イルーゾォ(ジョジョの奇妙な冒険)

登録日:2012/06/27 Wed 18:28:57
更新日:2023/12/27 Wed 08:39:08
所要時間:約 7 分で読めます





オレの姿が見えたって事は…

おまえももう(・・・・・・) おしまいだッ!


イルーゾォは、『ジョジョの奇妙な冒険 Part5 黄金の風』の登場人物。
CV:根岸朗(ゲーム版)/中井和哉(アイズオブヘブン)/成田剣(TVアニメ版)
名前の由来はイタリア語で「幻影(Illuso)」。決して「(鏡の中に)いるーぞぉ」と掛けた訳では無い。…多分。


【概要】

パッショーネの暗殺(ヒットマン)チームの一員。
肩まで伸ばした黒髪を幾つかの房に束ね*1「へそ出しのダウンジャケット」というあったかいのか寒いのかわからない服装が特徴。
整った顔立ちだが、相手を舐めきったような上目使いが印象的。
ちなみに、アニメ版での設定身長は約188cm。チームで一番の高身長である。

後述の能力故、自分が優位な時は尊大になるが不利になると一転して弱気になるなど打たれ弱い性格だが、これは全体的に敵キャラが一貫したシリアスさや「悪なりのかっこよさ」を魅せる場面が大幅に増加した5部では珍しい。
ある意味、作品全体のキャラ描写の変化に置き去りになっている感のある人物である。

一応、『ムーディー・ブルース』にタコ殴りにされている最中に本体とスタンドを半分ずつにして行動不能にしたり、
パープル・ヘイズ』の殺人ウィルスに感染しても自分の腕を切り捨てる決断を即座に下し、捕まえられても最後まで諦めず逆転を図る等そこそこに機転が利き、僅かな可能性に食らいつくしぶとさはあったのだが、
保身を度外視して使命を果たすために自らの手首を斬り落としたアバッキオの命がけの行為や、
治療手段を用意した上で敢えて自身にウイルスを感染させて接触してきたジョルノの奇策など、覚悟・知略両面で護衛チームに一枚上を行かれてしまったという印象は否めない。

しかしアニメのオーディオコメンタリーでは
ジョルノ役の小野賢章氏&フーゴ役の榎木淳弥氏から、
「僕がイルーゾォの立場だったら逃げ出します。」と相手に関わらず
任務に尽力する姿勢には一定の敬意が寄せられており、あくまで護衛チームの頭脳と根性が彼のそれを上回っていたというだけで、
イルーゾォがそれらの徳目を全く持ち合わせていなかったというわけではないことは、留意すべきだろう。


【スタンド】


ここ(・・)には『スタンド(エネルギー)は おれの許可なくしては入る事はできない
『おまえ本体』だけ(・・)入る事を許可した

ここにある物は全て命のない『物質』だけだ―――おまえとオレだけ!他に『生きてる物』はいない………

安全で……無敵にふるまえる『鏡の中』…… それが おれの能力

ぼ… ぼくのスタンドが………

これがおれの『マン・イン・ザ・ミラー』!

スタンド名:『マン・イン・ザ・ミラー』

破壊力-C
スピード-C
射程距離-「鏡の中」の世界では数百m(TVアニメ版ではB評価)
持続力-D
精密動作性-C
成長性-E

人型のスタンド。
外見はレザージャケットを着ており、顔はゴーグルをかけたような眼にパカッと開いた口とどことなく某カメ忍者を彷彿とさせる。
名前の元ネタはマイケル・ジャクソンの楽曲『Man in the Mirror』。

◆能力

「鏡」を入口として、「鏡の中の世界」に選択した存在を引きずり込むこと。
「鏡の中の世界」にはルールがある。
  • イルーゾォが許可したもの以外の存在は一切出入りできない
  • 鏡の外で物体を動かす・壊すなどの行動は「鏡の中の世界」にも影響する
  • 本体だけを鏡の中に取り込むことでスタンドを封じることが可能*2
  • 鏡であるならばどんな小さい破片でも能力は作動する。ただし引きずり込む対象と大体同サイズの鏡が必要*3
  • 体の一部分のみを出し入れすることも可能で正中線のラインで止められるとろくに身動きがとれなくなる。
  • 鏡の中の物質は「死の世界」の物で、動かせるのはイルーゾォのみ。
  • 本体が「鏡の中の世界」にいる場合、引きずり込むと決めた対象以外はイルーゾォの姿を確認出来ない。
  • スタンドと分断されて引きずり込まれたスタンド使いは、鏡の中でスタンドを出そうとすると外の世界で発動する。

鏡の中に引きずり込む事にエネルギーを使っている為、純粋なパワーは今一つであり、
肉弾戦は不得意で同じ破壊力C判定の『ムーディー・ブルース』に圧倒されるなど、格闘センスも大したことは無い。
但し、『マン・イン・ザ・ミラー』は丸腰の相手と戦う事が前提の能力の為、
スタンドを使って非スタンド使いを攻める形に持ち込めれば圧倒的優位に立てる*4
「鏡の中の世界」で鏡を持ち、こっそり相手の近くに配置するなどトラップ設置めいた応用も可能。

「鏡の中の世界」から見えるのは物質だけで、生物は死亡して単なる物体にならない限りは決して見えない*5

最大の弱点は、「鏡の中の世界」にいる時は、「鏡の外の世界」の状況が把握しづらい事。
「鏡の中の世界」にいる時は、外の世界で何が起こっているのかは、狭い鏡から見る事と、限定的な「音」でしか把握できない為*6、鏡に映らない、引きずり込めない箇所に逃げ込まれて作戦などを練られたら対処できない。
鏡の中の人間が衣服(物質)を身に付けて動いているのは、精神エネルギーとしてのイメージらしいが、
  • どこからどこまでが身に着けた物体に入るのか?
  • 「携帯電話をかける」とか「銃を撃つ」ような道具としての使用は可能なのか?
については作中でははっきりとした描写が無い。
また、「鏡の中の世界」では絶大な射程距離を持つが、現実世界での射程距離は明らかになっていない。

基本的に自分のテリトリーの中では絶対的な優位を確立できる能力ではあるが、劇中でアバッキオに揶揄されたように、
「まず引きずり込んで無抵抗になった相手をじっくり時間をかけて料理する」というプロセスが無敵過ぎたが為に、そのカタにはまりきった本体のイルーゾォの即応力が鈍っており、
想定外のケースが起きた時にはスタンド自体の非力さも相まって即座に窮地に陥ってしまう脆さを抱えている。
本来ならば、万が一の事態に備えての仲間がいてこそ、真価を発揮出来る能力と言えるのだが、劇中では単独行動をしてしまったばっかりに…!!

総じて直接の暗殺には向かないスタンドであり、どちらかというと潜入・隠蔽向けの能力。
鏡の世界で殺せば遺体は現実に戻る事はなくなり、別作品での鏡の世界における犯行よろしく表向きには行方不明となるだろう。


【劇中の活躍】


ポンペイの遺跡へトリッシュの護衛に必要な乗り物の『(キー)』を取りに来たジョルノ達を発見、入手する為に己の能力に必要な鏡を仕掛けて「中」で待ち伏せていた*7
最初に鏡を発見したフーゴをスタンドと分離させて引きずり込み、一方的に叩きのめすが始末しきる前にアバッキオが動き始めた事で、
中途半端にダメージを負わせたフーゴを放置してアバッキオを次のターゲットと定め追跡を開始してしまう。
この時フーゴを確実に仕留める事を怠ったのが、後々致命的な形で返ってくる事に…

鏡の破片を『鍵』のある犬の床絵の近辺に仕掛ける事で そこに近付いたアバッキオを引きずり込む事には成功するも、それは警戒心から自身の外見を「再生」(リプレイ)した彼のスタンド、『ムーディー・ブルース』だった。
本体がうっかりスタンドを引きずり込んで気が動転した事も災いし、肉弾戦に弱い『マン・イン・ザ・ミラー』は元警官で護衛チームで一番ステゴロが強いアバッキオの『ムーディー・ブルース』の格闘術に手も足も出ずブチのめされてしまう。
そのフィードバックでイルーゾォも手傷を負うものの、隙を突いてアバッキオを鏡に映す事に成功。
アバッキオと『ムーディー・ブルース』を半分ずつ鏡に引きずり込む事で釘付けにする奇策で逆襲する。

だが、アバッキオは何と自分の右手首を切断。
「鏡の中で本体の右手が落ちた」という事は「外で右半身だけ残されたスタンドの手が同じく落ちる」ということ。
アバッキオは巻き戻し能力で『鍵』を持ったスタンドの手首だけを
元の位置に残ったジョルノの下へ送りつける事でジョルノに任務完遂を託したのである。

暗殺者の自分すらドン引きする程のド根性を見せつけられ
慌てて『鍵』を追うイルーゾォだが、アバッキオの予想を裏切りジョルノは逃げずに「何が起きたのかを推理した上で敵を倒し、仲間を救出する」という決意の下、その場に残り続けていた。
これを見たイルーゾォはジョルノが単純に事態を把握しきれず漫然とその場に立ち尽くしているボンクラだと早合点してしまい、
ジョルノを始末してから『鍵』を入手する為、鏡の中に彼を引きずり込もうと不用意に接触してしまう。

…実はこの時ジョルノは既に鏡の破片から敵の能力を推理し、
『敢えてウィルスに感染して引きずり込まれる』という策を用意していた。
結果イルーゾォも殺人ウイルスに感染し、残り数十秒で確実に死亡するという絶体絶命の窮地に追いやられてしまう。
それまで基本余裕綽綽でいた彼も、ここにきてようやく命懸けの覚悟を決め、自身の死力を振り絞る。


ちくしょおお~~~~
何てことしやがるんだ……こんなマネしやがってェェェ………うううう~~~~っ

だが オレを倒したと思ってるようなら…………甘く見るなよォ~~~~
『マン・イン・ザ・ミラー』の世界ならまだ遅くない…
オレも覚悟はいるが まだ遅くない!

『マン・イン・ザ・ミラー』オレだけが外に出る事を許可しろォォォォーーーーッ

うおおおががががが だが!ウイルスは許可しないィィィィィーーーッ
感染した部分は出る事は 許可しないィィィィィィィーーーッ!!

アバッキオの野郎だって「(キー)」のために 自分の手を切断した……
このイルーゾォだって こっ……こォォれしきィィの事ッ!!
こォれしきィィイイのオオ事ォォオオオ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)!!

鏡の外に出る際、感染した部位が出るのを「許可しない」ことで強制的に除去するという緊急手段。
これにより、イルーゾォは生きたまま骨から肉がバラバラに剥がれて千切れ飛ぶという想像を絶する激痛と左手首を失うという代価を払いながらも、どうにか全身への浸食を免れる。アニメでは中の人の演技の関係で上記の台詞後半が楽しそうに歌ってるように聞こえるので非常にシュール

…が、予めジョルノが生命を与えて蛇にしたレンガで居場所を特定され、出現後延々と蚊帳の外で放置されていた『パープル・ヘイズ』をフーゴが改めて遠隔操作した事で捕捉されてしまう。
それでも諦めず壁に引っかかった鏡の破片に『パープル・ヘイズ』の腕を突っ込もうと最後の力でガードするも、
この土壇場で『パープル・ヘイズ』の拳のカプセルが独りでに射出されるというあんまりといえばあんまりなオマケ機能が発動。


なっ 何だってェェェ~~~~~

なああああんだってエエエエエエエエええええええ

せっ…せっかく……!! せっかくこいつの拳をガードできたのに……

せっかく覚悟決めて 腕まで失って「鏡の外」に 出てェ来ィたァのォォにィィィーーーー

うわあああああああああああ

ブッシャアアアァーーーッ

すぐ目の前の石壁に当たって割れたカプセルから漏れ出したウイルスに感染した挙句、
トドメにこれまでの鬱憤をぶちまけるかのごとき『パープル・ヘイズ』の獰猛なラッシュを食らい、「ふあああ~~」という断末魔を残しながらドロドロに溶かされて「病死」。
彼の死後、そこに残ったのは腐汁に浸かったボロボロの服だけ…
『幻影』の名前の通り、死体さえ残らない末路という結果的にシリーズを徹しても有数の悲惨な最期を遂げたのだった。
これにより、彼のスタンド能力で創られていた鏡の世界も解除された。

その後、ジョルノは『カプセルを割った場所のレンガから生ませた蛇』
つまりはパープル・ヘイズのウィルスに対しての免疫のある生き物からワクチン(血清)を作って、感染を食い止めた。
この経験は後に大いに役立つことになった*8


彼の敗因は概ね圧倒的有利な状況からくる慢心である。

フーゴを鏡の中に引きずり込んで戦闘不能状態にしておきながら、もはや情報を聞く必要もあまりないのに殺さずに放置してしまった。
結果、ウィルスによって安全地帯から片手を犠牲にしつつ逃げ出さざるを得なくなり、とどめまで刺された。
アバッキオについても、余裕綽々で煽っていたら鍵を奪取された上に殺害の機会まで失っているなど、やはり本体自身の失態が目立つ。
アニメでは冗談半分でホルマジオの能力を「くだらねー」と言っていたが、
ホルマジオの「スタンド能力の『くだる』、『くだらねー』はここ(頭)の使い方ひとつ」という持論通り、皮肉にも自身の強すぎる能力を「くだらねー」使い方をしてしまったのは彼自身であった。


今までも時々いた「スタンド能力自体はチートレベルだが、本体自身の凡ミスや慢心で負けた」敵スタンド使いのカテゴリーに入る人物と言えるだろう。


【余談】

外伝小説『恥知らずのパープルヘイズ』では、シーラEの姉を殺害した事が明らかになっている。
詳細は不明だが、任務の巻き添えで殺してしまった、と言った所だろうか。


ゲーム版では、鏡の世界では移動方向の左右のみが入れ替わるようになっている。上下はそのままなのがややこしく、なかなか慣れない。
自信がなければ外の世界のスタンドに攻撃を任せ、鏡の中の本体は逃亡し続ける方が無難である。


TVアニメ版では上記の通りに自分の能力を鼻にかけてホルマジオの能力を「おめーの『くだらねー』スタンド」とジョークに近いノリで小馬鹿にしたり、ソルベとジェラートの仲を「アイツら、デキてんだろ?」と冷やかすなど、
『お調子者だがデリカシーに欠けるところがあり、軽はずみに無神経な発言をする』という描写がされている。

一方で、ペッシはイルーゾォの敵討ちに真剣になっていたし、馬鹿にされていたホルマジオも「てめーこそくだらねーよ」と煩そうに返しながらも本心から嫌っているという風ではなく、その後も軽口を叩きあう微笑ましいシーンがあるなど仲間内では基本的に憎めない奴扱いであり、
さらっとキツいことを言っても普通に流してもらえる妙な人徳の持ち主であったようだ。
また、会話の中ではリゾットのことを「リーダー」と発言しており、彼のことはチームの頭目として尊敬していたようだ。

不意打ちだろうが偶然のラッキーパンチだろうが、とにかく1発入りさえすれば格上のスタンド使いでも完封しうるその脅威的な初見殺し性能の高さから、最強スタンド議論にも名前が上がることがある。
ただし、分断するための「本体」という概念そのものが存在しないひとり歩きしているスタンドのような存在に対処できるのかどうかなど、未知数な部分は多い。


「鏡の中の世界に引きずり込む」という能力から、第3部における花京院典明の台詞『鏡に「中の世界」なんてありませんよ…ファンタジーやメルヘンじゃあないんですから』と絡めてネタにされやすい。
一応この発言は混乱していたポルナレフを諫めるためだったためそこまで深い意味はないが。
またこのスタンドも「鏡の中の世界を作る」能力と考えれば矛盾はない。多分。


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最終更新:2023年12月27日 08:39

*1 偶然だが第8部のヒロイン、広瀬康穂と同じヘアスタイルである。

*2 メリットがないので自発的にやることはないがスタンドのみを鏡に引きずり込むこともできる。

*3 たとえば腕を掴んで引っ張り込むなら手のひらサイズ程度の鏡が要る。

*4 それでもフーゴ1人仕留めるのにスタンドで殴るなどしてもかなりモタモタしており、ナイフか拳銃でも持っていれば仕事が捗りそうな雰囲気ではあった。

*5 『パープル・ヘイズ』の能力で上空を飛んでいたカラスが死んだ時は、忽然とドロドロに腐った死体が地面の上に出現した。

*6 聞こえるのは砂利を踏んだ時などにでる「足音」ぐらいで、声は近くに行かないと聞こえない模様。

*7 ボスの指令を盗み見る機会が暗殺者たちには一切無かったのに何故ここまでジャストに先回りできていたかについては説明が無く、ファンの間でも永らく議論のお題になっている。

*8 正確にはワクチンではなく血清。アニメでは血清に修正されている。