仮面ライダー1971-1973

登録日:2012/02/02 Thu 12:25:45
更新日:2024/01/30 Tue 15:16:36
所要時間:約 6 分で読めます





「ただ生きたいと願う魂を守る。
自分の使命はそれだけだ」




概要

和智正喜(わち まさき)の小説。
2002年に第1巻「誕生 1971」が講談社から出版、03年に第2巻「希望 1972」が出るも、出版社の都合で打ち切られる。
しかし2009年にエンターブレインから書き下ろしの最終章「流星 1973」を含めて「1971-1973」として出版され、無事に完結した。
なお、当初の予定では1975までの全5章構成だったが、最終的には全3章構成となった。

「もしも本郷猛しか仮面ライダーが存在しなかったら」というIFの下、仮面ライダーという題材に真っ向から挑んだ傑作。
エンターブレイン版は約600ページという骨太な作品。


あらすじ

1971年、高度経済成長期真っ只中の日本。
城南大学の学生本郷猛は、秘密結社《ショッカー》に拉致され、新型改造人間「S.M.R.(System Masked Riders)」となってしまった。
脱出した本郷は絶望と苦悩の最中、とある一人の男と出会い、《ショッカー》と戦う事を決意する。

人間の守護者《仮面ライダー》として――


登場組織

●《ショッカー》
物語の主軸となる組織。
毎度お馴染みの秘密結社だが、組織としてのスケールが原典よりも桁違いに大きく、登場人物に「倒す事は不可能」と言わしめた。
一般社会の遥かに先を行くテクノロジーを持ち、例えば1970年代にして既にタブレット端末を完成・実用化している

厄介な事に、もし仮に奇跡が起きて彼らを壊滅出来たとしても、敵対する別の組織が《ショッカー》の人脈や資産を丸々乗っ取ってすり替わるというオマケ付き。

人類の守護者」というスタンスで核戦争を未然に防ぐ等して人類を守り続けているが、その過程で人間に多少の犠牲が出る事には一切の躊躇が無く、人体改造を始め様々な非人道的行為を行なっている。
これほどの組織だが、ある目的のために作られたいわば一部門でしかないとされ、本郷はその真の目的を最終局面で知る事となる。

《ショッカー》の改造人間は使い捨てを想定し大量生産される<兵隊クラス>、より高性能な<士官クラス>、《ショッカー》に奉仕する代償として手術を受けた者の3種類に区分される(BLACKのゴルゴムを思い浮かべていただきたい)。
また、《ショッカー》は<兵隊クラス><士官クラス>などを除けば改造人間は少数で御子柴徹のように生身の人間の方が多い。

なお1971年から1973年を舞台にした本作の時点で〈G素体〉〈Dチーム〉〈テラーマシン〉といった、恐るべき存在の開発が進行中である。


《アンチショッカー同盟》
《ショッカー》に対抗する組織。
しかしその実情は《ショッカー》の力を狙いすり替わろうとするろくでもないもの。
もっとも、多くの構成員は純粋に人間のために《ショッカー》と戦っているようだが。
本郷とはお互い利用し利用される関係。

なお、原典のアンチショッカー同盟はショッカーの被害者が組織した、ちゃんとした正義の組織である。


登場人物

本郷猛/《仮面ライダー》
主人公。この世界においては、彼のみが《仮面ライダー》とされ、別のライダーは一切登場しない。なので勿論「1号」も付かない
(ただし物語上、厳密には《仮面ライダー》は彼ともう一人の男が持つ名前である)。
ショッカーとの終わりなき戦いを続ける「人間の守護者」。

『ならば。この俺が。希望となろう』


ハヤト/《仮面ライダー》
本郷が出会った男。赤いマフラーがトレードマークの日系三世ペルー人。
本郷を導き、彼に重要な使命を託す。
原典の一文字隼人にあたる人物だが、あくまでも別人という扱いらしい。
今作の涙腺崩壊兵器。

『未来は、いい世界になってるだろう。……そうだよな』


●《弐番》/ 滝和也
《アンチショッカー同盟》のコマンド。
本郷の仲間として《ショッカー》と戦う。
序盤から出ていたが、その本名が明らかになるのは第二章クライマックス。

『大した名前じゃないが……聞きたいなら、教えるよ』


●立花藤兵衛
喫茶アミーゴのマスターで、緑川家に仕える人物。
第2章から登場し、彼の存在が本郷を再起に導いた。
最終章では上で紹介した男におやっさんと慕われ、名コンビになる。

『……ありがとう、ありがとう、ありがとう』


●緑川ルリ子
本郷の恩師にして改造手術の執行者だった緑川教授の娘。
緑川家と《ショッカー》の因縁の中、強く生きていく女傑。

初期稿だと実は改造人間で緑川教授の実母という凄い設定だったが没になった。

『私は《ショッカー》と戦います』


●楠木美代子
本郷の大学の先輩だが、その正体は《ショッカー》の幹部級改造人間。
改造人間としての名は《蛇姫》だが、劇中で怪人になる事は無かった。
護衛に《蝙蝠男》と《人間カメレオン》を従えている。
本郷やルリ子に屈折した愛を抱く所謂ヤンデレのような人。
後半、一応2人の協力者になる。

『本郷猛、あなたを愛しています!』


《大使》/田中一郎
《ショッカー》大幹部。表の顔は代議士の秘書。
人懐っこい態度を崩さない中年男だが、「口を覗き込めば地獄が見える」と噂される底知れない男。
基本的に邪悪な男ではない。
が、同席したあるショッカー幹部は『大蛇と同席したような恐怖』を感じていた。

『素晴らしき哉、人生!』


●田中二郎
《大使》こと田中一郎の双子の弟で《アンチショッカー同盟》の幹部。
必要な事しか口にしないタイプで本郷にも割と好かれているが、なんだかんだでかなり胡散臭い人物。
一応兄とは敵同士の間柄。

『ひとの心を傷つけることに関しては、君はうちの兄貴よりも上だな。』


●《博士》
《ショッカー》大幹部。
量子演算機すら遥かに上回る頭脳を持つが、生まれながらあらゆる免疫を全く持たず、特殊な水槽の中でしか生きられない。
透き通った肌と長い手足を「イカのよう」とも形容された。
穏やかな性格だが、その研究内容・成果は死神の所業としか言いようが無い。

『人生は長い。勉強を続けよう』


●御子柴徹
《ショッカー》科学技術部門の幹部だが小心者であり、裏がわからない《大使》を恐れている。
しかし上司である《博士》には純粋な敬意と崇拝の念を持つ。
ちなみに、この小説の発端となったライダー小説コンペで、和智氏が提出した短編の主役が原型。


《大佐》
《ショッカー》箱根要塞の司令官。
元ヒトラーユーゲントで、大佐の階級はその時にヒゲ男に与えられたもの。本名はフランツ・フェルディナンド。
その正体は本郷を驚愕させた。

魂を震わせる戦いを求め続けていた武人で、そこらの改造人間とは段違いの強さを誇る。
最後の相手として本郷との死闘を望んでいる。
黄金色の狼の怪人に変身し、稲妻とも形容される高速戦闘で本郷と壮絶な激闘を繰り広げる。

『走れ、本郷猛』


●《蟷螂男》/石渡明
蟷螂の改造人間。
人間としては42歳の老け顔の男で、杉並区青葉ケ丘第三小学校の理科教諭を勤めている。
穏やかで物腰が柔らかく丁寧で、誰であれ真摯な対応をするため子供からも人気がある。趣味は映画鑑賞。
しかしその実態は小学四年生の頃から253人を殺害してきた連続殺人鬼。
その才能から「人類の天敵」としてショッカーにスカウトされ、以後も淡々と狩りを続けている。


●緑川卓見
緑川物産東京支社の社長。緑川ルリ子の従兄にあたるが、互いに面識はない。
子供じみたところのある飄々とした男。趣味はスイッチの収集。
より巨大な他人の人生を切り替えるスイッチを求め、緑川家当主相続を望む。
そのため〈ショッカー〉へと依頼を出すが……。

「よしなさいよ、本郷さん。君はひとの命を懸けて、脅しができるタマじゃない」


●《カミキリ男》
カミキリ虫の改造人間。
〈S.M.R.〉再現の一環として作られた士官クラスだが、ライダーと死闘の末に破れた。
なおそのデザインはTV版に登場したカミキリキッドと大きくかけ離れており、
何故か「臙脂色に白いライン」の強化服を纏っている。


●《モスキート》/里中新一
蚊の改造人間。
《ショッカー》の任務の他、副業として能力を使った殺し屋も行っている。
人間としては恐ろしく覇気の薄く無口で不器用な、くたびれた会社員のような男。
しかしひとたび怪人に変身すると饒舌になり、その冷徹な素顔が顕になる。
機動性と口撃で本郷を翻弄し、一度は彼の心をどん底に突き落とした。

『のろま』


●《G素体》
ショッカーの新型改造人間。
箱根基地の崩壊に伴ってショッカーを脱走したが、暴走状態に陥り各地を徘徊する。
そのさなかに行き交った人々を、溶解させ混ぜ合わせるという惨たらしい方法で次々と殺害。
本郷に排除依頼が出るが、その行動には何かの指向性があるらしく――――……。

『ミドリカワ コロス』

●《将軍》
《ショッカー》大幹部。
元ロシア帝国の軍人の老人。
〈Dチーム〉計画を推進するも成果があがらず、超重武装改造人間チーム〈テラ―マシン〉計画を発案する。
殆ど出番がなく、《大使》にはロートル呼ばわりされていたあたり、能力にも問題があるようだ。
実際に御子柴からも「改造人間に対ライダー用の重武装化を施すのは無意味」と断じられている。



《アポロ》
最終章に登場した《ショッカー》と同格ないし上位の組織《GOD機関》に所属する謎の男。
本作の事実上のラスボス。
改造人間ではない特別な存在で、ある目的のために生み出された存在のプロトタイプ第1号。その力はヒトを問答無用で無力化する。
単なる身体能力でさえ、最強の改造人間の域に達した本郷すら上回る。

『臭かったからな』


【彼】
《ショッカー》の支配者。その正体と目的は……。




改造人間一覧

リンク先は元となったであろう怪人の記事。
〈幹部クラス〉
●ショッカー
《大佐》
《大使》
《博士》
《将軍》
《蛇姫》 蛇姫メドゥーサ

●GOD機関
《アポロ》



●第2種(士官クラス)
《蟷螂男》/石渡明



●第2種(士官クラス)
《カミキリ男》仮面サンダー
《モスキート》/里中新一


<流星 1973>
●第1種(兵隊クラス)
《大蟻男》

●第2種(士官クラス)
『Dチーム』
<バレッツ>
《蛇男》
《象亀男》
<スラッシャーズ>
《蠍男》
《蜥蜴男》
《毒蜘蛛男》
《サイ男》
《モグラ男》

●その他
『テラ―マシン』
《カンガルー男》





おまえは走る。

『仮面ライダー』

その名前と、ともに。

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最終更新:2024年01月30日 15:16