A-10 サンダーボルトⅡ

登録日:2011/05/29(日) 17:15:20
更新日:2024/02/17 Sat 22:54:08
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フェアチャイルド・リパブリック社が開発したアメリカ空軍近接航空支援専門の対地攻撃機。

愛称はサンダーボルト(Thunderbolt)Ⅱ、または非公式愛称のWarthog(イボイノシシ)*1
アメリカ海軍のA-3と同じ双発の攻撃機である。
オーシア国防空軍第108戦術戦闘飛行隊サンド島分遣隊ウォードッグとは間違えないようにしよう。
間違えたら家にA-10が襲来します。

概要

特徴は攻撃を受けた空軍基地のような悪条件下でも離着陸が可能という異常なまでの頑丈さと、機首下部に装備されたGAU-8アヴェンジャーによる絶大な破壊力
そして7tのペイロードという圧倒的な積載量に、整備性も良い、と至れり尽くせり。

速度が遅いのが弱点だろって?

A-10はそもそも地上物を破壊する対地攻撃機。
同僚の猛禽類や戦う隼のような速さは必要ないのだ。

それにかのドイツの戦車破壊王ハンス・ウルリッヒ・ルーデル閣下の著書等を参考に不時着をしやすくした設計、その宿敵たるIL-2シュトゥルモビクのようなコクピットを覆う「バスタブ装甲」などで、いざと言う時のパイロットの生存性を高めているわけだ。

『搭載可能武装一覧』

・攻撃
JDAM(GPS誘導爆弾)
Mk82通常爆弾(500ポンド)
レーザー誘導爆弾
光学誘導爆弾
各種ナパーム弾
各種クラスター爆弾
各種ロケット弾ポッド
AGM-65 AGM(空対地ミサイル)
AGM-114 ATM(対戦車ミサイル)

・自衛
AIM-9L/M/X AAM(空対空ミサイル)
ECMポッド(型番省略)
計7,257kgの武装が搭載可能です。

A-10伝説

  • 湾岸戦争で約140機が出撃し、被弾約70に対し被撃墜6機。
  • 機銃を384箇所に食らって帰還し、数日で復帰。
  • イラク戦争で右エンジン吹っ飛ばされながらも帰還した。
  • 胴体着陸してそのまま離陸*2
  • 空軍高官は「A-10なんていらねぇ!」とかなんとか言って、A-10を拒否していたが、原型機だったF-16が湾岸戦争での爆撃成績でA-10に大敗、しかも総合被撃墜の約3~4割を占める大失態。
  • A-10とトーネードが空中衝突→トーネードはパイロットの脱出後墜落したが、A-10は無事に着陸した。
  • F-22

何度も言うようだがこのA-10は恐ろしく頑丈で、よくよく調べてみたら装甲の総重量は1010kgに及び、機体重量の17%を占める。そりゃ撃墜されないわけだ。

魔王からのお告げ

  • ゆっくり、長時間飛べること
  • 強力な対地攻撃力
  • 信頼性
  • 被弾しても簡単に落ちないタフさ

これらの仕様は「近接航空支援」を主眼として、大量の対地攻撃兵器を抱えて長時間飛び続け、地上部隊からの要請に応じて速やかに敵(特に戦車)を粉砕するため。
戦闘機やワイルド・ウィーゼルの皆さんによって事前の露払いが前提とはいえ、必然的に敵の攻撃に晒されやすくなる。


武装:GAU-8アヴェンジャー

米軍恒例トライアウトでは決め手になったこいつは毎分High4200/Low2100発の30mm徹甲弾(劣化ウラン弾)を発射*3し、地面を抉り、敵を粉々に消し去るガトリング砲である。

機体に正対して時計で見て9時の位置で発射するため、砲身自体は右側にオフセット。
1350発を機関砲システムの最後部に収納し、1200mの距離でも戦車の上面装甲を打ち抜く。人間なんて肉片すら残らない。

ちなみに、バルカン砲とガトリング砲は全くの別物。
もう一度、バルカン砲とガトリング砲は全くの別物。
大事なことなので(ry

アヴェンジャーを馬鹿にするor威力を見てみたいのなら某動画サイトで掲載されているので一度視聴してみることをお勧めする。
それでもバルカン砲とガトリング砲を一緒にした場合、毎分3900発で30mm徹甲弾の雨が降り注ぎます。

あまりにも威力が高すぎる為か、銃の反動が機体の推進力に匹敵し、飛行速度が機関砲の発射によって落ち、撃ち続けると機体が失速して墜落してしまうとか、機体が後方に進みだすといった伝説がある。
実際そんなことはない、ただし水平飛行で射撃すると速度がちょっと落ちるらしい。


おまけ(一部の人向け)

問、なんで米軍しか運用してないの?

解、A-10運用は航空優勢(制空権)確保、対空防衛網殲滅が前提条件だから。

アメリカ軍の圧倒的な戦力を持たなければ運用は難しく、スリランカが購入を希望したらしいが実現しなかったという。
F-16やF/A-18、F-35といった戦闘機たちが防空陣地に真正面から殴り込んで鎧袖一触に薙ぎ払う*4ことで進入路を命がけで確保している。

アメリカ軍の航空戦力が最強だからこそA-10もまた最強になれるのである。

ただでさえ鈍重で扱いづらい機種で、支援なしに対空防御陣地に侵入すれば即死し、フランカーに狙われればひとたまりもなく、ミサイル陣地に突っ込めば鴨撃ち。
これらの欠点は1991年の湾岸戦争で露呈し、同戦争では活動が制限される事態になっている。
加えて携SAMの発展普及で、A-10の活躍の場はさらに狭まりつつある。
特にアメリカ空軍は先進国相手にA-10が活躍できるような環境を整えるのはもはや不可能と考えており、退役を何度も打診している。
…その度に碌な防空能力を持たないテロ組織などというA-10におあつらえ向きの敵が出てきたり、議員の反対といった政治的要因により何度も棄却されてきたが。

しかし、その割り切りまくった設計思想や圧倒的タフネス、そして何よりかのルーデル閣下が関わったというネームバリューはミリオタの心をがっちりとつかみ、
今なお自衛隊が買えだの、海保が買えだのと世迷言をつぶやく熱心なファンが存在する。


『年表』

・1975年初飛行
・2001年に近代化・延命改修決定!
A-10Cになりました。
・2007年A-10Cが初度作戦能力(IOC)を獲得。
・2009年会計年度までに最大125機をA-10Cに改修する計画で進めており、最終的には保有する356機すべてをA-10Cに改造する計画。
・2030年代まで運用が可能に。

F-35就役に伴い経費削減の為、一部もしくは全機退役させる可能性があると国防省が発表した
お空がF-35だらけになるね!
…と思いきやF-35の度重なる不調と開発の遅れ、またイスラム過激派への爆撃作戦で本機の有用性が再確認されたことにより2016年1月、本機の退役期限を無期限に延長するらしいことが報道された。

その後、2023年度予算でA-10は21機の退役が承認された。
承認された同年(2022年)にはロシアによるウクライナ侵攻が発生しており、同侵攻で生起した航空作戦*5が決定に影響したのではないかと推測されている。
空軍は更に、今後数年内に全機退役を目指すとしている。





『コピペ』

A-10に纏わる伝説から2ちゃんねる等ではA-10ネタになると以下のコピペが貼られる。

「お早うクソッタレ共!ところでジョナスン訓練生、貴様は昨夜ケンカ騒ぎを起こしたそうだな?言い訳を聞こうか?」
「ハッ!報告致します!磯臭いF-18乗り共がアヴェンジャーを指して『バルカン砲』と抜かしやがったため
7砲身パンチを叩きこんだ次第であります!!」
「よろしい。貴様の度胸は褒めておこう。いいか、低空で殴りあうには1にも2にもクソ度胸だ。
曳航弾をクラッカー程度に感じなければ一人前とは言えん。今回のジョナスン訓練生の件は不問に処そう。
だがアヴェンジャーを知らないオカマの海軍機乗りでも士官は士官だ。訓練生の貴様はそこを忘れないように。
ではA-10訓、詠唱始めッ!!!!」
何のために生まれた!?
――A-10に乗るためだ!!
何のためにA-10に乗るんだ!?
――ゴミを吹っ飛ばすためだ!!
A-10は何故飛ぶんだ!?
――アヴェンジャーを運ぶためだ!!
お前が敵にすべき事は何だ!?
――機首と同軸アヴェンジャー!!!
アヴェンジャーは何故30㍉なんだ!?
――F-16のオカマ野郎が20㍉だからだ!!
アヴェンジャーとは何だ!?
――撃つまで撃たれ、撃った後は撃たれない!!
A-10とは何だ!?
――アパッチより強く!F-16より強く!F-111より強く!どれよりも安い!!
A-10乗りが食うものは!?
――ステーキとウィスキー!!
ロブスターとワインを食うのは誰だ!?
――前線早漏F-16!!ミサイル終わればおケツをまくるッ!!
お前の親父は誰だ!?
――ベトコン殺しのスカイレイダー!!
音速機とは気合いが違うッ!!
我等空軍攻撃機!機銃上等!ミサイル上等!被弾が怖くて空が飛べるか!!(×3回)


また、『みにくいアヒルの子』や『マッチ売りの少女』といった童話を元ネタにしたコピペも存在する。


+ 『みにくいアヒルの子』
あるところにみにくいアヒルの子がいました。
そのみにくさから、みんなからばかにされ、いじめられていました。
「おお、なんてみにくいんだろう。A-7Dがあるのに必要ないではないか!?」
「F-16のほうがつかえる子ではないかね?あんなみにくい子はいらないだろう」
「近接航空支援なんか、AH-64 にまかせればいいだろう。あんなみにくい子はどっかにやってしまえばいいんだ」
と、さんざんでした。
はじめのうちは、みにくいアヒルの子をかばっていた空軍も、しまいには、
「ほんとうにみにくい子。いっそ、陸軍と海兵隊へいってくれたらねえ」
と、ため息をつくようになりました。
キーウエスト合意があったため空軍にのこることにはなりましたが、せっかくのLASTEもなかなかじっしされず、
冷戦終結もあいまってついに空軍州兵や空軍予備役に追いやられてしまいました。
みにくいアヒルの子はそのまま活躍も無く消え去ると思われました。
しかしやがて湾岸戦争がはじまりました。
するとどうでしょう。
砂漠環境での機械的トラブルに悩まされたAH-64や、ろくに活躍できず被撃墜数の多かったF-16を尻目に、
撃破数戦車987両、装甲兵員輸送車約500両、指揮車両等249台、トラック1106台、砲兵陣地926ヶ所、対空陣地50ヶ所、SAMサイト9ヶ所、レーダーサイト96ヶ所、
指揮所など28ヶ所、塹壕72ヶ所、スカッド発射台51基、FROG発射台11基、燃料貯蔵タンク8ヶ所、航空機地上破壊10機、Mi-17ヘリコプター撃墜2機という大戦果をあげました。
気がつけばもう、みにくいアヒルの子をばかにするものは誰もいませんでした。
なんと、2028年まで運用が延長されることが決まったのです。
みにくいアヒルの子は、りっぱなルーデルの子だったのです。

+ 『match売りの少女』
寒い時代が終わり、人々の顔には笑みがこぼれ、皆こころはずんでいました。
しかし、少女のおうちは違いました。
お仕事が減ってしまい、生活が苦しくなってしまったのです。
ある日空軍父さんが少女にいいました。
「うちはいま、生活が苦しいんだ。おまえは陸軍と海兵隊にいきなさい」
しかし少女はキーウエスト合意により、陸軍と海兵隊にいかなくてすみました。
おこった空軍父さんは少女を空軍州兵や空軍予備役へ追い払いました。
元気よくとびまわるF-16を見ながら少女は、「ああ、私はもうこのままなんの活躍をすることもなく消えてしまうのかしら・・・」
と悲嘆にくれていました。
しばらくすると空軍父さんが尋ねてきて、少女をある場所へつれていきました。
そして少女に一本のGAU-8をわたし、「こいつをうってきなさい。ぜんぶうってくるまでかえってくるんじゃないぞ!」
と言いました。

少女はとほうにくれ、あてもなくさ迷いました。
もうもうとたちこめる砂塵、はげしく身をうつ対空砲火・・・
身も心も疲れ果てた少女は、ついGAU-8の引き金を引きました。
するとどうでしょう、戦車が吹き飛び、地面に大輪の炎の華が咲きました。
ああ、なんて美しいんでしょう・・・
少女はまた引き金を引きました。
すると今度は砲兵陣地が吹き飛び、巨大な炎の柱がたちました。
ああまただわ・・・、でもすぐに消えてしまう・・・
少女はつぎからつぎへとGAU-8の引き金を引きました。
そのたびに装甲兵員輸送車や指揮車両・トラックなどが穴だらけになり、
対空陣地、SAMサイト、レーダーサイト、指揮所などが吹き飛び、
塹壕、スカッド発射台、FROG発射台、燃料貯蔵タンクなどが炎に包まれました。
さいごにMi-17を撃ち落としたときのことです。
目の前に立派な制服に身を包み、襟元には光り輝く勲章を下げた将校があらわれました。
「ああ、ルーデルさま、ルーデルさまなのね!?」少女がといかけました。
将校はにっこりほほえむと、ゆっくりと消えていきました。
「まってください!私も・・・つれてってください・・・」
少女は消えゆくルーデルを追って急上昇をかけました。
そして気がついたときには、翼を3分の2も吹き飛ばされながらも基地に帰還していました。
少女の耳にはなぜかルーデルの声が残っていました。
『だいじょうぶだよ、おまえはもうしあわせをその手につかんでいるんだから・・・』
少女がC型に改修を受け、2030年代まで運用が延長されることにきまったのは、そのあとすぐのことでした。





真逆の長命機

ベトナム戦争期に開発・運用され長期運用している機体にはB-52などが有名だがOV-10という機体も存在する。
この名前が似ている*6機体は観測機として10年ほど早く誕生し、ベトナム戦争では貧弱な武装鈍足による被弾率で活躍できず、米軍からは退役し民間に放出された……が、

  • 分隊規模でも乗せることが出来るキャパシティ
  • ゲリラを補足するには低速でないと補足が出来ない
  • A-10ほどの重武装は過剰装備

と再評価を受け、2015年に数機のOV-10がCOIN機*7として改修されてISISとの戦闘に投入。
そこそこの実績を重ねているようで更なる改修プランが提示されている。

最近では安価な小型UAVに置き換えられる傾向があるが、そういった小型UAVが正規戦において大活躍をしているのも味方制空権下の戦場とは、A-10級の皮肉である。

余談だがエスコン6のアイマス痛機では音無小鳥仕様の機体が登場する。彼女のあだ名(ピヨちゃん)にひっかけて、「サンダーボルピヨ」なる非公式ペットネームがついている。




ルーデル「これはいい機体だ。
これなら休む必要はないな。さぁ出撃!」
(^q^)やめてくださいしんでしまいます
ガーデルマン「A-10に後部機銃手の座席が無い事は、大勢の人間にとって幸運な事でした。」


編集・追記をする方はガーデルマンかヘンシェルと一緒にお願いします

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最終更新:2024年02月17日 22:54

*1 :=速度が遅いから

*2 実際設計段階からランディングギアが降りずに胴体着陸が考慮されており、車輪は全部格納されず、胴体着陸しても先に車輪が着地する設計になっている

*3 現在はどちらも使いにくいということで、Middleの分間3900発モードが標準設定

*4 いわゆる「ワイルド・ウィーゼル」任務。敵の地対空ミサイルの誘導用レーダーに低高度・高速で接近して対レーダーミサイルを叩き込み、地対空ミサイルシステムを無力化する。F-35のようなステルス機は誘導爆弾を用いることもある。

*5 互いに航空優勢を確保できず、航空機運用に多大な支障が生じている。また、両空軍は東のA-10とも言われるSu-25を運用しているが、目立った戦果は報告されておらず、被撃墜が多数発生している。

*6 この機体の役割を引き継いだA-10派生型のOA-10という機体もあるためややこしい

*7 小規模な不正規戦、テロなどに対処する攻撃機