金田一耕助

登録日:2011/11/04 Fri 04:22:17
更新日:2022/08/19 Fri 18:15:25
所要時間:約 8 分で読めます




小説家、横溝正史の生み出した名探偵。最近の知名度こそバーローに埋もれ気味だが、日本人の探偵と言えば彼か明智小五郎かというほどの有名人。


登場する作品は基本的に探偵作家Yが金田一本人から聞いた話を纏めた物であるとして語られる。


身長5尺4寸(約163.6cm)、体重14貫(約52.5kg)を割るだろうという少々小柄……というか貧相な男性。
本人曰く運動音痴だが、東北出身でありスキーは得意。また、第二次大戦時にも従軍して中国~東南アジアを転戦している。
また、若い頃には渡米し麻薬に手を出してしまった時期もあるという。


洋服を着ることが少なく、戦前戦後共にボサボサの頭に形崩れしたフェルト帽を乗せ、皺だらけの着物に羽織袴と足袋に下駄を履いた姿で登場する事が多い。
作中で指摘されることもあるが、興奮すると出るどもり癖とあいまって正直ちょっと胡散臭い。
なお、あまりそういう印象はないが変装することもしばしばあり、易者(『黄金の指紋』、『暗闇に潜む猫』、『金色の魔術師』など)、小説家(『黄金の花びら』)
ホテルのボーイ(『華やかな野獣』ただし似合ってないといわれている)、眼鏡アロハシャツの男(『雌蛭』)などと結構いろんな人になっている。

初登場作となる「本陣殺人事件」から最後の事件と銘打たれた「病院坂の首縊りの家(下)」に至るまで、
終始年齢を感じさせない書生じみた雰囲気の人物と表現されているが、後者の時点では約60歳
若すぎだろう。
ちなみに本編中では女の影は殆ど無く(明確に惚れた女性は2人いるが、1人にはフラれもう1人は横恋慕だった上事件の犯人で自殺してしまった)、
最後の事件でも独身であるかの様に書かれているため、子供を作ったとしたら(前述のように彼が子供を設けていることが前提となる探偵役が存在するのはご存知の通り)、隠し子でもない限り60代以降という事になる。おいジジイ。
他の可能性としては養子を取ったとかならありうるかも。お家を断絶させるぐらいなら遠縁の子を養子に、と親戚に勧められたとか。
なお養子かどうかは不明瞭だが、ジュブナイル作品の『仮面城』では、犯人追跡に協力した孤児の三太少年を引き取って後に少年探偵にした話が最後にちょっとだけ出てくる。
ちなみに生年は1913年との設定で、本編内では『悪魔の手毬唄』にて「昭和七年(=1932年)というと僕は(注:数え年で)二十歳でした」と本人が言う場面がある*1


また、事件に際しては知的好奇心に押されて精力的に行動するのだが、結果として殺人事件を楽しむような形となることを疎ましく感じているようで、
解決後には反動からかふらりと一人旅に出ることがある。
『病院坂の首縊りの家(下)』解決後は友人、知人に告げることなく再び渡米。
現地でも同様に知人を避けたらしく以降消息を絶ち、二度と表舞台に立つことはなかった。
作者によると晩年は日本へ戻り暮らしたという。

以下ネタバレ注意!

さて、冒頭でも述べたように名探偵として有名な耕助だが、しょっちゅう犯人が死亡する事でも有名。
『本陣殺人事件』からして密室殺人に見せかけた無理心中だったし、

獄門島』(複数犯が自殺や発狂)
八つ墓村』(被害者からの反撃が元で病死)
犬神家の一族』(謎を暴いた耕助の前で服毒死)
『悪魔が来たりて笛を吹く』(フルートを吹きつつ服毒死)
『悪魔の手毬唄』(警官や耕助を振り切って溺死)
『女王蜂』(過去の事件の真相を隠す為拳銃自殺)
『仮面舞踏会』(警官や耕助を振り切って、男と心中)
……とまあ滅茶苦茶に多い。

これに関しては「金田一耕助流のヒューマニズム」と作中でも語られており、犯人に同情してあえて見逃している節もあるという。
『悪魔の降誕祭』などでは、犯人に毒入りカップを渡し*2それで自殺されたことについて、等々力警部から「あれを飲まんだろうと思ってたのですか」とツッコまれているほど。
この点は某警部某小学生と大きく違うところである。

また、扱う事件が連続殺人の場合が多く、しかも犯人の目的がほぼ達成された、事件中盤~終盤に参入、そこから謎を解く事もある為*3
犯人の死亡と合わせて「名探偵の割に人が死にすぎ」等と言われることも……。
孫が歩く死亡フラグならこちらはさしずめ歩く全滅フラグか。コレのアニメでもネタにされていた。

一応フォローすると、特に映像化が多く有名な『獄門島』(分家の血筋断絶)や『犬神家の一族』(犯人の息子以外の相続権者全員死亡)が、
そういった特徴を持ち合わせている為で、毎回毎回手遅れになってはいない……はず。

実際、全77作品208人の犠牲者中、金田一耕助到着後の死亡者は115人
「探偵が事件に関与してから解決するまでに起きた殺人件数」÷「作品数」で算出する殺人防御率*4は、
金田一耕助の場合約「1.5」と、名探偵中では比較的優秀な部類である。
殺人犠牲者の出ないジュヴナイル作品も含めれば母数が上がる為、さらに低下する。
(主要十作品に限定した場合は4.2だが、代表作に連続殺人が多数含まれる為、あまりフェアな計算ではない)

参考までにの08年時点の記録から防御率を計算すると、
71件の事件279人の犠牲者中、事件中の犠牲者は177人
結果、防御率は「2.5」と祖父に大きく水を開けられている。

ちなみにどっかの小学生は74巻時点で226件で453人の犠牲者が出ているため、
防御率は「2.0」である。

つまり金田一耕助到着後は1人犠牲者が出る間に解決できる可能性があるのに対して、
某小学生探偵は2人死なないと解決できず、孫に至っては最大3人もの犠牲者を出してしまうのである。
やっぱりじっちゃんは偉大だった。

メタなことを書くと、横溝作品の内金田一耕助モノは「小説キング」や「宝石」といった当時大人気の雑誌に長期連載される場合が多く、
話の調整で犠牲者の追加や金田一耕助出馬を遅らせるという手段が執られた為。
基本的に事件の最初から居合わせる孫たちとは条件が異なる点には留意する必要がある。


因みに、8時だョ!全員集合のコントに、これをネタにしたコントがあるが…。

事件を解決するのではなくて、金田一役の志村けんに次々と怪異現象が襲いかかるというものである。


戦後間もない頃から映画化・テレビドラマ化される機会が多く、双方を合わせると金田一耕助を演じた俳優は27人に達する(舞台とラジオを合わせるとさらに増える)。
中でも有名なのは映画6作品出演の石坂浩二と、テレビドラマで数十本に出演した古谷一行。アニメ関係者だと計4作を舞台化して自ら演じた関智一がいる。


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最終更新:2022年08月19日 18:15

*1 第十五章「恨みの「モロッコ」」にて

*2 正確には犯人が標的人物に渡したものを耕助が犯人のと交換し「交換したよ」と犯人に宣言。

*3 ちなみに同じ横溝作品の先輩である探偵・由利麟太郎はさらにこれがひどく、『仮面劇場』などごく一部を例外として話の中盤から終盤に出てくるのが基本。

*4 この計算式だと「防御失敗率」ではと思うかもしれないが、これは野球投手の防御率(ERA)を参考にしている為