オインゴ・ボインゴ兄弟

登録日:2010/10/20 Wed 20:41:26
更新日:2024/03/27 Wed 00:49:14
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おれたちのカードは
書物の神「トト」と創造の神「クヌム」!

オインゴ ボインゴ兄弟(ブラザーズ)

オインゴ・ボインゴ兄弟はジョジョの奇妙な冒険 『第3部』の登場人物。ちなみに『兄弟』のルビはブラザーズ。
兄オインゴと弟ボインゴのコンビで、スタンド『エジプト9栄神』ことクヌム神・トト神の能力を駆使してジョースター一行に挑んだ。
名前は米国のロックバンド『OINGO BOINGO』からそれぞれ取られている。

兄弟揃ってスタンドが直接的な攻撃能力を持たない為に、正面切っての戦闘は不向き。
故にジョースター一行にも、『トト神』の『予言』と『クヌム神』による『変身』を使い、毒や爆弾を用いての暗殺を狙っていた。


〇長男:オインゴ


人間死ぬ気になればなんでもできるッ


兄。帽子をかぶった長身の青年で「OINGO」と名前の入ったシャツを着ている。
CV高木渉(PS版ゲーム)、藤本たかひろ(ASB)、保村真(TVアニメ)。

腕っぷしにそれなりに自信があるのか、それともスタンド能力で顔を変えればどんな悪行もバレないと思っているのか、「本能的にムカつく」顔を見ただけでその人を殴り飛ばすなど、性格はかなり粗暴である。
一方で、弟のボインゴに対しては非常に優しく、やや過保護気味。彼が成長を見せた際は涙を流して喜んだ。
ひょっとしたら両親がおらず、彼が親代わりになっているのかもしれない。そう考えると、DIOの配下になったのもボインゴと生活出来るだけの金を得る為かも…?

スタンドに直接的な攻撃力が無いため、標的を抹殺するために日頃から毒や爆弾を持ち歩いている。
それらを飲食物に仕込む他にも、喫茶店の主人を昏倒させる手際の良さや流れるような車上荒らしテクなど、何気に小器用なところを多く見せており、工作員としての能力は意外と高め。
しかし、そこら辺は荒木ワールドの敵キャラにとってデフォルト技能とも言えるので、総合的にはやはり三枚目の印象が拭いきれるものではない。
また、口に含んでも飲み込まない限りは死なない毒や、至近距離で爆発しても精々が重傷止まりの爆弾など仕掛けたワナは妙に威力が不足しているのも問題か。

そして、最大の問題は本人が間抜けな性格でもあること。
ジョースター一行の買い出した食料品の中にオレンジ型の爆弾を仕掛けようとしたところをジョセフとポルナレフに見とがめられ、苦肉の策で承太郎に変身してしまったことが運の尽き。
二人に変な隠し芸を強要され続けた挙げ句、自分が仕掛けた爆弾でリタイア、トドメに自分が叩きのめした男に雇われたチンピラたちからボコり返され、兄弟仲良く病院行きとなるという散々な目に遭った。
顔に縦一文字に傷ができてしまった事などから、全治1ヶ月弱ぐらいらしい。
それでも見つかってぶちのめされたり死ななかっただけまだマシな部類の敵である。

ちなみに、ジョースター一行は襲われていた事すら最後まで気付いていなかった。
チャンチャン


【スタンド】

スタンド名:『クヌム神』
オインゴのスタンド。エジプト9栄神の一つで、創造の神「クヌム」の暗示を持つ。
本体であるオインゴの肉体と一体化しており、特定のビジョンや他の物体と融合して取る姿は無いタイプのスタンド。
ゆえに直接的な戦闘能力は無く、破壊力やスピードといったパラメータも無い。

◆能力

変身能力
顔は勿論のこと、身長、体重、指紋や声、体臭すらも思いのままに模倣できる。
ただし、衣服まではさすがにコピーできないため、別な手段で調達しなくてはならない。
一方、簡単な小物なら身体の一部を変化させる事で作成でき、髪の毛を変化させて承太郎の帽子を再現してみせた。
ただし、中身はあくまでもオインゴのままなので、完璧に成り済ますにはあらかじめ相手の性格や趣味を熟知しておくなど、本体の努力と演技力が必要となる。

同じく変装に使用可能で戦闘面でも強力、しかも本体がバックブリーカーが得意なハンサム顔なスタンドが既にあるが、あちらはあくまでも肉で出来た着ぐるみでしかないので、純粋な偽装能力という観点で考えるのならば、こちらの方が優れていると言えなくもない。と言うか、これについては肉の着ぐるみでしかないはずなのに異様に再現度の高いイエテンがチート過ぎまた、あちらは体の周りに纏う関係上、本体より小さい姿に化けることはできず、スタンドが捕食すればするほど大きくなっていくので体格が不自然になりがちな欠点がある。(作中でも、花京院に化けたのに承太郎より大柄になっていた)
作中では初めに喫茶店の店主に変装したが、(顔が割れてなかったとは言え)目の下に変な模様がある以外はほぼオインゴのままだった。
まともに変身能力を見せたのは承太郎に化けた時のみで、いうなれば自分自身で敗北の引き金を引いてしまっていたことになる。

戦闘手段としては決定力に欠け、イエローテンパランスのような実質的な上位互換が存在し、トドメに本体の不遇さも相まって、一部ファンからはジョジョシリーズ屈指のハズレスタンドとみなされている。
が、良くも悪くも愛すべきバカであるオインゴにその発想は無かったようだが、立ち回り次第では冤罪被せ放題・警察等に紛しての一行の分断もお手の物、加えて余計な能力を持たないが故の認知されづらさは、直接戦闘以外の場においては大変に脅威でもある。異能力バトル漫画の絵面としてアウトという理由でそれはないとか言うのは禁句
J・ガイルと組んだホル・ホースのように、戦闘巧者と徒党を組んで搦手重視での活用を計画的に目論まれていたら、オインゴの演技力次第ではかなり恐ろしいことになっていたかもしれない。
単に後になる程敵の強さがインフレしていく形式にはまらない「たまに戦闘は弱い敵が出てきてもOKな土壌」をジョジョらしさとして推している荒木飛呂彦的には充分「技あり」の部類の敵スタンドだといえる。

スピンオフ「ジョジョの奇妙な冒険 クレイジー・Dの悪霊的失恋」では、スタンドなのか怪しい能力ということになった(後述のトト神の欄を参照)。


〇次男:ボインゴ


ぼくの…ト…『トト神』のマンガの予知は…
ぜっぜっぜっぜっぜっぜっ 絶!!…対!ひゃくパーセントです ハイ


弟。背丈は兄オインゴの半分程度しか無い小柄な少年。年齢は恐らく10歳前後と思われる。
CV:高木早苗(PS版ゲーム)、菅沼久義(ASB)、くまいもとこ(TVアニメ版)

性格は非常に内気で陰気。
兄であるオインゴ以外の人間とは喋れず、人ごみの中では伏せた空箱の中など何かに隠れていなければならないほどの小心者。
吃音(どもり)癖もあるなど、対人面でかなり強いストレスを抱えている気の毒な人物。
都合のいい状況に喜んだ時には「ウキコケ」という何とも形容しがたい奇妙な笑い声を出すクセがある。
乗り物に弱いらしい。

当初は旅行中の漫画家に対する予知でスタンド能力の恐ろしさを見せつけるが、ジョースター一行に対しては不発の連発。
挙句にオインゴが予知に頼り過ぎたために自滅してしまう。
傷付いた兄の姿を見て、自分一人ででもジョースター一行を殺してみせると立ち上がる……が、その直後にオインゴが従前殴り飛ばした男(に雇われたチンピラ)にボコられ、兄弟仲良く病院送りとなってしまった。

幸い傷そのものは軽かったようで、オインゴより先に退院したが、その能力をホル・ホースに見込まれて彼とタッグを組み(組まされ)、オインゴの仇を討つために再びジョースター一行に戦いを挑む。
半信半疑なホル・ホースと、対人恐怖症のボインゴは文字通りギクシャクしていたが、予言を的中させ今度はジョースター一行を追い詰める。
しかしまたしても予言が裏目に出て、ホル・ホースは敗北。

その姿を見たボインゴは「復讐なんてバカバカしく思えた」と改心。


ぼくのこの予知のスタンドは、攻撃なんかよりもぼくたち兄弟の幸せや、困っている人達のために役立てたほうが…

もっと人からも好かれるし、いい「運命」もやってくる気がします


と、自分のスタンドの本当の使い道を悟り、兄の待つアスワンへと帰っていった…。


…のだが、その際に蹴った木箱が不運にもイギーに当たってしまい、イギーにムチャクチャに噛みつかれて(『トト神』によればお尻を噛まれたらしい)入院。
前以上に暗――い性格になってしまった。*1
大人になった彼の成長と幸せを願わずにはいられない…。


その後、第3部の後日談にして第4部の前日譚「ジョジョの奇妙な冒険 クレイジー・Dの悪霊的失恋」に登場。
兄弟揃ってマライアケニーGの酒場に居候していたところ、さる依頼を請けたホル・ホースの要請により案内人として彼と共に杜王町を訪れる。

トト神は杜王町に着いた段階でなんと予言を受けたボインゴの手によって一旦彼の元から手放されており、本作オリジナルのメインヒロインである花京院涼子に拾われ、キーアイテムとなっている。
ボインゴ本人は迷子になったところを東方良平の交番に保護され、一度はフェードアウト。その後、良平に背を押される形でトト神を探しに一人で動き出すが……。

【スタンド】

スタンド名:『トト神』
ボインゴのスタンド。エジプト9栄神の一つで、書物の神「トト」の暗示を持つ。
『OINGO BOINGO BROTHERS ADVENTURE』と題されたマンガ本の形をしている。
同化型スタンドであるため、一般人にも見えるし触ることもできる。
サイズは結構大き目で、装丁や印刷は抜群にしっかりしている。
一見さほどの厚みはないように見えるが、スタンドなので、本体が生きている限りページ数は実質無限に追加されていく。

ちなみにイラストは古代文明の歴史や文化を表した絵柄をそのままコメディタッチの絵柄に変えたような独特の物。

◆能力

マンガの内容はボインゴの体験する近い未来の出来事で、端的に言えば未来予知の能力を持つ。
ただし、この本に書かれた予言が外れることは絶対に無い「きっかけ」「結果」しか描かれないため、どういった過程でその予知が現実となるのかは本体のボインゴにもわからない
このため予言の解釈には余地があり、

  • 『承太郎一行が毒入り紅茶を飲み込む→イギーの横槍で丸ごと吐き出される(後付け)』
  • 『承太郎がオレンジに見せかけた爆弾で吹っ飛ばされる→承太郎に変身したオインゴがオレンジに見せかけた爆弾を踏んで自滅する』
  • 『正午キッカリに銃弾が承太郎の脳天を貫通する→トト神に描かれた承太郎を通して銃弾がホル・ホースに直撃する*2

等、解釈を間違えるとやや歪んだ形で実現してしまう事もある。明確に「死ぬ」と書かれてない限り、死亡を運命づける決定打にはならないのである。
ボインゴはこれを承太郎の持つ強固な運命がそうさせている、と判断したが真相は不明。
(一応、オレンジ爆弾は承太郎に変身してしまった、銃弾は予言通りに行動しなかった、というミスをしている)

ちなみに、描写された情報は確定であるが、描写されてない情報は未確定。
どれだけ確からしい情報が描写されたとしても、確定的な表現が用いられない限り常に曖昧な要素が存在する。
オレンジ爆弾の件は、オインゴがジョセフたちに承太郎だと認識されてしまったためと思われる。

上記のことから、このスタンドは予言実現に当たって不確定要素が多い場合、最も労力が不要で手っ取り早い形で実現するようになっている可能性が高い(絵が被弾した件は、おそらくそちらが本人よりも弾に近かったため)。

本に穴が開いたりしても、本体にダメージはない。
作中ではオインゴが予言を無かったことにしたいが為に「予知があるページを破り捨ててくれ」と心の中で叫んでいるが、運命を変えるタブーに触れる能力ならともかく、あくまで預言書にすぎない性質を考えれば、破り捨てたとしても運命から逃れることは恐らく不可能。

またボインゴに有利な予言だけをするとは限らない。
どころか意思らしきものすらあり、ボインゴ自身が闘争心に欠けるためか本体に忠実なわけではなく、彼にとって不利な予知をするばかりか彼の決心に冷めたツッコミを入れる等、なかなかひねくれている部分もある。
あくまでも予知に関しては中立の立場をとっている模様
もしくは、自分を正しい事になかなか使わないボインゴに、『トト神』が「おしおき」としてバチを当ててるのかもしれない…?*3

似たような敵味方関係ない中立タイプのスタンドに第6部に登場した風水を司るスタンド『ドラゴンズドリーム』がある。

スタンドそれ自体は第3部で時折みられる実は大したことのない敵に過ぎないが、ジョジョ世界の運命の設定である「運命を変えることはできない、もし変えようとしてもできないばかりかその反動で更にヒドい目に遭う」という暗黙のタブーを提示した意味では重要な存在。

ちなみにこの『トト神』に印刷された漫画の内容は、2002年に『オインゴとボインゴ兄弟 大冒険』というタイトルで集英社文庫で実際に出版されていて、岸辺露伴があとがきとして感想を書いている。
リアリティに人一倍拘る性格でもある露伴は最初、漫画の内容を大絶賛し、なんと漫画家として敗北宣言をしたが、後にその漫画がスタンドの能力によって書かれたものだと知ると掌を返し、「事実をありのままに描いただけでは小学生の日記と変わらない」と酷評している。*4

この他、DIOの日記という形で書かれている外伝『JOJO'S BIZARRE ADVENTURE OVER HEAVEN』では、DIOがこの能力に対して、
「予知が100%的中するなら、仮に避けられない不幸な未来が見えてしまったらどうするつもりなのか? そんな未来など知らない方が良いのではないか?」
という旨の指摘をしているが、ボインゴはそれに「たとえ不幸が避けられなくても、未来を知れば“覚悟”ができます」と返答しており、この言葉が「天国へ行く方法」のヒントになるという結構重要な役割を果たしている。

また『クレイジー・Dの悪霊的失恋』では、元々はボインゴのスタンドではなく……、それどころかスタンドかさえも怪しい代物とされている。宿主の精神に応じて形態を変えながら数多の人々を乗り換えてきた。
本来の能力は人類史の記録で予知は副次的な能力。自身を守らせるために宿主の近親者に変身能力を与える力も持っている。


【余談】

実は2人ともスタンドのパラメータが同じである。その内訳は…

破壊力-E
スピード-E
射程距離-E
持続力-A
精密動作性-E
成長性-E

…まぁ、両者とも直接的な戦いに向いているスタンドではないのでお察しください。

ちなみに後の部で承太郎は死亡シーンが2回描かれているのだが、その死に様が『トト神』の「爆弾でふっ飛ばされて顔が真っ二つになる」という予言と一致しているのは有名な話。

また、『トト神』が2001年にアメリカでおこった「911同時多発テロ」を予言していた、という事象はジョジョラーの間では有名。
初登場時にボインゴに話しかけた漫画家は、トト神の予知の通りに事故にあって死亡してしまうのだが、
その漫画の内容がテロ事件を連想させるものとなっている。
  • 漫画家が着ている服に描かれている文字が「911」
  • 背景に不気味に笑う「飛行機」とイスラムのシンボルである「月」が描かれている
  • 漫画家が死ぬ時刻がビルが倒壊する時刻と同じ

当の作者である荒木飛呂彦も狙って書いたわけではないらしく(当たり前だが)、後日関係者に指摘されて自分自身も驚いたという。
単行本や文庫本では規制はかかっていないが、2015年のTVアニメでは規制により「911」の文字や「飛行機」の絵が削除されている。

2015年のTVアニメ登場回(27話)では、専用ED曲「アク役◇協奏曲」が採用されている。
トト神マンガに描かれたキャラクターがぐりぐり動き回るまさかの特殊EDは視聴者に衝撃を与えた。
前述したとおり、ボインゴはホル・ホースと組んで再登場するのだが、36~37話も同様の特殊EDが。
「絶対やると思った」「信じてたよ」
歌う人間もきっちり交代しており、アク役◇協奏曲はオインゴ&ボインゴ、ホル・ホース&ボインゴの2つのバージョンが存在する。それぞれを1番と2番にしたフルバージョンはスターダストクルセイダースのオリジナルサウンドトラックに収録されている。

SFC版では、オインゴは本屋の主人だが、やる気無し。その代わり(?)2人とも敵キャラではない。
オインゴは店の中に入る際に装備品以外の全ての持ち物とイギーを取られてしまうが、出るとちゃんと返してくれる。
ボインゴは不吉な予言を言うだけ。
2人とも、スタンドすら使わない。



追記・修正は火のついたタバコを5本まとめて口に入れて「そのまま火を消さずにジュースを飲みながら」お願いします。

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最終更新:2024年03月27日 00:49

*1 この時ナレーション(荒木)が言うには「人の性格がこんなに簡単に治ったら誰も苦労はしない」とのこと。

*2 これに関しては、ホル・ホースが自分の腕時計が数分進んでいたことに気づかなかったため、結果的に正午前に撃ってしまっていたことが原因。

*3 実際、予知を使って全うに人助けをした際は、なんのデメリットも起こっていない。

*4 ついでにオチとして「やはりこの自分を超えた漫画家などこの世に存在しない」などとむちゃくちゃ傲慢なことを言っているがこれはまあ、彼の平常運転。