愛の戦士レインボーマン

登録日:2012/11/20 Tue 20:12:06
更新日:2024/02/26 Mon 01:20:28
所要時間:約 7 分で読めます






レインボーマンは宇宙から来たスーパーマンじゃないんだ。ロボットでもサイボーグでもないんだ!

力の限り生きている人間なんだ!だから俺も、一緒に戦わなければならないんだ!


『愛の戦士レインボーマン』とは、1972年から1973年にかけて放映された東宝制作の特撮テレビドラマ。
原作者は『月光仮面』を創作し、『まんが日本昔ばなし』の企画を立ち上げ、「おふくろさん」や「骨まで愛して」の作詞などを手掛けた、耳毛先生こと文筆家の川内康範
放送当時、その「♪インドの山奥で…」というオープニングテーマ(歌:水島裕)*1にしりとり形式で勝手な歌詞を付け足すという替え歌が大流行し、日本全国で相当数のバリエーションが作られた事は有名。

1973年夏の東宝チャンピオンまつりでは第15話「殺人プロフェッショナル」のブローアップ版が上映されている。

本作放送の10年後となる1982年には設定やデザインを大きく変更した全22話のテレビアニメ版が制作、放映された。
主役であるタケシ=レインボーマンの声を演じたのは上述の特撮版主題歌を歌唱した水島裕氏だが、当時と名義が異なっていたため選考時点でスタッフは気付いておらず、氏が選ばれたのは偶然だったという。


【あらすじ】

学生レスリングで鳴らした高校生・ヤマトタケシは足が不自由な妹の手術費を稼ぐためプロを志すもアマとの壁は厚く、修行のために単身インドの山奥にいるという聖者ダイバ・ダッタを尋ねる。
そこで紛争に巻き込まれて死にかけるが、ダイバに助けられ、その慈愛の心に感銘を受けたタケシは、自らの力を私欲のためではなく人々のために使う事を誓い、その弟子になる。
1年に渡る修行の後、自らの死期を悟ったダイバはその力の全てをタケシに託し、超人レインボーマンに化身する力を授けた。
意気揚々と日本へ戻ったタケシであったが、そこに待っていたのは日本国解体と日本人抹殺を企む秘密結社・死ね死ね団だった。


【主な登場人物】

  • ヤマトタケシ
演:水谷邦久

ダイバ・ダッタの下で修業し、その奥義を授けられレインボーマンとなった青年。キッチリした七三分けの髪型と、やたらめったらギラギラした凄い目力が特徴。
高校時代は「下町の黒豹」と呼ばれたアマレス選手であり、対戦相手を病院送りにして部を除名されるなど粗暴で自信過剰な性格だった。
しかし、プロレスの世界に入るも自分の技がまるで通用しない現実に直面し、インドでの修行や死ね死ね団との戦いを経て、次第に強い使命感を帯びた立派な若者へと成長していく。
一方で、人並みの幸せや青春を犠牲にし、親しい人々が危険に晒されているにもかかわらず休む間もなく戦い続けなければならないという苦悩も背負っており、完全無欠の超人というヒーロー像を否定した人物描写がなされており、同時期に活躍していた人体改造された事による弊害や、正体を明かせない苦悩を抱えたヒーローや、善と悪の狭間で苦しみ悩む人造人間とは対極的だと言えよう。
その苦衷を歌った前期エンディングテーマの凄絶さは一聴の価値あり。
狂わされたまま次回に続く「タケシを狂わせろ」は有名。

  • ダイバ・ダッタ
演:井上昭文

インドの山奥に住む奇跡の聖者で、無償の愛を説く。
タケシにはお師匠(おっしょう)と呼ばれている。
タケシを弟子として修行させ、死の直前に自らの力の全てと魂を授け、レインボーマンにした。
死後も度々霊魂として、悩み苦しむタケシを導く。

名前の由来は釈迦の弟子の一人「提婆達多(ダイバダッタ、デーヴァダッタ)」と思われる。
……が、伝承において提婆達多は師である釈迦の殺害を試みたため無間地獄へと落ちた極悪人として語られており、とても本項のダイバ・ダッタのような聖者ではない*2ため、あくまでも名前を借用しただけの別人と見るべきだろう。

  • ヤマトみゆき
演:石川えり子

タケシの妹。幼少時、タケシが目を離した隙に交通事故に遭い、足が不自由になった。
タケシが大金を稼ぐ事を目指したのはその治療費を捻出するため。
兄がレインボーマンである事は知らないが、死ね死ね団からはレインボーマンの妹としてマークされており、度々命の危険に晒される。
それでも兄を気遣う心優しい妹。

  • ヤマトたみ
演:本山可久子

タケシ、みゆきの母。普段はおにぎり屋(居酒屋にも見える)を切り盛りしている。
やはり息子の正体は知らず、何も言わずに姿を消してはボロボロになって帰ってくる息子を常に心配している。

  • 淑江
演:伊藤めぐみ

タケシの恋人で、父の経営する保育園「どんぐり園」の保母。
彼女もやはりタケシがレインボーマンである事は知らず、戦いが激化してデートをすっぽかしてしまったタケシに対し、「戦いはレインボーマンに任せておけばいいじゃない!」と、彼の心を抉るような発言をしてしまった。
それに対するタケシの反論が、この項目の冒頭に書いてある一文である。
しかし、もちろんそれも彼を気遣う故であり、最後までタケシを支え続けた優しく芯の強い女性。

  • レスキの正造
演:村田正雄

淑江の父。タケシが通っていたレスリングジムの経営者で、「どんぐり園」の園長でもある。
チャキチャキの江戸っ子でタケシの良き理解者。
彼の幼稚園がヤクザの抵当に取られそうになったのが、死ね死ね団との死闘が始まる切っ掛けだった。

  • 大臣
演:野口元夫

放送2クール目の「M作戦」編における陰の功労者。
死ね死ね団によるインフレ事件が引き起こされた時、不審者に過ぎないレインボーマンの話を聞き、国民のために尽くした人格者。

  • ヤマト一郎
演:小泉博

タケシの父で新聞記者。
8年前に海外へ取材旅行に行ったきり消息不明となっていたが……


【レン】

ヤマトタケシが厳しい修行の末、ダイバ・ダッタの魂を受け継ぎ化身した愛の戦士。
それぞれ7つの異なる姿と超能力を持ち、状況に応じて使い分けが可能という、今や仮面ライダーシリーズやウルトラシリーズなどでお馴染みのフォームチェンジヒーローの元祖
印を結び、阿耨多羅三藐三菩提(アノクタラサンミャクサンボダイ)と3回唱え、「レインボー・ダッシュ○○!」と対応する化身の名を叫ぶ事で変身する。

「M作戦」編以降は勢いよく回転ジャンプをして空中で変身する演出が取られた。 
一方で「ヨガの眠り」という弱点があり、全ての力を使い果たすと勝手に座禅を組み出し、エネルギーが回復する5時間後まで真っ白な仮死状態になってしまう。
劇中ではここを敵に狙われ、窮地に陥る事が多かった。

  • 太陽の化身 ダッシュ7
レインボーマンの基本形態で、額に日輪をあしらったターバンを巻いた戦士。
飛行能力を始めとする様々な超能力や、太陽光線を発射する「太陽フラッシュ」、「神剣・太陽の剣」などを使う。

番組後半ではレインボークロスという、ダッシュ7の姿のまま他の化身の能力を組み合わせて戦う、
2人で1人の探偵ライダー動物パワーのライダーフルボトルで変身する天才ライダー炎の聖剣に選ばれしライダーカードを使って戦う錬金術師のライダーなどの大先輩とも言える技を身に着ける。

  • 月の化身 ダッシュ1
月光仮面と七色仮面を合成したような顔で、ヨガの奥義を極めた化身。
全身の関節を外してわずかな隙間を通り抜けたり、風雨を操る事が出来る。そこ、「ゴム風船」とか言わない。

  • 火の化身 ダッシュ2
高熱火炎を放射する「火炎の術」が使えるが、単独ではあまり活躍しなかった。
しかし、レインボークロスでは様々な応用が利くため、いらない子からの脱却を果たす。

  • 水の化身 ダッシュ3
水を両手から噴射したり、水を巻き上げて竜巻を生み出す事が可能。
主に消火活動や水中戦で活躍。

  • 草木の化身 ダッシュ4
野山の精霊の力を借り、植物や風、音の力を使う事が可能。
攻撃から脱出用まで様々な技を持つ。

  • 黄金の化身 ダッシュ5
金に代表される鉱物というよりは煌めくの化身であり、全身を発光させての目くらましや「レインボーフラッシュ」などの光線技を使う。
主に空中戦で活躍。

  • 土の化身 ダッシュ6
ドリルのように体を回転させて地中を移動したり、地割れを起こして敵や危険物を引きずり込む事が可能。
サナギマンに並ぶ地味な姿をした特撮ヒーロー


【死ね死ね団】

所謂過激派反日団体。
日本人に対して恨みを持つ者や白人至上主義者などで構成された、日本国家の解体日本人の抹殺、あるいは奴隷化を目的とした秘密結社。
かつて日本軍に拷問を受け、家族を殺されたミスターKを首領とする。
2クール目からは、アマゾンの魔女・イグアナと6人の殺人プロフェッショナル、3クール目では悪魔攻撃部隊・DAC、4クール目ではドクターボーグが開発した薬品・ボーグαで改造したサイボーグを使ってレインボーマンに対抗した。 

ギャグ作品に出てきそうな名前の組織だが、これは「ふざけた名前ならば誰も存在を信用せず、脅威とも思わない」という心理的効果を狙ったもの。
この手の作品の敵としては珍しく「一つの国家を滅ぼす」という明確かつ確固、並びにターゲットを絞り込んだ目的を持っているため、
  • 麻薬・キャッツアイを蔓延させ、日本人を堕落させる
  • 新興宗教団体・おたふく会を隠れ蓑に偽札を大量に流通させ、ハイパーインフレを起こし経済を破綻させる
  • 産油国の要人や外交官を狙ったテロを起こして関係を悪化させ、エネルギー枯渇を狙う
  • 地底戦車・モグラートで人工地震と津波を発生させ、日本の国際的信用と競争力を失墜させる
  • 人間コピー機で日本人に成りすました工作員を大量に送り込み、日本を内部から崩壊させる
……など、やたらと現実味のある、えげつない作戦を繰り出す。
これらの作戦はそれぞれ約1クールに渡って展開され、タケシはそれを阻止するための手掛かりを探り、刺客と対決していくという、1話完結が多い当時の特撮では異色な番組フォーマットがなされている。

彼らのテーマソングである挿入歌「死ね死ね団のテーマ」はひたすら「死ね!」(1番の歌詞だけでも29回)を連呼し、日本人への憎悪と敵意をぶつけた、一度聴いたら忘れられない迷曲。
ぶっちゃけた話、あらゆる意味で日本人以外は歌えない。

この死ね死ね団の設定から、川内氏がいわゆる自虐史観の持ち主であると誤解する人も多いが、本作のテーマは
「たとえどのような理由やカルマがあろうとも他人の尊厳を脅かす事は許されない」
「ヒーローを祀り上げるのでも悪人を許さないでもなく、たとえ無力でも、ひとりひとりが無償の慈愛と思いやりを持って行動を起こさなければ、祖国や大切な人は守れない」

……という、人間愛愛国の精神であるという事を見誤ってはならない。

そもそも川内氏は1920年生まれ。結果的に外地には送られなかったが、戦争最末期には召集もされており、また戦後間もない時期から戦没者の遺骨引き揚げ運動に参加していた人物でもある。
つまり、戦前戦中何があったか、特に外地で何があったか、記憶が生々しい人達から直接話を聞いているはずであり、そんな川内氏がこのような設定を作ったという点から目を逸らしてはいけない。
ミスターKを演じた平田昭彦氏(こちらは1927年生まれ)が陸軍士官学校第60期在校中に終戦を迎えた(昭和20年6月、終戦前の最後の卒業生が第58期)人物であり、どう考えてもバリバリの元・軍国少年である事も忘れてはいけないだろう。




記事が追記・修正されている!名も知らぬ正義の人が自分に代わってやってくれたのだ……(合掌)


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  • 悲劇の主人公
  • ※金曜夜19時30分です。
  • 水島裕
  • NETテレビ
  • テレビ朝日

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最終更新:2024年02月26日 01:20

*1 発売時の名義は「安永憲自」。

*2 ただし『法華経』では「最終的に成仏し天王如来となる」という未来での成仏も語られている。