戦闘妖精・雪風

登録日:2011/04/17(日) 20:20:27
更新日:2024/03/20 Wed 11:38:20
所要時間:約 6 分で読めます






妖精を見るには、

妖精の目がいる。






■戦闘妖精・雪風とは


1984年に刊行された神林長平のSF小説。(現在は絶版)
2002年に修正、改稿された『戦闘妖精・雪風〈改〉』
続編に『グッドラック 戦闘妖精・雪風
第三部は『アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風』

2020年~2021年にはSFマガジンにて第四部が連載され、2022年に『アグレッサーズ 戦闘妖精・雪風』として発売された。

突如地球に現れた〈ジャム〉と呼ばれる異星体と戦う主人公と、その周辺の人物を描く比較的シンプルな構成。
上記の通り、改稿前の初版から数えて40年以上経つ作品ではありながらも、最近の作品と比べても遜色はない。

SF好き、戦闘機萌えなら一度読んでみるといいかもしれないが、作者が命題とする「言葉」「機械」「人間性」などといったものが根幹に据えられた、非常に骨太な内容となっている。



■あらすじ


南極大陸に突如出現した超空間通路によって、地球への進攻を開始した未知の異星体〈ジャム〉。
反撃を開始した人類は、〈通路〉の彼方に存在する惑星フェアリィに実戦組織FAFを派遣した。
戦術戦闘電子偵察機・雪風とともに、孤独な戦いを続ける特殊戦の深井零。
その任務は、味方を犠牲にしてでも敵の情報を持ち帰るという非情かつ冷徹なものだった――
(本書より)



■全編通しての主要人物
※若干のネタバレあり


◆深井零

信じられるのは雪風だけなんだ。
他にはなにもない……なにも。

CV:堺雅人
乗機のスーパーシルフ(最新鋭戦闘機)、パーソナルネーム「雪風」に深く依存する本作の主人公。階級は少尉(のちに中尉)。
原作ではしょっちゅう上官をおちょくっているが、冷静冷徹を絵に書いたような人物で、様々な経験を経て人間的に成長する。
クールでドライな性格がよりいっそう強調されたOVA版では、ぶっちゃけ殆ど他人とコミュニケーションがとれていない。



◆ジェイムズ・ブッカー

零。帰ってこいよ。これは命令だ。

CV:中田譲治
零の親友兼上官。元パイロットで現在は出撃管理を担当。階級は少佐。
機械工学のスペシャリストであり、スーパーシルフの中枢コンピュータ作成にも関わった。機体の「雪風」の文字もネーミングも日本文化にも詳しい彼によるもの。
ブーメラン制作が趣味で、自作の「完璧なブーメラン」(人工知能搭載)で頬に大きな傷を作っている。


◆リディア・クーリィ

――以上だ。退室してよし。

CV:麻上洋子
特殊戦の副指令で、階級は准将。普段の雰囲気からして只者じゃないオーラを醸し出している実質的な特殊戦の司令官。
零とブッカー少佐曰く「鬼のような婆さん」「しわしわ准将」で大活躍の「スーパー婆さん」だが、第1作では特に目立った出番はない。


◆リン・ジャクスン

わたしは、FAFこそ地球人の集団だと思います。

CV:池田昌子
ジャムの脅威を世間に知らしめた『ジ・インベイダー』の著者で地球のジャーナリスト。
完全な情報統制のために、前述の著書はSFもしくはファンタジーと認識されており、それを快く思っていない。後に零とブッカー少佐に出会い、〈地球人〉としての立場からFAFや特殊戦と関わっていく。

◆雪風
深井零の乗機に搭載された人工知能。作中の言葉を用いるなら機械知性体で本作の殺しまくる系ヒロイン。名前の由来は太平洋戦争時活躍し戦後まで生き残った「幸運艦」雪風
長年に渡ってジャムと渡り合ったせいかその思考回路はブラックボックスと化し、運用停止(解析のために分解)させられそうになっている。
時として友軍パイロットを危険に晒し、意図的に味方を見殺しにすることも平然ある任務のために、自己の生存を第一に考える最高クラスのAIを与えられているため、むしろ人がいない方が機体性能が上がる

だが深井零との長い交流をかけて…。


登場人物

◆カール・グノー

人間なんか必要ないんだ。

階級は大佐。対ジャム戦を想定した無人戦闘機、フリップナイトの開発者。
機械の性能が制限され、パイロットの損失も発生する有人機を「時代遅れ」とし、零やブッカー少佐と対立する。

◆ヒュー・オドンネル

――帰ったら、プレゼントがある
左薬指を磨いておけよ

階級は大尉で、新型戦闘機ファーンIIのテストパイロットを務める。
常に婚約者のエイヴァ・エミリー中尉と行動しているリア充
……だったのがテスト中にジャムと遭遇、自身とファーンIIを守る事を優先してコントロールを奪わった雪風の殺人的機動で命を落としてしまう。

◆アンディ・ランダー

まさに妖精空間だ。

アメリカ出身のフリーコラムニストで、軍事評論家、ロビイスト、作家でもある。
フェアリィ基地の取材に訪れたが、FAF側からはあまり良く思われなかったらしく、零も故意にアクロバット飛行をして会話を打ち切る。やるな零。
遊覧飛行の途中に謎の異空間に零とともに迷い込み、「トウモロコシ畑」のようなものを発見するが……。


◆トマホーク・ジョン

ぼくは……人間だよな。

CV:矢尾一樹
ネイティヴアメリカンの出身の電子工学のエキスパート。
階級は大尉。出身部族独特の本名で「トマホーク」は通称。
心臓を患っていたためか、彼の心臓はプルトニウムを熱源とした人工心臓で、「自分は機械なのではないか」というコンプレックスを抱いていた。
システム異常をきたした空中空母、「バンシーIV」の調査に零とともに向かうが、彼を機械と見なしたジャムの攻撃で帰還は適わなかった。
彼のに際し、「妖風が目にしみる。涙が止まらない」と零も涙している。

◆天田守

……勲章と引き換えにおれは仲間を失ったよ。

数奇な縁でブッカー少佐と出会うFAF基地整備軍団の除雪隊員。
階級は少尉にもかかわらず、明らかに分不相応な最高位の勲章を授与されて同じ除雪仲間から孤立。何事も上手くいかなかった所為で酒に溺れて肝臓を患う。
彼のエピソードの真相は連載中の第四部『アグレッサーズ 戦闘妖精・雪風』で明らかになる。


◆リチャード・バーガディシュ

おそろしく速い――
超高速ミサイルだぞ、中尉。

CV:桐本琢也
戦死した雪風のフライトオフィサの後任で、階級は少尉。
零以上に無口で淡泊な性格。
とある任務で零とともにジャムに捕らえられるが、その後……。













■登場機体

本作に登場するのはすべて架空の機体となっている。

◆FFR-31 シルフィード
FAFの主力制空戦闘機。通称「シルフ」。
FAF発足後に専用機として開発された双発複座の機体で、カナード翼が特徴。
切迫した事情もあって性能重視で設計されており最高速度と格闘戦能力を両立した高性能な反面、製造コストが嵩んで数が揃わず、追加の後期型はコストダウンのため合理化・簡略化が施されている(カタログスペックに変化はないが実用上は異なるようで、前線の兵士は初期型を特別視しているらしい)。


◆FFR-31MR スーパーシルフ
FAFの特殊戦の戦術戦闘偵察機。「雪風」もその一機。
目的に沿うよう、さらに高速・高性能に仕上げられ、加えて収集した情報をリアルタイムで分析する高度な電子頭脳も持ち、ラムジェットブースターを搭載可能にした長距離戦略偵察仕様の「FFR-31MR/D」もある。
型番の通りシルフがベース…ではなく、外観からまるで異なる魔改造ですらない完全に別の機種。
「既存機種を改造して安上がりに済ませました」というために(予算に縛られたFAFが申請を通しやすいように)この型番と名前になったらしい。
文句なしの実力でありながら「データを確実に持ち帰る」事を念頭に設計されているため戦闘に一切参加しない、むしろ戦闘を避ける特異な運用方法を取っている。


◆FRX-99 レイフ
スーパーシルフの後継機として作られた「軍人の考えた最強の戦闘偵察戦術爆撃機」を地で行く無人機。中でもコールサイン「TS-X1」による有無を言わせぬ作戦行動と最後の行動が印象的。
機動力、兵装搭載量、そして高度な電子頭脳とあらゆる面で最上クラスのスペックを誇る化け物。この性能を満たすためのエンジン推力は訳のわからんことになり機体自体も異様にデカイ。


◆FFR-41 メイヴ
レイフの有人機仕様。雪風が自身のデータのコピーを送り、自分自身を殺させたのがこの機体。

◆FA-1 ファーンⅠ
ジャムの地球侵攻~FAF発足当時の地球で最新鋭だった機体。フェアリィ星へ侵攻するにあたり優先供給されたFAF最初の主力機。
前進翼が特徴で単発・単座だが、複座の派生型もある。
現在はジャム機の進化についていけなくなりつつあり主力の座をシルフィードに譲っているが、ジャム基地への爆撃やシルフィードの数的な穴を埋めるなど、いまだ現役。


◆FA-2 ファーンⅡ
シルフィードの高コストとジャム機の高性能化に喘ぐFAFが、ファーンⅠの後継として新たに開発している単発・単座の制空戦闘機。
最高速度はシルフに劣るものの驚異的な運動性能を誇り、かつ安価。OVA版は筆舌に尽くしがたい鋭角的な外観をしている。


◆バンシー
FAFの空中要塞。
搭載機数40機を越える空飛ぶ空中空母で、原子炉を内蔵し原子力推進機関とその巨大な主翼により恒常的に飛行し続けている。
一種の人工衛星のようなものでもあり、下手に航路(軌道)変更すると墜落しかねないとのこと。
作中では「バンシーⅢ」と「バンシーⅣ」の2機が存在する。


◆ジャム機
異星体「ジャム」が繰り出すナニカ。地球の戦闘機のように機関砲とミサイルのようなナニカで武装、時に特攻することもある。
解析はできない(墜落すると跡形もなく崩壊する)ため、動力や推進力、そもそも機械なのか生物なのかすら一切謎。そのまま姿は常にブレており、正面から見てT字型の「タイプⅠ」、π字型の「タイプⅡ」が一般的だが、大まかな形状以外は把握できていない。




■メディアミックス

第二部『グッドラック 戦闘妖精・雪風』までを基にGONZOでOVAが制作された。
音楽は「ザ 蟹」(元筋肉少女帯の塩野道玄と三柴理の2人により構成)が担当。EDテーマはムッシュかまやつが歌う。
航空自衛隊の協力で制作された戦闘シーンはなかなかの高評価。
ただし、
  • 零とブッカー少佐の描写がBLっぽい(勿論個人差あり)
  • ストーリーは一部原作と異なり、オリジナル
  • 気になる最終話続きはない
ことに留意されたし。しかも続きの原作を読むにあたっては
  • OVAの内容はアンブロークンアローに続かない。
あくまで雰囲気を掴むためには良いかもしれない。


メカニックデザインの山下いくとの落書きから『戦闘妖精少女 たすけて! メイヴちゃん』というまさかの擬人化萌え萌えメタアニメも生まれた。

ひっそりとXBOXでゲーム化もされた……が評判は微妙。





立ち向かっていくしかないのよ。


逃げ込む場所なんて、


どこにもないんだから。





雪風が……追記・修正しろと言っている……

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最終更新:2024年03月20日 11:38