熊崎信也

登録日:2014/05/07 Wed 04:11:11
更新日:2024/01/17 Wed 09:01:28
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熊崎信也とは、株式会社ハル研究所の社員、かつ星のカービィシリーズのディレクターである。岐阜県出身。
現在は、ゼネラルディレクターとしてシリーズ全体を統括している。




概要

2000年代からの星のカービィシリーズに関わっている男性スタッフの一人。
(ゲームに直接関わり始めたのは『カービィのエアライド』から)
インタビューなどにおける露出が多く、ハル研スタッフとしては有名な部類に入る。


主に担当作品のディレクターを務めている。
入社当初はデバッグやデザイナーの仕事をしていたが、『USDX』からはディレクターに転向。
全体の監修だけでなく、デデデ大王のボイスを務める他、
ゲーム内のストーリーやテキストの調整を手がけていることが多い。
この辺りについては追々解説する。


ディレクターとしての傾向は、彼自身が主要なキャラクターのプロデュースや世界観の設定を行っている。
その他、近年はノウハウの活用や仕事効率の最適化を目指して、各職ごとに全体をまとめるリードスタッフを配する向きが強い。
特に『ロボボプラネット』ではリードスタッフの人数が歴代シリーズでもえらい規模になっていた。

また、「アクションゲームの要の一つはボスキャラ」だと考えており、ボスを作るのが大好き。
そんな彼が関わったカービィ作品のボス達は、従来と比べて行動バリエーションが多彩かつ一筋縄ではいかない。
演出面にも強いこだわりを持ち、ボスの登場・退場モーションが結構凝っている。
特にラスボス周辺の作りこみようは彼の並々ならぬ熱意がうかがえる。

その他の特徴は後述。


金沢美術工芸大学の卒業生でもある*1
仕事中の身ゆえにHP上では単なる近状報告(主に直近で観ている・プレイ中のゲームなど)、たまにイラストと目立った活動は見られないが、プロフィール欄にはこれまで触れてきた作品名がずらりと並んでいる。
彼の発想の源流を窺い知ることはできる…かも。
(ただし、HP上では具体的な素性を伏せているので迷惑をかけないように)



これまでに関わった作品


初のカービィ関与作品。とはいえ、あくまでもデバッグ担当。

デザイナーとして参加。
ヴァレリオンは彼のデザインしたステージであり、「目玉をのぞかせる巨大な卵」も例外ではない。遊んだことがあるプレイヤーなら誰もが印象に残っているだろう。どうもこの頃から不気味なモノのデザインを担当していたようだ。
近年になり突如、その異様なまでの防御力で皆のトラウマ待った無しとなった、
デデデ大王の愛機、「ウィリーバイク・デデデカスタム」のデザインを担当したことも発覚した。
他にもスチールオーガンの謎生物など意味深なものは居るのだが、彼のデザイン・アイデアなのかは不明。


デザイナー、及びストーリーとラスボスの企画を担当。
つまり、ドロシアの生みの親という事である。
ラスボス周りを担当したプログラマーとはこの作品で親しくなり、後の『Wii』でもラスボス作りでタッグを組んだ。

ちなみにそのプログラマー、ボスへのこだわり様が尋常ではなかった。
現在はハル研HPがリニューアルされてしまったので閲覧できないが、以前掲載されていた本作が出来るまでの工程を詳細に描いたコンテンツによれば、プレイヤーに絶対倒したいと思わせられるようなラスボス(ドロシア)作りを目指した結果
メチャクチャ強くしすぎて殆どのテストプレイヤーが倒せず、弱体化を命じられたという逸話があった。

細かい部分では、各レベルの頭文字も彼が考えた。
(『Wii』以降も同様)


これ以降デデデ大王の声、およびディレクターを務める。
後年に海外版MiiVerseではマスクド・デデデの詳細な設定が語られたのだが、それによると
あのマスクはパワー増強装置であり、なおかつダークマインド第1形態の顔をアレンジしたものだという。
仮面のモチーフが自分の唯一の未出演作品ラスボスというのがなんだか皮肉である。
そして後にそいつが自分の動きをそっくりコピーしてくるというのも皮肉である。

声については当時発表が無かった為、ファンの間ではサウンドエフェクトと思われていた。

当時ウェブ上で刊行されていたN.O.M(ニンテンドーオンラインマガジン)上のインタビューにも参加。


彼の発案で企画が立ち上がり、ディレクターとして全体の監修や調整にあたった。
(元々この作品が出るまでに3本の据え置きカービィが立ち消えとなっており、非常に難産だった)
彼がボス好きという事もあって、ボス達の強さは歴代でも高めの方に位置している。

その他、シナリオやテキスト周りを担当。
多分、マホロアのあんな台詞やそんな台詞もきっと…
公式HPの「社長が訊く」にも登場、他のスタッフと共に岩田社長と対談した。
後にシリーズが25周年を迎えた頃のインタビューによれば、この作品が非常に難産だった事で彼はシリーズ存続に危機感を募らせ、こんなところで終わらせてなるものかという気持ちで挑み無事に完成させたとの事。
その結果、今もシリーズが続いているので彼にとって相当思い入れが深い時期だったといえる。


この作品だけ他のディレクターと2人体制。


『Wii』と同様。
全ボスキャラの解説文を担当した。

Miiverse公式コミュニティのスタッフルームでは、他のスタッフ同様に作品の裏話などを提供し続けた。
裏話についてはかなり衝撃的な内容も少なくなかった。気になる人はスタッフルームのログを漁ってみよう(既にサービス終了したのでサルベージに手間はかかるが)。
当wikiの関連記事の記述も大体そこが出典である。
この作品でファンの一部が引くほどデデデ大王の熱狂的な大ファンであったことが明らかとなり、彼をイケメンと評したり一時期ひっきりなしに彼の話題を挟みまくったりと凄まじい熱量を見せていた。


ゼネラルディレクターを務めた。

本作でも気合の入りようが尋常ではなく、これまでに蓄積したノウハウや反省を存分に活かしたと思しき点が散見される。
ハル研ブログで明かされた「最初に作られたボス曲に3番まで歌詞を作った上、サウンド担当の前で自ら歌った」逸話も必見モノ。
流石に前作でやりすぎたからか、今作のデデデはオープニングとエンディングにしか出ない。代わりにクローンデデデの声を担当。

前作に引き続きゼネラルディレクターを務めている。

本作はシリーズ25周年ラストを飾る集大成的作品になり、発売前から公式Twitterで情報提供しており、発売後も本作から登場したキャラの設定資料やBGMの曲名など明かしていた。
とある隠しボスの強化版について本来は通常版でやりたかったようだが、サクサク攻略してもらうために優しめのバランスにしたと明かしている。

初のボーカル付きエンディング曲「グリーンツリーメモリーズ」の歌詞を担当。

30周年記念作もゼネラルディレクターを務め、エアライドからシリーズの開発に携わって21年目となる。
本編では初のボーカル付きのテーマソング「WELCOME TO THE NEW WORLD!」の作詞を担当したり飼い猫の鳴き声をとあるボスの鳴き声に使用したり「シャウト オブ デデデ」や「BAD MASKED WILD:D.D.D.」の雄叫びを収録するなど様々な分野で関わっている。

  • 番外編・うちゅう人田中太郎とRPGツクールGB2
本作のサンプルゲームの一つ「MONSTERスクール」の作者
当時はまだゲーム職ではなくアマチュアであり、前作のコンテストで応募・入賞(最優秀賞!)したこの作品が本作に収録されている。
サンプルゲームながらも結構な良作であるのだが、その作者が後の熊崎であったことは流石に10年以上も昔の話ゆえにか意外と周知されておらず、VC化もされていないので知る人ぞ知る隠れた事実。



また、上記以外にもニンテンドー3DSの内蔵ソフト関係の仕事をしていた。
恐らく『顔シューティング』の事ではないかと思われる(※開発がハル研のため)。
しかし同作にはスタッフクレジットの類が一切確認できない為、彼が関与したかは定かでない。


熊崎系カービィ

彼が関わる『星のカービィ』作品の俗称。
ディレクターとして関与している場合、そこには必ず独自の作風・傾向が存在しており、近年のシリーズの方向性を決定付けたものとなっている。



過去作からの要素

『タッチ!カービィ』を除き、コマンド式コピーなど根幹のシステムは『SDX』から採用している。
達成度と関連付けた収集要素は数字シリーズからか。


が、これは作品全体から見ると単なる一片に過ぎない。
熊崎系カービィの特徴は、過去作をプレイした人向けに良質なファンサービスが多いことが挙げられる。
過去作の何気ないザコキャラから重要な敵キャラの復活はもとより、BGMの巧妙な選出(&アレンジ)、
演出面のオマージュ等など、マニアックなファンがニヤリとする懐かしい要素が仕組まれているのだ。
その上であくまでもファンサービスありきで過去作の要素を用いるのではなく、ゲームそのものの面白さを高める中で、相応しい過去作の要素を引っ張ってきているとしている。

氏のカービィが得られている好評の一部はこの所が大きい。
(もちろん、『あつめて!カービィ』『タッチ!カービィ スーパーレインボー』のように彼が不在でもサービス精神旺盛な作品は出ている)

なお、サウンドトラック等に表記された曲名は基本的にすべて彼が考えている。
秀逸なネーミングセンスの溢れっぷりは『トリプルデラックス』以降が顕著。
中にはこれは別ゲーの曲のタイトルじゃないのか?なんてモノもある。



設定について

ストーリーとラスボスを企画した『タッチ!カービィ』を初めとして、キャラクターや世界観には我々のフロム脳を刺激するかのごとく想像力を掻き立てられる(裏)設定が(過去作と比較して)非常に多い。
具体的に有名なものではマホロアタランザハルトマン親子などなど。
こちらでも絶妙に過去作とのリンクを匂わせる要素が散りばめられ、サラッと重大な設定が明かされることも少なくない。
従って過去作もプレイ済みだとより楽しめる。
熊崎自身が関わっていない過去作とリンクしていることが多く、例えば『トリプルデラックス』は『鏡の大迷宮』、『Wii』と『ロボボプラネット』は『スーパーデラックス』と(USDXは関わっていたが)、『スターアライズ』は数字シリーズ3作品の要素が特に濃い。


ただ、ゲーム内で設定を全部説明しようとすると押し付けがましくなり、反ってゲームのテンポを削いでしまうもの。
そこで、プレイヤーに押し付けがましく感じさせず、かつテンポと両立するために熊崎が取った手段は
ポーズをかけた時の画面上の文章で簡潔に説明する」という手法であった。
これを公式名称で「スペシャルページ」と呼ぶ。
実際に彼の手法はかなり上手くいっており、プレイヤーなら誰でも一度は行うであろうポーズ中断で自然に見せるため、テンポとしっかり両立できている。
一方でキャラクターに台詞が存在する作品なら、そちらにも設定を入れ込むケースがある(マホロアと会話できる『Wii』が例)。
更には重要人物に超早口で長文台詞を喋らせ、台詞の中に意味深な情報を仕込みまくるという変則的な手口を見せたことも。


『Wii』以前は主に特別な大ボスに、『トリプルデラックス』以降は中ボス以外の全ボスにスペシャルページが存在する。
しかも別モードで登場する強化版だと内容が表と異なっているという芸の細かさが光る。
大抵の場合、より深い設定は強化版やクリア後のモード限定のボスで見られるため、知りたがりのファンにとっては本編をクリアしてからが本番とも言える。


ゲーム外でもMiiverseのスタッフルーム等、熊崎本人がさらっと重大な話をすることも珍しくない。
参考までに熊崎の口から明かされた情報の一部を記す。

  • 「狂花水月」「CROWNED」の作曲者は天空の民の声も担当
  • タランザは「銀髪のインテリお坊ちゃん」
  • サンストーンを作り出した者は「太陽の光が苦手」(誰かについては明言されない)
  • ポップスターから見える月は複数ある。例えば『夢の泉』事件で欠けた月、決戦の時の背景の月
  • ラスボスは元々今の蜂の姿ではなく、側近(恐らくタランザ)と同じ姿だった
  • ディメンションミラーを持ち込んできた張本人はタランザ、しかも鏡の影響でラスボスが歪む原因に

スタッフルーム等ゲーム外の媒体で明かされる場合は「ここまで考えているなら初めから本編に入れろ」等といった批判も無いわけではないが、
後発の作品でキッチリ回収されたケースもある為、今後も本編に入りきらなかった設定は後々意外な形で拾ってくる可能性がある。
早速ラスボスの本来の姿については次回作『ロボボプラネット』で回収した。
場合によっては余計に謎が深まることもあるが


なお、熊崎自身はあくまで「カービィシリーズの主軸はゲームにある」と考えていることには注意。具体的には、『ディスカバリー』の新世界及びほおばりヘンケイは先に「カービィが現実のものをほおばるアクション」が考案されて、後から「文明と自然の残る世界観」を舞台とすることになったという具合。

こういった詳しい設定の組み込みについて「ゲームの楽しさを掘り下げるためのスパイス」程度に考えているようで、事実これらの情報を知らなくてもゲーム単体でストーリーが完結するように設計されている。

また、重大な設定に関する話ではあえてぼかした言い方に留めるかそもそも語らないことも多く、ギリギリのラインで断定しないことにより想像の余地を残している。言葉の屁理屈と言われたらそれまでだが、発言者の立場を考えれば断定するのとしないのとでは情報の重さが大違いなので当然の配慮とも言える。
こちらの項目も参照頂きたいが、そもそも広義には裏設定 ≠ 公式設定である。
ディレクターの彼が発言したからといってそれが絶対的な公式設定になるとは限らない点に注意すること。


ちなみに、『スーパーレインボー』では敵役のクレイシアがいかにもドロシアと関連のありそうな名前・見た目だった上に、前作の『タッチ!カービィ』自体が実質熊崎の作品なので、
「熊崎のキャラに違いない」「またグロ形態があるのでは?」「エリーヌと死に別れる未来が見える*2」などとよからぬ憶測を呼んだエピソードがある。
…が、実際は開発に直接関わっておらず更に清々しいぐらいハッピーエンドで終わっているため、結局ただの思わせぶりだった、というオチ。
熊崎の影響力の強さが良くも悪くも浸透していることがうかがえる実例である。



ソウル系ボス

熊崎系カービィ最大の特徴。


前述した意味深な設定群の一端でもあり、『タッチ!カービィ』以降の熊崎系カービィは
全て何らかの形で「ソウル(魂)」の名を冠したラスボスが連続登場している。
どれもゲーム的には所謂第2形態、或いは裏ラスボス的ポジションなのだが、
それ以上に思わせぶり・意味深な設定が付加されるなど特異なキャラクター付けが珍しくない。
カービィシリーズでは異彩を放つ存在から、時折黒い任天堂の系譜に含まれる事もある。
(一部は主にグロい方面だが)


ソウル系ラスボスについては「○○ソウル(星のカービィ)」の項目参照。


余談

  • 星のカービィの人気をより引き上げ、過去作の再構成とファンサービスにも成功した熊崎だが、一方でかつての桜井氏を取り巻くファン界隈の騒動の爪痕もあってか、ネットの一部では「この二人は仲が悪い」という信憑性のない噂も流れていた。
    実際はまるでそんな事は無く、むしろプライベートでも親交を持つ良好な関係である。
    • 25周年記念のオーケストラコンサートでは二人仲良く登壇し、上記の噂をきっぱりと否定した。


  • スタッフであると同時に重度のゲーマーだったらしく、初代星のカービィエクストラモードをライフ1設定で挑んだ事がある。
    初代エクストラといえば、現在でもデフォルト設定で上級者が舌を巻くほどの高難度である。
    最後までクリアできたかまでは言及されていないものの、本人曰く「燃えた」らしい。・・・凄い漢だ。
    • また、デバッグとはいえ『夢の泉デラックス』の4人プレイで延々と全クリアを繰り返した過去も……


  • (恐らく研究の一環を兼ねて)他作品ゲームのプレイには余念がなく、あのFGOのプレイヤーでもある。




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最終更新:2024年01月17日 09:01

*1 実際に大学のリンク集には個人HPへのリンクが張られてたが、大学HPのリニューアルにともない直接飛ぶことが出来なくなった。

*2 タランザという前例からそれほど時間が経ってない頃なので尚更