ゴジラVSビオランテ

登録日:2011/03/21 Mon 14:47:24
更新日:2024/01/27 Sat 17:03:32
所要時間:約 7 分で読めます






第一種警戒体制
 Gの活動が物理的以外の科学、地質、気象、精神などいかなる点でも1つ確認された場合。

第二種警戒体制
 Gの活動が声、動きなど物理的に確認された場合。

第三種警戒体制
 Gが出現した場合。

第四種警戒体制
 Gが日本のある特定地域に上陸することが確実とされた場合。


〈国土庁・特殊災害研究会議〉




ゴジラ

VS

ビオランテ





1989年12月16日に公開。ゴジラシリーズ第17作目の作品。
観客動員数200万人
上映時間105分

前作 「ゴジラ(1984)
次作 「ゴジラVSキングギドラ


【主要スタッフ】

製作:田中友幸
脚本・監督:大森一樹 特技監督:川北紘一
音楽:すぎやまこういち 編曲:デービッド・ハウエル

【概要】

平成になってから初めてのゴジラ作品であり、前作の明確な続編として作られた。

続編の制作は早い段階で決まっており、原案を一般公募で募集し、小林晋一郎氏の「ゴジラ対ビオランテ」が採用された。
なお、小林氏は『帰ってきたウルトラマン』の第34話「許されざるいのち」の原案者であり、「植物と動物の融合獣」「芦ノ湖」など、共通点がある。
関係無いが、当の小林氏は歯科医師である。両監督から歯科医の仕事って何?と突っ込まれていた。

監督、脚本には新鋭の大森一樹氏を起用。
同じく初起用となった川北特技監督と共に細かくスピーディーなカット割で新しいゴジラ映画を作り上げた。
両監督共平成VSシリーズに引き続き参加している。

音楽はドラゴンクエストシリーズで有名なすぎやまこういち氏を起用し、新しいゴジラ像を音楽で彩った。

また、要所では伊福部昭氏の作曲したゴジラのテーマや怪獣大戦争マーチが使われている。
音楽自体は井上誠氏によって新たに演奏された物を使っている。


しかし、制作決定は早かったものの、様々な事情で撮影開始は延び延びになった。
川北監督の自伝によると、ストーリー公募は1985年(前作「ゴジラ」の公開直後)には行われ、1986年にはプロットも出来ていたが、
正式に制作が開始されたのは『ガンヘッド』を撮影している最中の1989年だったとのこと。

『ガンヘッド』の制作と仕上げに追われたおかげで『vsビオランテ』のクランクインがお盆頃になってしまい(『ガンヘッド』は7月22日公開)、撮影期間が短くなり、
おまけにビオランテのデザインが難航。複数のデザイナーが100を越すデザインをした、それだけしたのに撮影が始まってもまだ植獣形態が決まらない、などの苦労譚がある。
最終的に完成したのが公開の二週間前であった。


興行成績こそ前作以下だったものの、
「核の次は遺伝子工学が人類の脅威になる」という高いテーマ性を持ったストーリーや、総力を挙げてゴジラへの対抗策を講じる自衛隊のかっこよさ等から評価の高い作品である。
2014年に行われた「ゴジラ総選挙~あなたが選ぶ!ベスト・オブ・ゴジラ~」では、この手の投票では1位が絶対的定位置だった初代を破り、頂点に輝くという栄冠を成し遂げた。

一方、硬派過ぎてやや難解なストーリー、ビオランテのキャラクター性の弱さ、怪獣同士の戦闘シーンの少なさなど課題も多く、それが平成VSシリーズワーストの興行成績となったのも確か。
本来、次回作はスピンオフとしてモスラを主役とした「モスラVSバガン」を予定していたが、「ゴジラでも新怪獣では厳しいのに、モスラではさらなる苦戦は免れない」「練り直しが必要だ」と判断され、
一年間の空白をあけたのち、往年の怪獣の復活路線と、よりエンターテイメント性を重視した「ゴジラVSキングギドラ」の製作に転じることになる。


ゴジラVSスペースゴジラ』はスペースゴジラの誕生理由や本作の権藤一佐の妹や親友が登場するなど関連が高い。
しかし「『VSキングギドラ』で三代目ゴジラが抹消されたため、本作の出来事はなくなるのでは?」という矛盾は指摘されている。
(ぶっちゃけると三代目ゴジラの足跡が全く消えた様子がないため、四代目ゴジラが三代目と同等の動きをした可能性がある)


漫画版も製作されており、別冊コロコロコミック誌に掲載され後に単行本化された小林たつよし氏のもの、
ニュータイプ100%コミックスから『ゴジラ1990』の題で出版された平野俊弘氏の2作が存在する。
いずれも映画のシナリオを下敷きにしながらも、前者では没案となったラストシーンを踏襲したり、
後者でも最終決戦の地を大阪に移したりと、幾許かのアレンジが成されている。

また有馬治郎氏の小説版も存在し、こちらは大筋こそ映画に沿いながらも大幅なオリジナル要素が詰め込まれており
一部登場人物の生死、介入する勢力の増加、スーパーX2周りの描写等々、特に終盤近くはかなりの相違を見せた内容となっている。


【あらすじ】

1984年。ゴジラが三原山に封印された後、自衛隊は破壊された新宿で「ゴジラ細胞(G細胞)」の回収作業を行っていた。
しかし不滅の遺伝子を秘める「G細胞」を求め、アメリカ遺伝子工学企業の共同体・バイオメジャーも現れる……

混乱する略奪戦の末、G細胞は中東・サラジア共和国のエージェント「SSS9」の手に渡りそのままサラジアへ。
しかし、バイオメジャーは報復にサラジア工学研究所もろともG細胞を爆破。研究所で研究していた白神博士は一人娘の英理加をテロで失う。

それから五年の時が過ぎ1989年、三原山が活動を始め、ゴジラの覚醒が近づいていた。
政府はゴジラ対策のため「抗核エネルギーバクテリア(抗核バクテリア)」の制作を決意。しかし制作は難航……
とある「条件」と引き換えに白神博士が協力し、ついに抗核バクテリアは完成した。

だが、抗核バクテリアの存在を掴んだバイオメジャーは、「三原山の爆破」、即ちゴジラの復活と引き換えに抗核バクテリアを要求。
しかし抗核バクテリアは乱入したSSS9に強奪され、更にその時のゴタゴタで爆破スイッチも制御不能に。
遂に三原山は大爆発し、ゴジラが復活した。

そして時を同じくして、もう一匹の『怪獣』が産声を上げる……


【登場怪獣】

※各種スペックは小学館『東宝特撮全怪獣図鑑』より抜粋。

ゴジラ

別名:怪獣王
身長:80メートル
体重:5万トン
武器:放射熱線、体内放射
演技者:薩摩剣八郎

5年前に三原山に封印されたが、バイオメジャーにより三原山が爆破されたことで復活した。
本作ではリアリティや生物感を出すために、目を鷹みたく白目を無くしている。また頭部を小さくし、身体とのバランスを整えてイケメン化した。
このデザインはこれ以降、平成VSシリーズの基礎となり、現在でも最も人気のあるスタンダードなゴジラとして広く周知されている。
また、本業が「歯科医」である小林氏の助言により歯が二重になった。

ビオランテ

別名:バイオ怪獣
身長:85メートル(花獣) / 120メートル(植獣)
体重:6万~10万トン(花獣) / 20万トン(植獣)
武器:放射樹液
演技者:竹神昌央(花獣) / 柴崎滋、木村義隆(植獣)

バラとゴジラの細胞が融合して生まれた植物怪獣。
巨大な触手が武器であり、東宝怪獣最多のピアノ線を使用した「繰演の怪物」であり職人達の本気が見れる。
タイトルに名前が出ているが、この映画はゴジラと人類の戦いや人類側の人間模様が主軸なので、実際の出番は少ない。とくに植獣形態の出演時間はトータルで10分も無い。
しかし、劇中ではそれ以上の活躍と絶大な存在感を見せた。


【登場人物】

・桐島一人
演:三田村邦彦

筑波にある生命工学研究所の研究員。非常に優秀な人物でマサチューセッツ工科大学からスカウトが来るほど。
バクテリアの性質からゴジラへの対処法を提言したりもしている。
バイオテクノロジーがいずれゴジラのような『怪獣』を生み出すのではないかと危惧しており、白神博士や大河内会長としばしば対立。
殺し屋と1:1で戦おうとするなどアグレッシブというか微妙に後先考えない。
最終的にアメリカには行かず、日本にとどまることを決意した。
なおリアルでの息子は後に黄金騎士になった。
「それがあなたの言う『科学』ですか……!!」
「同じことを繰り返している限り、新しい時代とは言えません。」

・大河内明日香
演:田中好子

未希がいる精神開発センターの職員で桐島の恋人。父親の誠剛は政財界の大物である。
英理加とは大学時代からの親友であった……終盤に桐島の行動をバットマンみたいと評したがどの辺がバットマンだったのは永遠の謎。
ちなみに『仮面ノリダー』にもゲスト出演し、後のMyde隊長から猛烈LOVEコールを受けたりこっそり所持していたゴジラ細胞を木梨猛に巨大化のため持っていかれたりした。
「あなたがロミオのつもりでも、私はジュリエットをするつもりはないわ」

・三枝未希
演:小高恵美

精神開発センター内で最も強いエスパー能力を持つ少女。その力はゴジラとも渡り合ったほど。
後の「VSキングギドラ」以降、シリーズ最終作「VSデストロイア」まで皆勤している。
本作では絵で未来予知をしていることが多いが、ビオランテの心を視聴者に伝える役割も持っていた。
「……いる! ゆっくりと動いてる!」

・黒木翔
演:高嶋政伸

防衛庁特殊戦略作戦室室長。階級は三等特佐。防衛大学を首席で卒業し、対ゴジラ作戦を担当する若手エリート集団を指揮する。
情報操作や実験段階のシステムを投入するなど大胆だが的確であり、想定から外れた事態に対しても慌てずに対処している。
坂井孝行氏によるコミカライズ版平成ゴジラVSシリーズでは三枝未希が登場しない代わりに皆勤、「VSデストロイア」では主役を務めた。
「勝ったほうが我々の敵になるだけです」

・権藤吾郎
演:峰岸徹

陸上自衛隊一佐。
陸自から「ゴジラ対策室」こと「国土庁特殊災害研究会議」に出向。
しかし当のゴジラが三原山に封印されていたため、殆ど仕事がなく左遷も同然である。
ちょっと不謹慎な発言もあるが、その実力は本物である。
後の「ゴジラvsスペースゴジラ」に妹と親友が登場。
「そろそろ出てきてもらわんとなぁ、こっちが税金を食う怪獣になっちまう」
「ゴジラは出るわ……抗核バクテリアは持ってかれるわ……絵に描いたような最悪の事態ですなぁ~」
「薬は注射より飲むのに限るぜ!!ゴジラさーん!!」

・SSS9
演:マンジョット・ベディ

石油に代わる資源としてG細胞の遺伝子を組み込んだ植物を開発し、自国の砂漠を穀倉地帯に変えようとする中東の国家・サラジア共和国から送り込まれたエージェント。
SSS9とは「サラジア・シークレット・サービス」のNo.9の意味。どんな急いでいても階段は1段1段小刻みに降りる人。
研究所に向かったらビオランテに襲われてビビったり、飛行機がゴジラの影響で飛べないことに腹だてたり、
ブラインドを開けたら目の前にゴジラがいてまた腹だてたり、博士暗殺に成功後の桐島とのカーチェイスで前方不注意で派手にクラッシュし、
最後は桐島との取っ組み合いの末に銃を向けて射殺しようとするが、
立っていたのがM6000TCシステムの電位差発生装置上だったせいで死んでしまったりとエージェントの癖に人間味がありうっかりが多い。
しかしながら、殺す側に回った時は顔色一つ変えず冷酷・的確に殺しにかかるため、敵としてはかなり恐ろしい。間違いなく危険人物。
直接手にかけた人数は平成VSシリーズではたぶん随一。
演じたベディ氏は役者でもなんでもなく、外国人俳優の通訳に来た事務所の人である。
撮影時の年齢はなんと19歳。
「……」

・白神源壱郎
演:高橋幸治

生命工学界で知らぬ者はいないほどの権威。
かつてサラジア国で研究をしていたが、ゴジラ細胞が持ち込まれたせいで研究所が爆破テロに合い、一人娘の英理加を失った。
その後は芦ノ湖の畔の研究所で一人、植物の研究をしている。
しかしそれは表向きのことで、実は娘の遺体から遺伝子を抽出してバラに移植し、疑似的なクローンとして蘇生させようとしていた。*1
三原山の復活に伴う大規模な地震で、英理加の宿ったバラが損傷したことで「ゴジラ細胞の強力な回復力をバラに宿させ、英理加を不死にする」という妄執に取りつかれるが、それが取り返しのつかない事態を生んでしまう。
どこかいろいろなことを他人事のように語っており、世捨て人的な一面がある。娘の死や、それを歪める己の業に疲れ果てたのかもしれない。
ストーリー的には「妄執で暴走したマッドサイエンティストで元凶の一つ」なのだが、その根底にあるのが娘を奪われた親の無念であるというのがどこまでも哀しい。
ビオランテの消滅後、後を追うかのようにSSS9に射殺されるというあっけない最期を遂げた。
「文字通りの分身だ。同じ細胞で、一方は『動物』……一方は『植物』」
「ゴジラでもビオランテでもない、本当の怪獣はそれを作った人間です。」

・白神英理加
演:沢口靖子(特別出演)

白神博士の娘で明日香の親友だった女性。
「G細胞」を破壊するためにバイオメジャーが研究所に仕掛けた爆弾による爆破テロに巻き込まれて命を落とした。
死後、彼女の細胞は父によって薔薇に移植され、さらにはG細胞を融合させられてビオランテに変貌するなど、本作一の被害者と言える人物。
「いつから私達は、こんな時代に生きるようになったのでしょう。神に向かって一歩、歩み出した日から、それは始まったのかもしれません。思い出してください、もう一度。」

・大河内誠剛
演:金田龍之介
明日香の父親にして財団の総帥。
ありがちな金の亡者ではなく、核から日本を守る信念を併せ持つ。
「原爆とゴジラに酷い目に遭わされ た日本が、ゴジラ細胞から、核を超える兵器を作っても、決して悪いとは思わんがね」

・大和田圭子
演:久我美子(友情出演)

女性の官房長官。
総理大臣を直接補佐する役割を持ち、G細胞の争奪に関連するバイオメジャー案件を担当。
抗核バクテリアをバイオメジャーに渡すよう、権藤と大河内に指示を出す。
ちなみに演じた久我女史は、初代『ゴジラ』等東宝特撮の常連だった平田昭彦氏(1984年他界)の妻だった。
「ゴジラより、野党の対策の方が大変のようですね。」

デーモン小暮閣下(本人役)
フハハハハハハハ!我輩はこの時を待っていたぞ。わがしもべどもよ、わが分身の声を聞け!そして……何だ、ニュースが入ったみたいだ。うん、ニュースを聞け。


【登場した架空のメカ】

項目参照。

  • 92式メーサービーム戦車
メーサー光線を照射するパラボラ型砲身を搭載した戦車。
66式メーサー殺獣光線車よりも戦車らしいフォルムを持つ。
なお、本作(1990年設定)に登場するのは先行配備型とも、初期型の88式とする資料もある。

  • 抗核エネルギーバクテリア(Anti-Nuclear-Energy-Bacteria)
G細胞に含まれる「核を食べる遺伝子」から作り出された『核物質』をエネルギー源にするバクテリア。
ロケット弾頭に詰めて使用されるが、一発で原発一基を完全に無力化する。
次作でゴジラは23世紀になっても眠り続けていることが判明しており、大いに効果があったが、作中で演出された効果は今一つであった。

  • M6000TCシステム(マイクロウェーブ6000サンダーコントロールシステム)
ヨウ化銀で作った人工雲と巨大な電位差発生装置により人工的に落雷を発生させ、
発生した超高周波により分子振動を起こして目標を加熱するシステム。いわゆる「超巨大電子レンジ」。
一撃で戦車一台をまるまる溶かすほどの熱量を発生させる。
当然人なんかに使ったら……。




「いつから私たちはこのWikiに書き込むようになったのでしょう……」
「良項目に向かって一単語 書き足した日から、それは始まったのかもしれません」

「思い出して下さい、もう一度」

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最終更新:2024年01月27日 17:03

*1 実は成功しており、英理加の意識はバラに宿っていた。しかし、彼女は「声を聞きたい」と願う父に対して沈黙で返し、しゃべったのは親友の明日香に向けての「助けて」だった