アルゼンチンアリ

登録日:2012/11/09 (金) 16:21:54
更新日:2023/06/13 Tue 13:09:29
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アルゼンチンアリとは、南米の熱帯地方等に生息するアリの一種。アリの中では比較的小柄な体格である。
濃い褐色の体が特徴で、腹の部分に一筋の縞模様がついている。
そして、世界の侵略的外来種ワースト100に選ばれている、恐るべき外来種でもある。


○概要

アルゼンチンアリの武器は大あご。攻撃的な性格で、他の種類のアリの巣を見つけると群れを成して襲いかかり、ハチや鳥の巣まで襲うほどの獰猛さを持つ。
人間や家畜等の大型動物にも果敢に挑み、噛みつかれるとかなり痛いしうっとうしい。

巣の特徴として、卵を産む女王アリが複数存在する事が挙げられる。
原産地の南米ではスコール等の大雨で巣がよく水没してしまう為、巣が全滅しないように対策を取っているのだ。
また、いざという時に備えて頻繁に女王アリの一部が新しい巣へ移る「分巣」という行動をとる。
なお、熱帯地方に住んでいるにもかかわらず、行動可能な気温は5℃~35℃と意外に広い。

これらの特性が、原産地を離れた時の最大の切り札となったのである。


○外来種として

ペットや食料として広がったアライグマニジマスとは異なり、
アルゼンチンアリは人間や物資の中に紛れこんで新天地へ乗り込んでいったと考えられている。
日本で最初に確認された広島県廿日市市には輸入木材を扱う港があり、その木材の中に紛れ込んでいた可能性が高い。

このアルゼンチンアリが侵入して最も被害を受けるのは、土着のアリ達である。
攻撃的かつ繁殖力も旺盛なアルゼンチンアリは、餌を奪うどころか相手を皆殺しにしてしまい、
侵入された地域ではアルゼンチンアリ以外のアリは全滅している場合が殆ど。

たまにテレビ番組でアリ同士を戦わせるような実験が行われると、ほぼ100%の確率で上述の結果に終わる。
実験のために殺された他のアリはとんだとばっちりである。

また、アルゼンチンアリも他のアリ同様に甘い物は大好きであり、草木の汁を吸う害虫であるアブラムシやカイガラムシを積極的に保護してしまう。
彼らが出す甘い汁を得る為だ。もちろん彼ら自身も甘い実がなる果実をどんどん食べてしまう為、必然的に植物や農作物への被害は雪ダルマ式に増える。

そして、人間への直接的な被害もとてつもない事になっている。
このアルゼンチンアリ、もちろん普通のアリ同様に地面に巣も作るが、それよりもひび割れや隙間等のほうが大好きで、一度目をつけるとすぐに巣を作ってしまう。
その図々しさは半端ではなく、民家や車のトランクまで自らの住処にしてしまう。
そして一度住み着いたが最後、堂々と家の中を歩き回り、邪魔をする人間に噛みつきまくるのだ。

さらに脅威なのは、その巣の規模である。
一般的にアリは同じ種類でも違う巣の個体とは敵対するもので、アルゼンチンアリも本来はその例に漏れない。原産地ではそうして巣同士で争い合った結果個体数が適切に保たれており、他の種を駆逐したりもしていない。
だが外来種として他の土地に渡ったものは少数の個体を起源として増える関係上全員親戚とでもいうべき状態になっており、他の巣の個体と殺し合うどころか仲間と見做して巣同士で行き来するようになったりする。
その結果、大量の群生が一つにまとまった「超巨大コロニー」が形成されてしまう。
ヨーロッパの一部地域では、1000匹以上の女王アリ、100万匹の働きアリを抱える直径100kmにも及ぶ凄まじいほどの大軍団に膨れ上がった例もあるとか。
まさか生息域全体に大量の殺虫剤をぶちまけるというわけにもいかず、こうなってしまえばもはや完全な根絶は不可能と言ってもよい。
毒餌や誘因フェロモンなどで地道な駆除を繰り返し、それ以上の拡散を防ぐしかないのだ。


○日本の状況
アメリカ合衆国、オーストラリア、ヨーロッパ、南アフリカと世界各地で次々に増え続けているアルゼンチンアリは、既に日本にも上陸している。
前述の通り、日本で初めて見つかったのは1993年の広島県廿日市市。それを皮切りに、広島市や呉市、隣の山口県岩国市と勢力をどんどん広げ続けている。
アルゼンチンアリが侵入した地域では、これまで存在していたはずの在来種のアリは一切姿を消したと言う。
しかも、その勢力は中国地方だけには留まらない。人や物資に紛れこんで日本各地へと広がり、兵庫県のポートアイランド、愛知県豊橋市、京都府、徳島県等でも繁殖が拡大している事が報告されている。
関東地方でも既に神奈川県・東京都等で繁殖が確認されているようだ。


○対策
定着地域で家の中への侵入を防ぎたい場合、食べ物を放置せずしっかりと保管する、建物の塀等の隙間を塞ぐといった方法が有効。
先述の通り一度その地域に定着されると根絶が非常に困難になってしまうため、対処は早めにしなければならない。
もしも見慣れない、足の速い褐色のアリを見かけたら必ず自治体に届け出よう。

○フマキラーVSアルゼンチンアリ
そんな恐ろしい状況の中でも、懸命に戦いを挑んでいる殺虫剤メーカーがある。
広島で創業し、日本に侵入したアルゼンチンアリを最初に確認したメーカー、「フマキラー」だ。
2005年に国から正式にアルゼンチンアリの飼育の許可を得てから、本格的に対アルゼンチンアリ用の殺虫剤の研究を開始。
現在はアルゼンチンアリ対策の侵入防止薬剤の他、アルゼンチンアリの餌に偽装して巣ごと全滅させる「ベイト剤」も発売されている。

ただ、単に薬剤だけを使っただけでアルゼンチンアリを完全に退治する事は不可能である。
上記の「対策」での防御手段と一緒に使用してこそ、効果が最大限に発揮されるのだ。


追記・修正する前にご確認ください。
皆様の部屋に、褐色のアリは入っていませんか?

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最終更新:2023年06月13日 13:09