ゲゲゲの鬼太郎(原作)

登録日:2012/01/29 Sun 21:56:14
更新日:2024/01/21 Sun 22:46:45
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ゲゲゲの鬼太郎』とは、水木しげるが描いた妖怪漫画。
本稿では、原則として水木しげるの手による漫画作品について記述する。

各アニメシリーズの項目はこちらを参照


【概要】

日本では知らない者はいないくらい有名な作品。
上記の通り、「墓場」を含めて七度にわたって地上波でアニメ化した歴史があり、加えて80年代にSPドラマとVシネマ、00年代に映画化と計3回実写化もされている。
世田谷に住んでる魚一家大泥棒3世春日部の5歳児にも言えることだが、アニメを知って原作を読むと違和感を感じる者も多い。
アニメでは正義のヒーローとして描かれる鬼太郎や妖怪達の行動が、あまりにも人間くさかったり、ドン引きするぐらい過激だったりする為でもある。
アニメでは多い「妖怪との和解」も、原作ではあっさり殺してしまうことが多い。巻き込まれた人間もよく死ぬ。

なお、原作は新しいシリーズが始まるごとに設定が一新されるため、それに合わせてキャラクターの性格や設定がコロコロ変更されるのが特徴。
ただし、いくつかの作品は『墓場鬼太郎』、または『ゲゲゲの鬼太郎(週刊少年マガジン版)』の続編というスタンスを取っている。ゴジラみたいなもんと思って頂いて結構。

最初の『少年マガジン版』は連載当初『墓場鬼太郎』というタイトルだった。
アニメ1期でも当初は同タイトルで放送する予定だったが、当時はテレビは家族団欒で見るのが一般的だった事もあり、「墓場」というタイトルを付けることにスポンサーが難色を示しアニメ化に三年を費やし、最終的に「ゲゲゲ」に変更されることでGOサインが出た経緯がある。
この「ゲゲゲ」というのは、水木氏の幼少期のあだ名である「げげ」から取られている。
由来は自己紹介の折に「しげる」という名前が上手く発音できず「げげる」になってしまった事から。

連載雑誌は多岐に渡り、まとまった物だけでも
などがある。

雑誌ごとに話が変わるため明確な「最終回」がなく(長編ラストとしての最終回はある)、一時「その後のゲゲゲの鬼太郎」や「悪魔ブエル」で区切りがついても、別雑誌で連載再開したり、内容とキャラクターを柔らか目にアレンジし児童書として発行する形でリメイクや新作を発表していた。
同時期に複数誌で展開していた時期もあり、関わった会社だけでも十は軽く超える。
なお原作者自身の手で描かれた最終作品は、月刊少年ライバル2014年2月号に掲載された短編『ねずみ猫の巻』(水木しげる漫画大全集版18巻収録)である。

ほかにも他作家による作品として
などがある。

ただでさえ日本屈指の長期連載・移籍連載漫画の上に、ひとつのシリーズでも設定の変更やリセットが何度も繰り返されたため、全貌の把握は非常に困難。
死んだキャラクターが何事もなかったかのように生き返ったり*2、妥協の余地などなかった強敵が普通に味方になっていたりと、変幻自在っぷりはもはや妖怪並み。
ファン同士でさえ会話が成り立たないというのはよくある話である。


【登場人物】


ご存知主人公。幽霊族の最後の生き残り。隻眼で「生まれつきのもの」・「赤子の時怪我をしたせい」の2説がある。
貧乏で常に腹ペコな呑気者。自称「正義の味方」。
アニメとの最大の違いは、髪の色がアニメでは茶髪なのに対し原作では銀髪である点
貸本漫画時代においては、スレた疫病神みたいな性格で、関わりを持った人間に不幸をもたらす少年だった。
それが少年誌で連載されていくうちに、アニメに近い正義漢と言えるような人格になっていった。
それでも拾い食いはするわ、ゴミは漁るわ、タバコは吸うわ、酒は飲むわ、電柱を盗むわで貸本時代ほどではないが問題行動も多い。
その貸本時代には、恋人に先立たれ自殺しようとするなどナイーブな一面も。
……というか原作の鬼太郎は悲しくなるくらい女運に恵まれない。
上述の通り『墓場鬼太郎』では恋人の寝子を殺害され、『続ゲゲゲの鬼太郎』では美人の恋人ができたものの捨てられてしまっている。
『その後のゲゲゲの鬼太郎』では南方へと移住し、現地の娘と熱愛の末に結婚し逆玉に乗るが、続く『死神大戦記』で日本に呼び戻されてしまう。
ウエンツ瑛士主演の実写版も原作準拠のため、2作目で出会った人間の少女とは悲恋に終わっている。
原作では「髪の毛針」を使うと普通にハゲる。あと、妖怪オカリナや地獄の鍵は原作には一切登場しないアニメオリジナル武器。
また「吸血鬼エリート」や「かまぼこ」では、骨やすり身になっても部品を集めて恐山の病院に入院すれば元に戻る不死身ぶりを披露している。
後に高校生になり相撲を始める

鬼太郎の父親。
本来は包帯を全身に巻いたゴツい親父だったが、病気で死んでしまい、息子が心配で目玉だけ生き返る。
見かけによらず不死身な身体で、食われても潰されても元に戻る。
意外と勝率が高く、敵が目玉親父を食べることそれ事態が死亡フラグになっている。

妖怪と人間の混血である半妖怪で、鬼太郎の悪友。通称「ビビビのねずみ男」。
生まれについてはさまざまな説があり、安定しない。
『鬼太郎地獄編』では本名は「ペケペケ」*3だとされているが、この設定はその後一度も出てこない。
基本的に善悪で動くことは少なく、金儲けや自分の命のために動くことが多いトリックスター。
頭の回転が早く、機転も利く。
作中で最も人間くさく、水木氏が1番好きなキャラクターでもある。そのため「鬼太郎」作品でなくとも出演する短編が多数ある。
とある短編漫画ではそっくりな顔をした姉が登場した
ビンタが得意。
非常事態には体内に溜めておいた屁を放出する。作中ではロケット噴射に例えられるぐらいの風圧をほこり、飛行さえも可能にする。命の危機の「最後っ屁」に火をつけると大爆発を起こす。

ちなみにモデルは作者の貸本漫画家時代の友人(ただし一般人のため、作者の自伝的漫画では仮名で登場し、ドラマ『ゲゲゲの女房』では「幼馴染」と改変された)で、モデルは普通に働いて老後を過ごしたらしい。
余談だがアニメ版歴代キャストの内3人、および歴代実写版演者3人の共通点として「NHK大河ドラマへの出演経験」というのがあり(ねずみ男前か後かは人による)、中には主人公の兄が実写版・義兄がアニメ版なんて話もあった。

  • 砂かけ婆
その名の通り砂をかけるのが得意な婆さん。
通称「おばば」。
アニメでは常識人な彼女だが、原作では口が悪く、人間嫌いでもある。
話し合いの途中で先制攻撃したり、包丁を持って襲い掛かったり、いきなり肘打ちしたり、棒で後ろから殴ったりと、なかなかダーティーな戦い方をする。

  • 子泣き爺
敵の背中におぶさり、石化して潰すのが得意な爺。
初登場エピソード「妖怪大戦争」では、これでフランケンシュタインの怪物を溺死させた。その後戦死するが、何事もなかったかのように復活。
『鬼太郎のベトナム戦記』ではさらにスケールアップし、米軍の原潜まで沈没させた。
砂かけ婆と行動することが多い。
こちらも口が悪い。

  • 一反木綿
鬼太郎たちのアッシー君。
たとえ体をバラバラにされても水を浴びると瞬時に再生する。
しかし心臓を刺されると死ぬ。

  • ぬりかべ
妖怪の中でも屈指のパワーを誇る力自慢。
基本的な役割は盾。
実は口がある。目玉が一個だったり二個だったりする。腹に穴が開いても縫い合わせれば再生可能。岩なのに縫うのか?
アニメ5期のみなぜか妻子持ち

猫の特性を持つ女の子。通称「猫ちゃん」。
アニメでは鬼太郎と行動することが多いが、原作初期のマガジン版では「猫娘とねずみ男」の一度しか登場しなかった。
いちおう「妖怪大裁判」のエピソードでは、モブとしてその他大勢の妖怪たちとともに敵軍団に交じって再登場している*4

その後、1971年に少年サンデーに移ってからレギュラーキャラに。アニメでも、同時期の2期から常連となる。
当時は「猫子」と呼ばれ、ボサボサの髪に花柄の和服という違いはあるが、丸い頬や吊り上がった目、猫化したときの顔などの基礎デザインはマガジン版から引き継いで確立。
その後も服装や髪形をちょくちょく変えつつも常連化し、86年ごろの「新編」では現在イメージされる姿となる。
ちなみにかなり後年「人間」「半妖怪」とする本も出たが、猫子時代から「いま妖怪の一種として」「あたし人類に関心がないから知らないわ」と自ら語り、
鬼太郎からも「あれ(ねずみ男)は純粋な妖怪じゃねえんだ、半分人間の血が混ざっているから用心した方がいいよ」と半妖相手に向けるとは思えない言葉を向けられる+猫子も平然とするなど、少なくとも当時は妖怪扱いだった。

続ゲゲゲの鬼太郎』では女子大生になった猫娘が登場。「邪魔」という理由でねずみ男を本気で殺そうとしたが、自分が仕掛けた罠に嵌って逆に殺されてしまった。
が、その後の『スポーツ狂時代』では鬼太郎の同級生の猫娘が登場。服は現在の白いブラウスに赤い吊スカート、髪はおさげで、顔は猫子から引き継いでいた。

  • 呼子
笠を被った一本足の妖怪。アニメ版では5期を除けば出番は少ないものの、原作では多くのシリーズにおいて鬼太郎ファミリーとしてレギュラー出演している。
初めて「呼子」と呼ばれたのは『国盗り物語』であり、「鏡合戦」では「山こぞう」、「妖怪大裁判」では「山びこ」と呼ばれる。
長らく活躍はなかったものの、『国盗り物語』において意外な活躍を見せた。

  • 油すまし
『新編』『国盗り物語』『鬼太郎霊団』において鬼太郎ファミリーの一員として登場*5
ゲゲゲの森の村長を務めており、将棋が得意で将棋の駒の妖怪「王将」相手に活躍。『地獄編』では首だけになった鬼太郎に魂を分け与えた事もある。
連載が中止になってしまうでねえか」「それは…後編でしゃべる!!」などやたらメタ発言が多い。

  • 傘化け
おなじみ唐傘お化け。『電気妖怪』でカサやんと呼ばれる個体が鬼太郎と子泣き爺を運んでいたのが印象深いだろう。
カサやんと呼ばれたのはこの1回だけだが、サンデー版『傘化け』や『雪姫ちゃんとゲゲゲの鬼太郎』に登場する敵の傘化けと区別するため関連書籍などでは味方の傘化けがカサやんと呼ばれていることがある。

マガジン版『牛鬼』『妖怪大裁判』で鬼太郎を苦しめた強敵……のはずだが、なぜかサンデー版『釜鳴』で味方として再登場
その後は『鬼太郎 対 悪魔くん』や『新編』でも味方として登場し、『地獄編』では十鬼を口の中に放り込むワイルドなファイティングスタイルを見せた。

  • 雪姫
『雪姫ちゃんとゲゲゲの鬼太郎』にのみ登場する鬼太郎の妹。赤ん坊だが知能は高く言葉も喋る。
ねずみ男が墓場から拾って来たため、目玉親父すら自分の娘として信じなかったが、一緒に「血統書」と「閻魔大王の保証書」も付いていたため、あっさり信用。
「雪姫」という名前は童話の「白雪姫」に因んで付けられた。
幼女でありながら肥溜めに入れられたり、タンを呑まされたりと、時々酷い目にあう。
この『雪姫ちゃんとゲゲゲの鬼太郎』では彼女が主役の関係から、相対的に鬼太郎が異常なまでに頼りなくなっている。

アニメではボスを務める妖怪だが、原作ではセコいオッサン。ボスですらない。垂れ目に背広姿。
猫娘同様『少年マガジン版』における1話限りのゲストキャラ。しかも彼女が次第に出番を増やしていったのに対し、彼の出番はシリーズ全体を見渡してもほとんどなかった。
だが、アニメ以上に残酷な面もある。なにせ60年代当時に都心で無差別爆破テロをやらかしているのだから。
鬼太郎の「先祖流しの術」で原始時代に追放されるが、アニメ3期の頃スタッフが執筆した『最新版ゲゲゲの鬼太郎』では悠久の時を経てパワーアップした吊り目に軍服姿で現代へと戻ってくる。
『鬼太郎国盗り物語』では垂れ目に羽織袴姿で二十数年ぶりに登場、ムー帝国の地上侵攻を阻止するべく、仇敵である鬼太郎と一時的に同盟を結び、輪入道部隊や一つ目小僧部隊、狸部隊を指揮して戦った。


【エピソード】



【名言(迷言)】


  • 鬼太郎
    「“命短し恋せよ乙女”という歌がある。そうなんだ、ボヤボヤしてると歳老いてしまう。人生は1日でも楽しまなくちゃ。」

  • 鬼太郎
    「僕まだ高校生なんですけど」ドキドキ
    (見知らぬ女性に押し倒された時の台詞)

  • 鬼太郎
    「あっ、ねずみ男だな。子守りもしねぇでこんな所で寝るなんて無責任な奴だ。
    目覚ましに小便でもかけてやれ。」シャー 
    (気絶しているねずみ男に対して)

  • 目玉親父
    「鬼太郎、こりゃあ困った事じゃ。第一まぎらわしい」
    (全身が溶けて目玉だけになったねずみ男に対する台詞)

  • ねずみ男
    「喧嘩はよせ。腹が減るぞ。」

  • ねずみ男
    「困ってる人を助けないのが僕の趣味だ。」

  • ねずみ男
    「聖なる大事業に使うのだ。何人も喜んで我々に提供するのが当たり前だ。お前も喜んで手伝え。天国は近い。
    (電柱を盗む時の台詞)

  • 砂かけ婆
    「大きな声だすな。黙ってもらっとけ。」
    (金を渡す時のセリフ)

  • 砂かけ婆「ちょっと。」
    アナウンサー「はあ」
    砂かけ婆「アナウンス代わってくれや」
    アナウンサー「はあ?」
    砂かけ婆「はあじゃねぇ!」ボギッ!

  • 猫子
    「手をかみ切るまで待って!!」
    ねずみ男「じょ、冗談じゃないよ!!」
    (出会いがしらのセリフ。この時点ではねずみ男は声を掛けただけ)

  • 猫娘
    「けがれた人間の血が半分混ざった「半妖怪」だもの」
    (ねずみ男を評して)


【余談】

先生の人生を振り返る自伝漫画『神秘家 水木しげる伝』(ムック本「怪」vol.0020~vol.0023)では、最終話にて水木先生が描いたアニメ第5期デザイン準拠の鬼太郎たちの絵*6を見ることができる。
『ゲゲゲの鬼太郎 妖怪千物語』(ほしの竜一)のように第5期デザイン準拠の漫画は存在するが、先生自らの漫画でアニメのキャラデザの鬼太郎や猫娘がそのまま描かれるのはかなり珍しいと思われる。

以降は商品展開などで用いられる猫娘のデザインも、「あんた誰?」と言いたくなるぐらいに絵タッチが変更されているものもあり、米子~境港間を走る鬼太郎列車の中には、あざとい雰囲気の猫娘のデザインをあしらった「ねこ娘列車」が存在する(境線)。
原作では、『月刊少年ライバル』に掲載された読み切り短編「ねずみ猫」*7にこのデザインで登場している。


ゲッゲッ ゲゲゲゲゲ

追記・修正をたたえるゲゲゲの歌がこだました

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  • 小学館
  • 講談社
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最終更新:2024年01月21日 22:46

*1 もともと執筆していた水木氏が兎月書房とのいざこざで移籍してしまったため、その後釜として竹内氏が墓場鬼太郎の続きを執筆することとなった。黒歴史扱いされているが、当時は一定の人気があった模様。

*2 鬼太郎ファミリーは全員死んだ経験がある。

*3 水木氏が戦時中に配属されていた南方の言葉で「大便」を意味する。

*4 後年、同族の別人と設定された。

*5 マガジン版「妖怪大裁判」では鬼太郎の敵として登場し、『蓮華王国』ではなぜか呼子が油すましと呼ばれている

*6 但しペン入れはアシスタントの村澤昌夫によるもの。

*7 生前の水木氏が描いた最後の鬼太郎漫画。