色に出でにけり わが恋は

登録日:2012/06/06 Wed 23:18:46
更新日:2024/01/03 Wed 14:26:01
所要時間:約 9 分で読めます




恋の切れ味、流石の乙女!


『色に出でにけり わが恋は』とは、ういんどみるから発売されたアダルトゲーム。通称「でにけり」
原画はこ~ちゃ、鳴海ゆう。
本作のタイトルの由来は小倉百人一首に収録されていることで名高い平兼盛の和歌「しのぶれど色に出でにけりわが恋は ものや思ふと人の問ふまで」である。




あらすじ

時は現代。夏が過ぎ去り、秋の盛りを迎えようとしている季節。
所は日本。山間に広がる高原の街、天神市。


整備された洒落た町並みと、自然豊かな田舎の景観とが共存する街で、主人公・神木悠人が所属していた、ごくごく普通の一般的な学園が、格式高き名門女学園である 『嶺鳴館学園』 に吸収合併されることとなった。


元々、全国津々浦々からあつまった最上級の令嬢が集うとされ、“荘厳優美、華麗で厳粛なる、神秘的な乙女の花園” であった学園に、時代の荒波を受けて経済的に立ち行かなくなった地元学園が吸収されたことで、純和風を好む、やや時代遅れな感性を持つ悠人は、大変居心地の悪さを感じてしまっていた。


そんな折、彼の実家である神社が先祖代々持つ役割――『天城家』の跡継ぎを決めるという 『決闘の儀』 を見届けるという役目が突然舞い込んだ。
かつて天神市一帯を治めていた領主の末裔である『天城家』。
その令嬢である二人、『天城梨桜』『天城桔梗』は互いの剣に誇りを賭け、文字通りの真剣勝負を繰り広げる。
だが、その「決闘の儀」の際に発生した運命的なハプニングにより、
“スーパーかつスペシャルなお嬢様” である梨桜と悠人が、何故か一緒に住むことになってしまう!


素敵でゴージャスな和洋のお嬢様たちや、のんきで至ってノーマルな幼なじみたちと繰り広げる、学園痛快賑やか恋愛浪漫譚が、今、開幕する!!


※公式サイトより引用



<キャラクター>

長い間イギリスで暮らしていた。
文武両道の超優等生お嬢様。性格は強気で勝ち気。
若くして剣の達人である。

梨桜の一つ上の従姉。
普段は大和撫子風のお嬢様だが、刀の腕は梨桜と互角の腕前。
共通ルートではあまり出番がない。

  • 鈴枝小町 (すずえだ こまち) cv波奈束風景
主人公と息が合う幼なじみ
実家のパン屋を継ぐため、毎日精進している。趣味は貯金。
作中一番の巨乳

  • 御園美苑 (みその みその) cv遠野そよぎ
天城家のメイド。職務に忠実で冷静。銃火器を使いこなす。
マスケット銃の項目に出張している。

  • 楓柚菜 (かえで ゆずな) cvみる
性格は行動的だが体は病弱でよく吐血する後輩。
三度の飯よりペンギンが好きだと力説するペンギン愛好家。

  • 春風朋音 (はるかぜ ともね) cv柚木かなめ
柚菜の同級生。面倒見がいい性格で柚菜をよく介抱する。
ルートは無いがHシーンはある。

  • 鳥羽綾媛 (とば あやめ) cv黒崎猫
ボクッ娘。梨桜のことを慕っている。攻略はできない。

  • 神木悠人 (かみき ゆうと)
主人公。神社の一人息子。
神社の清掃が趣味で、神主になるべく修行している。

王道の純愛萌えゲーであり、お嬢様学園を舞台に繰り広げられる恋愛劇を楽しめる。








ペンギン!?
レスキューッ!















<本題>

実はこの作品、クソゲーオブザイヤーinエロゲー板2010年大賞作品である。
しかも同年物議を醸した『クロスゲイズ』『浮き材』をおさえての大賞受賞である。


「あの老舗メーカーういんどみるの作品がどうして?」 


問題点はたった一つ。


読むのが苦痛な程にお粗末なシナリオである。


上記の長いあらすじ、キャラ紹介はほとんど意味がないほどに設定が投げられキャラ崩壊が著しい。
お嬢様、後輩、幼なじみといった土台すら活かされていない。
日常の会話はひたすらセクハラと下ネタの連続
元凶は主人公の神木悠人。かつてないほどの凄まじい変態である。
ヒロイン達にセクハラを行ってキャラ崩壊させてしまう。というか発言全てが卑猥な発言ばかり。
以下は本作における各人物の様子である。


  • 梨桜
悠人に弄ばれ子犬のように愚図るなどお嬢様らしさがまるでない。
彼女が行った、立ち絵のアップで腰を振りまくる「前後おおおおん!」は有名。
神社の境内で腰振りダンスをする他、学園の食堂で卑猥な単語を叫びまくるなど完全に変態にしか見えないキャラになってしまった。

  • 桔梗
悠人によって他のヒロインのおっぱいを揉みまくるという変態キャラになってしまった。お嬢様らしさも感じられない。
彼女によって日常のシーンでも喘ぎ声が絶えないという事態に。

  • 小町
やはり設定が活かされていない。
キャラ崩壊というほどではないが主人公に悪ノリするので変態に見える。

  • 美苑
やはり設定が活かされて(ry
シナリオは酔った勢いでHしたらデキちゃったのでゴールインするというもの。ネタではなく本当にそれだけである

  • 柚菜
やはり(ry

  • 朋音
出番は多いのにルートが無いという謎仕様。
Hシーンが何の脈絡もなく始まる。

  • その他サブキャラ 
別にいなくてもストーリーに影響はない存在。


全てのキャラの基礎設定がほとんど活かせていないという (ある意味) 凄まじいシナリオ。
元々の土台は結構練られているのにストーリーが全くそれを活かさず、掘り下げず消化不良に終わってしまう。
主人公とヒロインはことごとく変態と化して下ネタ、低俗なギャグが繰り返される。
そしてプレイヤーを待ち受けるのは精神を蝕むヒロインの狂った台詞である。
以下はその台詞例となる。



「黙って悠人はァ、悠人のボッキンボッキン☆スティックをぉ、勃起ン勃起ンさせてぇ、ぼっきん、ぼっきん、ぼっきん……」

「うっふ~~~ん☆ エッチな梨桜おおおおん☆ エッチな腰つきで~ん☆ ゼン♪ ゼン♪ 全裸で前後ォおおおおおおン♪♪」

「おっぱいィ~~~~ン♪♪ ユサユサユサァ~~~~ン♪♪ おっぱいィ~~~~ン♪♪ ぷるぷるぷるゥ~~~~ン♪♪」

「だらしなくエッチなミルクを噴きまくる乳牛メイド長の美苑に、おいしいペニスミルクを恵んでください、悠人様ァああン!!」

「あん、あん! シコシコぉ! ムスメさんっ、シコシコぉ! 毎晩っ、オナニーっ! こっ、こっ、コキまくりなのぉぉ!」



これらは一部でもっとすごいものもある。 シルキーズに対抗しようとしたのだろうか。
これだけならまだその手の類のバカゲーと見ることもできるっちゃできるかもしれないが、
それ以上に問題なのが本作はとにかく内容が薄いということに尽きる。


あらすじにある決闘の儀や、学園モノでは重要イベントのはずの学園祭もあっという間に終わってしまう。
盛り上がりに欠け、とにかく見せ場の無いストーリー。
ヒロインと結ばれる理由付けをする心理描写が薄く、
何で好きになったのか理解できないまま気がついたらHシーンに突入していてそのままエンディングになってしまう
本編クリア後に追加のエロシーンやアフターストーリーなども収録されているが、それを踏まえてもとにかく話が薄くて短い*1


余談になるがういんどみる作品の容量は初期の一部作品を除いて2.5~3.5GB前後くらいの重さが平均的なのだが、本作は2GBすら下回っている
データの圧縮方法云々で表面上の容量は変化しやすいとはいえ、この時点で嫌な予感がしたプレイヤーもいたとか。
さらに個別ルートに辿り着くまでに100を越える選択肢があり、これが凄まじく苦痛。
数クリック間隔で表示されることもあり、非常に面倒。
ほとんどはフラグに関係ないダミーである。
スタッフは何を考えてこんな苦痛な仕様にしたのだろうか……。


これらをまとめた、薄くてつまらない苦痛なストーリーの一点のみで2010年のKOTYe大賞を受賞したのである。


内容の良し悪しを抜きにしてもボリューム自体がかなり薄め。
薄さをごまかすために選択肢を水増ししたのかと邪推されかねないレベルである。
純愛の欠片もない、出来のよろしくないバカゲーである。
ういんどみる作品ではいつも通りの純愛展開を期待したユーザーには完全なる不意打ちとなってしまった。
シナリオライターが5人もいるのに、プロデューサーやシナリオ管理担当者がいるのに、どうしてこうなった……。


ういんどみる=純愛だなんてユーザーの勝手な先入観では?と思う人もいるかもしれないが、発売当時の雑誌や公式サイトでは「いかにもな萌ゲー」という風に宣伝されていたし、OPでは曲、ムービーともにシリアス調。
体験版もストーリーやキャラがおかしくなる前に終わってしまい、普通のゲームだと思ってしまう。
テックジャイアンの発売前の開発者インタビューでスタッフは「本作が目指すのは純愛の王道「魔法や超能力といったトンデモ要素がない、自然で万人に受け入れられやすいラブストーリーを丁寧に綴っていますと述べていたのである。
宣伝の時点でバカゲーだということを明かしておけば、ここまで批判されることもなかっただろうに……*2


本作の不評はういんどみるも重く受け止めており新たに会社の体制を作り直したらしい。
その甲斐あって、その後の『Hyper→Highspeed→Genius』や『神がかりクロスハート!』はそれなりの出来にはなっているのでご安心を。
ちなみに本作のメインライター平内太兵衛はこれ以降名前を見ることはなくなった。



<評価点>

評価点を挙げると、絵は美麗であり曲もいい。
システム面は非常に充実していて立ち絵鑑賞モードもある*3
声優は上記の狂った台詞回しをしっかり熱演している。(特に梨桜)
ヒロインの羞恥描写が濃く描かれていて、その手の属性がある人なら十分楽しめる。
余計な鬱要素が無い終始明るいストーリーとも解釈できるし、キャラも変態ではあるが可愛いと思える部分もある。人によってはハマるかもしれない。
最初からバカゲーだと頭に入れて、シナリオを気にせずにプレイすればある程度は楽しめるかも。
面倒な人は小説版だけ読んでおこう(梨桜、桔梗、小町しかHできないけど)。


また、大賞を受賞した遠因は2010年がクソゲーの不作年だったという背景もある。
少なくとも前年の『りんかねーしょん新撰組っ!』や後年の『銃騎士』や『チーズ』、『バイオハザード』に比べればまだ遊べるレベルではある*4
商品失格レベルも珍しくないKOTYe大賞の中ではまだまともな部類に含まれるであろう



<10年目の余談>

本作の発売から約10年の月日が経った2020年4月、YouTube配信にてVTuberとしても活躍する梨桜役の民安ともえが「1回だけ脚本自体に口を出した」作品として本作と思われるゲームについて語っている。
発売されたタイトルのため作品名は伏せていた*5が、民安をして「話がすごいはちゃめちゃ」「支離滅裂」と言わしめている。
元々の脚本では最後に主人公を裏切る展開が予定されていたようだが、収録の最終回ということで民安の休憩時間に現場を訪れていた社長に民安が脚本への正直な感想を伝える。
民安の話を聞いた社長は「実は僕もずっとそう思っていた」と答えたという。
つまり本作、主演声優と製作会社の社長から見ても脚本がアレなゲームだったのだ。
いくら何でも最後の裏切り展開だけは直そうという話になり、急遽別のシナリオライターを招聘。
そのライターと民安・社長の話し合いによってできるだけ元の脚本の矛盾点を直したとのこと。
以上の話のオチとして民安は同作がその年のKOTYe大賞に選ばれたことを明言している
初稿のまま本作が発売されていたらどうなったことやら。



追記ィぃぃぃぃぃン♪ 修正ィぃぃぃぃぃぃン! よろしくお願いします。


この項目が面白かったなら……
ポチッとおおん!/

+ タグ編集
  • タグ:
  • ういんどみる
  • エロゲー
  • ガッカリゲー
  • クソゲー
  • 声優の意地
  • 地雷
  • バカゲー
  • 前後
  • KOTY
  • KOTYe
  • 声優の本気
  • 「前後おおおおん!」
  • 迷作
  • ういんどみる乱心
  • まさかの刺客
  • でにけり
  • どうしてこうなった
  • マジキチ
  • 狂気
  • キャラ崩壊
  • OP詐欺
  • 平内太兵衛
  • こ~ちゃ
  • 鳴海ゆう
  • パンプキンノベルス
  • 決闘
  • 剣士
  • ゲーム
  • 平兼盛への風評被害
  • 色に出でにけり我が恋は

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2024年01月03日 14:26

*1 その肝心のアフターに使い回しが発生してたりする始末である

*2 それ前提で見ても内容の薄さには首を傾げてしまうかもしれないが

*3 その割には立ち絵が乏しいのだが。イベントCGでは水着、コスプレ、全裸がかなり多いのに立ち絵に反映されていない

*4 これらの作品と同年に発売されたと仮定した場合、満場一致で大賞争いから脱落することは目に見えている

*5 もっとも民安出演・KTOYe大賞受賞・脚本が支離滅裂という話からほぼ確実に本作のことを指していると思われる