木場修太郎

登録日:2011/07/09(土) 03:12:35
更新日:2023/11/11 Sat 19:13:05
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「悪党……御用じゃ」





木場(きば)修太郎(しゅうたろう)


京極夏彦の同一世界観による小説作品シリーズである「妖怪シリーズ」の主要登場人物の一人。
初登場時の続柄は東京警視庁捜査一課巡査部長であったが、『塗仏の宴』の際の伊豆での管轄外の暴走、越権行為から、
百器徒然袋シリーズ』及び『陰摩羅鬼の瑕』以降は降格、左遷されて所轄である四谷署所属の巡査として登場して来る四角い刑事である。

小石川の石工の息子ではあるが、幼少期より生まれや貧富の差と云うものに拘りを持っていなかった旧華族にして探偵・榎木津礼二郎の友達であり、
その関係は榎木津がエリート街道をまっしぐらに進み、片や海軍の変人将校、片や陸軍の一兵卒と云う立場で戦争を生き抜いて後も変わっていない。
尚、職業軍人として参加したこの大戦中には、部隊の隊長として学徒出兵により将校の地位を与えられた関口巽と出会っており、
彼の副官として恐らくは戸惑ってばかりだったであろう彼を支えている。

その当時の事が明確に描写された事は無い為に詳しい事は不明だが、
偶然にも榎木津と云う共通の友人が居た事が複員後にも同じ立場の中禅寺をも含めた親交を結ぶ契機となったのだと思われる。
尚、部隊は関口と木場を除いて全滅しており、敗走の中で関口を抱えて生還させたのは木場である様だ。
この際に彼と一つの芋を分け合っており、余程印象的だったのか関口は極限状態で幾度かこの場面を思い出している。
また、部隊が送られた南方戦線で食べたバナナの味が忘れられないと言っていた事から、
魍魎の匣』での謹慎の際に部下の青木文蔵が大枚をはたいて差し入れたにも関わらず余り喜ばれなかった(青木の配慮が足りなかったとも云えるが)。
家族は両親と妹が居り、妹が婿を得た事で実家からは出ている。
家業を継ぐ気は端から無かった様で、また同居していた頃から給料も実家には入れていなかったらしい。
上記の『塗仏の宴』の際には、間接的に木場の実家も巻き込まれているが、
その際の木場の行動の所為でやや疎遠になってしまっていると云う(例の如く説明もしていないのだろう)。


【人物】

年齢は三十代半ば。
昭和二十七年で三十五歳になるとの記述があり、榎木津とは同い年らしい。
この事から関口と中禅寺は一つ年齢下と考えられる。
見た目はほぼ真四角で、鰓の張った厳つい正方形の顔に小さな目と口、
短く刈り込んだ針金の様な髪の毛を持つ異相としか呼べない風貌を持つ人物と説明されている。
身体も頑健で大柄。
太い腕に厚い胸板を持つヤクザも恐れる人物で、逆にその筋の人間と勘違いされる事も多い。
青木曰く「普通の人間なら気絶する様な状況でも我慢できてしまう」位に肉体が強靱らしく、
事実腕力的な強さに於てはあの榎木津と肩を並べる程である(更に共通の友人である川新も加わる)。
一方で見た目からは想像のつかない甲高い声の持ち主であり、ウイットに富んだしゃべり方をする人物。
学は無いが頭の回転が早く、取り敢えず凄んで見せた後で冷静に状況判断をしている場面も多い。
関口と中禅寺からは「旦那」と呼ばれているが、これは以上の特徴を踏まえた印象から来ているらしい。

他、青木らは「先輩」長門は「修さん」、
榎木津は例の如く好き勝手な呼び方をしているが中には「修ちゃん」等と云う、思わず木場が「誰だよそれは」と聞き返した様な場違いなものまである。

身体の内側にふつふつと沸き上がる様なエネルギーを溜めた男であり、職業軍人となったのも複員後に警察官となったのも「敵」を求めての事であったらしい。
ここで云う敵とは、単純明快な勧善懲悪に現せる様な「敵」なのであるが、現実にはそうした「敵」と出会えないのが悩みであるらしい。

尚、この悩みは『姑獲鳥の夏』以降、自らやポン友(朋友=親友)が巻き込まれる事の多くなった犯人無き凄惨な事件の現場に於て、ますます募っている様である。

上記の様な特徴は子供の頃からの様で、幼馴染みの一人である元精神科医の降旗弘曰く「如何にも強そうな子供」であったとの事だが、
その一方で絵を描くのが上手く、また算盤も得意であったそうである。
その所為か映画の類も好きで、女優の美波絹子のブロマイドを恥ずかしい思いをして手に入れ、手帳に挟んでいたりもしている。


【交遊関係】


旧華族・榎木津幹麿元子爵の御曹司にして、帝都に名を轟かせる薔薇十字探偵その人……。
木場にとっては竹馬の友にして、最も世話の焼ける存在である。
榎木津が神田に榎木津ビルディングを構え「薔薇十字探偵社」を開設してからは頻繁に訪れ、馬鹿話と酒宴に興じていたらしい。
両者共に鯨飲の類らしく、飲むと厄介らしい。
『瓶長』や『面霊気』事件では尻拭いをさせられており、恨みの篭った言葉を掛けている。

小説家。
かなり困った奴。
木場にとっては特に目を離せない友人でもある。

古本屋。
以前から裏稼業の噂を知ってはいたらしいが、実際に目の当たりにしてからは冷静にツッコミを入れたりしている。

  • 川島新造
禿頭に黒眼鏡、軍服姿の大男。
大陸では甘粕正彦の腹心として、特殊部隊の様な仕事をしていたらしい。
一方で映画製作もしていた甘粕に倣ってか、複員後は自らも「騎兵隊映画社」と云う会社を設立し代表を務める。

  • 青木文蔵
小芥子頭の後輩。
元・特攻崩れで見た目は可愛いが木場とは共通する部分も多く、師弟の様な間柄にある。
木場から肉体的な強さを抜いて、多少の常識を加えたのが青木である。

  • 木下圀治
狸みたいな後輩。
青木と共に登場するも、その後レギュラーにはなれなかった不遇なヤツ。
暴走もしていないので、左遷もされていない。

  • 長門五十次
警視庁捜査一課の古株で、暴走しがちな木場のお目付けとして組まされたベテラン。

  • 伊庭銀四郎
長野県警で鳴らし、戦時下に東京に来ていた際に警視庁捜査一課に在籍していた伝説的な鬼刑事。
中禅寺と面識があった。
木場が所轄から警視庁に配属された際に入れ替わりで引退していたが、『陰摩羅鬼の瑕』の際に勘違いから照会された際に顔を合わせ知遇を得る事になる。
引退している事を除けば木場をも凌ぐハイスペックを誇る刑事の中の刑事。

  • 降旗弘
屈折した元精神科医。
昔馴染みの歯医者の息子。

  • 美波絹子
木場が密かにファンだった元女優。
魍魎の匣』のヒロイン。
本名・柚木陽子。

  • 三木春子
工藤と云う男に付き纏われていた女工。
塗仏の宴』に登場する。
彼女の相談を聞いた事を契機に木場は事件に巻き込まれる事になった。

  • 竹宮潤子
「猫目洞」の女主人で、木場はここの“あまり顔を見せない”常連。
猫の様にくるくる表情の変わる掴み所の無い美人。
頭の回転も早く、世話好き。
高学歴で出自も恵まれている……らしい。
木場とは何となく良い雰囲気……なのだが。
何と木場は青木は勿論、榎木津に関口、中禅寺、降旗までも「猫目洞」に連れて来ていたらしい。
木場は女性関係に鈍感で不器用であり、水商売関係にはもてるが素人とは話せないのだが、そのどちらとも言えない潤子とは割と素で接している。


【演じた人物】


■映画
●宮迫博之
◆『姑獲鳥の夏』
◆『魍魎の匣』

■ラジオドラマ
●ゴルゴ松本
◆『百器徒然袋 雨』

■アニメ
●関貴昭
◆『魍魎の匣』

■ドラマCD
●声:三宅健太
◆『百器徒然袋 雨』

■舞台
●演:速水沙里
◆『魍魎の匣(1999年初演、2001年再演版)』
◆『狂骨の夢』
●演:内田朝陽
◆『魍魎の匣(2019年版)』

■ミュージカル
●演:吉田雄
◆『魍魎の匣』


【余談】

演者一覧のキャスト名を見て「おや?」と思った方もおられるかもしれないが、
初のメディアミックスとなった最初の舞台版『魍魎の匣』は女性のみで構成された劇団てぃんか~べるによる公演のため、一部の外部キャストを除き全員が女性によって演じられている。

映画版『姑獲鳥の夏』のキャストが発表された当初、宮迫氏が地の文における描写やファン個々人が抱いている木場のイメージからかけ離れた人物だったため、2ちゃんねるの京極夏彦総合スレッドは荒れに荒れる事となった。
あまりの荒れ具合にメインである本の感想を語り合う事さえできなくなった結果、とうとう「スレ住人全員が一度憑き物落としを受けた方がいい」と云う話になり、宮迫氏を妖怪に見立てた
名のるにおのが頬を打ち 人を指にて刺すというは ものくるいの業なるべしや
しりぞく生え際を嘆き人を呪いたるやと よめの居ぬうちに思ひぬ
と云う一文が作られ、暫くの間スレで用いられる事態になっていた。








榎「誰だ!こんな所にブロックを積み上げたのは、あぶないじゃあないか!!……なあんだ、積み木人間のコーモクか。
  そこの君!!さっさとツイキやシューセイをしてどかしたまえ!ウンエーとかにあげてケシてしまってもかまわないぞォ!!」


木「黙れよヘボ探偵!!手前ェに喋らせるのがどれだけの文字数の無駄なのか、良い加減に判れよコラ」

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最終更新:2023年11月11日 19:13