1995年第111回天皇賞・春

登録日:2011/11/24 (木) 07:15:59
更新日:2023/09/23 Sat 16:42:31
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さあライスシャワーが先頭だ!
いや~やっぱりこの馬は
強いのか~!


1995年4月23日に京都競馬場で行われた第111回天皇賞・春はライスシャワーが勝ったレースである。

【馬柱】



1995年京都5回2日10R 第111回天皇賞(春) 京都芝右3200m
五歳以上オープン 牡牝 定量(58kg)


馬名 騎手
1 1 エアダブリン 岡部幸雄
2 アグネスパレード 河内洋
2 3 ライスシャワー 的場均
4 サンライトウェイ 上村洋行
3 5 ヤマニンドリーマー 松永幹夫
6 ワンダフルタイム 塩村克己
4 7 ヤシマソブリン 坂井千明
8 ゴーゴーゼット 村本善之
5 9 イイデライナー 南井克巳
10 メイショウレグナム 小島太
6 11 キソジゴールド 安田康彦
12 タマモハイウェイ 四位洋文
7 13 インターライナー 横山典弘
14 アルゼンチンタンゴ 田原成貴
15 ステージチャンプ 蛯名正義
8 16 クリスタルケイ 幸英明
17 ハギノリアルキング 武豊
18 ダイイチジョイフル M.ロバーツ

戦前、前走阪神大賞典を圧勝し1番人気が予想された三冠馬ナリタブライアンが故障で欠場。
素質馬と評判の高かったサクラローレルも故障で離脱と、主役不在と称されたこのレース。

1番人気は前年のダービー2着馬で前走ダイヤモンドステークス勝ちのエアダブリン。
2番人気は前走日経賞勝ちのインターライナー。
3番人気は前走目黒記念でサクラローレルを破ったハギノリアルキング。
一昨年の覇者ライスシャワーは4番人気にすぎなかった。
ライスシャワーは前日オッズでは1番人気だったものの、
前日から降る雨の影響で馬場が重くなっていたことや2年間勝ち星がないことなどから当日は人気を落としていた。
前日発売では愛されているという意味で人気が高い馬がよく買われるということもあるのだろう。

昼過ぎまで降っていた雨が止み、どんよりとした曇り空の下でレースが始まった。
全馬揃ったスタートから、まず先頭にたったのはクリスタルケイ。
キソジゴールド、インターライナーがその後に続いた。

1周目ホームストレッチで大歓声に驚いたのか1番人気のエアダブリンが掛かったように番手をあげる。
ライスシャワーは中団に位置していたが、2コーナー付近からまくって番手をあげにきた。
そして向こう正面では人気のエアダブリン、インターライナー、ライスシャワーが先行集団を形成していた。

レースが動いたのは3コーナー手前。
淀の名物である3コーナーの坂の手前でライスシャワーが先頭に躍り出たのだ。
かつて、「淀の坂はゆっくりと登らなければなりません」と実況された淀の坂でだ。
ここからスパートするとゴールまでの距離が遠過ぎてスタミナが保たない、というのが通説であり、有名な話であった。
しかしライスシャワーと的場騎手は無謀にもここからスパートしたのだ。
後に的場騎手は「行くべきか迷った。しかし今のライスシャワーの力では正攻法では勝てない。勝つためにはここで勝負に出るべきだと思った。」と語っている。
それはライスシャワーが決して掛かったわけではなかったのだ。
的場騎手はさらに言った。
「馬にGOサインを出した瞬間にライスシャワーも動き出した。普通はサインのあと馬が反応するまでにタイムラグがあるものだが、この時はそれが一切無かった。」と。
まさに人馬一体、以心伝心である。
ライスシャワーは自らの意志で勝ちにいったのだ。
それは後世まで語り継がれる伝説の第1歩だった。

ライスシャワーが動いたことによりペースが一気に上がった。
まず反応したのはインターライナー騎乗の横山騎手。
エアダブリンもそれに続き、人気馬3頭が動いたことで後続もそれに続いた。
先に動いてリードを得たライスシャワーに対し、4コーナー手前でインターライナーが半馬身まで迫ったが先に手応えが怪しくなりムチが入った。
ほぼ同じタイミングで3番手のエアダブリンにもムチが入った。
対してライスシャワーはもったままで4コーナーを回る。

いや~!やっぱりこの馬は
強いのか~!

実況の杉本アナはこう叫んだ。
まだ長い直線を残したこの場所で、早くも強いと言われるようなレースをする馬はほとんどいない。
しかしライスシャワーはそう言わせるだけのパフォーマンスを見せたのだ。
直線に入り後続をぐんぐん突き放していくライスシャワー。
インターライナーもエアダブリンも、もはや追い付くことは不可能に見えた。
もはや勝利は確定的に思われた。

しかし勝利の女神は簡単には微笑まなかった。
早仕掛けの影響か、直線半ばでライスシャワーの自慢のスタミナに翳りが見えてきたのだ。
そこへ飛ぶように襲い掛かってきたのは、同じリアルシャダイを父に持つステージチャンプとハギノリアルキングだった。
外を通って追い上げてくる2頭。
特にステージチャンプの勢いは凄まじく、みるみるうちに差が詰まっていった。
残り100m、50m。内で粘るライスシャワーに外から追い込むステージチャンプ。
2頭の馬体が、内外離れて重なったところがゴールだった。
勢いは完全にステージチャンプだった。
ステージチャンプ騎乗の蛯名騎手が勝利を確信してガッツポーズをするほどだった。
勝負の行方は写真判定に委ねられた。
長い長い審議の末、掲示板の1着のところに灯った数字は3、──ライスシャワーの馬番だった。
その差はわずか16cm。
大きな大きなハナ差だった。
そしてこれがライスシャワーにとって最後のゴールとなった。

結果

1着 ライスシャワー
2着 ステージチャンプ
3着 ハギノリアルキング
4着 インターライナー
5着 エアダブリン
6着 ゴーゴーゼット
7着 アルゼンチンタンゴ
8着 ダイイチジョイフル
9着 サンライトウェイ
10着 ワンダフルタイム
11着 イイデライナー
12着 ヤシマソブリン
13着 タマモハイウェイ
14着 クリスタルケイ
15着 アグネスパレード
16着 キソジゴールド
17着 ヤマニンドリーマー
18着 メイショウレグナム

払い戻し
単勝 3 580円 4番人気
複勝 3 280円 4番人気
15 330円 5番人気
17 190円 2番人気
枠連 2-7 900円 4番人気
馬連 3-15 4090円 16番人気


結果として出走馬中ただ1頭のGⅠ馬が勝ったのだった。
その他の出走馬でその後もGⅠを勝った馬はいない。
まさに菊花賞ミホノブルボンの三冠を阻み、一昨年の天皇賞・春メジロマックイーンの3連覇を阻止したライスシャワーが意地とプライドを見せたレースだった。
それはかつて悪役と呼ばれた馬がヒーローに生まれ変わった瞬間だった。
そして、奇しくも一昨年と同じ2枠3番での勝利だった。

この結果、宝塚記念ではライスシャワーがファン投票で1位に選ばれた。
それは評論家などからの前評判が高く、始めからある程度の人気のあったディープインパクトサイレンススズカなどとは違い、自身の実力だけで築き上げた立派なものであった。のだが…

阪神大震災の影響で京都競馬場で開催された宝塚記念ではライスシャワーは後方を追走し、
3コーナー付近で故障を発生し他馬の邪魔をすることなく転倒した。
そして怪我の状態はひどく、動かせないほどだったことからその場で安楽死処分され生涯を終えた。
そう、伝説の第1歩を踏み出したその場所で…




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最終更新:2023年09月23日 16:42