日本由来の外来種

登録日:2012/11/11 Sun 11:56:24
更新日:2024/03/18 Mon 17:32:17
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現在、世界各地で「外来種」が大きな問題となっている。
人為的な行為や偶然等で、本来いた地域とは別の場所に移住してそこで繁殖を始めた生物が生態系を圧迫し、さらに人間生活にまで影響を及ぼす。
そこの生き物達だけではなく、人間社会や経済にまで被害が生じてしまうのだ。

島国である日本でも例外ではなく、アルゼンチンアリアライグマ等が日本各地に増え、深刻な問題を引き起こしている。

しかし、当然ながら日本側も被害ばかり受けているという訳ではない。
それどころか、日本の自然の中で逞しく進化を遂げた生物が世界で猛威をふるう例はかなり多いのである。
この項目では、日本由来の外来種について取り上げる。


◇要因

外来種となる要因には、前述の通り故意的なものと偶発的なものがある。

故意的なものには、ペットや家畜として持ち込まれる場合が挙げられる。
可愛さや綺麗さから持てはやされるのだが、次第に手に負えなくなり逃がしてしまう事も多い。
また、その場所から逃亡して野生化し、繁殖を果たした例もある。
食用生物の場合、その土地の文化の違いも外来種を生み出す大きな要因となっているようだ。

一方、偶発的なものには人間や物資の移動の際にこっそり紛れ込むものがある。
例えば近年問題となったヒアリは、コンテナ等の貨物に紛れて拡散したと言われている。
特に海の生物は「バラスト水」に乗って各地に広がる場合が多い。
船の重さを調節する為に水をタンクの中に積み込んで重し代わりにするのだが、その水を吸い上げる際に水中の生物も巻き込んでしまうのた。
その後寄航先でバラスト水を捨てる際に、生き残った生物がばら撒かれてしまうのである。
貿易大国となった日本も例外ではなく、バラスト水によって世界に広まった外来種は後述の通り数多い。
このバラスト水については国際問題となり、「バラスト水管理条約」という国際条約まで出来た(正式名称:船舶のバラスト水および沈殿物の規制および管理のための国際条約)。

また、これ以外にも現在日本やその周辺が原産ではないかと疑われている種もある。
それらはまだ確証がなく、今後の研究が待たれる分野である。

なお、故意にしろ偶発的にしろ、人為的に移入された場合のみ「外来種」と呼んでおり、自力で海外に勢力を広げた生物は外来種と呼ばれる事は無い。
日本の湖にやって来た渡り鳥の足にくっついたり食われたりして北半球のあちこちに勢力を広げたマリモが後者の代表例である。

◇代表的な種類

「☆」印は、世界の侵略的外来種ワースト100にも認定された生物である。
また、以下の生物はアニヲタwiki(仮)内に項目があるのでそちらを見て頂きたい。

≪脊索動物:脊椎動物≫

タヌキ

日本を始め、東アジアやロシア東部が原産地のお馴染みの動物。詳しくは項目参照
毛皮目当てでロシア西部に持ち込まれたタヌキの一部が脱走したり捨てられたりしてそのまま住みついた。
その勢力は東欧を越え、今やフランスやイタリア等にも広がっている。
化ける力が無くても都会で生きる事が出来る逞しさでライバルのキツネを追い払った地域もあり、
狂犬病の媒介者としても問題となっている。

なお、近年日本にいるホンドタヌキは遺伝子や骨格構造から、ユーラシア大陸に住むタヌキとは別種と言う可能性が高くなっている。
ただ、そのホンドタヌキも本来いないはずの屋久島などに持ち込まれ、「国内外来種」として様々な形で問題になっている。
化ける事がうまい事で有名な佐渡島のタヌキたちも、実は毛皮目的で持ち込まれた国内外来種である可能性が高いという。

ニホンジカ

名前の通り、奈良や宮島を始め日本ではもはやお馴染みとなっているシカ。
他にも中国やベトナム、台湾、ロシアの沿岸部など幅広く分布している。
シカによる農作物や森林の食害は日本各地でも問題になっているが、海外に持ち込まれ外来種になった彼らも例外では無く、
特に外敵が非常に少ないニュージーランドでは対策に頭を悩ませていると言う。

また、スコットランドで増えたニホンジカはその地に元々住んでいたアカシカと交雑し、純血の個体が減ってしまうのではないかと心配されている。
ただ、そのアカシカの方もオーストラリア、ニュージーランドなどのオセアニアや南米大陸に持ち込まれた個体が増えて問題になっており、
「世界の侵略的外来種ワースト100」に認定されてしまっている。

ちなみに神獣扱いなのが特殊なだけで日本でも立派な害獣扱い。電車との衝突事故が有名である。
昨今の尾瀬などでも植物の芽を食べてしまうため駆除が行われている。都会暮らしの我々が食べる機会があるシカ肉は、こういう駆除活動で狩猟されたもの。
本来日本に生息していた狼の様な天敵がいなくなったことで増えてしまったものであり、「ニホンオオカミ」の特集ではほぼ間違いなく言及される。

ドブネズミ

wiki籠りの皆様もお馴染み、家の中に住み病原菌をまき散らす厄介な害獣。
日本由来の生物ではなく、人類が日本に住み着いた更新世頃から日本に定住している外来種と考えられているが、
この日本に住み着いたドブネズミが更に海外へ勢力を広げたという事例が存在するため、この項目で紹介する。
それが、アメリカ合衆国・アラスカのハワダックス島である。

アリューシャン列島にあるこの島にドブネズミが住み着くようになったのは1780年代といわれている。
その要因は、なんと日本からの難破船
江戸時代後期の日本で遭難した船に住み着いていたドブネズミたちが流れに流れて、この島に漂着してしまったのである。

現在も日本をはじめ世界中でその旺盛な繁殖力と食欲が問題視されているドブネズミの脅威はこの島にも及び、
浜辺で繁殖していた海鳥の巣が壊滅状態に陥ってしまった。
さらにその影響は海の中にもおよび、海鳥が餌にしていた巻貝やカサガイが爆発的に増殖。
その結果、これらの貝の食料となるコンブがほぼ全滅してしまったのである。
やがて、この島は「ラット島」(Rat Island)、ネズミの島と呼ばれる事となった。青タヌキにとってまさに地獄のような名前である

それから時が経ち、2007年に島をもとの状態へ戻すべく、毒餌を用いたドブネズミの駆除活動が行われることとなった。
その結果、2009年に島のネズミが全滅したという宣言が行われ、それ以降海鳥の数、コンブの量が劇的に回復している事が示されている。
そして島の名前も、2012年に現地の先住民・アレウト族の言葉を用いた「ハワダックス島」(Hawadax Island)へ変更されている。
ただしこの島が含まれるアリューシャン列島の中の諸島は今もなお「ラット諸島」と呼ばれている*1

コイ ☆

広島を始めとした日本各地の川や池でお馴染みの魚。
中国からの移入もあったため外来種とも言えるが、琵琶湖などでは古来から日本にも生息している。詳しくは項目参照

食欲旺盛でどんな水でも住める(汚い水の方が好みらしいが)という性質から、
移入されたコイやその仲間達が日本各地でも生態系を滅茶苦茶にしている。辛いです…(汚れた水も)好きだから…

しかし北米ではより深刻であり、今や各地の川で大繁殖し、次々に在来生物を食い尽くしてしまうという被害が報告されている。やっぱりカープがナンバーワン!
しかも大きくなるともう天敵は無きに等しい状態で、ブラックバス並の脅威となっている。すごC
オーストラリアではコイに致命的な打撃を与える「コイヘルペスウイルス」を使おうと言う計画「カーパゲドン」まで出されるほど。リアル両津三色……

長いチーム低迷期でも汚れた水でも生きていける特性を利用し食用にしようと言う意見もあるが、
調理時点で泥臭さに耐えられないと放置した結果がこれである。
ちなみに実際食用にしているものは最初から綺麗な場所で飼われている。
まあ日本でのブルーギル(肥料にしやすい魚として譲り受けた結果がアレ)も似た立場だが……。

なお、1950年代以降広島原産の鯉が日本に分布しているが、
上記の経緯もあり、外国の人たちにはこの広島の鯉の名前に違和感を感じる場合もあるらしい。まあ外国の人からしたら害獣の名前つけてるようなもんだしねえ…

ワカサギ

 「え?」と思うかもしれないが、あの氷に穴を掘って釣り上げる「穴釣り」でお馴染み、冬の風物詩となっている美味・ワカサギも、日本由来の外来種として数えられる魚である。
 そもそも日本での原産地は比較的寒い場所に限られているが、
 その美味しさもあって自然・人工(ダム湖)問わず日本各地の湖に放流された経歴を持つのだ。
 あの山中湖や諏訪湖、琵琶湖に生息するワカサギも、実は本来生息していない国内外来種である。

 そして、ワカサギは日本のみならずアメリカにも持ち込まれ、主に肉食性の食用魚・ニジマス*2の餌として活用されている。
 だが、その中の一部が、元々アメリカに分布しており、絶滅が心配される近縁種のデルタワカサギ(Hypomesus transpacificus)から餌を奪い、
 時には交尾をして雑種を生み出してしまう可能性が指摘されている*3
 しかも、現在確認されている雑種の個体には繁殖能力がなく、結果的にデルタワカサギの遺伝子を滅茶苦茶にするのみならず個体数をさらに減らしてしまう危険があるという。
 また、同時にヒメマスとも餌をめぐって争いが起きているようで、ワカサギが生息している地域ではヒメマスの漁獲量が減少している事が確認されている。

 一見か弱そうに見えて、ワカサギは良くも悪くも生命力が強いタフな魚なのである。

メジロ

 名前の通り、目の周りが白いのが特徴の小鳥で、暗い黄緑色の顔に背中の暗褐色のコントラストが美しい。
 原産地の1つである日本では古くからお馴染みの野鳥として親しまれているが、ペットや賭け事のための乱獲が懸念され、無許可で捕獲する事は犯罪となっている。
 そんなメジロが、遠く離れた日本人憧れの地・ハワイ諸島へ持ち込まれたのは1929年。
 害虫駆除を目的に導入されたのだが、常夏の島々にあっという間に適応し、生息数を一気に増やした。
 その結果、ハワイに元から生息していた鳥たちから花の蜜や昆虫などの餌を奪い、数を減少させている可能性が指摘されている。
 加えて、果物にも被害を与えており、マンゴーやパパイヤが食害に遭ってしまうケースも増えている。

 また、日本でも本来生息していないはずの小笠原諸島にも20世紀初頭に外来種として持ち込まれ、その後は小笠原諸島で最もよく見る鳥の1つと言われる程に数を増大させている。

ウグイス

 ハワイ諸島にはメジロ以外にも、世界各地から持ち込まれた外来種の鳥たちが繫栄し、在来の鳥たちを脅かす厄介な要因となっている。
 その1つが、同じく1929年に日本から持ち込まれ、逃げ出した個体が野生化したウグイス。
 日本では「ホーホケキョ」と言う鳴き声でお馴染みなのだが、ハワイ諸島で外来種化したウグイスは鳴き声が単純化し「ホーホピッ」としか鳴かなくなっている。
 これは、ハワイ諸島に適応するうちに、本家・日本のウグイスのように住む場所を移動せずに済むようになり、激しい縄張り争いをしなくても良いようになった結果ではないか、と考えられている。

≪節足動物:昆虫≫

マメコガネ

コガネムシの一種で、日本の固有種
色んな植物の花や葉を食べまくるので幼虫・成虫共々害虫として扱われている。
ただ、日本ではモグラやアリ、寄生蜂、鳥等に美味しく頂かれてしまう為にそこまで増えたりはしない。
だが、天敵のいないアメリカでは違った。1910年代頃に日本由来のアヤメにくっついてたのが紛れ込んだのをきっかけに、途方もない数に増殖。
最初はたった4アール(400平方m)程の広さの分布域が、1941年には何と50000平方kmにまで膨れ上がったのである。
当然ながらこの「Japanese beetle」による農作物への被害は甚大で、太平洋戦争時には対日プロパカンダにも登場した程。
その後原産地である日本から前述の寄生蜂等が移入され、現在はだいぶ鎮静化しているが、それでも度々被害がニュースで取り上げられている。

ナミアゲハ

日本を始めとする東アジア圏内に生息する、皆様お馴染みのアゲハチョウ
平家を始め古くから多くの家紋に使われるなど、その美しさと勇猛さは古くから多くの人々を魅了しているが、
ヘビの目のような模様を持つ幼虫は、各地の野菜や果物の葉っぱを食い荒らす厄介者。
その「負の面」はハワイ諸島に持ち込まれた際に大いに発揮され、柑橘類に被害をもたらす外来種と化している。

ツガカサアブラムシ

植物の上に大量の群れを作り、茎にストロー状の口を突き刺して維管束液を吸う厄介な害虫・アブラムシの仲間。
その中でもツガカサアブラムシ(Adelges tsugae)は名前の通り、ツガという針葉樹に寄生する種類である。

日本ではごく当たり前にいる在来種であったが、1950年代に偶然アメリカ合衆国の東部へ持ち込まれた一群が大増殖。
カナダツガを始めとした在来のツガを枯らしていき、特に1980年代以降その被害は大きな問題となっている。
その影響は森林資源や絶滅危惧種のツガの仲間のみならず、ツガに巣を作っていた鳥、ツガの葉を食べていたシカ、更にツガの木陰に産卵をしていた魚にまで及び、ツガの森そのものが消えてしまうと言う最悪の事態まで報告されている。
この項目で取り上げた者達の中でも特に被害が大きい種類の1つだろう。

この事態を解決するべく、アメリカでは農薬や殺虫用の石鹸、油などで退治する方法に加え、日本の大学などと協力してツガカサアブラムシの天敵を用いる手法を模索している。
日本において被害が出ないのはこいつらを好んで食べる天敵昆虫が多いからであり、調査の中で有効と思われる種類が複数確認されているという。
その天敵昆虫が在来の昆虫に影響を与えてしまう懸念も無い訳ではないが……。

ツガコノハカイガラムシ

カイガラムシはアブラムシに近い昆虫の仲間で、針のような口で植物を刺し、栄養分を吸い取ったりウイルスを感染させたりして、最悪枯らしてしまう事もある。そして一部の種は食品用天然着色料の原材料にもなる。
その中でもこのツガコノハカイガラムシ(Fiorinia externa)は1942年にアメリカで捕獲された個体を元に新種として登録された種類で、
アメリカ各地で繁殖し、栽培していた植物に悪影響を与える厄介な害虫とされていた。

だが、実はそれよりも遥か昔、1912年に発表された論文の中で同種が日本原産の「ニッポンコノハカイガラムシ(Fiorinia japonica)」として報告されており、
その後の再研究の結果、ツガコノハカイガラムシもまた日本にごく普通にいる在来の害虫である事が判明している。

日本の在来種なのに侵入したアメリカで「新種」として発見されるという、
この項目で取り上げた者達の中でも特に変わった命名経緯を持つ種類である。

ヒトスジシマカ ☆

の一種で、体の縞模様が特徴のいわゆる「ヤブカ」。痒みだけでは無く、寄生虫やウイルスを媒介する恐ろしい存在。
原産地は東アジアや東南アジア等だが、世界的な貿易の拡大に伴い、北米や南米、ヨーロッパ、アフリカ、オセアニアなど世界じゅうに分布を広げている。
その中でも、北米に現れたヒトスジシマカに関しては、日本から輸入された古タイヤに溜まっていた水にボウフラが暮らしており、
そこから新大陸に進出を果たしたと言われている。
更にこの日本出身の系統はその後も勢力を広げ、なんとイタリアにも姿を表していると言う。

ちなみに、地球の気候の変化で蚊による病気の媒介の拡大が(ヒトスジシマカに限らず)世界中で警戒されているが、
その中で日本の蚊取り線香蚊帳の役割が大きく注目され、北欧や東南アジア、アフリカ等で重宝されている。

ヤマトゴキブリ

名前の通り、遥か昔から日本各地の家屋に侵入し人々を困らせてきた、日本が原産地ゴキブリの代表格。
熱帯地域が主な生息域であるゴキブリの中で寒さに強く、世界で最も北に分布するゴキブリでもある。青森のニホンザルと同じ様な感じである
オスはクロゴキブリに似た例の黒光りした姿を持つ一方、メスは翅が短く飛ぶことが出来ない。

この日本固有種のはずのゴキブリだが、2012年にアメリカの世界都市・ニューヨークで行われた、ゴキブリの脚を使ったDNA検査の結果、
クロ、チャバネ、ワモンなどお馴染みの面々と共に何故かヤマトゴキブリのDNAが検出された
日本から輸出された観葉植物に紛れてニューヨークに進出し、そのまま公園などで繁殖を重ねていると考えられており、
日本の厳しい寒さに慣れた日本発祥のゴキブリが、ニューヨークの陰の主役に躍り出る日も近いかもしれない。

クロゴキブリ

 そのヤマトゴキブリに代わり、家に現れるゴキブリの代表格に君臨してしまっている、黒光りするアイツ。
 リンク先の項目で解説されているように、長年に渡り日本に分布するクロゴキブリはアフリカが原産の外来種で、
 日本には開国後の江戸時代末期に交易船に紛れ込み中国南部から侵入した、と考えられていた。
 ところが2016年、宮崎県にある縄文時代の遺跡で発見されたゴキブリの卵鞘の跡を調査したところ、ヤマトゴキブリではなくクロゴキブリの卵鞘である事が判明した。
 更に、同様のゴキブリの卵の跡が確認されていた日本各地の遺跡を再研究した結果、宮崎県や鹿児島県など西日本の遺跡に残されていたのはクロゴキブリの卵鞘だったのである。
 つまり、日本に生息するクロゴキブリは外来種ではなく、縄文時代の時点で既に日本に分布していた在来種かもしれない、という事である。
 そして、逆に日本を含むアジア地域から世界中に進出した、という可能性も指摘されている。

チャバネゴキブリ

 クロゴキブリと同じく、世界中で被害を与える茶色のゴキブリ。
 小型で飛べないが繁殖力が旺盛で、レストランや売店、オフィス街、果ては新幹線など商業施設への被害が大きい事で知られている。
 こちらも長年アフリカが原産と考えられていたが、2010年代後半以降日本に生息する近縁種との遺伝子の比較などから、
 日本を含むアジア地域が原産地ではないか、という説が高まっている。
 それを裏付けるかのように、2023年には奈良県にある古墳時代の遺跡からチャバネゴキブリの破片の発見が報告された他、
 それまで別の種類ではないかと考えられていた別の古墳のゴキブリの破片もチャバネゴキブリだと判明している。

 世界を脅かすゴキブリたちの強靭すぎる生命力は、もしかしたら厳しい日本の生態系で鍛え上げられた結果なのかもしれない…。

キョウトゴキブリ

1960年代、京都府の民家に現れた所を発見されたゴキブリ
ヤマトゴキブリに似た姿を持つが、調査の結果なんとチャバネゴキブリに近縁の新種である事が判明し、1976年に新たなゴキブリの種類「キョウトゴキブリ」として正式に登録された。

その後の研究で京都のみならず新潟から福岡まで広範囲にわたって分布している事も判明したが、何故か韓国や中国でも生息が確認されており、
日本からの輸出品に紛れ込んだ個体が繁殖したのではないかと言う説が提唱されている。

一応京都府のレッドデータブックには京都で発見された種類である事や本来の生息域である自然環境が減少しているという理由から要注意種として登録されているが、
ぶっちゃけその暮らしぶりは害虫そのものなので、当然ながら皆の嫌われ者である。

ウメマツアリ

世界各地で多くの種類が外来種と化しているアリだが、アニヲタwiki(仮)に項目が存在するオオハリアリのように、日本の在来種が世界各地で勢力を拡大する事例も多く、
トビイロシワアリアメイロアリなどが北アメリカ大陸で報告されている。

その中でも、ウメマツアリは特殊な繁殖方法で新女王アリや雄アリを生み出すことが知られており、
近親交配に強いという利点からごく少数の女王がいるだけであっという間に数を増やす事が可能である。
その結果、日本から輸出された荷物に紛れ込んだ一部のウメマツアリはそのまま北アメリカ大陸に定着し、
アメリカの首都であるワシントンD.C.など各地で勢力を広げ続けているという。

シキミグンバイ

グンバイムシはカメムシに近い仲間の昆虫で、ステンドグラスを思わせる模様を持つ半透明の羽が特徴。
植物に口の針を突き刺して細胞を吸い取るように食べて成長し、時には植物を枯らしてしまう事もある、害虫扱いされる事も多い。
その中でもシキミグンバイはシキミやアセビを餌としている事が知られているが、
日本から海外に輸出されたアセビに取りついた一群が世界各地に侵入し、外来種として問題になっている。

なお、英名は「Andromeda lace bug(アンドロメダ・レース・バグ)」と害虫にしてはやけにお洒落である。

クサギカメムシ

2018年、輸出用の車を満載し日本からニュージーランドへ向かっていた船が入港を拒否される事態が起きた。
その原因は、大量に紛れ込んでいた「クサギカメムシ」と言うカメムシの仲間の幼虫。
秋から冬になり寒くなってくると、洗濯物に紛れ込んだり窓の隙間を潜り抜けたりして家の中に侵入する、あの茶色のクソ厄介なカメムシと書けば分かる人も多いだろう。
日本を始めとした原産地の東アジア諸国でも、名状しがたい強烈な臭さのみならず、農業においてもミカンやリンゴの果汁を吸い尽くし美味しい実を傷つける厄介な昆虫として知られている。

そんなクサギカメムシは輸出する様々な貨物に紛れ込む形で勢力を広げており、既にアメリカやカナダ、スイス、イタリア、ドイツなど世界中で害虫として猛威を振るっている。
前述のようにニュージーランドが日本からの自動車運搬船の入国を拒否したのも、そう言った外来種の被害を未然に防ぐ為なのである。

ただ、その一方で流石のクサギカメムシでも極端に気温が下がる寒波には勝てないようで、侵入した北米地域を襲った大寒波の際にはなす術なく多くの個体が息絶えた事が確認されている。
新天地で繁茂する外来種といえども、自然の驚異の前には手も足も出ないのかもしれない。

≪節足動物:その他≫

ミツバチヘギイタダニ

名前の通り、ミツバチに寄生する赤いダニ
日本や韓国、ロシアを始めとした幅広い地域に生息する。
ミツバチの巣に潜み、卵が産みだされるや否やその区域に侵入。
孵化した幼虫の体液をドリンクバーの如く吸い続け成長を阻害させる「バロア病」を引き起こす。
しかも動きがかなり素早く、一度侵入されると退治はかなり難しい。
ニホンミツバチを始めとする在来種のミツバチはミツバチヘギイタダニに対して耐性を持つ一方、
彼らよりも効率よく蜜を集めるセイヨウミツバチは耐性を持っておらず、一度侵入されると甚大な被害を受けてしまう。

20世紀初頭に東南アジアで発見された後、1959年に日本で突如被害が拡大。
今や生息域や被害は全世界規模に広がっており、
この項目で紹介している者達の中でも被害はトップクラスかもしれない。
一応薬剤などの対策は行われているものの、ダニ側も薬剤耐性を身につけてしまっており、完全なるいたちごっこ状態が続いている。
「世界の侵略的外来種ワースト100」には認定されていないものの、
日本での被害を踏まえた上か「日本の侵略的外来種ワースト100」にノミネートされている。日本由来なのに日本も大ダメージを受けているという皮肉

なお、在来のこのダニに耐性を持つニホンミツバチだが、
逆にセイヨウミツバチに寄生する「アカリンダニ」という顕微鏡サイズの寄生ダニに対しての耐性は持っておらず、各地で被害が続出している。

≪軟体動物≫

ヌマコダキガイ ☆

動物プランクトンを食べる二枚貝の仲間。
原産地である日本周辺の海では数が減少しており、
環境省のレッドリスト(絶滅が心配される生物を集めたリスト)にまで登録されてしまっている。
ところが、バラスト水に紛れこんで海外デビューを果たした途端、状況は一気に変わった。
新たな生息地となったサンフランシスコ湾では豊富な動物プランクトンを独り占めして大増殖し、
発見されてから僅か1年であっという間に海底を埋め尽くしてしまった。
赤潮が起きなくなった代わりに生態系は一変、小型の甲殻類や魚の減少が多く見られるようになってしまったと言う。

日本の固有種の中で「世界の侵略的外来種ワースト100」に認定されてしまったのはこの種だけである。

ホソウミニナ

日本の海でよく見かける、ドリルの様な形をした巻貝の仲間。
普通の巻貝だと卵から孵った時は見慣れた姿と全く異なる「ベリジャー幼生」と言うプランクトン時代を経るが、
この種類は卵から直接小さな巻貝として生まれるのが特徴。
そのため、環境変化に強い一方で生息地を広げる事が難しい……

……はずだったのだが、20世紀前半に日本(宮城県)から北米の西海岸に持ちこまれた養殖用のカキにこっそり紛れこんだものが大繁殖、
カリフォルニアなどで勢力を広げている。
ちなみにそっくりなイボウミニナと間違われていた時期もあった。

≪その他動物≫

ヒトデ ☆

日本沿岸を始め北太平洋に分布するお馴染みのヒトデ。「キヒトデ」や「マヒトデ」と呼ばれる事も。名前の横にあるのはヒトデじゃないぞ☆
地方によっては漁師達に美味しく頂かれる事もあるが、大抵は漁業を営む人達にとって厄介な存在。
実は肉食動物のヒトデは海底の生態系において上位に位置する存在であり、旺盛な食欲で貝やウニなど他の動物達を平らげてしまう。
バラスト水に紛れてやってきたオーストラリアやカナダ沿岸の海でも例外では無く、養殖用の貝(ホタテガイ、カキなど)が散々な被害を受けているという。
ちなみに日本でもヒトデによる養殖貝の食害は起きており、各地の漁業組合は対策に頭を悩ませているという。

ハタケミミズ、フキソクミミズ

日本ではお馴染みの動物が海外では生息しない、と言う事例は意外と多い。
前述したタヌキが代表例だが、実は北アメリカ大陸におけるミミズも長年その1つであった。
氷河期の到来によって北アメリカ大陸ではミミズが壊滅的な被害を受け、以降ヨーロッパからの移民と共に外来種としてミミズが到来するまで、北アメリカ北部の森にはミミズが存在しなかったのである。
そして、日本を含む東アジア地域に生息するミミズの仲間もまた同様に外来種としてアメリカ各地への侵入が確認されている。

日本では土を耕し栄養豊富な土を作る、見た目はアレだが頼もしい生き物として扱われているミミズだが、
裏を返せば勝手に土を好き勝手に食い荒らしてウンコをぶりぶり漏らし、自分たちに適した環境に丸ごと作り変えてしまう事にもなる。
ウィスコンシン大学の研究によると、本来日本や朝鮮半島に分布するはずのハタケミミズ(Amynthas agrestis)やフキソクミミズ(Amynthas tokioensis)が侵入した土を調べた所、
土の窒素濃度に加え、生息する微生物までガラリと変わってしまった事が判明した。
つまり、これらのミミズは土を「アジア化」してしまったのである。

ごく小さな生物でも、一度侵入すれば生態系を激変させてしまう影響力を及ぼす一例である。

≪植物≫

クズ ☆

秋の七草にも数えられる、東アジア原産の植物。日本では古くから食料や薬品として多く用いられている。
しかし地面に太い根を張り巡らせる為、一度生えると排除はかなり難しい厄介な存在となる。

これが日本からアメリカに持ちこまれ、最初は緑化等の様々な用途で持てはやされたものの、次第に予想を越えて大増殖を始めてしまった。
放置するとあっという間に何もかもがクズに覆われ、緑色に染まってしまうと言う状態正直ちょっと綺麗
しかも前述の通り切っても切っても生えてくるので駆除もままならず、「Green Monster」という異名まで貰ってしまった。
Googleの画像検索なんかで調べられるため見てみるといいだろう。怖いというか、ここまで茂るものかと恐ろしくなる。
実は日本でも町一つを呑み込む勢いで異常繁殖をして問題になっている。

え、食えばいいって?
実は野生種の根は栽培されたものに比べて細く、食用にしてもジャガイモよりも遥かに手間がかかりすぎて適さず、完全なる雑草である。

Magic the Gatheringでもそのまんま《Kudzu》という名でカード化。土地を破壊したり他の土地への伝播能力を持っていたり*4と、「厄介な雑草」という側面をよく表した効果を持つ。イラストは「人間がクズに飲み込まれる」というもので、上述の「Green Monster」のイメージが非常に色濃く出ている。
ちなみに戦えるようになった《Vinelasher Kudzu*5》もある。

ススキ

こちらも日本の秋の風物詩にして秋の七草。茅葺き屋根の材料や家畜の餌としても広く使用されていた。
日本各地ではアメリカからの外来種セイタカアワダチソウに押され、一時は駆逐される危機にまでなった程だが、
そのアメリカでは逆にススキによるセイタカアワダチソウの駆逐が危惧されている。七草仲間のクズと合わせると完全に日本の光景である。

チガヤ ☆

初夏に穂を実らせる、ススキによく似ているが少し背が低い植物。
日本を始め、アジア、アフリカ、オーストラリアと世界の幅広い地域に分布している。

ススキと共に茅葺き屋根の材料に用いられたり、かつては糖分を蓄えた葉っぱを子供がおやつ代わりに齧っていたりと古くから身近な植物として親しまれている一方、
地面に地下茎を張り巡らせそこから大量の葉っぱを芽吹かせるという生態故に非常に生命力が強く、
定期的に草刈りや野焼きをしないとあっという間にチガヤが大量に生えてしまう。
東南アジアに至っては熱帯雨林が切り開かれてしまった場所に「アランアラン」と呼ばれる大草原を築き上げ、森の再生を阻害してしまう事態も起きているという。
その結果ついたあだ名は「世界最強の雑草」。「世界の侵略的外来種ワースト100」にノミネートされてしまうのも納得かもしれない。

しかし、逆に原産地の日本ではセイタカアワダチソウを始めとした外来種によって置き換えられたり、
人間の手が加えられて芝やコスモスに生息地を奪われてしまう事も起きている。
世界最強とはいえ、結局その地位は人間の掌の上にあるのかもしれない。

イタドリ ☆

漢字では「虎杖(いたどり)」と書く。『呪術廻戦』の主人公虎杖悠仁の名前になったりしたので聞いた事はあるという人は多いかもしれない。
新芽を食べ物にしたり薬として利用したり、日本を始め東アジア圏内ではごくありふれた植物のひとつとして親しまれてきた。
ビクトリア時代(19世紀)に観賞用として日本から英国へ持ち込まれたとされており*6、欧米で「Japanese knotweed」と呼ばれる事からもそれがうかがえる。

…のだが、このイタドリ、現代のイギリスにおいては繁殖に繁殖を重ねてイギリス全土に拡散し、放置するとコンクリートを突き破り、家を丸ごと飲み込んでいくという凄まじい状況になっている。
イタドリが見つかっただけで周辺一帯の地価が下がって買い手もつかず、駆除するまでは住宅ローンの契約を拒否されてしまうため家も建てられないと言うのだからたまったものではない。

英国「効率のいい駆除法とかない?」
日本「食え」
中国「薬になるぞ」
英国「参考にならん…」

無論、原産地の東アジアではこの様な惨事は起きていない。
というのも、原産地には競合する植物(竹や上記のクズなど)や、このイタドリ専門の寄生虫や微生物が多数存在しており、それらの働きによって押さえ込まれている*7のだという。
つまりは何重にもリミッターをかけられていただけ。重りを脱ぎ捨てた悟空かお前は。

そんな状態なので英国では土地を売却する際にイタドリの存在の有無を報告する義務があり、
故意にイタドリを繁殖させたり所有する土地のイタドリを放置するだけで罰せられる法律が定められ、
更に対策として上述したイタドリ専門の害虫『イタドリマダラキジラミ』を生物農薬として移入している。
もちろん最初に持ち込まれたオランダや、最近ではドイツでも大繁殖しているらしい。

エゾミゾハギ ☆

和名こそ「エゾ」と付いているが、実際は北海道のみならず日本各地やユーラシア大陸、北西アフリカと世界各地の湿地帯や川沿いに生える植物の1種。
縦に連なる濃いピンク色の可憐な花がお洒落な植物だが、観賞用として持ち込まれた北アメリカやニュージーランドで野生化し大増殖。
既存の植物を軸にした生態系が崩れるだけにとどまらず、大量に繁茂したエゾミゾハギによって川や運河がせき止められる被害も生じており、
特に大繁殖が問題視されているニュージーランドでは病原菌・ペストにちなみ「ペストプラント」呼ばわりまでされている。

≪海藻≫

ワカメ ☆

もはや味噌汁日曜夕方には欠かせなくなった海の幸。
だが、実はこれを食べる文化が昔からあるのは原産地である日本と朝鮮半島だけであり、大半の国ではただの邪魔な海藻でしかない*8。なんと何でも食べてそうな中国人すら食べなかったのだ*9
前述のバラスト水に紛れて侵入したワカメが現在各地で増殖し、生態系にも人間にも悪影響を与え続けている。
一部では、人間の頭部への寄生も確認されているとか何とか。
今や駆除を諦めて日本へそのワカメを輸出しようという動きも起きているほど。

増えるワカメおそろしす(´・ω・`)

タマハハキモク

ホンダワラの仲間で、日本を含む東アジア地域に分布する。
上述したホソウミニナ同様、海外に輸出されたカキの殻にこっそり紛れ込んだものがアメリカやヨーロッパで定着。
僅か1年で最大2mもの巨体に成長し、海の中を埋め尽くして漁業に悪影響を及ぼしたり、船のスクリューに絡んだりと色々と被害を出している。

これらの他にも、アオアオサシダモクなど多数の日本由来の海藻が世界各地の海岸で確認されている。

≪その他≫

カエルツボカビ ☆

両生類の皮膚に寄生し、死に至らしめる恐ろしいカビの仲間。
世界中で被害が広がり、「両生類が地球から消滅する」とまで騒がれた。
一時このカビが日本国内でも確認されたとして警戒する向きがあったのだが、その予想を覆すように日本を始め東アジアの両生類への被害は何故か少ない。
天然記念物のオオサンショウウオも、ツボカビが寄生しても平気で生き続けているのである。
更に、被害が大きい地域と比べて多くの系統のカエルツボカビが確認されている。

これはそれだけツボカビの種類が多様な事を示している。
それ故このカビの原産地が日本を含むアジア地域であり、それらの地域の両生類は元から耐性を持っていたのではないか?という説が上がっている(確証はまだ無いが)。


クリ胴枯病菌 ☆

クリの木の傷から侵入し、樹木が成長する場所「形成層」を殺して増殖する、上記のカエルツボカビとは別のカビ(子嚢菌)の一種。
このカビに寄生されたクリは体に水を運べなくなり、最終的に幹が枯れる『クリ胴枯れ病』と言う恐ろしい病気にかかってしまう。
木の根は生きて残るため再び芽を出そうとするも、被害の酷い地域では数年で再感染してしまうという。

20世紀初頭にアメリカに偶然侵入したこのカビは瞬く間に増殖し、アメリカ北部に生息していたアメリカグリがほぼ全滅状態に追いやられ、
アメリカグリを利用した木材産業は壊滅的な被害を受けた。世界の侵略的外来種ワースト100に認定されるほどの暴れようである。
最終的には「ニレ立枯病」「五葉マツ類発疹さび病」と並び「樹木の世界三大病害」と呼ばれる程の大被害となった。

現在生き残った一部のクリに、この恐ろしい病気に対して強い抵抗力を持ち枯れることが無い中国のシナグリ、日本のニホングリを掛け合わせたり、
それらの遺伝子をアメリカグリに組み込んで病気に強い品種を生み出すなど、アメリカに栗の木を取り戻すための努力が続けられている……

……のだが、裏を返せば元々ニホングリやシナグリは元々クリ胴枯病に感染し易い環境に生えていたという事であり、
つまりこの恐ろしいカビの原産地は東アジアのどこかである可能性が高い、とされている。
一応日本原産の可能性もあるという事でこの項目で紹介しておく。

カンキツ潰瘍病菌

日本の冬に欠かせない果物といえばミカン
その中でも代表的な品種である温州ミカンの甘酸っぱいおいしさは世界各地でも人気で、アメリカでも「テレビオレンジ」と呼ばれているが、
実は日本の温州ミカンは静岡の一部の農家を除いてアメリカへ輸出する事が出来ない

その原因となっているのが、ミカンを始めとした柑橘類(かんきつるい)の伝染病である「カンキツ潰瘍病(かいようびょう)」。
カンキツ潰瘍病菌という細菌によって引き起こされる病気で、茎や葉、実に醜い病斑をつけ、商品価値を著しく落としてしまう。

本来アメリカに存在しなかったこの病気は、1910年代頃からフロリダやテキサス州で蔓延し、当時日本から苗木が輸入されていたミカンのみならず、オレンジやグレープフルーツにも影響が及ぶ事態となった。
その原因としてミカンの苗木からの伝染が指摘され、前述した「ジャパニーズ・ビートル」ことマメコガネと並んで「ジャパニーズ・キャンカー(Japanese Canker)」と呼ばれる事態となり、当時の日本バッシングにも利用される程であった。
結果、同年代以降日本からアメリカへのミカンの輸出は全面的に禁止され、ようやく再開された1968年以降も非常に厳格な規制が行われている。

目に見えない小さな外来種でも、農業や経済に大きな被害をもたらす事があるのである。



他にもアケビ、スイカズラ、スズキ、クロヨシノボリ、カブトムシ、ゴマダラカミキリといった日本でお馴染みの生物が、
海外では外来種として勢力を広げ、在来種を追い出したり人間生活に影響を与えたりと猛威をふるっている。

海外の生物に押されがちな感もある日本の生物も、意外に強い一面があるようだ。
あまり喜んではいけないかもしれないが。


◇考察

真面目な話をすると、どこの国の生き物が強い・弱いという話ではなく、生態系は絶妙なバランスでもって維持されていることが分かると思う。
人間も生態系の一部であり、その営みによって拡散する以上ある程度は致し方ないしこれも自然の成り行きと言えるかもしれないが、
身近な所ではミカンが打撃を受けたり*10、フランスワインが壊滅しそうになったり*11と手痛いしっぺ返しを受けた例も多い。

駆除しようと人間が躍起になっても、むしろ事態を悪化させる事もある。
例えば植物にはワルナスビの様に地下茎が細切れになるとその全てから再生してくるという性質を持つものもあり、更に増殖しかねない。
そして現地で親しまれている理由は駆除を諦めて朋友として受け入れたからという側面もある。
たとえばアメリカ人ジャーナリストはイタドリについて「日本ではこの厄介者と付き合っていく道を選んだ」と説明している。

他にも、外来種問題はナショナリズムと結び付けられる事もある。
項目で取り上げられた「ジャパニーズ・ビートル」や「ジャパニーズ・キャンカー」と結びつけられた日本バッシングもその一例だろう。
また、そのアメリカを中心に流行している俗信に「ホテイアオイは日本人がアメリカに持ちこんだ外来種である」というものがある。
上述の通り日本由来の侵略的外来種は多く、特にクズ、ススキ、ワカメなどは非常に分かりやすい害をなしている。
そしてアメリカのルイジアナで1884年に行われた万博がきっかけでホテイアオイが広がったとされているのだが、実はこれに日本人が参加していたのだ。
更に調べていくと民族問題的なところに関わってきて話がこじれるのでこの辺で。

無秩序な輸出入や偶発的な拡散が起こらないよう、各個人が意識したほうがいいだろう。
地球や生物のためもあるが、何より我々人類自身のために。




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最終更新:2024年03月18日 17:32

*1 ラット諸島に含まれる島の代表格が、太平洋戦争中に日本軍が撤退作戦を成功させたキスカ島である。

*2 ニジマスも焼き魚や刺身など様々な形で食される魚だが、同時に「侵略的外来種ワースト100」に数えられる侵略的外来種にもなっている。

*3 ただしワカサギがアメリカに放流された当時、デルタワカサギとワカサギは同一種と考えられていた。

*4 しかも伝播方法は「土地を破壊されたプレイヤーが、他の任意の土地(敵味方問わず)にこれを置いても良い」。まさしく人の手による持ち込み。

*5 訳は「殴打蔦の葛」。カードイラストは斧を持った人間に蔦を伸ばして襲いかかる葛、というもの。

*6 ドイツ人医師・シーボルトが持ち帰った標本のひとつに含まれていたとも言われるが、詳細は不明。

*7 逆に言えば、それを克服しようとした結果凄まじい生命力と成長速度を手に入れた

*8 日本人と北米人を対象にした調査では、生の海藻類を効率よく消化するための独特の酵素を出す腸内細菌が日本人のグループだけから発見されている。それだけ海藻類が食文化から遠かったというわけである。

*9 最近は和食ブームなどもあって食べられるようになっているらしい。

*10 ミカンコミバエという害虫が有名

*11 フィロキセラという害虫がアメリカからフランスへ渡ってブドウが絶滅しかけたことがある