廃線・廃道

登録日:2012/02/13 Mon 08:22:53
更新日:2023/12/23 Sat 20:33:34
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そこはかつて人の営みが有った……
やがて棄てられ、忘れられ、朽ちていった……
だが、それを愛した人間も世の中に居た……

廃線・廃道

【概要】

棄てられた鉄道や道路、橋にロープウェイ等の事。
類義語として「未成線」がある。

道路・線路の架け替えや災害、会社の倒産・建設の中止等で棄てられる。
レール等の遺構は売れる・邪魔になるので大体は撤去されるが路盤や隧道は残される事が多い。

愛好家も中々多いこのジャンル。だが余り理解はされない。
法律の関係(不法侵入)とか、わざわざ危険な所に向かうので……まあ、仕方ない。

因みに酷道やローカル線(秘境駅等)とは別のジャンルだが切っても切れない関係ではある。

加えて、廃墟とは全くの別物である。なので廃線・廃道が好きだからと言って廃墟も好きだとは限らない。

【主な遺構】

  • 路盤
廃線・廃道愛好家にとっての唯一の道しるべ
これが見つからないと何も始まらない。
藪が酷くてまともに通れなかったり、崩れて無くなったり……。
それでも愛好家は路盤を捜す……。

  • 隧道(すいどう/ずいどう)
トンネルの事。廃線や廃道を探してる人は大体この隧道目当て。
素掘りにレンガに石造り。今ではお目にかかれない素晴らしい隧道が多い。崩落・閉鎖も多い。

  • 切り通し・片洞門
片洞門は、岩山など広範囲を掘削するのが困難な場所で、通行に必要な空間をコの字にくり抜いたもの。
土木技術の発達により現代ではほぼ行われず、廃線・廃道でしかまず見られない。
そして、片洞門が必ず残っている保証は無いのでかなりレアな遺構である。
切り通しも見所満点で、古い切り通しなら鑿の跡が見れたり、ほぼ直角の切り通しがあったりする。

こちらはそこそこレア。近代的な橋なら残ってる事が多いが、古い橋は落ちてたり撤去されてる事が多い。
特に鉄道の橋は撤去されるパターンが多いので廃線愛好家はこちらがメインな場合もある。
吊橋はロマン。

  • 石垣
古い道路御用達。「橋台(きょうだい)」とも。路盤や側面に敷き詰めて道路や鉄道を棄てられた後も守っている。
たまに崩れてるけど……。

  • レール
廃線になったら売られたりするのでレールが残ってる事は余り無い。
廃線でレールを見つけたら素直に喜ぼう。
標識は残される事が多い。


  • プラットホーム
レールや枕木が撤去されても、プラットホームは放置されている事がある。



【用語】

  • 崩落地点
廃線・廃道を探している人にとっての最大の問題点。
斜面が崩れてたり、隧道が塞がっていたり……。
強行突破する強者もいるが、大抵の愛好家は引き返す。
無理は禁物である。


つまり草ボーボー。
棄てられ、放置されているので草生やし放題なのも当然である。
これも酷いと引き返す羽目になる。
但し、夏場に藪が酷くとも冬に訪ればかなりマシ。
愛好家は春夏秋冬オールシーズン、廃線・廃道を探している。

  • 私有地
これも問題点……と、言うよりこれが一番の問題点
大体の廃線・廃道は棄てられていても誰かの私有地である事が多い
だが、棄てられてる物を管理していられないのでほぼ黙認している。
所有者が利用をしていたり、立ち入り禁止の表示がある場合には引き返そう。
また、これは稀なケースだが、廃線周辺が住宅街に囲まれている、もしくは廃線跡が住宅街に転用されている場合もある。
後述するが、このような場所で変にうろつけば通報される可能性も孕んでいる。
マナーは守ること利用してないなら(ry

  • 林鉄・本線
林鉄は木の採伐が全盛期を迎えていた時の鉄道。様々な遺構が残っていることが多い。

本線は主要な道なので鉄道、道路限らずにかなり手が入っていることが多い。

【有名所】

  • 手宮線
函館本線より分岐する形で南小樽駅から北上して手宮駅に至り、更にそこから北東へ進みかつてあった手宮桟橋上の桟橋駅を結んでいおた国鉄路線。
恐らく廃線の中では来訪と散策が容易な路線の一つといえる。
というのも、小樽市街地を突っ切っているのもあるが、その殆どが保存された上で遊歩道が併設され、観光地として整備されていることが挙げられる。
南小樽駅から寿司屋通りの数メートルは築堤などの路線後が残るのみで、一部が道路になっているところ以外は当然侵入禁止だが、その寿司屋通りから手宮駅があった小樽総合博物館までの約1.6kmまでが遊歩道として再整備され、観光案内の看板も併設されている。なお、踏切もそのまま保存されており、日銀通りなどの交差区間では「一時停止不要」の看板が設けられている。
また、小樽総合博物館構内も手宮駅の構内がそのまま残されており、途中にあった色内仮乗降場も、休憩所という形で復元されている。

その他、函館本線の分岐点から南小樽駅までにも遺構が確認でき、途中の踏切の東側に1線あった形跡や、南小樽駅の手宮線ホームの遺構が現存する。

なお、手宮駅〜桟橋駅間については、手宮洞窟近くにある築堤が残っており、その事を示す看板も設置されているが、桟橋駅については手宮桟橋自体が戦時中のいざこざ*1で撤去されており、橋脚がわずかに残るのみである。

  • 士幌線
帯広駅から十勝三股駅までを結んでいた国鉄のローカル線。
糠平ダムの湖上に浮かんでいるように見えるタウシュベツ川橋梁が有名。

  • 白棚線
白河駅と磐城棚倉駅を結んでいた鉄道路線。
戦時中の金属供出によってレールが撤去され、鉄道としてはそのまま廃線になったものの、線路跡が国鉄バス専用道に転用され、現在はJRバス関東が運行する路線バスの白棚線として運行されている。

  • 静岡県道416号線
  • 東海道本線旧線
大崩海岸
海上に迫り出した道路が特徴。
災害による廃道で、ロックシェッドを土砂崩れで押し潰した。その為、道路が海上に逃げる様に建設された。
道路上からもその異様な光景が見られる。
東海道本線の旧線もここを通っているが、太平洋の荒波に飲まれて崩れた隧道が特徴である。
崩れたレンガがふつくしい…

  • 国道13号旧線「栗子峠」
別名「万世大路」
隧道の崩落により廃道になった。廃道好きには有名な場所。隧道が素晴らしい。

  • 栃木県道266号線
別名「塩那スカイライン」
栃木の塩原温泉と那須高原を結ぶ「予定」だった観光道路。
那須一帯の区間(旧那須山麓有料道路)は無事完成し現在も使われているが、問題はその先の山越え区間。
高低差1000m越えと既存道路の迂回路にもならない観光用としても無謀なルートはオイルショックで事業中止となり、2000年代に入り利用廃止。

塩原側の途中まで解放された行き止まり区間は頭文字Dに登場する藤堂塾のホームコース「塩那の峠」の元ネタ。
その先は殆どが工事用として切り開かれただけに終わり、13.7kmもの道が廃道化・自然環境回復のために封鎖されているが、道筋は今でも麓から見えるという。

  • 宮ヶ瀬湖の村道10号橋
こちらは事業の中止による廃道。ダム湖にポツーンと一つの橋が架かっているが何処にも繋がっていない
前後に道は無く、ダム湖と絶壁の間に橋だけが残されている。

2004年、みなとみらい線開通に伴い東白楽~元町・中華街間が地下化され、平行する同区間が廃止された。
反町~横浜旧ホームの手前までは遊歩道として整備されている。横浜~桜木町間は根岸線の車窓から見られるため、都会で一番身近な廃線跡である。

  • 信越本線横川~軽井沢間跡
通称「横軽」「碓氷峠」
長野新幹線の開通によって廃線となった区間。現在も線路が剥がされず残されている。
丸山変電所跡や、めがね橋などの歴史的遺産も数多く含んでいる。

アプト式時代の旧線は横川からめがね橋までが遊歩道として整備され、
新線は碓氷峠鉄道文化むらから新設された駅までトロッコ列車が運行されている。

  • 西武安比奈線
西武新宿線の南大塚駅から分岐していた路線。
50年以上列車の運行が行われていなかったのに廃線となってはいなかったが、長年の放置プレイで軌道敷は荒れ放題になっていた。
2017年5月末、正式に廃線となった。

  • 東京都水道局小河内線
小河内ダム建設のため、奥多摩駅のさらに先をたった5年間だけ機関車が走った貨物専用線。
工事をなるべく短期間に終わらせる、機関車を走らせる都合から勾配を避けた結果沢山のトンネルや橋梁が作られた。

廃線後もトンネルや橋梁がほぼ手付かずのまま残されており、テレビ番組の企画で遊園地用の小さな蒸気機関車が走った区間がある。

  • 都道503号線
八王子市にある車両不通区間。
不通区間も現役の都道です
見た目がもはや廃道なので酷道愛好家よりも廃道愛好家がよく訪れる。

  • 千頭森林鉄道
林鉄の中でも中々の有名所。
この林鉄の近くに愛好家内で有名な夢想吊橋があるからだ。勿論廃橋。つか渡れません。恐過ぎです

林鉄自体もかなりの遺構が残っている。
……が、如何せん南アルプス核心部という余りにも余りな立地の上に、本線だけでも延長40km超という桁違いの長大路線であるため、探索は困難を極める。
いくらかなりとも気軽に探索できるのは、起点から寸又峡温泉付近までの10km区間くらいのものだろう。これだけでも歩き慣れていない人間にはゲップが出る長さだが
27km地点の大樽沢よりも奥など、起点側よりも裏手の光岳登山道側から攻めた方がアプローチが容易なくらいである。
しかも切替林道建設時の残土投棄によって断崖状の斜面に姿を変えていたり、路盤ごと林道に転用された区間も多い

  • 飯田線水没区間
佐久間-大嵐間は佐久間ダムの建設に伴って水没することになり、廃線となった。今もダムの水位が大きく下がる時期にはトンネルなどが姿を見せることがある。

  • 静岡県道288号線
佐久間ダム建設に伴い、水没した道路に代わって建設された道路。ダムの形成する湖岸に沿って通っていたが、途中で大規模な崩落が発生。そのまま通行止めとなり、復旧されることなく路線の約半分が廃道となった。

  • 北陸本線旧線(木之本~敦賀~今庄間)
深坂トンネル・北陸トンネル切り替え並びに路線条件の悪さにより廃止された峠越えの路線。
明治期に作られた芸術的なレンガの鉄道トンネルが並ぶ。
路線の殆どは道路に転用。さらに路盤の一部を使い北陸自動車道が建設され、この区間にあった駅のうち刀根駅と杉津駅はパーキングエリアとなっている。
特に大正天皇がお召し列車を停めさせたほどの名車窓として知られた杉津は、上り線のパーキングエリアとなった現在でも恋人の聖地として知られる絶景が残っている。
しかし、トンネルの多くはそのまま一般道として残されているため、ハイキングがてら探索する人も多い。

  • 国道305号
福井県越前町の玉川洞窟観音付近で大規模な岩盤崩落が発生。この時岩盤崩落に巻き込まれた道路は放棄され、現在は立入禁止となっている。
なおこの岩盤崩落が発生した瞬間は偶然にも映像に収められている。乗用車の前をマイクロバスが走っているが、次の瞬間・・・

1964年の新生駒トンネル開通&現ルート開通に伴い廃止された区間。
跡地の殆どは住宅街となっており、残った旧生駒トンネルと大阪方坑口数百メートルも近鉄によって厳重に管理されている。
というのも、旧生駒トンネルの奈良方の一部はけいはんな線に再利用している&保線の搬入出口として残しているため。また警報器も設置されているため、侵入しようものなら不法侵入でお縄になる。
ちなみにトンネル建設時&現役時代に死亡事故*2が起きており、その上石切地区一帯がスピリチュアルな土地柄であることも相俟って心霊スポット的な扱いを受けるが変にうろつけば今度は近隣住民に通報されてお縄になる可能性もある。
よほどのことがない限り近寄らないほうがいいだろう。

両者とも、廃線となった区間を再利用・復活したことで共通する。
山陰本線(嵯峨野線)は1989年に廃止となった旧線を観光路線として活用するため1991年に復活。可部線は2003年に廃止となった可部〜三段峡のうち、宅地化が進んだ可部〜旧河戸間を2017年に復活させたもの。


【最後に】

廃関係の探索は全て自己責任・自己解決です。
熊・蜂に襲われる、崩落・滑落・落石・生き埋め・遭難等……。

誰も助けません。


動けなくなり、携帯圏外なら……。







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最終更新:2023年12月23日 20:33

*1 空襲の標的になる恐れがあるため

*2 最も有名なのは1948年に発生した近鉄奈良線列車暴走追突事故。衝突事故が起きたのは河内花園駅だが、その発端となったブレーキ故障がトンネル構内で起きている。