流星刀

登録日:2012/03/22(木) 02:05:24
更新日:2024/03/13 Wed 11:44:20
所要時間:約 6 分で読めます




人類の歴史とは、すなわち『闘争』ひいては『武器』の歴史である。

木を削り、石を磨き、銅を作り、鉄を鍛え――あらゆる素材を武器と為してきた。
そして武器は歴史を経るたびに……進化し、強力になっていった。

それが本当に進化といえるかはわからぬ……しかし見てみようではないか……。
武器のいきつく先を……そこに結論が待っているやもしれぬ!



なぜ人類が存在するのか


宇宙は武器に何を求めているのか


かつて人類がそうであったように



武器の進化はとまらぬ!!





……まあこんなやり取りがあったかはともかく。

ここで紹介する「流星刀」も人類の歴史の中で生まれた武器のひとつ。
その名の通り星を鍛えた霊刀である。


【日本の流星刀】
時は浪漫漂う明治時代。
政府要人の榎本(えのもと)武揚(たけあき)は、職務でロシアを訪れた際に隕鉄*1製の剣の存在を知る。彼がこれに抱いた強い憧憬がことの発端である。

その後明治23年、富山県で発見された「白萩隕鉄1号」を榎本がポケットマネーで買い取り、流星刀作成のお膳立てが整う。
ちなみにこの隕鉄、発見されてしばらくは漬物石として使用されていた。何でも大きさの割に非常に重かったらしく、重石としては申し分なかったのだろう。

隕鉄を手に入れた榎本は、刀工「岡吉(おかよし)国宗(くにむね)」に流星刀の制作を依頼する。
果たして未知の素材に挑んだ国宗であったが、かつてない苦戦を強いられる。

そもそも地球産の鉄と隕鉄とでは、その組成はまったく異なるものであったからだ。(後述)



――だが、男たちは諦めなかった。





プロジェクトXばりの失敗と試行錯誤を経て、遂に隕鉄と玉鋼の混合比率を割り出し、刀として鍛え上げることに成功したのだ。
人類の叡智執念が宇宙の神秘に一矢報いた瞬間である。

最終的に長短2振りずつの流星刀が作られ、その内長刀2振りを時の皇太子 のちの大正天皇)の成人祝いとして献上された。羨ましいなおい。
時に明治36年、榎本武揚62歳のことである。

残りの短刀2振りは榎本家へと伝えられ、のちの榎本の葬儀の際に遺体とともに棺に納められたという。


己のとともにこの世を去るとは、なんとも男冥利に尽きる話である。
勿体ないとか言うな。


【素材としての隕鉄】
先述したように、隕鉄と地球の鉄とでは全く組成が異なる。
一部の隕鉄には炭素が全く含まれておらず、加えてニッケル等の不純物が混ざっているのだ。

炭素が含まれていないと焼き入れ(鉄を熱して冷ます工程)をしても硬くならず、日本刀特有の粘り強い刀身が生まれない。
また、ニッケルと鉄とでは融点が異なるため、軽く熱した程度では分解されボロボロになってしまう。
素材となった「白萩隕鉄1号」はモロにこの性質を有していたため制作が難航したのである。

とは言えこれだけ加工が面倒なだけあって、流星刀は隕鉄特有の美しさと決して折れることのない強靭さを兼ね備えたという。

……ひょっとしたら何らかの宇宙パワーが働いているのかもしれない。
ゲッター線とか。


【世界の流星刀】
●ロシア皇帝の剣
南アフリカで発見された隕鉄から作られ、1810年頃皇帝に贈られたもの。
榎本が憧れたのもこの一品。

●ムガール皇帝の短剣
ムガール帝国(現在で言うインド北部)に存在した流星刀。
「隕石には魔力が宿る」との伝承により作られた。

●隕星剣
日本の流星刀のひとつ。榎本に影響されて作られたのだとか。
ただしこちらの素材は海外で発見された隕鉄。

●ツタンカーメンの鉄剣
古代エジプト王朝時代のツタンカーメン王のミイラの墓にあった鉄製の短剣。
当時のエジプトは青銅器時代であったにもかかわらず鉄製の短剣が共に埋葬されていたことから一部でオーパーツ扱いされた。
が、近年エジプトの博物館の研究者チームが蛍光エックス線分析装置を使って短剣の材料を詳しく分析した結果、短剣の鉄の成分と隕石の成分とが一致。
これによりこの短剣は地球に落ちた隕石を材料に用いて作られていたことが判明した。

●世界最古の鉄剣
トルコで発掘された約4300年前の鉄剣。
素材を分析したところ、どうも隕鉄であったらしい事が判明した。
人類が製鉄技術を開発するより300年前の剣なためオーパーツ扱いだったが、まさに星を鍛えた伝説の剣であったわけである。

素材が素材なため、生産数はごくわずかである。
また、ムガールのみならず多くの地域で隕石は神聖(あるいは魔的)なものという認識があり、
実戦的な武器というよりは「呪具」や「祭具」といったマジックウエポンとしての意味合いが強い。

【関連作品】
漫画やアニメ、ゲームなど、星の数ほどある各種作品にも僅かながら登場している。

  • 星野之宣作の漫画「宗像教授伝奇考」では流星剣を扱ったエピソードがある。

  • ルパン三世(原作漫画版)において、五右ェ門の持つ刀「流星」は、隕鉄を鍛えた物だという設定である。
    ただ、原作の五右ェ門は竹光でも物を斬れるので、あまり持ってる意味が無い気がする。

  • TRPG「トンネルズ&トロールズ」に隕鉄製のクリスナイフが登場する。これには魔法の効果を打ち消す効果がある。

  • 漫画『風雲児たち 幕末編』では清河八郎の佩刀として登場していた。

  • マンガ「天空の覇者Z」では最重要ウェポン。日本の東北地方某所に落ちた隕石から、鉄とは異なるつよい金属が採れた。これを精錬し、打ち上げられた流星刀「陸奥守・流星」は、作中重要な性質を持っている。

  • ゲーム「サガフロンティア」ではある条件を満たすと入手できる刀として登場。固有技「ミリオンダラー」で流星を降らせるというトンデモない力を秘めた一振りである。

【余談】
皇太子に献上された2振りの流星刀。
この内1振りは靖国神社の「遊就館」に納められているという。

そして残るもう1振りだが、













なんと、












































宮内庁「失くしちゃった(・ω<)
           ↑意訳



ちょ、おま!!!!



主なき霊刀は、今もどこかで己が担い手の出現を待っているのかもしれない。




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最終更新:2024年03月13日 11:44

*1 普通我々が隕石と呼んでいるものはほとんどの成分が鉄である事が多い