ジョジョの奇妙な冒険(OVA版)

登録日:2010/09/13 Mon 00:33:16
更新日:2024/04/14 Sun 19:58:51
所要時間:約 6 分で読めます





漫画ジョジョの奇妙な冒険 Part3 スターダストクルセイダース』のアニメ(OVA)化作品。全13話。製作会社はA.P.P.P.。
前半7話と後半(エジプト編)6話に分けられるが、最初に作られたのは後半で、1993年にジャンプビデオシリーズとしてリリース。その後2000年に前半部分が製作され、後半と合わせて一本の作品とされた。


概要

映像作品としてのテンポや尺の都合でストーリーやセリフは原作を圧縮しているが
原作の雰囲気は醸し出しており、声優の熱演や迫力あるバトルシーンや緊迫感のある演出もあって特に後編の評価が非常に高い。

原作者の荒木飛呂彦先生は当時1からアニメにして欲しかったが最初からOVAなのは決まっていた。
各話30分程度の13話で3部の全てを網羅できるわけがないためアニメオリジナルの展開が多く、出てこない敵も多いが、
その辺は荒木先生も納得し『キャラが意味不明な行動をとるのが嫌』という理由で脚本監修を行い『一点集中仕様』として送り出した。

リアルファイトではないダービー兄戦をほぼ忠実に原作再現していたり、時間が無いのにウィルソン・フィリップス上院議員の混乱と暴走が見られたり、
全体的にキャラの声が渋かったりとスタッフの妙なこだわりを感じられる。
この辺はエジプト編の監督であった北久保弘之氏について調べれば面白い逸話が知れる。

作画は北斗の拳などで有名な羽山淳一氏が全編で総作監を務められているが
後半と前半とでセル画とデジタルで分かれていたり羽山氏の絵柄の変化などもあって絵柄そのものは安定していない。
しかし原作との相違や回ごとのバラつきに目を瞑れば 作画そのものは安定している

2007年に連載20周年記念で殆ど同じスタッフの製作で1部が劇場版として公開された。
また同年にDVD-BOXが発売された。特典はサウンドトラックとタロットカード

なお後述の通り現在は絶版となっているが、比較的新しい作品の為かなりの量が流通しており、
レンタルビデオ店等に行けばTV版ジョジョの隣あたりに置いてあるはずである。


全話一覧

前編

第1話 悪霊
第2話 法王の緑
第3話 銀の戦車&力
第4話 皇帝と吊られた男
第5話 裁き
第6話 報復の霧
第7話 正義

後編

第8話 愚者のイギーとゲブ神のンドゥール 前編
第9話 愚者のイギーとゲブ神のンドゥール 後編
第10話 ダービー・ザ・ギャンブラー
第11話 DIOの世界 亜空の瘴気ヴァニラ・アイス
第12話 DIOの世界 花京院結界の死闘
第13話 DIOの世界 さらば友よ


登場人物

基本的に原作との相違点を紹介。

ジョースター一行

空条承太郎

CV:小杉十郎太
原作よりも寡黙だが根は優しいイメージが強調されており、女子高生とキスして教皇の緑を引きずり出したり、
スタープラチナで特大ジャンプしたり、DIOに直接殴りかかったりする。無銭飲食もしない。
時を止める能力に目覚め爆炎の中から現れる承太郎はまさに荒木先生のイメージした『 神話のHERO

ジョセフ・ジョースター

CV:大塚周夫
グンバツの美女やチュミミ~ンが出ないため、やや地味。DIO戦後の悪戯もしない。
原作のリアクション芸は控えめで冷静に花京院を諭したりと、ジョースター・エジプトツアー御一行様のリーダー的側面が強い。

花京院典明

CV:鈴置洋孝
承太郎のクラスメートの女子高生を操り襲い掛かる。復活は承太郎達がDIOの館に入ってから。レロレロもしない。
最後のエメラルドスプラッシュは直前の独白や水の演出も相俟って彼の最高の見せ場となっている。

モハメド・アヴドゥル

CV:小林清志
ジョセフに代わって花京院の肉の芽を焼き尽くす。復活はエンヤ婆戦から、その為彼の見せ場は主に前編。
後編では原作同様あまり活躍しない。ジェスチャー。ヌケサクの代役。

ジャン=ピエール・ポルナレフ

CV:森功至
エテ公とコンビで登場。
ジュークボックスから流れる優雅なBGMと共にシャンパン片手にボンジュール♪洗脳が解けた後フォーエバーに止めを刺す。ジェスチャー。
終盤にはDIOに一矢報いることに成功しており、承太郎との連携攻撃とも見れるこのシーンは格好いい。

イギー

ペット・ショップ戦がないから何かもの足りない。
というより人面犬化と独白が無い為ちょっと薄い。その原作とは一線を画す「動物感」が好きな人もいるようだが。

空条ホリィ

CV:前編…佐久間レイ/後編…安藤ありさ
特に変わった所は無いが、原作よりしっかりした母親になっている。

スージーQ・ジョースター

CV:来宮良子
ローゼスは登場しない。

DIO一味

DIO

CV:田中信夫
原作以上に大虐殺。船を投げつけたり、列車を吹っ飛ばしたり、タンクローリーを爆発させたりスケールが凄いことになっている。
これは荒木先生が最終ラウンド時は『ドラゴンボールの様な男と男、魂と魂のぶつかり合いで!』と所望した為である。

エンヤ婆

CV:深見梨加
ババァなのだが美女(正義のスタンドパワーでの若作り)、前編のラスボスという位置付けゆえか正義のスタンドパワーの巨大さも強調されている。
全体的にシリアスなOVAでも ポルナレフに便器を舐めさせる も承太郎に敗北直後、肉の芽で死ぬ。

ホル・ホース

CV:若本規夫
基本的には原作と同じだがエンプレスが出ないので助けに来た少女はただの貴族の娘さん。
その後はエンヤ婆によってリタイア。後編では出ない。

J・ガイル

CV:麦人
「乞食を呼んでいる間に攻撃すればいい」というツッコミに応えたのか、ポルナレフ達が届かない高所に陣取って登場。
どっちみちハイエロの射程内じゃないかとか言ってはいけない

ンドゥール

CV:中田浩二
ゲブ神が女性型にも変形するが特に意味はない。承太郎とのお互いの評価は原作より高め。
また、ジョースター一行を追い詰める展開が原作とはかなり違う。レッドバインドの直撃のダメージは?
原作の砂漠一辺倒では殺風景すぎると判断されたのか、埋葬時に見えたり戦闘時の日陰にしている遺跡がいい味を出している。

ダニエル・J・ダービー

CV:内海賢二
特に変わった所はなく、原作再現度がかなり高い。
これは激しいアクションのないオービー君回なら原作に近い絵柄でアニメに出来ると判断された為である。
変更点を挙げるとしたら、勝負の後で少年が口を滑らせブタだった事を知っていた事がバレて逃走したこと。
それとDIOの館がオールド・カイロの娼館跡地である事だけは話した。(勝負を降りたがそこまでの賭け分はちゃんと支払ったことになる)

ヴァニラ・アイス

CV:青野武
棺を開けたらヴ男が入っており、DIOの命令で屋根から床までヴ男ごと削り取る。
さらに承太郎達の目の前で自害、そしてDIOの血で復活。ポルナレフを追い詰めるがイギーの不意打ちを受ける。
イギーの殺し方が人によってはトラウマもの。死因は日光ではなくイギーの死にキレたポルナレフの猛攻。
吸血鬼化(屍生人化?)はしていなかったのか、全身を針串刺しの刑にされた挙げ句に頭を切断され絶命した。
この怒涛の展開をたった一話の中で披露。尺の煽りをモロに食らっており、クリームの恐ろしさは表現出来ていたがチョイ不遇。

ウィルソン・フィリップス上院議員

CV:滝口順平
あのワープと運転技術が見れる。子供に見せたらヤバいものをモロ出しする。
この回が若き日の今敏氏が担当した回であり、氏のファンにもオススメしたい。
アメリカ合衆国の上院議員であることを明言している。


余談

「DIOがコーランを読みながら手下に犯罪を示唆している」としてバッシングを受けて絶版に追い込まれた。
これを受け原作もイスラム教的に問題がある箇所*1を修正する羽目になった。
問題のシーンは原作22巻でDIOが本を読んでいるシーンをアニメ化したものだが、原作では表紙に何も書かれておらずアニメスタッフのアレンジである。
実はアラビア語の資料が無かったため、それっぽいものを書き写したら、たまたまそれがコーラン『雷電章』であったという。



また、制作会社が同じであった1部の劇場版も、この事件を受けてソフト化が見送られ、封印作品と化してしまった。
ただ、こちらは制作現場の混乱*3から、かなりの駄作になってしまったため、この事件はあまり関係がなく、むしろ口実に使われただけだったのでは?とも言われている。



追記・修正は1回30分程でお願いします。

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最終更新:2024年04月14日 19:58

*1 イスラム教の宗教施設にあたる建物を破壊するコマが変更になっている。漫画喫茶や古本屋などで古い版があったら読み比べてみよう。

*2 イスラム教スンニ派最高権威であるアズハル大学の宗教見解委員長アトラシュ師

*3 各方面からの意見がまとまらずスケジュールの大半を消費して監督が降板、キャラデザと作画監督をしていた羽山氏が監督を兼務したが3役兼務の身では破綻しないようにするだけで手一杯だった。