仮面ライダーギルス

登録日:2010/03/15 Mon 09:05:25
更新日:2023/08/08 Tue 22:18:29
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俺は…不死身だっ!




仮面ライダーギルスとは、特撮テレビドラマ『仮面ライダーアギト』に登場する3号ライダー。

仮面ライダーになってしまった男」である。


葦原涼が変身ベルト「メタファクター」(変身の際は操作しない)で変身するカミキリムシがモチーフの仮面ライダー。
メインカラーは緑で、仮面ライダーアギト同様、ベルトには賢者の石が埋め込まれている。

スーツアクター:押川善文


アギトや仮面ライダーG3/G3-Xとは異なるワイルドな戦闘スタイルで、仮面ライダーアマゾン仮面ライダーシンを彷彿とさせる。
戦闘中によく雄叫びを上げる事で有名で、時には口を開いてまで吠えている。

アギトと同じ『光の力』で誕生したようだが、アギト程洗練された姿ではなく、アギトの胸にあるべき「ワイズマン・モノリス」が欠損しているため、力の制御も出来ていない。
劇中では専らアギトの不完全体として扱われていたが、万物の創造主たる『闇の力』はアギトとギルスを明確に区別した他、
沢木哲也(本物の津上翔一)や水のエルといった全てを知る存在達も「ある意味アギトと同じ存在」「アギトと同じく人が持ってはならない力」とアギトとは違う存在であるかのような言い回しをしており、
後にアギトの力を手に入れて完全体になった際もアギトへの変化ではなく、ギルスのまま進化していた事を鑑みると、力の源こそ同じだが、根本的には別の存在であり、言うなれば「アギトの亜種」といった方が正しい模様。
北条透はアギトの代わりに捕獲しようとした一方、関谷真澄はアギトではなくアンノウンと同類視していたことから
劇中人物からは「アギトとの類似点はあるが外見はアンノウン寄り」と認識されている模様。

かつてアンノウンと人類の戦争が起こった神話の時代、『光の力』が人間に力を与えるべく女性と交わって子を成したことがあった。
『光の力』の子孫たちはネフィリムと呼ばれ、アンノウンを食らった。
これがオーヴァーロードの怒りに触れ、人類は僅かな者たちだけ方舟に乗り、ネフィリムは大洪水で一掃され、『光の力』は処刑された。
しかし、『光の力』は死の直前に自らの力を人にばらまいた。
このネフィリムという設定上のみの存在が、ギルスのことではないかと解釈出来るが、真偽は不明。
仮にギルスだとするとギルスは『光の力』の血族が覚醒する姿と取れる。
なお、イコン画では太古の戦いにおいて人間の軍勢を率いている存在がギルスのような見た目である事から、ファンの間ではほぼ「ネフィリム=ギルス」という見解で固まっている。


このように太古の昔に滅ぼしたはずの存在である故か、涼がギルスに変身したのを見た『闇の力』は「アギト……いや、ギルスか。珍しいな」と一人ごちている*1

当初は変身を解除したら一気に老化現象が起こっていたが、
超能力者に襲われて死亡した際に風谷真魚の力で蘇生して以降、アギトの力の一端を受け取ったのか、老化現象はなくなった。
しかし、蘇生後の話であるTVスペシャル『仮面ライダーアギト スペシャル 新たなる変身』や、映画『劇場版 仮面ライダーアギト PROJECT G4』では何故か老化現象が起こるという矛盾が発生している。

因みに放送から20年が経過した現在でも何故葦原涼のみがギルスに覚醒したのかは不明。
劇中では涼が沢木に何故自分がこうなったのかと問いかけるシーンがあるが、「それはお前自身が答えを見つけなければならない」とはぐらかされてしまった(この返し自体は「与えられた力の意味を考えろ」といった意味合いを含んだものと思われるが)。

スペック的にはアギト ストームフォーム並の素早さとフレイムフォーム並のパワーを兼ね備えている。
つまり、トリニティフォームとほぼ同等のスペックを誇り、実際アギトと戦った時は圧倒していた。
反面、防御力に難がありまだ強化されていない仮面ライダーG3の銃撃を受けて重傷を負う程低い。
しかし、傷を負ってもすぐに再生する場面があり、回復力は高い。

戦闘スタイルは荒々しくパワフルな肉弾戦で、口部の牙「デモンズファングクラッシャー」での噛み付きを披露したことも(視聴者の子供の真似を予防するためか、一度しか使っていない)。
また、両腕から鉤爪状の刃「ギルスクロウ」や多関節の触手「ギルスフィーラー」を生やして自らの武器とする。
ちなみに全身の緑の装甲やこれらの武装は全て、ギルス=涼に寄生している独立した生命体である。
なお、前述したネフィリムは「人間もマラーク(アンノウンの本当の呼び名)も関係なく食らった」とされている。実際に序盤の涼も頭の中で「襲え」という言葉がずっと響き、人間に手をかけようとした場面が見られた。本編のギルスは涼の精神力によって制御されていたものの、もしかしたら敵味方関係なく襲う理性無き凶戦士というのがギルス本来の姿なのかもしれない。

頭部の角「ギルスアントラー」はパワー減少に伴い萎縮する……というよりも本来この角はアギトの「クロスホーン」と同じく力の制御を行う器官である。
アギトは必殺技を使用する時の余剰エネルギーを放出してるのに対し、ギルスアントラーは最初から全力でエネルギーを放っている状態に等しい。
要するに、委縮するというよりはパワー減少によって本来の状態に戻っているという表現の方が近い。

常時フルパワーで戦っているのは仮面ライダーアナザーアギトも同じだが、
ギルスの場合は前述の通り、胸部のワイズマン・モノリスが欠損しているため、力の制御が全く出来ておらず、前述の老化現象もこれに起因している。
また、額には「ワイズマン・オーヴ」が埋め込まれている。

必殺技は踵についた刃を長く伸ばして飛び上がり、踵落としの要領で相手の心臓を肩胛骨の真裏からブチ抜く「ギルスヒールクロウ」。
歴代のライダーでも珍しい踵落としのライダーキックで、G3を大破させている。
他には、ハイパーバトルビデオでのみ「ギルスヘルスタッブ」という技を使用。こちらは真上に投げ飛ばした敵が落ちてきたところを貫手で突き上げるというもの。

多くのアンノウンを倒していくが、中盤以降は涼の体調悪化も相まって強くなる敵に苦戦が目立つようになった。
そしてアナザーアギトとの戦闘で打ち負かされ、エクシードギルスへの強化となった。



◆ギルスレイダー

ギルスの専用マシンで、涼のバイクが変化した姿。
意思を持っているらしく、ギルスがピンチの時には駆け付けてくれる頼れる相棒。
これは児童誌の図鑑に載っていたスペックの設定を採用して劇中で描写したもの(『仮面ライダー龍騎 超全集 最終巻』佐藤健光監督インタビューより)。
自己再生もできる。


◆仮面ライダーエクシードギルス

終盤から登場したギルスの強化形態。
不完全だったギルスが、あかつき号の乗客・真島浩二からアギトの力を貰い受け、ギルスの姿のままアギトと同等の進化を遂げた完全な姿である。

今まで力を制御出来なかったが、胸部に「ワイズマン・モノリス」が発生したことで完全に制御出来るようになった。
肩やら様々な箇所から真紅の鉤爪が生えており、見た目だけならラスボス怪人クラス。

背中から生やした伸縮自在の赤い触手状の「ギルススティンガー」で相手を捕縛し、相手の動きを封じる事も可能。
また、刃「エクシードクロウ」も持つ。

必殺技はギルスヒールクロウと同じ要領で放つ「エクシードヒールクロウ」。
ギルススティンガーで捕縛してから放つ事も出来る。
その他、「ダブルエクシードヒールクロウ」を両足で放つ。

初登場は映画『PROJECT G4』だが、同じく劇場版初登場となったアギト シャイニングフォームと異なり、告知なしの完全なサプライズだった。
劇中ではアントロード フォルミア・エクエスに切断された右腕がいきなり生えてくると同時に変身。
フォルミカ・エクエスを捕縛してエクシードヒールクロウで瞬殺したが、ディレクターズカット版の追加シーンでは初変身という事で力を使いこなせなかったのか、倒れこんでしまった。


◆デザイン・スーツなど

アギトやG3に比べると外見は似ていないものの、ギルスもまた前作『仮面ライダークウガ』に登場した仮面ライダークウガのデザインを発展させたものであり、角は石森プロの早瀬マサト氏により、イナズマン風にデザインされた。
当初、角の伸縮はアギトの開閉ギミックと同様にパワーアップしたら伸びるものと考えられていたが、短縮形態がイマイチ様にならなかったため、パワーダウン形態に改められた。

モチーフは前述の通りカミキリムシだが、緑色のデザインと両手足から鎌状の刃を生やして戦うスタイルから、しばしばカマキリと誤解される事が多い。
もっとも、『アギト』本編ではカマキリモチーフのマンティスロード プロフェタ・クルエントゥスと戦ってはいるが。
後に本当の意味でカマキリモチーフの仮面ライダーが登場するが、奇しくも彼の真の姿も緑色かつカミキリムシモチーフである。

「ギルス」という言葉は魚の鰓を意味する言葉であり、劇中で水に関連する描写が多かった事、
アギトよりも不完全な存在という設定や、そのアギトのモチーフがである事から、「本来のモチーフは(みずち)ではないか?」とする考察がある。

「何度も水落ちしたせいでスーツが腐ってしまったため、ギルスのスーツは今残っていない」という説が広がっているが、実はガセで、変身後では水落ちはほとんどしていない。
メインライターの井上敏樹氏が水落ちを多用する事がネタにされてきたため、こんな噂が立ってしまったようだ。
とはいってもスーツが水に浸かる機会は多かった*2ため、腐敗が酷かったのは本当らしい。
なにより「体が老化していく」というギルスの設定にマッチしているため、その噂に拍車をかけたところがある。
なお、現場では「押川汁が溶かした」とジョークのネタにされた事も

スーツが腐敗した実際の原因は「“生物感を出すため”に使用した特殊塗料の影響」によるもの。
よって、『仮面ライダーディケイド』第12話・第13話では「理性を蝕まれ、異形になったアギト」という設定で、スーツが残っていたエクシードギルスを登場させるという形になった。
また、劇中で度々口を上げて咆哮するシーンがあったおかげで、放送中の段階でも頭部の劣化は著しかったとのこと。

ちなみに次回作『仮面ライダー龍騎』に登場した仮面ライダーも当時のスーツは現存していないか、していても状態が悪いものがおおかった*3らしく、海外リメイク版『KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT』制作の際に修復や新造が行われている。

そして主人がいなくなって久しいギルスレイダーもまた、後に『仮面ライダーアマゾンズ』にて「ジャングレイダー」へと改造される事となる。

『アギト』及び『アマゾンズ』のチーフプロデューサーである白倉伸一郎氏はこのように語っている。
「そこで「ジャングレイダー」と名づけて、ひそかにギルスレイダーの名跡を継いでます。
 どのみちギルスさん本人がもういらっしゃらないので、バイクだけ残しても…と。」

「ギルス」という存在を証明するものがまた一つ失われ、悲しむべきか、或いは新たな姿を得て再び活躍の機会を得られた事を喜ぶべきか。
同じくスーツがなくなっていたが、『仮面戦隊ゴライダー』を機に新造されて復活したアナザーアギトの例もあるので、「エクシードではないギルスの再登場も見たい」という声も多くなっている。


◆『仮面ライダーディケイド』での活躍

第12話・第13話に登場。変身者は『アギトの世界』の芦河ショウイチ
上記のようにスーツが腐敗してしまったギルスに代わって、エクシードギルスがショウイチの変異した姿として登場。
ショウイチ自身の問題故か、エクシードギルスは不完全体扱いになっており、常にギルススティンガーを生やしたり、
力を制御出来ずに仮面ライダーディケイドに襲いかかったりと度々暴走しており、光夏海からは「ライダーなの?」と疑われた程。

前述の通り、スーツの都合でエクシードギルスとしての登場だったが、G3もG3-Xがメインだったので、強化形態が2人もいるという形で、ある意味ではバランスが取れていた。


◆『HERO SAGA』での活躍

何気にサブライダーが主役なのは初。
本作から10年後、オートバイ専門の会社で働く涼の前に現れたアナザーアギトの正体は…


◆ゲームでの活躍

『超クライマックスヒーローズ』に参戦。ギルスクロウ、ギルスフィーラー、ギルスヒールクロウを備え、
超必殺技でエクシードに変身し、劇場版で見せたギルススティンガーで拘束→エクシードヒールクロウを繰り出す。 


仮面ライダーバトル ガンバライド』にはエクシードギルスとしてSPカードでの参戦のみに留まっていたが、『ガンバライジング』では4弾にて待望のプレイアブル参戦。
ヒールクロウ持ちの高レアカードでは、バースト演出でデモンズファングクラッシャーを展開しての雄叫びをしてくれる。
アギト、G3-Xとチームを組むことでボーナス「アギトの会」(チーム全員のAPを+10)も発生する。



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最終更新:2023年08月08日 22:18

*1 因みに劇中でギルスの名前が使われたのはこの場面だけであり、変身者の涼でさえ最後まで「ギルス」の名前を知る事はなかった。

*2 実際になにかと水辺で戦闘するシーンが多く、海岸や川で水に浸かりながら戦闘するシーンもある。

*3 特にシザースは出番の短さから怪人と同じ素材で造形されていたため、番組中でもかなりスーツが痛んでいるのが確認出来る