SCP-2932

登録日: 2017/03/15 Wed 22:31:59
更新日:2023/05/31 Wed 12:57:03
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ああ。お主のような太陽の子らは強い。しかし、夜闇の子らではないのじゃ。奴らを前にしたお主らは、波に攫われる砂粒のようなものじゃろう。


SCP-2932はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト(SCiP)の一つである。
オブジェクトクラスはThaumiel。
(ただし一時期本家wikiの論議でKeterになったことがある。)

オブジェクト名は『Titania's Prison (ティターニアの檻)』。


注意:先にSCP-1000を読んでいることをおすすめします(SCP-1000のネタバレ要素が多分に含まれます)



概要

SCP-2932はペルーの中東部のとある自然保護区に存在している、木や蔦などの様々な植物を使って作られたドームのようなものである。
周囲は発光する植物で照らされており(ヒカリゴケみたいなやつ)これらの植物は、既知のものではなく、SCP-2932の発見とともに見つかったものである。

ドーム自体が動かせるようなものではなく、また「動かそうとするべきではない」(後述)ため、このオブジェクトは収容地点でそのまま保護されている。
もともと自然保護区にあるため、立ち入り禁止区域にすることで一般の人々から遠ざけているという状況である。
これらのドームは警備している生物がおり、ドームを傷つける輩には容赦しない。

このドーム内部は、地上階は外とほぼ変わらないのだが、地下階は無数の通路が足場同士をつなぐような形になっており、
壁には無数の莢(さや、つまり豆の莢ってこと)がびっしりと敷き詰められている。この中にはいろんな実体が「収容されている」らしく、
基本的に開くことはできない(が、いくつかはどういうわけか引き裂かれている)。
物理的にも固いので遺伝子称号生物を用いて解除するらしいのだが、それを無闇にしようとするとさっきの警備生物が襲いかかる。

牢屋と牢番

ドーム内部には牢番となる実体SCP-2932-Aがおり、彼が莢をかつてとある生物種に「牢屋」あるいは「収容施設」として提供していたようだ。
そう、このよくわからない植物製のドームはSCP-2932-Aの作った牢屋だったというわけである。まあ檻って名前の時点でわかったと思うけど。
この牢番は年老いた人型実体であるが、人間ではなく、また提供していた生物種とも異なるようだ。
自身の母語の他にケチュア語が会話できるため、財団はケチュア語の通訳を連れて訪れている。

牢番は語る。

もともとこの施設は、輝かしきティターニアと呼ばれる神格実体の心臓をコアとして存続する施設であり、
牢番Caspanはそれを『夜闇の子』に作って提供したのだという。
夜闇の子はティターニアを崇拝しており、度々彼らにとっての敵をこの牢屋に持ち込んで閉じ込めたのだという。

だがなぜ莢が破られたのかというと、ティターニアは時々弱ってしまう時期があり、その時外に出て行ってしまうのだという。
悠久の時を閉じ込められたまま生きるような実体群なのでまず確実に危険でしかないのだが…。
このため財団が現在はこのおじいさんの協力を取り付けてこの牢屋を維持するために尽力している。
そうこうしているうちに夜闇の子は太陽の子に滅ぼされてしまったが。

ちなみに「なんでこの施設荒廃してんの?」と財団職員が聞くと若干キレ気味に「太陽の子のしわざだ、忘れたのか?」と遠巻きに返答している。

SCP-1000と人間の話

まあ夜闇の子と太陽の子という話でなんとなくわかると思うが、要はCaspanに牢屋を作らせたのは
かのビッグフットたちであるというわけである。
つまり牢屋を荒廃させたのは人間。太陽の子が忘れもしないようなイベント、とおじいさんが言及するからには、おそらくは「花の日」を意味しているのだろう。
(まあ実際には人間たちは「忘れてしまった」のだが。)

この太陽の子と夜闇の子という語はSCP-2511でも出てきたが、こっちはより踏み込んだ話になっている。

なんでこれがThaumielなの?

一時期サイトメンバーによってこれは「Keter」ではないかという話が出ている。

「Thaumielって要は財団の最終兵器じゃない。でもこれ人間には使えないよね?むしろ『収容違反』の時限爆弾状態だよねこれ?」

このため一度はKeterにオブジェクトクラスが変更されていたのである。
最終的には、「これをしっかり閉じ込めておけるならば地球を救える」みたいなノリでThaumielに戻っているが。



収容されている実体の謎


さて、このオブジェクトはさっきも言ったがSCP-1000が使っていた牢屋である。
SCP-1000にとっての敵が収容されているわけである。

逆に言えば、彼らにとっての破壊不能な敵であればなんだってぶち込んでいるので、
別に種族も一定しない。それらが無数に閉じ込められているということは、仮に『収容違反』した場合、
ある実体に効いた手法が別の実体には効かない、なんてこともあるかもしれない。
これもまさしく面倒な性質である。

そしてその実体はどいつもこいつもなんか厄介そうだな、って思われるものばかりなのだ。

囚人名: Ephelia
拘禁設備: 活動中
投獄日: 4533廻9月17夜
刑期: 無限廻

SCP-2932-Aの注記: ああ。Epheliaは危険な奴じゃった。彼女はこの森に潜み、夜が来る度に子らを狩っておった。彼女は……お主らにも、子らにも似とらんかった。儂は彼女が何処から来たかは知らんが、そこは心地よいものが嫌われる場所じゃ。彼女は吐き気がするような存在で、美しかった。彼女は夜闇の王の末子を殺し、王妃を誘い出すためにその体を操り人形に変えたのじゃ。彼女は輝かしきティターニアの独房に囚われ、星の光すら逝く時まで腐り果て続けるじゃろう。

どういう実体かは不明だが、凄く腐敗するような生物であったということなんだろうか。

囚人名: Yon-Kamur
拘禁設備: 活動中
投獄日: 4620廻1月20夜
刑期: 無限廻

SCP-2932-Aの注記: Kamurは空より堕ちた天の生き物じゃ。子らは彼を己が信ずる闇の神の一柱と信じとったが、すぐにあ奴はただの獣、それも飢えた獣に過ぎぬことが分かった。数千人が喰われた末に、子らは彼を打ち倒し、ここに持ち込んでの。ああ、我らも喰われる所じゃったよ。子らはYon-Kamurを「貪欲なる者」と呼んでおった。儂は、彼が如何にしてあそこまで飢えたのか時折疑問に思うよ。

所謂神格存在なのか、世界を喰い荒らそうとした実体のようだ。
ちなみにビッグフットは夜行性の種族なので闇の神様は別に信奉する対象として間違っていないと思う。
(日付も「○月×日」ではなく「○月×夜」であるように)

囚人名: Mal-Va-Gar-Ta-Mor
拘禁設備: 停止
投獄日: 2711廻2月19夜
刑期: 無限廻

SCP-2932-Aの注記: ティターニアの腕の中に持ち込まれる生き物には、彼女やその捕縛者を賞賛するような者もおった。じゃが、Mal-Va-Gar-Ta-Morは秘密裏にここに持ち込まれたんじゃ。儂は投獄が済むまであれについて知らぬままだったが、子らは儂にその方が良いと請け合った。Mal-Va-Gar-Ta-Morが逃げた時のことは覚えておる。子らは嘘は吐いとらんかった。時には知らぬほうが良いこともあるんじゃな。

本家wikiディスカッションにおいて、「知らないほうがいい実体である」点から、SCP-055との関連を見出そうとする人もいる。
SCP-579という線もありそうだが。

囚人名: Adam El Asem
拘禁設備: 停止
投獄日: 4301廻7月3夜
刑期: 無限廻

SCP-2932-Aの注記: こ奴は太陽の子じゃが、太陽の子らは彼を夜闇の子らと同じほどに忌み嫌っておった。Adam El Asemは一目見るだけで物を創り出し、彼が触れれば山は動き、川は枯れ果てた。彼の心には偉大で恐るべき何かが棲んどった。子らは時をおかずに彼を石に縛り付け、ティターニアに与えたのじゃ。彼のように東より来る危険な太陽の子は他にもおったが、そ奴らはここにはおらん。ここには、その歩みが荒廃を齎す者のために1つ、別の者のためにもう1つの予備の独房が準備されとる。儂はこれらが埋まるとは思っとらぬよ。

現実改変者もびっくりな存在だが、それより重要なのは後半である。
「歩みが荒廃を齎す者」というのはSCPを読み慣れた人にはピンとくるものがあるのではないだろうか。

そう、カインさんである。多分この報告書も読んでらっしゃるのだろう。
仮にこれがカインさんならば、もうひとつの実体は当然かのアベルであることは間違いないだろう。
ということは?つまりAdamとは最初の人類であるアダムではないだろうか。また「エル・アセム」という言葉もエロイムエッサイムに似ていると言える。
エデンの東に追放されたアダムがその後西に戻ってこようとしたということなのだろうか。
もしそうだとするなら「エデン」とはどのようなものだったのか、なぜアダムは追放されたのか、共に追放されたイブに相当する存在はどうなったのか、人祖であるはずのアダムを追放したのは何者なのかなどの疑問も出てくるのだが…

なおここだけ追記がされており、2015年にこの独房は突如破られ、
中にいた実体は逃げてしまったことが判明している。
しかも牢番は破られたこの収容房に近づくことを拒否している。

囚人名: Fae
拘禁設備: 活動中
投獄日: 10廻1月1夜
刑期: 無限廻

SCP-2932-Aの注記: お主らは、己が以前より暮らしとった者共を滅ぼしたのは、太陽の子らが初めてだと考えとるかの?

ここに来ていきなり投獄日が大昔になっている。
そして不穏なおじいさんの言葉。

この記述はSCP-435 - “He-Who-Made-Dark”(『かの闇を作りし者』)について言及していると見られている。

詳細は長くなりすぎるため省くが、SCP-435は照らされていないと活性化して爆発する鉄と不明な成分の塊。
中には不思議な形の放射性物質が含まれているため爆発するとエライコッチャになる。
これを防ぐために、夜行性の民族が作られたという神話がこの岩には残っており、そのうえで今の民族は第三の人々と呼ばれ、
夜行性の種族は第二の人々であったとされる。
ちなみに元記事では「Fae」の部分が妖精たちの棲むあの森林の記事にリンクしている。

…つまり、第一の人々(というか妖精)がいたのだということがわかる。それで、ビッグフットたちは妖精たちを滅ぼして、
そしてビッグフットたちは人類に滅ぼされてしまったというわけである。

この妖精とビッグフットの話は後にSCP-6666で明かされることとなる。


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最終更新:2023年05月31日 12:57