ウオッカ(競走馬)

登録日:2010/01/08 (金) 07:14:02
更新日:2024/04/24 Wed 19:16:12
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2007年、日本ダービー

オークスではなく、あえてダービーを選んだ牝馬

勝てるのか?本当に勝てるのか?

64年ぶり、牝馬のダービー制覇

ウオッカ

誰も行かない道を行け。茨の中に答えはある

──2013年 日本ダービーCM

ウオッカ(Vodka)とは、日本の元競走馬
牝馬でありながらクリフジ以来64年ぶりとなる日本ダービー勝利を成し遂げ、最終的にGⅠ競走を7勝し顕彰馬に選出された歴史的名牝。



【データ】

生誕:2004年4月4日
死没:2019年4月1日
享年:15歳
父:タニノギムレット
母:タニノシスター
母父:ルション
馬主:谷水雄三
調教師:角居勝彦(栗東)
生涯成績:26戦10勝[10-5-2-9]
獲得賞金:13億3356万5800円
主な勝ち鞍:06'阪神JF、07'日本ダービー、08'-09'安田記念、08'天皇賞秋、09'ヴィクトリアマイル・ジャパンカップ
タイトル:JRA顕彰馬、08'-09'JRA賞年度代表馬・最優秀4歳以上牝馬、07'JRA賞特別賞、07'・09'関西競馬記者クラブ賞


【生誕】

父はブライアンズタイム産駒にして、タニノチカラ以降低迷が続いたタニノ軍団久々のダービー馬となったタニノギムレット。非常に過酷なローテーションを歩み、皐月賞3着、NHKマイルカップでは不利を受け2着、そしてダービーでついにシンボリクリスエスを破り勝利したのだが、激走の反動か屈腱炎を患い早期引退を余儀なくされた。ウオッカはそんな彼の初年度産駒に当たる。
母のタニノシスターは900万下勝利の5勝馬で、サセックスステークスやムーラン・ド・ロンシャン賞を勝利したルションを父に持つ。

馬名の由来は、父タニノギムレットより強くあってほしいと願い、「ギムレット」よりアルコールの強いお酒の「ウオッカ」と名付けた。
(「ウッカ」ではなく「ウッカ」であることに注意)

また、馬主は生まれ故郷「カントリー牧場」の代表で、父から牧場と共に引き継いだ冠名「タニノ」でお馴染みの谷水雄三だが、よりストレートに名付けた方がアルコールが強いという事で「タニノ」の冠名を付けなかった。

牧場の期待を一身に背負う彼女は、後に歴史を動かす快挙を成し遂げ、名前通りの…否、それ以上の熱狂を呼ぶこととなる。


【現役時代】

2歳

2歳の秋に京都競馬場の新馬戦にてデビューし、逃げて4馬身差でデビュー戦を飾る。
二戦目の黄菊賞は2着に敗れたものの、三戦目の阪神JFでは抽選対象だったが見事に突破、レースでは馬群の中団の内目から進め直線で先に抜け出した一番人気で後のスプリンターズSを勝つアストンマーチャンを差し切る。
また、勝ちタイムは2歳芝1600mの日本レコード。

3歳

エルフィンSから始動し、他馬より2キロ重い斤量を背負ったが3馬身の圧勝。

続くチューリップ賞では後に最強のライバルとなるダイワスカーレットと初対決。
直線ではダイワスカーレットがウオッカを引き付け2頭のマッチレースとなったがクビ差交わし勝利。
なお3着との着差は6馬身であり、桜花賞はこの2頭と阪神JF2着でフィリーズレビューを勝利したアストンマーチャンの3強の勢力図で桜花賞を迎える。

また、この頃から桜花賞で優勝したらダービーに出走するプランが発表される。
本番の桜花賞では1番人気で迎えるが、チューリップで瞬発力勝負では分が悪いと踏んだダイワスカーレットの
早め抜け出しを捉えられず2着に敗れる。

桜花賞で敗れた事によってダービーを断念するとの見方もあったが、陣営はダービー出走に踏み切る。

このダービー出走にはファンや競馬関係者から反響を呼び、牝馬ではダービーを好走をする事すら難しいと言う声が殆どだった(ある名牝馬を管理した調教師は不可能と言う程)。
貴重なダービーの枠を牝馬が奪うなという声すらあった。

そして皇太子徳仁親王(現・126代天皇)をお迎えしての台覧競馬となったダービーは、離れた3番人気で迎える。
しかしレースは周囲の不安を尻目に、直線半ばで抜け出し3馬身を付ける圧勝。
史上初の父娘二代でのダービー制覇、64年振りで3頭目の牝馬のダービー制覇(しかも前の2頭は戦争中での制覇なので戦後としては初の快挙)
などの記録を残し、様々なメディアに注目された。
そして鞍上の四位洋文は、貴賓室で御観戦された徳仁親王に馬上で一礼*1*2。徳仁親王は歴史の目撃者の一人となった。

その後は同期のアサクサキングス*3と共に初の古馬との対戦となる宝塚記念に出走するもハイペースの中で思うような位置取りが出来ず、更に掛かってしまい8着に敗れる。
まあ3歳馬がクラシック直後に宝塚記念に挑む時点で大概無茶ではあるのだが…。

秋は凱旋門賞に出走するプランもあった(前哨戦はヴェルメイユ賞の予定だった)が蹄球炎を発症し断念、
ぶっつけで秋華賞に出走するもダイワスカーレットに敗れ、更にダイワスカーレット以外の3歳牝馬にも先着を許す3着。
エリザベス女王杯はレース当日に跛行で回避、しかし症状は軽症だったため2週間後のジャパンカップに出走。
しかしまたもや古馬の壁に阻まれ4着。

次走の有馬記念ではファン投票1位に選ばれ出走。
3歳牝馬では初のファン投票1位となったが、初の中山や不利な大外枠や疲れもあってか11着と惨敗。
また、ダイワスカーレットに三度目の先着を許し最優秀3歳牝馬も逃してしまった。
しかしダービー優勝を配慮しJRA特別賞を受賞した。
そしてこの頃から右回り苦手説が浮上する。

4歳

ドバイDFの前哨戦として京都記念に出走するが、スタート直後に馬体をぶつけられ後方に置いていかれ、
更に終始大外を回され6着。
ドバイでは武豊に乗り代わり出走し直線で一旦は先頭に立つも差し返えされ4着。

休まずヴィクトリアマイルに出走し、ダイワスカーレット以外の牝馬には負けられない一戦だったが
スローペースで先に抜け出したエイジアンウインズを捉えられず2着。
しかし後のマイルCSを勝つブルーメンブラッドには先着する。
このレース後、早熟説が飛び交う中で安田記念に出走。
直線半ばで強烈な瞬発力で他馬を引き離し圧勝し、早熟説をふき飛ばす勝利となった。
しかしマイルでのパフォーマンスに、ウオッカはマイラーという声も上がってしまった。

秋は毎日王冠から始動するも2着に敗れる。
次走の天皇賞秋ではダイワスカーレットや2008年のダービー馬ディープスカイなどが出走するなど、中々の豪華メンバーの中で一番人気に支持される。
レースでは、直線で先に抜け出したダイワスカーレットを捕まえにディープスカイと強襲するが中々差が縮まらず、
ダイワスカーレットと馬体が並んだところで大接戦ドゴーン!(by アオシマバクシンオー)ゴール。2cm差でほんの僅かにウオッカに軍配が上がった。

次走のジャパンカップでは距離的な問題なのか天皇賞秋の激戦の疲れがあったのか直線で伸び切れずに3着と敗退。
しかし4着の有馬記念馬マツリダゴッホを差し返すなど底力は見せた。
有馬記念のファン投票では1位に支持されたが、回避し来年に備えた。

なお、この年の年度代表馬に選ばれる。

5歳

前年と同じドバイDFを選択する。ただ前年と違うのは前哨戦もドバイで行った。
前哨戦ではG2ジェベルハッタが選ばれるが、直線で内から抜けられず5着となってしまう。
本番のドバイDFも2番手から直線まで進めるが伸びず7着に終わってしまう。

もう衰えたという声もあり引退かと思われたが現役続行、
春は前年と同じヴィクトリアマイル→安田記念のローテーションを選択した。

ヴィクトリアマイルでは圧倒的1番人気に支持され、直線向かい風の強風の中 後続をぶっちぎり7馬身差の圧勝。
続く安田記念では直線で馬群から抜け出せず大ピンチとなるが、
残り200mで無理やり馬群をこじ開け強烈な末脚でディープスカイを差し切り見事に連覇を達成した。
その後は宝塚記念のファン投票で1位に選ばれるも出走せずに秋に備えた。

秋でも前年と同じローテーションを歩むが、毎日王冠では前年と同じようなレースをしてカンパニーに差されて2着。
続く天皇賞秋では直線伸び切れずまたもやカンパニーに敗れ3着。

ウオッカも遂に衰えたという声や、武豊の騎乗に問題があった等の声があったがジャパンカップに出走した。
レースでは「ウオッカに掛かるイメージを持ってない騎手」、また武豊はリーチザクラウンに騎乗するためクリストフ・ルメール(当時、短期騎手免許を取得してフランスから参戦)が乗り代わりで騎乗し、
直線200mで抜け出すと大外から猛追する菊花賞馬オウケンブルースリをまたもや2cm抑えて優勝。

つくづくファンを驚かせる馬である。

またこの優勝でシンボリルドルフテイエムオペラオーディープインパクトと同じJRAのG1を7勝するという快挙を為し遂げる
(地方G1を混ぜるとヴァーミリアンが9勝、アドマイヤドン、ブルーコンコルド、カネヒキリが7勝)。
更に日本生産で日本馬の牝馬ではジャパンカップ史上初(牝馬の優勝ですら20年振りとなり4頭目)。
また更には東京競馬場の芝のレースでの古馬G1全て制覇した事になり、これも史上初。

またまた更には2年連続となる年度代表馬にも選出された(牝馬での2年連続年度代表馬は初、通算6頭目)。
本当にナニがついていないのか調べたくなる馬である

また有馬記念のファン投票ではまたまた1位となり、3年連続での有馬記念ファン投票1位となりこれも史上初。

しかしジャパンカップで鼻出血を発症していたらしく、
有馬記念は出走不可能となり(鼻出血で出走制限の規定により1ヶ月間出走出来ないため)回避。

その後、競馬場がナドアルシバ競馬場からメイダン競馬場に変更され、コースもダートからオールウェザーに変更されるドバイWCに出走する予定だったが、前哨戦として出走したマクトゥームチャレンジラウンド3にて再び鼻出血を発症、ドバイWC出走を取り止め引退した。


同世代のライバル、ダイワスカーレットには負け越したが、それでも超1流馬であり、子供たちを待ち望む競馬ファンは多かった。


【引退後】

引退後はドバイからそのまま欧州に渡り、凱旋門賞などG1を6勝した歴史的名馬シーザスターズと配合。…しかし、相性が良くなかったのか、3年続けて配合された子供達はこれといった成績を残すことができず、
その後父を変えて産まれた子供達も重賞には手が届かず、2021年5月にタニノフランケルの現役引退を以て彼女の産駒は中央競馬から姿を消すことになった。
英国でデビューした2頭のほか、孫にあたる馬も走り始めてはいるが、同様に苦戦しているようだ。
ただ初子ボラーレは早逝したものの、繁殖入りした娘3頭の他タニノフランケルも2021年8月に種牡馬入りが決定したため、これからの孫世代に期待…出来るかもしれない。
余談だが、種牡馬入りしたタニノフランケルと2022年に交配した相手に、スカーレットテイルという繁殖牝馬がいたのだが、これがちょっとした話題となった。同馬の母であるダイワレジェンドはダイワスカーレットの娘。つまり、ウオッカの息子とダイワスカーレットの孫娘の交配が実現することになったのである。スカーレットテイルは翌年の1月9日に無事牝馬を出産し、2頭の産駒が誕生している。

また、ウオッカ引退後の2011年にカントリー牧場は解散したが、谷水氏はその後も馬主としてウオッカ及び産駒達を所有している。

そして2019年3月10日、まさかの悲劇が繁殖のためイギリスにいたウオッカを襲う。
スタッフが早朝確認した際、「どうも脚がおかしい」と即座に病院に搬送したのだが、
診断の結果は「右後肢第3指骨粉砕骨折」という非常に重いものだった。
手術を行うなどして懸命の延命措置を施したのだが、その甲斐もなく、やがて業病である「蹄葉炎」を両後肢に発症してしまう。
「もう回復の見込みがない」と判断され、4月1日午後に安楽死の措置が取られた。享年15歳、父タニノギムレットに先立っての夭折だった。
なお彼女の遺骸は最期の時を過ごしたイギリスの地に眠っており、日本へは遺骨の一部と鬣のみが帰還することになった。

現在の東京競馬場には、馬主である谷水氏から寄贈されたウオッカ像が設置されている。

【創作作品での登場】


桜花賞前に初登場した時は同厩の先輩ディアデラノビアが一人だけ珍集団『ブロコレ倶楽部』で楽しくやっているのを見て羨ましがって桜花賞を落としたが、
ダービー時は「ダービーカクテルコンテスト」という世界観の中、女性バーテンダーとして先輩ポップロック(ダービー同日の目黒記念勝利馬)の助言も得て無事勝利し、同話収録の『2007秋』カラー口絵ではダービー牝馬の先輩クリフジにカクテルをプレゼントしていた。
だがその後菊花賞前には秋華賞での敗退から黄昏て菊花賞勝利前のアサクサキングスに励まされる等しばらく低迷が続いたが、安田記念時オネエ系な香港からの遠征馬達に励まされ復活。
毎日王冠ではスーパーホーネットに敗れついでに彼の対女性耐性を知らぬ間に下げてしまったが、天皇賞(秋)時にはダイワスカーレットとの誰も入れないムードでディープスカイを圧倒し、2009年ヴィクトリアマイル時には前年度のウオッカ会いたさあまりに勝利しちゃった覇者で療養中のエイジアンウインズに勇気を与えた。
7冠が掛った2009年秋には、7冠の先輩たる覇王英雄が期待しながら天皇賞(秋)をテレビ観戦する前で敗れたが、ジャパンカップ勝利後その2頭の前に皇帝と共に漆黒の帝王が曳く馬車に乗り現れ2頭に有馬勝利を期待されたが鼻出血発症による回避も宣言しズッコケられた。
そしてドバイ遠征の直前後輩ロールオブザダイスに引退と海外移住を告白し、後輩達に「行ってらっしゃい」と見送られ出国。テレビ越しにドバイでの鼻出血と引退前倒しが判明した後、ロールオブザダイスが大慌てするのを横目にヴィクトワールピサとルーラーシップは自らの勝利で次代の厩舎代表となる事を誓った。
その後は殆ど出番がないものの、単行本『2010春』での巻末漫画では初年度交配相手シーザスターズとの絵が描かれ、最終巻では娘タニノミッションが登場。
続編『馬なり1ハロン!NEO』第204R(2023年ヴィクトリアマイル)ではかつてのヴィクトリアマイル馬としてグランアレグリアと共に久しぶりに顔を見せている。

ウマ娘ではボーイッシュでやんちゃで純情なオレっ娘。反抗期真っ只中な不良娘……というよりは不良っぽいものや硬派なものに憧れているといった感じで、基本的にはむしろ素直で真面目ないい子ちゃん。
「カッコイイ」ことに強く拘り、幼い頃に夢見たダービー制覇を成し遂げるべく突っ走る。
ちなみにウオッカと言えば牡馬以上に筋骨隆々として筋肉ムチムチで知られているが、相方のスカーレットがばいんばいんなためかこっちはスレンダー担当。不良と優等生という組み合わせではあるものの、あっちがかなり跳ねっ返りで我が強い性格をしているのもありむしろブレーキ役に回ることが多い。

アニメ版ではメインキャラの1人。ゴルシやスカーレットと共にコミカルなやり取りを繰り広げる、いわば三馬鹿的なポジション。
アプリ版では育成対象、かつチュートリアルで確定入手できるウマ娘の1人。
育成シナリオでは概ね史実をなぞり、ティアラ路線からのダービー参戦を経てマイラーとして大成していく。
育成目標が概ね適性通り、かつスタミナ不足に悩まされにくいマイルレース中心なので難易度は低め。差しウマ育成の入門にはぴったり。
シナリオでは思考が基本的に男子中学生(場合によっては男子小学生)のそれで、スカーレットとの掛け合いはさながら小学生の男子と女子を彷彿とさせる。

追記・修正は、見る者を心酔させる方にお願いします。

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  • 大接戦ドゴーン!

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最終更新:2024年04月24日 19:16

*1 この様子を「馬上からの挨拶は失礼ではないか?」などと言った輩もいたが、とんだ勘違いである。そもそもJRAの規定で、不測の事態が起こった場合以外はレース場内で下馬してはいけないのだ。エイシンフラッシュの項目も参照されたし。

*2 同様の不当な批判は、2005年にヘヴンリーロマンスで天皇賞秋を制覇し、天皇・皇后に向けて馬上から最敬礼をした松永幹夫にも向けられたことがあった。

*3 皐月賞7着・NHKマイルカップ11着・日本ダービー2着とウオッカの父タニノギムレットと同じ3歳春ローテを進んだ上で宝塚記念にも参戦した唯一の競走馬で(15着)、その後神戸新聞杯2着を経て菊花賞馬に輝いた。古馬期もG1勝ちこそ無かったものの重賞2勝を記録している。