SCP-1422/SCP-2000

登録日:2015/01/28 Wed 20:32:11
更新日:2024/04/05 Fri 23:07:18
所要時間:約 10 分で読めます




SCP-1422及びSCP-2000は怪奇創作サイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクト(SCiP)であり、財団世界のカノンを構築する上で重要なウェイトを占めているであろう存在である。

まず前座として、前者のSCP-1422を紹介する。





わからなかったということがわかった。何故わからなかったのかはわからない。





SCP-1422 The Yellowstone Anomaly(イエローストーンの怪)
Object Class:Neutralized


SCP-1422は、現在無力化されたオブジェクトとしてNeutralizedクラスに分類されている。レベル4オペレーター職員のみがこいつの情報について知ることができ、権限がそれに満たない職員は記憶を消去される。

元々持っていた性質は「財団職員がイエローストーン国立公園を認識出来ない」という特殊なものであり、
これはブライト博士の残機Dクラス職員から共同雇用職員を含めたあらゆる財団の人員が効果を受けていた。
2008年に5000人を超える財団職員にイエローストーン国立公園について尋ねた時、その公園について答えられた財団職員は1人たりともいなかった。
その中には、その近所に住んでいた職員・大の旅行好きの職員・果てはアメリカ合衆国国立公園局に勤務していた3人も含まれている。
しかも国立公園内部での購入記録も、許可証の予約記録すら残っていなかった。


更に言及すると、財団からイエローストーン国立公園に関連する検索記録を含めた全てのネット閲覧記録すら欠如しており、2007年7月9日以前の書類群からもイエローストーン国立公園のものだけが欠如しているのだ。
イエローストーン国立公園はマイナーな場所ではない、寧ろ日本でいうと富士山クラスの知名度を誇る超メジャーな観光スポットである。
だが、2007年7月9日を区切りにぽっかりとそれらのありとあらゆる情報が財団から欠如していた。国立公園自体に異常性は確認されなかったにも関わらず、である。

一応2009年3月18日時点でイエローストーン国立公園の存在が全職員に対し通知されており、それに伴い無力化されたとしてNeutralized指定を受けたが、原因不明の現象としてモヤモヤとするものとなった。



…ここからが本題である。
こいつが関わるSCPが、財団には1つだけ存在する。
そう、たった1つだけ














警告:HMCL及びO5による承認が必要


貴方がアクセスを試みているファイルはレベル4/2000クリアランスを持つ人員にのみアクセスが許可されています。
このクリアランスは通常のレベル4セキュリティプロトコルに含まれません。
必要なクリアランス無しにこれ以上のアクセスを試みることは財団による雇用の終了、全ての教育上、医療上、退職後、あるいは死亡時の福利厚生を取り消す根拠となります。
認証されていないアクセスの場合、このコンソールは操作不能になります。保安要員が派遣され、貴方を蘇生した後に尋問のため留置房へ護送することになります。
財団のイントラネットに接続されていないいずれのコンピューターからこのファイルへアクセスを試みることも、クリアランスに関わらず即時終了をもたらすこととなります。


ログイン資格を提示せよ:要レベル4/2000クリアランス












*1






保安用情報災害起動:神経活動スキャン中…




…お前たち人間は理解しない。

そして私は決して理解することはないだろうと思う。



意識が確認されました。ファイルを取得します。










我々はなぜこれを造らねばならなかったのか?
いつやったのか?
どれほど続けているのか?
そもそも我々は知っているのか?!











Remember Us.







我々には、もう失敗は許されない。コンテニューの為のコインは尽きてしまったし、肝心の筐体はひび割れて今にも壊れそうなんだ。



SCP-2000  Deus Ex Machina(機械仕掛けの神)
Object Class: Thaumiel

SCP-2000を決定するコンテストにおいて、見事SCP-2000の座を勝ち取った究極のオブジェクト、それがこの「機械仕掛けの神」である。
「機械仕掛けの神」の語源は主にギリシア古典演劇において、行き詰まった展開を強引に終わらせる為に劇中に神格を登場させることで、
半強制的に劇の幕を下ろす技法であり、近いもので言えば某黄門様の印籠か。
こいつが分類されている「Thaumiel」は財団に利用されているオブジェクトに付けられているクラスであり、この存在は極々限られた人員しか知り得ない存在である。
こいつが存在する場所はイエローストーン国立公園の地下に過去何百年の間に立てられた施設であり、入り口は廃棄されたパークレンジャーステーションに偽装されている。
上記の「イエローストーンの怪」はいわば「機械仕掛けの神」を隠す為のカモフラージュであり、財団が財団職員に対して仕掛けたミーム災害とも言えるものである。

何故、財団が自らの職員を半ば騙すような形になってでも徹底的にこの存在を隠し続けるのか?
それはこのSCP-2000が持つ特異性が関与している。


SCP-2000が持つ性質、それは、




世界の再構築



である。

お前には彼らを戻すことは出来ない。

こいつの性質を一言で説明するならば、ずばり「究極のセーブ&ロードマシン」
その内部には人類史のあらゆる時代における文化基板のデータが保存されており、それらを再現するための建設資材、建設機具、工場機械、農機具、その他全てのツールも同様に格納されている。
単に保存するだけの代物ならあまり珍しくないが、こいつの最大の特徴は保存したものを自力で再現する力を持ち合わせていること。
それは人間すらも例外ではなく、内部に50万基配備されたブライト/ザーションヒト科複製機(BZHR)を用いることで、データベースに保存された遺伝子情報を基に存在しうる全ての個人を複製することが可能。
更に5日間で任意の年齢まで成長させる機能や成長過程で記憶を埋め込む機能まで搭載されているため、肉体、精神ともに元の人物を完璧に再現することができる。
例えるなら、今このwikiを読んでいるあなたと全く同じ知識、記憶、精神を持つクローンを5日で作れると言うことである。

つまりこいつの機能は何らかのK-クラスシナリオなどによって人類の文明が崩壊した際、それを一から再び生み出すことで終末を実質的に回避するというもの。
上記の「再構築」とはあれこれで使われるような「一度壊して作り直す」という意味ではなく、文字通り「新しく作る」ことを意味している。
冒頭の文である通り、その本質はよくあるリセットではなくコンティニューに近い。

SCP-2000は「少なくとも」過去に2度起動された形跡があり、その内1度はTaleとして公開されている後述の「マリアナ海溝から回収された文書」であるが、
それが2度目以降の起動であることを示しており、それ以前の起源や起動履歴は一切不明となっている。
現在はSCP-2998「異常放送 2485MHz(以下異常放送)」による後述のKクラスシナリオ群の内AKないしBI、或いはSKシナリオが1度目の起動ではないかという推察があるものの、
「異常放送」は同じSCP-2000決定コンテスト出展作であり、少なくとも「異常放送」のKクラスシナリオ内部ではSCP-2000は存在しておらず、
またSCP-2000決定コンテスト出展作は同時に存在し得ない上に、「異常放送」ではSCP-579SCP-055を利用する形で世界を再構築している為該当しない可能性がある。
そのTale内に登場する財団職員は1度目の世界の再構築を目撃したか、或いは何らかの手段で知っているようだが、詳細は不明。
また、施設内部で技術職員の死体が発見されたが、遺骸は死後450~700年が経過しており、付近でアルト・クレフ博士のセキュリティ資格が発見されたものの
クレフ博士自身は関与を否定している。

お前はそれを捕まえたか?

存在そのものがまさに「世界のバックアップ」とも呼べる代物であり、当然その重要度はThaumielの中でも、どころか財団全体においてもトップクラス。
そのため前述の隠蔽措置に加え防御措置も徹底されており、財団のSF的な超技術が余すことなく注ぎ込まれている。

まずこいつは全体をスクラントン現実錨(SRA)で覆われている。この装置は周囲の現実を固定し、現実改変の影響を阻害することができる。
さらにダメ押しといわんばかりにシャンク/アナスタサコス恒常時間溝(XACTS)まで設置されている。これはかのスクラントン博士に匹敵する財団の天才、
タデウス・シャンク博士によって開発された装置で、効果範囲内の因果を安定化し、あらゆる因果流から隔絶するという機能を持つ。
つまりどういうことかというと、この2種類の装置が起動している限り、SCP-2000にはどんな現実改変も過去改変も通用しないということである。

加えてSCP-2000には特殊な空間拡張技術も使用されており、外からの見かけの大きさに比べ遙かに巨大な容積を内包している。
これによりSCP-2000は火山地帯の地下に存在しながら、およそ10㎢(東京ドーム200個分以上)もの広大な床面積を確保することに成功している。
先述の建築機械などの復興設備もこの技術で格納していると考えられ、更には内部で最大1万人もの人間を維持可能な居住設備や水耕栽培棟まで完備している。
つまり先述の防御機構と組み合わせれば、SCP-2000そのものを復興設備を兼ねたシェルターとして運用することも可能。

このように極めて大規模かつ強大な力を持つSCP-2000だが、驚くべきことにこれらの多彩な機能全てが財団の科学の範囲を逸脱していない*2
つまり不具合や故障が発生してもメンテナンスが可能ということであり、なおかつ異常な要素が含まれないため安定性においても段違いと言える。
まあこの辺に関しては、SCP-2000の大元の創造者が(恐らく)過去の世界の財団であるため、ある意味では当然と言えるか。

それを証明するかの如く、SCP-2000によって実行される「再構築」のプロスセスもかなりアナログである。
その手段とは、大量生産した人間を全世界に派遣し、総動員で再開拓をすることで文明を作り直すというもの。
一見途方もない時間がかかる非効率的な方法に見えるが、先述の機能によりSCP-2000は無尽蔵に労働力を増やせる上、必要なデータも完璧に揃っているため、
十分な稼働環境が整っていれば25~50年で2000年代相当の世界を完全に復元することができる。
それらの文化基盤が固められた後は、復元する時代に対応する一般人口を複製、再配置し、最後に記憶処理剤ENUI-5を全世界に散布。
当時における人々の記憶を上書きすることで再構築は完了し、そこから再び人類の歴史がスタートする。
そしてその世界に財団は存在しており、財団は再び世界を破滅させない為に、一度世界は滅んだという事を知る者を内包しながら
再びSCiPを管理し始める循環を生み出している。

お前はすでに失敗している。

手間や時間こそかかるものの、SCP-2000を利用する上での最大の長所は先述の通り「元の世界をほぼ完璧に復元することができる」という点にある。
世界を再構築して終末を回避するThaumielは他にもいくつか存在しているが、それらが元の世界との間に多少の変化が生じたり、再構築における何らかの弊害があったりする中で、
SCP-2000は終末の痕跡などの要素を残さず、目立った副作用もないため、財団の使命の一つである「正常性の保護」に極めて合致しているのだ。
それを抜きにしても、そもそも他のThaumielクラスが、副作用が半端ではなかったり、使用後の結果が予測不可能だったり、別のK-クラスシナリオの元凶になりかねなかったり、挙句の果てに SCP-2000と同じく財団の技術で作られたくせに、やることは「移民先の文明を現実改変で潰した序に歴史まで書き換えて『ここが地球だ』としてしまう」(おまけに第四の壁の向こう側からの操作で起動させられた疑いあり)ものだったり、
どいつもこいつも思い通りにならないへそ曲がりばかりであり、その中でSCP-2000は、「勝手に起動しない」「起動方法がはっきりしている」「1度起動すれば確実に機能する」
など非常に優秀なオブジェクトと言える。
まさに人類最後の希望であり、財団の最後の希望に相応しい存在であろう。

やめろ。

しかし、単刀直入に述べるならば現在SCP-2000は停止状態である。
ある時、SCP-2000内部で事故が発生した。何らかのミスにより必要でない人間―しかも今存在する人間とは異なる構造の人間を1000万人以上「生産」してしまったのだ。
その際に生み出されたそれは全て「処分」されると同時にSCP-2000には停止措置が施され現在修復中なのである。
一応2020年1月までの復旧が期待されている。ものの見事に順延しまくっているが。
…え? 復旧までにKクラスシナリオが発生した際はどうするかって? SCP-2317の最後の鎖の破壊とどっちが早いんだって?



…さあ?

や め ろ 。

最後に、ある文書を紹介しよう。
前述した「マリアナ海溝から回収された文書」である。一説には、このTaleがSCP-2000の元ネタとなったのでは、という意見がある。
このTale自体の投稿はSCP-2000決定以前だが、SCP-2000に関連する記述が散見される為である。

前述したKクラスシナリオの1つ、GHクラス"デッドグリーンハウス"シナリオが発生した世界での物語である。
何らかの事象を発端として、財団が管理していたSCiPの多くが解き放たれてしまい、コントロール下に置けなくなった末に世界が破滅へと向かっていく中、ある普通の男が出会った財団職員がSCP-2000の再起動へ向かう様子を描いている。
その世界の財団は最早情報統制すら出来ないほど崩壊していることが示唆されており、きっとその財団職員は数少ない生き残りだったのだろう。
この中ではデッドグリーンハウスシナリオはGH-0と称され「ほぼ全てのオブジェクトの封じ込めが失敗した」最悪の事例である。
重傷を負っていたその職員は、男に何が世界に起きたのかを財団側の立場で語り、SCP-2000の再起動へ向かう。
人類を作るのは実際のところ簡単で、長い長い時間がかかるが、事件を収束させて全てを嘗てのように戻す事が出来る、と語りながら。

ただやめておけ。

男は職員に言った。
あんたはおかしいぞ
これを忘れる人間なんていない
すべてを元通りにすることなんて出来ない


対して、ブーツを履き直した職員は笑った。
なぜ出来ないと?前にもやったんだぞ


そして男に職員は「家が水に沈む」と警告し、どこかへと向かった。
男は文書に職員から聞いたことを書き記し、パイプに詰めてロウで覆い、渓谷へ投げ入れる予定を建てた。






書き残しておく必要がある。

書いておかないとそのうち忘れてしまうだろうし、今日聞いたことは重要だと思うからだ。

私にとって重要という意味ではない。
私が、あるいは今日地球に生きる人たちが なにかをできるだけの時間は過ぎてしまった。
でも、どこかのだれかがどうにかできるかもしれない。
少なくともその助けにはなるだろう。

これをパイプに詰め、ロウで覆い、渓谷の奥底に投げるつもりだ。
いつの日か、だれかがこれを読んで、考えをまとめるはずだ。

それが許されるのなら。




他の人類が光の中で暮らす間、我々は暗闇の中に立ち、
それと戦い、封じ込め、人々の目から遠ざけなければならない。
Secure   Contain      Protect          




どうか、彼らが私を洗い流さないように。
彼らが我々を隠さないように。
もっと色々なものを見つけてくれ。
なにかを残そうとした人たちがいることを私は知っている。
世界を無駄死にさせないでくれ。

Remember Us.
我々を忘れないでくれ。




お前は普通じゃない。"これ"が普通だ。




余談

SCP-1422には画像が添付されているが、実はサムネイルとクリック拡大した方でアドレスが違う。
それぞれのアドレスには文章が仕込まれており、邦訳するとこうなる。

  1. サムネイル:「お前の尻を引っぱたいて謝らせてやるからな」
  2. クリック拡大:「この記事の内容はこのままにしておこうぜ。オレとオマエの仲だろ?」





追記・修正はSCP-2000を修理してからお願いします。

CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1422 - The Yellowstone Anomaly
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最終更新:2024年04月05日 23:07

*1 http://scp-jp.wikidot.com/scp-2000より抜粋

*2 あくまで「財団の科学の範囲」であり、一般社会の基準で見れば十分に異常。こいつがSCPに指定されているのもそのためである

*3 レベル4/2000保持者も現地で働いている人員なので、流石に全部が嘘なのはあり得ないだろうが。