すごい科学で守ります!

登録日:2011/05/18 Wed 23:32:16
更新日:2023/03/28 Tue 16:05:52
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すごい科学で守ります!』とは、『機動戦士クロスボーン・ガンダム』や『超電磁大戦ビクトリーファイブ』等の作品で知られる漫画家の長谷川裕一氏による特撮考察本。
1998年にNHK出版より刊行された。シリーズ第1巻には「特撮SF解釈講座」と副題がついており、帯には小説家の山本弘による推薦文が寄稿されている。


概要

といった東映特撮作品を題材としている。

元々は(当時他ジャンルの特撮と比べて軽んじられていると作者が受け取っていた)スーパー戦隊の名誉回復のために作ったシリーズで、当初は八手三郎原作作品を対象としていたがゴレンジャージャッカーを要望する声が届き、この二作品を入れると『ジャッカー電撃隊VSゴレンジャー』に登場する作品も当然入ることから東映特撮作品の多くが題材となった。
この世界最初のライダーはチノマナコ?さあ…

続刊の『もっとすごい科学で守ります!』(2000年)、『さらにすごい科学で守ります!』(2005年)が同じくNHK出版から一般発売。
2010年の夏コミで著者本人が同人誌として『すごい科学で守ります!・仮面ライダーディケイド編 だいだいわかった!』を発行している。
2023年2月25日には過去販売された3部作を一冊に合本した『グレート合体愛蔵版 すごい科学で守ります!』という形で新装版が刊行された。

特撮作品の穴にツッコミを入れる『怪獣VOW』やアニメ・特撮を科学的に考証してみた『空想科学読本』とは違い、あくまで「SF」として特撮を考察している。

これは作者の
  • 特撮作品の科学は作品内の独自原理・法則で動く。
  • それは元より我々の世界の科学とは異なるものである。
  • それを我々の科学に無理に当てはめる事自体が非科学的である!
……という主張に基づく。

その姿勢が評価され『もっと~』にて星雲賞を受賞した。

反面、後述した考察ルールの都合の他、著者によって意図的に原作の設定や雰囲気などが無視されたり、ほとんど投げやり同然の簡素な考察で済まされてしまった作品が幾つかあり(特にファンタジー寄りの作品にその傾向が見られる)、それらのファンからは少なからず厳しい意見が挙がることも。
特にシリーズ3作目『さらに~』では作者がいささか調子に乗ったか、一部作品の世界観・設定考察に結構強引……というか「トンデモ」呼ばわりされても文句言えないレベルのものが散見される*1
考証についても「昆虫は中空の構造のものが多い」等という事実に反する解説が散見される点なども指摘されがち。
また本Wikiでもそうだが、あくまで「著者の二次創作」でしかない本作の内容を、さも公式の設定であるかのように無節操に吹聴するマナーを守らない特撮ファンも一部存在し、本作のネタを振られること自体に辟易している人も少なくないのが実情である。
『空想科学読本』などよりも『すごかが』の方がよっぽどトンデモ本」という意見も。

Vシネマ『百獣戦隊ガオレンジャーVSスーパー戦隊』で監督を務めた竹本昇氏は、同作品の「とある描写」について、事実上本作の考察に対する反論かつ意趣返しの意味合いも含んでいたことを自身のSNSにおいて仄めかしている*2

総じて、書籍の発売から相当な期間が経過したことにより、『空想科学読本』等よりも本作の方が作品愛に優れていると吹聴する悪しき傾向に対し、大きな見直しを迫られつつあるという見方もある。


【作品を考察するにあたってのルール】

明文化されているもの

〇全ての戦隊シリーズは同一の時間軸で起こった話とする

海賊戦隊ゴーカイジャーやVSシリーズが始まるまで、スーパー戦隊シリーズは一部例外を除き作中の関連性がはっきりしなかった。
2巻以降では『ジャッカー電撃隊VSゴレンジャー』でライダーやキカイダーの存在について語られた事を理由に、石ノ森ヒーロー作品やメタルヒーロー作品、不思議コメディーシリーズまで同一の時間軸とされるようになった。

〇フィルム上で起きた事は全て事実とする

※小説や雑誌の記事で語られたのみの設定や、番組本編に出てない設定は映像作品に対して矛盾を生じる事もあるためノーカウント。
例えば、原作漫画ではキカイダーが左右非対称な理由は不完全な良心回路という設定があるが、特撮版では語られていないため新たな説を取り上げる。

……が、『さらに~』期では『スピルバン』の考察に際して「最終話の結末(歴史改変で敵組織の侵略が無かった事に)はナレーターの勘違いだった」という
このルールを根底から否定するかのような解釈を敢行。多くの読者から「そりゃないだろ」と盛大な顰蹙を買う結果となった。

〇作品以外のスタッフの事情であるという事に逃げない

サンバルカンの母艦ジャガーバルカンに口がついている理由や、戦隊シリーズのロボがカラフルな理由など。

〇フィルム・設定上で年代が確定できない場合は放送年度の出来事とする

※だが『ビーファイターカブト』の年代設定については、前作『重甲ビーファイター』の5年後という設定の存在を忘れていたのか、前作の1年後として考察されるというミスが生じている。

〇シリーズの順列は、放送順と基本的に同じ

※『オーレンジャー』の舞台は1999年のため、翌年の『カーレンジャー』は2000年。『オーレンジャー』と『ゴーゴーファイブ』が同一年であるという矛盾に関しては後述の「ネジレジア混乱」で説明された。
……が、『オーレンジャー』と『カーレンジャー』については重大な考察ミスが生じている。詳しくは後述。

〇宮内洋が演じる人物は同一人物

※アオレンジャー・ビッグワン・三浦参謀長・宇宙刑事アラン・正木俊介警視監は同じ人物。『ガオレンジャーVSスーパー戦隊』の時はタイムレンジャーが各時代から連れて来たと考察している。
また『ジャッカー電撃隊VSゴレンジャー』では、アオレンジャーに別人がスタンドインしていたのではないかという意見が載せられている。
※基本的に優先順位は「作品の映像>公式設定>公式の裏設定>公式ではないが一般的に周知の設定」とされているが、宮内洋同一人物説は長谷川氏より以前から主張されているためか、かなり無理をしてでも成立させているものも多い。
後述する俳優絡みの論法も含め、読者から「役者に失礼ではないか」という否定的な意見も少なからず寄せられてしまっている、本作随一の賛否両論ポイント。

明文化されていないが多用される論法

〇同じ変形合体機構を用いたロボは同郷もしくは開発者が同門

※地球生まれのサンバルカンロボもデンジ星生まれのダイデンジンの機構を研究したもの。

〇演じている俳優が同じなら同一人物、或いは親族

ショッカーに捕まりサソリトカゲスの処刑から脱走した峰博士と『仮面ライダーZO』の望月博士は同一人物。また、ヘドリアン女王と魔女バンドーラ、サー・カウラー大教授ビアスは親族。

〇同じ名字・似た名字なら親族

※『科学戦隊ダイナマン』の星川竜と『超獣戦隊ライブマン』の星博士、『超力戦隊オーレンジャー』の星野吾郎は『地球戦隊ファイブマン』の星川一家の親族。

〇作品の原作関係を設定で逆転させない

超人機メタルダーは設定上キカイダーより先に作られているが、光明寺博士の製作上の事情で似てしまったものでありメタルダーからキカイダーの流れはない。
仮面ライダーBLACK仮面ライダー1号のオリジナルと考察しているが、原作者が「仮面ライダー0号」のつもりで描いたためセーフなのだと思われる。


【本で取り上げられている主なオリジナル用語】

〇デンジ推進システム

電子戦隊デンジマン』に登場する惑星・デンジ星のメカニックシステム。電磁推進システムではない。
三角形に作られた機体の頂点からフィールドを発生させ、空力を得ているという考え。要は「尖っていれば飛べる」
本書を支える基幹論理の一つで、デンジマン以降の『太陽戦隊サンバルカン』・『超電子バイオマン』・『鳥人戦隊ジェットマン』・『未来戦隊タイムレンジャー』などにも度々使用されているとしている。
合体パターンは上下が特徴。

〇フラッシュ整流ボード

超新星フラッシュマン』に出てくるフラッシュ星人等の技術。フラッシュ星系の機体は地球の機体に外見が似るがやや角張っている。
そこで機体の表面にこのボードを取り付け、エネルギーフィールドを展開することで、抵抗を減らしつつ、揚力・推進力を発生させる。要は「翼がありさえすれば飛べる」
デンジ推進システムがパワータイプならば、フラッシュ整流ボードは省エネタイプ。
合体パターンは左右が特徴。

〇銀河広域クル文明圏

激走戦隊カーレンジャー』に登場するダップの母星・ハザード星を含めた文明圏。
劇中でダップが「クルクルクルマジック」と云っているのでクルマ文明圏ではない。
基本的にどんな宇宙船も車型に作ってしまう特徴があり、デンジ推進システム以上のパワータイプ。
機体パーツの規格が徹底しており、換装が容易(緊急合体天下の浪速ロボスペシャルを参照)。

〇ムシアース系反重力ジャイロ

重甲ビーファイター』(続編の『ビーファイターカブト』を含む)・『忍風戦隊ハリケンジャー』・『特捜戦隊デカレンジャー』に使用されているとされる技術。
詳細は不明だが、何らかの物体を回転させることで反重力を生み出す(ローターによって揚力を発生させている訳ではない)。要は「何か水平に回転していれば飛べる」
名前の由来が非常に複雑……というか根本の考察が地球は我々が暮らすアナザーアースと恐竜が支配するダイノアースとに分かれたというアバレンジャーの設定は誤解で、実はさらに昆虫が支配するムシアースがあり、ビーファイターを「本来ならムシアースから来たスーパー戦隊の『昆虫戦隊ムシレンジャー』になるはずだった」とでっち上げたりと幾らなんでも無理やり過ぎると専らの評判例によって『さらに~』期の考察である。
……しかし十何年経って本当に昆虫を守護神とする地球っぽい異世界が舞台のスーパー戦隊が出てくるとは長谷川氏も想像していなかっただろう

〇S.U.P

スーパー戦隊達に影で協力していた組織。逆に言うとS.U.Pが関わっているからこそ作品外の事情を出さずに「S.U.P.er」戦隊の括りが成り立つ。
技術の継承や発展に力を注いでおり、『ライブマン』や『ハリケンジャー』等の技術提供を行なったと考えられる。
上記の技術を常に取り入れており、複雑な合体パターンが特徴。

〇ネジレジア混乱

『メガレンジャー』の邪電王国ネジレジアが異次元からやってきた影響で、地球全体が巨大な時空の歪みに巻き込まれ、『ゴーゴーファイブ』の時代に宇宙の他の領域に対して4年分過去に戻ってしまった現象。
『オーレンジャー』『ゴーゴーファイブ』と、1999年に活躍した戦隊が2つ存在する(1999年が2度繰り返された)理由を説明するための設定。
なお、この都合上『カーレンジャー』が2000年、『メガレンジャー』が2001年、『ギンガマン』が2002年と解釈されている……のだが、
実は『カーレンジャー』は作中で1996年~1997年の出来事であるとしっかり明示されている*3ため、この説自体が根本的に矛盾してしまっている。
当時『アルマゲドン』と『ディープ・インパクト』の二回も隕石が落ちてきたことに絡めた時事ネタでもあるため、正直後から見てみると……


完結

本シリーズの出版は2005年の『さらに~』で途切れているため、『マジレンジャー』以降の戦隊や平成ライダーシリーズは触れられていない(『マジレンジャー』と『仮面ライダーアギト』は少しだけコラムで触れている)。

本作の続刊については、同人の『ディケイド編』において、
  • このシリーズは不当に低く評価されていたスーパー戦隊の名誉回復のために作ったが、もうそんなに低評価されていない
  • スーパー戦隊がファンタジー寄りになってきた
ことを理由にもう続編は出さないと著者自身が明かしている。


追記・修正は、公式と二次創作の分別をちゃんと付けられる方がお願いします。

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最終更新:2023年03月28日 16:05

*1 一例を挙げると『タイムレンジャー』項で、作中のタイムジェットの時間移動の細かい演出などを根拠に「30世紀の未来世界は大昔の恐竜時代に存在する」と苦しい解釈をこじつけ、強引に通す等。当たり前だが映像作品本編にそのような設定を想起させる描写はない。

*2 尤も、この描写についても後述の通り『さらに~』期における考察でこじつけられており、竹本氏も同ツイート中で「ズルくない?w」と振り返っていた。

*3 『カーレンジャー』第16話にてカートレースの垂れ幕に「1996」と年号が明記されている他、第46話でも作中時点で「1997年1月24日」であると明言されている。