川北紘一

登録日:2012/01/31(火) 22:03:03
更新日:2023/08/14 Mon 19:16:04
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川北紘一(1942~2014)は日本の特技監督である。
ゴジラシリーズ」の4代目特技監督として有名である。


【人物】

東京都中央区出身。
中学時代に見た「地球防衛軍」に心奪われ、特撮スタッフを志し大学を中退して東宝に入社。
特撮班を希望し「妖星ゴラス」から東宝特撮のスタッフに加わった。
その後は主に光学合成を中心に活躍し、また「ウルトラQ」等の円谷プロ作品に参加した。

円谷英二氏が亡くなり、1970年代に入ると中野昭慶氏と共に東宝特撮の中核として活躍した。
テレビ作品では「ウルトラマンA」、映画では「大空のサムライ」で監督デビューしている。

中野氏は主に自社制作作品を手掛け、川北氏は提携作品を担当していた。

1984年の『さよならジュピター』、1989年の『ガンヘッド』の特技監督を経て、同年には「ゴジラVSビオランテ」でゴジラの特技監督に抜擢、平成VSシリーズや平成モスラで活躍した。
2000年代は東宝から独立してドリーム・プラネット・ジャパンを立ち上げ、「超星神グランセイザー」に始まる超星神シリーズや「Kawaii! JeNny」といったテレビ作品の特技監督を担当した。


【作品について】

積極的に新しい技術を取り入れており、飛行機の特撮にラジコンを使用したり、日本では初めてとなるモーションコントロールカメラを導入したりしている。

また、メカニック特撮に関しては、スモークを焚いて逆光で撮影するという演出が特徴的で、一種の様式美となっている。メカの演出の上手さから「メカの川北」と評されることも。
また、特報や予告編ではとりあえず「あるもの」を総動員するのも特徴で、「VSキングギドラ」の特報では玩具の人形も利用している。

ゴジラシリーズでは光線と金粉が特徴的である。
怪獣同士の戦いではプロレス的な擬人化された動きを嫌い、そのため光線による戦いが主体となっている。
また、肉弾戦となると踏みつけや噛みつき、また急所を狙った攻撃等野性的な戦いがメインになるなど、動物的になっている。

金粉に関しては「見栄えの良さ」と「流血表現の代替」から採用しており、平成VSシリーズのお約束の1つである。
あまりの使用の多さに川北組が使ったあとのスタジオでは「勝手に金粉が上から降ってくる」と揶揄される。

また、擬人化はしないものの怪獣の表情の表現にも積極的で、多数のメカを仕込んだゴジラの頭を作ったりしている。
超星神シリーズでは、「あそこがダメだった」と思う点を来週リベンジできるというテレビ作品の利点を活かして臨機応変に対応していったと自伝にて述懐している。
幻星神ジャスティライザー』の第50話では、無数の怪獣軍団との戦いというテレビシリーズの予算を超えた演出が語り草となっており、シリーズ構成の稲葉一広氏も「戦国の合戦シーンみたいなものになっていて、川北さんはすごいなと思いました。」と絶賛している。*1

様々な高評価を得ている反面、相手の監督によっては本編との相性が悪くなりやすいことや、特撮にこだわりすぎて本編の尺を食ってしまうのが欠点と評される。

【特技監督作品】

映画


テレビドラマ

  • ウルトラマンA(1972年)21、22、25~27、30、31、36、37、40、41話
  • 流星人間ゾーン(1973年)3、4、8、9、10、14、15、16、25話
  • ウルトラマンタロウ(1973年)6、7話
  • 日本沈没(1974年)4、5、10、14、15、19、20話
  • メガロマン(1979年)7話
  • 西遊記II(1979年)9、12、14、15話
  • ウルトラマン80(1980年)9、10、13、14話
  • 火曜サスペンス劇場 「消えたタンカー」(1981年)
  • 木曜スペシャル 「さらば海底空母イ401 幻のパナマ運河大爆撃」(1983年)
  • 火曜サスペンス劇場 「大都会の死角」(1983年)
  • 年末時代劇スペシャル「五稜郭」(1988年)
  • 年末時代劇スペシャル「奇兵隊」(1989年)
  • 年末時代劇スペシャル「勝海舟」(1990年)
  • 年末時代劇スペシャル「源義経」(1991年)
  • 独眼竜の野望 伊達政宗(1993年)
  • 超星神グランセイザー(2003年)
  • 幻星神ジャスティライザー(2004年)
  • 超星艦隊セイザーX(2005年)
  • Kawaii! JeNny(2007年)全話監督

【余談】

CM映像も多数手がけており、ガンプラやウルトラ怪獣のソフビのCMはその代表である。
特にガンプラのCMはザクグフなどが大量に並ぶ画のインパクトが大きい。
「ジオン脅威のメカニズム」と言えばCMを見た事のない世代にも聞き覚えがあるだろう。

地球防衛軍が好きなため、リメイクの企画を提出していたらしい。

ゴジラVSモスラ』の撮影中、ゴジラシリーズの大ファンである映画監督ティム・バートンがその現場を訪れたことがあった。
「何本も作っていて飽きないの?今度は僕が作りたいよ」と言うバートンに対し、彼は「全然飽きない。まだまだやりたいことがたくさんある。ゴジラは奥が深いよ」とニヤリ。
この時ばかりは、鬼才バートンも大変羨ましそうにしていたという。
そしてこれ以降の数年間、バートンは年に一度は撮影現場の見学に訪れていた。

晩年は執筆やDVDのコメンタリー、東宝特撮DVDコレクションでのレギュラーコーナーがもうけられたりと、映像作品制作以外の活動も目立っていた。

キングコングの逆襲』のメカニコングがお気に入りで、平成ゴジラシリーズに何度か再登場させようとしたが、権利等の関係もあって実現できなかった*2
川北氏はその後『幻星神ジャスティライザー』でメカニコングをオマージュしたデストボーグ・ブルガリオを登場させている。

東宝大プールを最後に撮影に使用したのは川北組であり、『ジャスティライザー』13話でのビル破壊シーンの合成素材を大プールの横で撮影したのが2004年9月9日のことであった。*3

生前、アンギラスを「四足のためゴジラと並んだ時に絵にならない」「膝をついて動くため、スピード感が出せない」と良く評価していなかった。



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最終更新:2023年08月14日 19:16

*1 ホビージャパン『超星神シリーズコンプリーション』P100より

*2 メカ二コングの権利が東宝だけではなくキングコングの権利を所有するRKOにもあるためと思われる。

*3ゴジラ FINAL WARS」での大プールを使ったラストシーンの撮影が二日前の9月7日。