistics®にウォータリングです。委託的鯨飲スピーチのノントロナイトが、ヴァーバースパーモフィータのビジョンをナビゲートしてくれます。ダイエッティンのオーバールッカーがセイニングして、ワディウッドがブリーズです。フルブレスです。甲殻類学エヴィデントなんですよ。トリップハンマー、トリップハンマー、トリップハンマー、トリップハンマー。-V❊H❊Q❊H

最後なんかおかしいぞオイ。
恐らくは異次元における意識高い系の誰かさんだろうが、名前が不穏。というかこの人(?)の肩書きが「アクセッション番号d316」になっているし。つーかトリップハンマーって何だ。恐らくこの人が投資した概念だろうがまるで意味が分からんぞ!*1

ともあれ、これでEnvelope Logisticsがどのような活動を行い、その結果どうなっているのかはだいたいわかるだろう。


で、案内の最後はアカウント作成になっている。
入力するのは以下。

  • 名前(ユニバーサルオールノマー、アンチノマー、ヴィスパッチが使用可能)
  • 企業・組織・団体(該当しなければ空欄)
  • 住所
  • ユニバーサルインデックス(アビマニュ、ラダマントゥス、セレーネとエンディミオンの50人の娘たち、真なる万象の永久なる居留者、エクストラユニバーサル/オーニバーサルのいずれかから選択)
  • 電話番号
  • メールアドレス
  • Targeted Portfolioを利用するかどうか
  • 投資の方法(現金、クレジットカード、銀行振り込み、血の儀式、寿命分割、ギフトカードのいずれかから選択)
  • コメント(情報災害防止のためスクリーニング)

……まあ、多次元で活動しつつ概念を取り扱う企業だからこれくらいあってたまるか!!


ちなみに本家の元記事では実際に送信できるようになっており、筆者あてのメールとして送られる。



そして、なぜこれがKeterなのか?
収容プロトコル自体も取引の対象にしてしまう会社となれば、財団そのものが株式的な側面から攻撃を受けても不思議ではないからだ。何より異次元の、しかも企業体という巨大な存在を財団は収容できない。

さらにはその危険性。
財団の所有する収容プロトコルと、そのナンバーが示すオブジェクトは数多く存在する。

もしもそれが、彼らによって取引されてしまったらどうなるのか?

ないとは言い切れない。彼らは現に、自らを示すSCP-2557という概念を取引してしまったのだから。
取引であり買い取ったという以上、財団は代価として何かを受け取ったはずだが、何を受け取ったのだろうか?
少なくとも、SCP-2557に見合うものとは言い切れまい。財団にとってもっとも価値のあるものといえば諸説あるだろうが、少なくとも手放してはならない概念がある。

今はSCP-2557一つで済んでいる。
しかし、もし仮に、彼らの取引によって収容プロトコルという概念そのものを失った時、財団には果たしてオブジェクトに対して打つ手があるのだろうか?



関連するオブジェクト

Envelope Logistics社に直接関わる記事は長らくこの1件だけだったが、3年ほど経ってから同じ著者による新作が発表された。

  • SCP-3072 - They're Trading Away Our Lives Out There (奴らは我々の命を売り飛ばしている)
骨董品のティッカーテープマシン(株価受信用の電信機)。平日の営業時間内に電源を入れておくと、「もっと人件費を抑えろ」「省エネしろ」といった株主からの要請めいたメッセージをランダムにテープにプリントする。

…というのは下級職員向けの簡易説明である。実は送り主は明らかに財団のことを詳しく把握しており、ちょくちょく「今すぐSCP-××に対処しないと世界市場がヤバイ」といったモロな言及を交えてくるのだ。ご想像の通り、この株主(もしくはその代理人)こそEnvelope Logisticsである。
実際に彼らの提案を検討してみたところこれが大正解で、財団は少なくとも1291件の潜在的K-クラスシナリオを未然に防ぐことに成功している。使用頻度高いな!?

これほど実用性が証明されているならThaumiel指定でもよさそうなものだが、オブジェクトクラスは現在Safe、つまり収容対象。そして、特定の内容のアドバイスが来たならKeterに切り替えられる。いかに役に立つアドバイスをくれるといっても、彼らがコントロール不能な外部存在であることに変わりはないのだ。

考えてもみて欲しい。たまたま今の財団世界は彼らの長期ポートフォリオに組み込まれているようで利害が一致しているが、所詮彼らは商売人である。「この市場にはもう伸びしろがないな」と判断したら、たちまち手のひらを返してショート(売り)に回るであろうことは想像に難くない。
この世界が売られてしまったら一体どうなるのだろうか?敵対的M&Aの餌食となり、人類はリストラされてしまうのだろうか?
そもそも今のメッセージだっていつまで信用できるかわからない。もし連中がインサイダー取引も躊躇しないような奴らだったら?わざと偽情報を流して暴落タイミングを操作し、その隙に空売りで一儲けするくらいのことはやってのけるだろう。

そんなわけでこいつらのメッセージを過信することは危険視されており、担当者レベルですぐ対応できそうな提案であっても必ず上層部の指示を仰ぐよう通達されている。



追記・修正は概念に投資してからお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-2557,A Holding of Envelope Logistics®
by Kate McTiriss
http://www.scp-wiki.net/scp-2557
http://ja.scp-wiki.net/scp-2557

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最終更新:2024年01月24日 16:07

*1 ちなみにトリップハンマーは実在の単語だが、意味は大ざっぱに言うと「動力で動く杵」である。