切腹/ハラキリ

登録日:2012/10/09 Tue 01:39:50
更新日:2024/01/03 Wed 22:22:28
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「うおおおおーーーっ!
 いてえええええーーーっ!!


 これが 究極のスポーツ
 “セップク”なのかーっ!!」


切腹(せっぷく)とは、自分の腹部を短刀で切り裂いて死ぬ自殺の方法の一つ。
英語圏ではこの自殺を取る人間は居ないのか、英語で切腹のことを[Harakiri](ハラキリ)という。オックスフォード辞典にも載っているため間違いは無いだろう。


ちなみに、パソコンでハラキリと入力しても『切腹』と変換される。試してみよう。


  • 刑罰としての腹切
戦国時代後期~江戸時代にかけて切腹が名誉ある死に様であるという認識が広がり始め、不始末を起こした人間に対し、切腹を「許す」という扱われ方をしていた。
逆に、切腹を許されず打ち首で処刑されるというのは、武士にとって最大の不名誉であった。また、あくまで武士に適用される刑罰であり、その他の身分の者に切腹が命じられることはほとんどなかった。

切腹そのものの致死率は低いので、腹を裂いた後に立会人(介錯人)に首を刎ねて殺してもらう(介錯してもらう)のが通例であった。
この場合、介錯を務める人間は、たとえ相手が不倶戴天の宿敵だろうと敬意を払うのが礼儀とされている。
死刑直前と言う厳粛な空気の中、別れの盃を交わしたり、最期の晩餐となる豪華な食事を振る舞うこともあるが、腸の内容物が出るのは見苦しいとされ食事は取らないということも。
しかし罪人の増加と共に、悲しいかなこれ等の流れは次第に簡略化されていった。
切腹用の短刀に手をかけた時点で首を落としたり、しまいには扇子で腹を切る仕草だけして、なんてことにも。(『シグルイ』の冒頭で徳川忠長が処刑されたシーンがそれ。扇子に手をかけただけで介錯されている。)
また女性はやらない。女性が自害する場合は懐刀で喉を突くという方法がほとんどである。

なお、建前上は「腹を切ってから介錯して首を切る」なので、本人の承諾があるなら首を切るのを待ってもらえたらしく、幕末の堺事件(フランス軍の水兵と土佐藩士の銃撃戦、フランス水兵11人死亡)で、
切腹を申し付けられた土佐藩士が怒りの矛先をフランス軍の艦長に向け、即首を切られずに艦長に文字通り腹を割って見せつけた事例がある(最終的には首を切られた)。*1

逆に、古代ローマや中国では『腹裂きの刑』というものがある。
切腹とは違い、こちらは処刑ショーと言った方がいいだろうか。
大勢の観衆の中で、看守が罪人の腹をかち割る恐ろしい刑罰である。
魔女狩りにもこの方法が取られたこともあり、『腹を裂いて、内臓の色が緑だったら魔女』なんていう無茶苦茶な裁定があったことも……

また、かつて存在したアステカ帝国では、生贄(の心臓)をささげると言う意味で腹裂きを行った。
こちらも大勢の観衆の前だが、眺めて楽しむ処刑とは意味がまるで異なる儀礼的な催しであり、生贄に選ばれることは大変名誉なことと認識されていた。


  • 自殺としての腹切

手元に刃物があれば誰でも出来る。
が、致死率は意外に低く、内臓がはみ出してるのに数分は意識があるとかはザラ。
その間に第3者に見つかったり、の恐怖のあまり周囲に助けを求めたりするのがオチだろう。
真似する人間がいたら困るので詳細は書かないが、とにかく『ものすごく失敗率が大きい自殺法』とだけ書いておこう。
士官先が悉く滅亡していくデス武将こと日根野弘就は、とある日の午後に大坂の陣で内通したことの後難を避けるため発狂を装い切腹後腸を引きずり出して木にかけた。
だが証拠隠滅を忘れていたことに気づき慌てて処分すると、死ぬ気が失せたと言って普通に晩飯まで食い就寝中にようやく苦しみだして介錯を求めたという。そのぐらい死ねないのだ。
とある弁護士は、中学生時代にこの方法で自殺未遂を図り、一生残る傷を負ったとともに、それをネタにクラスメイトはおろか教師からもイジメを受けたという。
死にたいなら首を刺せ、ということだ
また、特攻を命令していた大西瀧治郎は、自分を罰するためにわざと介錯をつけず、半日以上苦しんでから死んだという。

日本で一番有名な自殺としてのハラキリは三島由紀夫の割腹自殺であろう。
ちなみに、外国では『カミカゼ』とともに会話のジョークの中でしか用いることはなく、外国でこの自殺を図った人間はもれなく『日本かぶれ』の称号を手にするだろう。
なお、相撲の審判を行う行司は、誤審をしてしまった時に切腹をするため、特別に帯刀を許可されているが現代は模造品の竹光などを懐刀として入れている。
余談だがジグモという蜘蛛は頭に巨大な牙を持ち、
牙が物体に触れると反射的に自分さえも噛みつく習性があり、牙を腹の方につつくと自分の腹を噛みつき自害するため「ハラキリグモ」「サムライグモ」の名前を持つ。

かつての歌舞伎では「陰腹」と呼ばれる歌舞伎で、登場人物が観客に見えないところで切腹し、文字通り血気迫る迫真の演技をするという技法があった。
当然現在は行われていない。


ゲーム漫画、娯楽の中での切腹

吉光はその場で切腹する『不惑(まどいなし)』という自爆技を持つが、に当たり判定があり、何故かガード不能でダメージがべらぼうに高い。
最近のバージョンでは発動時のダメージで自分がKOになってしまう状況でも、相手に当ててKOできれば自分の体力が1残る仕様になっており、ガードを固める相手への裏の手としても機能する。
単体でもインパクト抜群の技だが、刀を腹に刺した状態のまま回転突撃する『卍血桜』や、間髪入れずもう一度切腹し相打ちなしなら確定で自分が死ぬ極・不惑(きわみ まどいなし)』という派生技まで存在する。

  • 機動戦士ガンダムEXVSシリーズ
『機動戦士ガンダム00』から参戦したスサノオが『レバー下入れ格闘』で切腹する。同じく刀に当たり判定があり、頑張ればコンボに組み込むのも可能。
コスト調整のためにわざと自爆するのも立派な戦術である。
パイロットのグラ…ミスター・ブシドー刹那に敗北後、切腹をしようとしたが思い止まったシーンがある。

  • ストリートファイターフィルム
映画オリジナルキャラ『キャプテン・サワダ』は、ゲーム化したときに何故か切腹し血飛沫を放って攻撃するという謎技を持ってしまった。必殺技故に「獄殺自爆陣」なんて名前も付いている。ハラキリ!
相手の飛び道具と相殺し、血飛沫が自身を包むように発生するため対空にも使える…と地味に高性能。


裏ボス・ショウは、「自らを絶つ」という隠し技を持っていた。切腹するとなぜか相手にも同等のダメージが行くという、ガードも回避も不能の技。
ちなみにこの技、相手の方が早く体力が減るため、ダブルKOになった場合もショウの勝ちになるという理不尽仕様であった。
が、元々隠し技な上にコマンドも複雑怪奇、その上双銃使いのヴァーミリオンという更なるチートキャラが出ていたため、あまり話題に上がることはなかった。

主人公らの乗るマシン・ヴァルヴレイヴは戦闘を続けると蓄熱によりオーバーヒートし行動不能になる欠点を持つが、
主人公機のみ溜まった熱量が限界を超えると、ブレードに莫大な熱量を纏わせ艦隊一つを薙ぎ払う威力と範囲を持つ攻撃が可能になる。
その名をズバリ ハラキリ・ブレード
差し当たり『腹部の動力炉のカバーが開放され、手に持ったブレードを自らの腹部に突き刺す』というモーションが発生し、ハラキリと名付けられたのもここから。
巨大ロボが切腹をするという画 と繰り出す前後に長時間行動不能になるリスクに見合った凄まじい攻撃力は、
作中の登場人物達は元より、視聴者達を唖然とさせた。

シリーズ作の「ディセプション」にて自決用のシステムとして「HARA-KIRI」が登場。
相手に2セット取られてこちらが*2「FINISH HIM/HER」の状態になったときに発動できる技だが、実際に技名の通りに「切腹」しているのはケンシだけで(多目に見てもキラ位しかいない。)、他のキャラクターはその死に様から「KUBI-KIRI」等と呼ばれている。「KUBI-KIRI」ばかりだから「HARA-KIRE」なんて言われたりも…
ケンシと同じく刀を装備しているスコーピオンも例外ではなく、一応正座はするものの刀は使わず素手で首を折って自決する。

  • 暁!男塾
塾の借金返済が無理になって江田島平八が借金取りの前で切腹しようとしたが、その腹はすでに傷だらけであり「過去に何度も切腹したけれど頑丈すぎて死ねなかった」という仰天の事実が明かされた。
また、男塾シリーズのパラレルである天より高くでは剣桃太郎が切腹しようとしたがこちらは未遂に終わっている。

スキルとして登場。ショーグンのveteranスキルで、前提になるスキルは無い。
肝心の効果だが、自分を犠牲に味方全員のHPを回復し、一定確率で蘇生もさせるという実に世界樹らしいぶっ飛んだスキルになっている。
他職のスキルに戦闘不能を防ぐスキルがあるのだが、切腹はそれらを無効化し確実に死ぬ。
蘇生確率は低いが回復量は多く、今作のショーグンは回復スキルの依存ステータスであるWISがそれなりにある為、緊急の回復手段としては意外と役立つ。
介錯で敵も味方も問答無用で切り捨て、切腹で問答無用で自刃するという、現実ではとても考えられないとんだ将軍様である。

同シリーズの天草降臨よりシステムとして登場。厳密にいうと自害コマンドであり、切腹モーションになるのは一部。
成立すると問答無用で負けになるが、天草降臨では次ラウンドの怒ゲージがMAXで始まるというアドバンテージがあった。
負けそうなラウンドでは敢えて自害して怒りを貯め、次のラウンドで逆襲するという駆け引きが生まれることとなる。
しかし14連斬などで怒りを貯めやすい天草降臨ならともかく、他の作品ではあまりにも大きすぎるアドバンテージなためかゲージ量が少しだけになったり、まったく増えないただの自殺コマンドとして残されていた。

  • ヴァンパイアシリーズ
ビシャモンの必殺技として『ハンター』より実装。「相手に切腹させる」技である。
『ハンター』ではES版撥ね刃、『セイヴァー』以降はES版辻疾風が該当。
いずれもヒットすると相手に亡霊を取り憑かせ、亡霊の切腹する動作に合わせ自害させる。あくまで普通のダメージ技であり、必ずKOするというわけではない。
なおほとんどのキャラは腹を一突きするモーションとなっており、ちゃんと(?)裂くのはドノヴァンくらい。
一部のキャラは脇の下からの斬り上げ(ザベル)だったり首切り(バレッタ)だったり口から飲み込み(オルバス)だったりともはやハラキリですらない。

  • 戦国大戦
織田家所属の平手政秀が計略として切腹を使用。使用すると味方の士気が上がるが自分は撤退する。
この人物、幼き日より織田信長の家老を務めた人物で、うつけと評された彼の行動に頭を痛め、分裂しかけた織田家を収めるために腹を切ったという忠義の人。
ここまでは普通なのだが、問題はこのゲーム、切腹しても30秒前後で戦場に戻ってくることが可能。
そのため、戻ってきては腹を切って戻ってきては腹を切ってを繰り返させる老体に鞭打つブラック主君が後を絶たなかった。

忍殺語では自決全般を「セプク」と称する。拳銃自殺でもセプクである。ただしセプクする=腹を切るケースが圧倒的に多いため、やたら切腹したがる世界という認識もそれはそれで正しい。
責任を取ることを求められたがセプクするほどではない場合は大体、指を落とす「ケジメ」を行わされる。
一方、「ハラキリ」と言うと、儀礼的な性質を含んだ切腹のみを指す。
「ニンジャとは、平安時代の日本をカラテによって支配した半神的存在である。しかし彼らはキンカク・テンプルで謎のハラキリ儀式を行い、歴史から姿を消した」

  • 鬼滅の刃
時代設定は大正時代だが、戦国時代まで遡る鬼殺隊では『詫び』の慣習として残っている様子。
劇中では『主人公の炭治郎の妹の禰豆子が人を襲いかかった場合、鱗滝左近次と冨岡義勇が腹を切ってお詫びする』旨の手紙が書き添えられている。

物語終盤ではとある人物が育てた弟子が鬼に堕ちた際、その責任感から自ら『けじめ』として介錯無しに切腹し、長時間苦しんだ後に死亡している。



そしてゲームアーツからはこの切腹を重要なファクターに据えた怪作・HARAKIRI(PC-8801)が世に送り出されている。詳細はリンク先にて。












追記・修正は、相撲で誤審をしてしまった後にお願いします。
(スポーツ新聞の大見出しになる程の重罪です)

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最終更新:2024年01月03日 22:22

*1 この時本物の切腹を見た日本人たちは当事者含め異様なテンションになっていき、フランス艦長は(自分たちの死者と同じ11人死んだからもういいと)12人目の切腹を止めに入ったという逸話が残っている。

*2 便宜上「こちらが」と書いたが実際はコンピューターも使用してくる。