粉塵爆発

登録日:2010/04/05 Mon 00:08:23
更新日:2024/02/17 Sat 08:54:50
所要時間:約 6 分で読めます






粉塵爆発(ふんじんばくはつ)

概要

空気中に舞い散る可燃物が引火して爆発する現象。
可燃物は石炭の粉や小麦粉、中には塵や埃、ココアコーヒー、アルミニウム粉末等の場合もある。
引火は照明器具などの高温の熱源・火花・静電気の様な小さなものでも火種となる。


粉塵は表面積が大きいので空気中に舞うと空気との反応面積が大きくなり、燃焼反応に敏感になる為。
そして、その粉塵がドミノ倒しの様に連鎖的に燃え広がる事で爆発する。
この原理は「サーモバリック効果」と言われる。

以前は石炭の粉末が舞う様な環境の整っていない炭鉱でよく起きていた。
中でも有名なものは死者458名、一酸化炭素中毒患者839名を出した三井三池三川炭鉱炭塵爆発であろう。
現在は、金属工場や穀物サイロ、中には埃がたまっている所を掃除している時に起きるケースもある。

場合によっては、インスタントコーヒーで起きる事も。


~一例~
「あ~っ、眠い。仕事かったるいな~。とりあえずコーヒーでも飲むか」
カチッ ボッ
「さて、コーヒー…って、蓋開かないな。くっそ、プルプル とりゃ」バサッ
ボワッ
「やべ、こぼしtってうわっ!」




二次元でもよく登場し、逆転・自爆フラグになる事も少なくない。



~一例~

敵「HAHAHA!追い詰めたぜ~YEAH!」
主人公「くっ、これでも食らえ!」
敵「何?……って、ただの小麦粉じゃねえか!無駄無駄無駄ぁぁ!」
主人公「ニヤッ 馬鹿めかかったな」
敵「何…だと……? ハッ まさか…」
主人公「そのまさかだ、食らえ!」
カチッ
敵「GYAAAAA!」







だが、リアルで漫画みたいな大爆発は滅多に起きない。
特に屋外では条件を満たしづらく、道のど真ん中で小麦粉を一袋ぶちまけた程度ではまず爆発はしない(飛散した粉末にが付くことによる火災の危険は十分ある)。
粉塵爆発はあくまで可燃物の粉塵によって起こる現象なので、セメント等の不燃物による粉塵では発生しない。
視界がほぼゼロになるほどの密度で可燃性の粉塵を満たさなければいけないが、逆に多すぎても酸素不足で爆発に至らない。

因みによく小麦粉で説明されるが、粉砂糖の方が燃えやすいので大抵の実験やテレビでは粉砂糖が使われている。
また、2008年にアメリカ合衆国ジョージア州の砂糖精製工場で粉塵爆発が起きているが、
この事故は死傷者数が密閉空間である炭坑での事故と不特定多数の人間が集まっていた後述の台湾でのカラーパウダー粉塵爆発事故を除くと最も多い。
ただし、死者と負傷者を合わせた数(死者8名、負傷62名)なので死者数だけであれば他の事故の方が多い。

意外かもしれないが思わぬ爆発に繋がりやすいというのが厄介なだけで、
破壊力に関しては我々が想像するような火薬などを用いる爆発物に比べればかなり低い。
また、空気中の粉塵濃度を上げすぎると酸素の割合が減る(これをリーンバンと言う)ので逆に燃えなくなる。
その上で燃えるのは一瞬なので、油などでも付着していなければ燃え続けることはないし、
小規模のものなら事前に水を浴びる程度で軽度の火傷を負うことすらない。(これを「ライデンフロスト現象」という)


より威力を上げるには粉塵の舞う空間を「密閉」し、粉塵の濃度を一定に保ったまま「空間」を増やす。
前者は圧力を逃がさない事で、威力の低下を防ぐ。

後者は所謂「二乗三乗の法則」
コレは模型を材料等を変えずにそのまま大きくすると自らの重さに耐えきれずに壊れる事と同じ原理。
例えば、Aという空間を3倍にすると表面積が9倍になるのに対して体積は27倍になる。
これで単位面積にかかる圧力は27÷9=3により、単純計算では同じ濃度で粉塵爆発しても元の空間より3倍の威力になるという結果になる。


現実世界で起きた大規模な粉塵爆発の代表例は、製粉所に由来するものが多い。
これはアメリカ等にある小麦粉やとうもろこしの粉を運ぶ大型エレベーター(密閉された巨大な空間)の構造が原因。
1977年12月22日にアメリカ合衆国ルイジアナ州で起きた穀物輸出用エレベーター爆発事故では
高さ40mもある貯蔵用大型サイロの屋根が片っ端から吹っ飛び、コンクリートの破片は400m離れたミシシッピ川まで飛散
数トンもの重さのコンクリートが爆発の衝撃で吹き飛ばされ、休憩中の従業員ら37名が居るカフェテリアに直撃し全員死亡
さらに爆発により生じた火が6ヶ月もの間くすぶり続け、5日後の1977年12月27日には同国テキサス州でも穀物輸出用エレベーターが爆発。
付近に停車していた穀物運搬用ディーゼル機関車が吹き飛ばされたほか約1.6km離れた地点の建物の窓が割れている。
もっと昔にはミネソタ州・ミネアポリスにあるワッシュバーン製粉所で起きた粉塵爆発があり、こちらは18人が死亡。
上述のルイジアナの事故と比較して死者数は少ないが、こちらでは一瞬のうちに工場全体が吹っ飛んで、爆風の余波で他5つの工場が破壊された。
被害を見ればとんでもない威力なのは確かだろう……ただし、これは粉の量が何百トンもあるからである。小麦粉の袋を何十袋まき散らしたところでそんな威力は出ない。
理想的な状況でも小麦粉1トンの粉塵爆発は、TNT換算するとたった3640g。ちなみにコーンスターチの方が威力がありTNT換算で7kg近い。
さらにこの理想値には平均粒子径57μm、最小5~最大100μm程度の小麦粉で16666立方メートルの空間が必要となる。

ただし、小規模の爆発でも大火傷を負う可能性はあり、火傷しなくても酸欠や二酸化炭素中毒になったりする可能性はかなり高い。
粉塵爆発は規模に関係なく危険なものなので注意しよう。特に制御が難しい爆発なので下手な実験は厳禁。


最近の目立つ事例では2015年当時の台湾のコンサートではカラーパウダーを放出することがブームになっており
日本でも流行っていたが、事件後世界中で自粛するようになった)、
事件の起きたコンサート会場でもカラーパウダー(この時のカラーパウダーは着色コーンスターチ)を盛大に噴射…というか
色々なカラーパウダーを巻きまくって色を楽しむのがイベントの趣旨だったらしく、
そこに恐らくタバコによる引火が重なったことで粉塵爆発が発生した。
これは屋外の粉塵爆発であるにも関わらず爆発の規模が大きかったことと、観客の大半が水着だったことなどから、
負傷者約500人、死者15人という多大な被害を招いてしまった。
また前述の通り、コーンスターチの方が爆発の威力が強いのも要因の一つだったのだろう。



尚、戦闘やら戦争などで使うには前述の通り条件が厳しい。
爆発については熱は露出が少ない服装+腕などで急所である顔を覆っていれば軽い火傷で済みやすく、爆風についてもダメージを与えるほどに強くすることは難しい。
爆発そのものよりも、後述の酸欠や二酸化炭素といった猛毒気体による窒息の方が効果的に働きやすい。
知識があるなら、粉塵が舞っている時点で粉塵爆発か、その後の酸欠や有毒ガスの選択肢に思いつき、狙いが大体バレるので警戒されやすいというのも欠点。*1
ちなみに湿気があるだけでも発生しなくなるので、空間に水をぶちまけるだけで無効化できてしまう。

  • それなりに広く限りなく密閉された空間
  • 粉塵が適切な密度に満たされた状態
  • 水分がなく乾燥しており、粉塵が満たされるまで火元はない
…という状況なら前述のエレベーター事故並の威力となる。
条件さえ揃えられれば火力も充分な脅威にはなるが、それには大量の粉と広さを兼ね備えた工場などでなければならない。
粉塵を発生させる何らかの仕掛け(それだけの火力を出すには人力だと難しい+時間がかかる)も必要となるので、前提条件がかなり厳しい。

使われるロケーションとしては戦争関連よりは、きなくさいドラマやサスペンスものの方がどちらかと言えば適しているだろう。
要はそこら辺の物を利用してすぐに実現出来る可能性があるという点と、見た目の分かりやすさや視界が塞がることから駆け引きの材料に使えるという点が重要視されやすい。
銃火器を持っていない側が屋内戦で煙幕の代わりに可燃性の粉塵をぶちまけ、一か八かの爆発狙いと同時に相手の火器の使用を封じるという戦法にも使える。
ただし粉塵が爆発条件に適した一定濃度で長時間滞留するはずがないので、爆発条件の濃度は良くてピークから一分程度が限界だろう。

とはいえ粉塵爆発自体を兵器として利用するのは難しいものの、「狭い空間を高密度に漂う可燃物に着火して爆破する」という近い原理でガス爆発を引き起こす兵器は既に開発されている。
燃料気化爆弾と呼ばれるこの兵器は一次爆薬の加圧によって急激に気化する可燃性物質を利用して狭い範囲に可燃性ガスを充満させ、さらにそれに着火することで一気に爆発させる。
改良型のサーモバリック爆薬搭載型は起爆のために酸素すら必要とせず、アセチレンが自己分解して気化する際のエネルギーで自己発火するようになっている

余談だが、火災でも熱よりも一酸化炭素を代表とする毒ガスで死ぬ(例え死ななくとも意識を失う)人が圧倒的に多いので、やはり火災関係は毒ガスの方をまず警戒したい。


~実戦での使用例~

主人公「ハァハァ ドサ」
敵「くくく、どうやら力尽きたようだな」
主「まだだ、くらえ」
ブン バサッ
敵「ん?小麦粉?一体なn」
主「今だ」カチッ
ボワッ
敵「なっ、ぐぁぁぁぁぁ」



主「ハァハァ ウッ フゥ(どうやらヤったようだな)」
敵「ところがギッチョン!」
主「!」
敵「あの程度の粉塵爆発で死ぬと思ったか?つか、爆発ですらねえしwwwフヒヒwww死ななくてサーセンwww」
主「! ギリッ」
敵「ブヒヒwwwもうお終いのようだなwwwさぁ、どう料理s」
ドサッ
敵「???何故だ?体が動かな…く、苦しい!」
主「どうやら本命が効いたようだな。ったく、こんな三文芝居に騙されるなんてな」シュコー シュコー
敵「本…命? 一体何を…、!それは酸素ボンベ?」
主「まだ解らないのか?粉塵爆発の時に○○(猛毒気体)が発生していたのだ!」
敵「ば、馬鹿な…!」
主 ニヤッ「形勢逆転だな」カチャッ
敵「くっ…、くそぉぉぉ!」



尤も、これでもロマンの域を出ない。



☆★粉塵爆発登場作品★☆
~タイトル50音順~

あまつき
ARMS
イコライザー2
ウルトラマンネクサス(ラフレイアの死亡原因)
火災調査官・紅蓮次郎
科捜研の女
喰いタン(原作とドラマで扱われたエピソードが異なる*2
薬屋のひとりごと
黒執事
月光条例
ゴブリンスレイヤー
ゴルゴ13
雲盗り暫平
Steins;Gate
新世界より
推理の星くん
スレイヤーズ
ダンガンロンパ/ゼロ(発生させると見せかけて、実はセメントの粉なので発生しないというフェイントのみ)
テイルズオブデスティニー2
とある魔術の禁書目録
パイナップルARMY
鋼の錬金術師(地下下水道にて。配管を分解した粉塵+水を分解した水素&酸素に着火)
BAKI
ハンターダーク(爆発によって発生した煤で光源を覆う目くらましとして使用)
ひぐらしのなく頃に
BLOODY MONDAY
ベルセルク(星から来た船と時期が近く、作中人物は「鉱山であった事故」と言っている)
ポケットモンスター(XY以降、「ふんじん」という技がある。こちらがこの技を使用したターンに相手が炎技を使うと、相手の技を無効にし大ダメージを与える。粉塵爆発を起こさせるのである)
星から来た船(作中では「炭塵爆発」とされている。実行されなかった作戦だが、トナーの粉を空調から特定の部屋に流しこむことでテロリストの銃火器を封殺しようか、という一案として挙げられている)
惑星のさみだれ(単語のみ)
MASTARキートン
マンガでわかる!空想科学ゼミナール
モンスターハンター一部のモンスターが使用。可燃性の粉塵を自ら撒き、牙を打ち当てた火花で着火)
遊戯王SEVENS
ルパン三世 天使の策略 ~夢のカケラは殺しの香り~
ロザリオとバンパイア







以下、実際の威力(想像)














ふっ はっ はっ くらえっ 双連撃!!

ザリッ 粉塵裂破衝!!チンッ☆

ベスッ ※ただの土埃です

不覚 うはっ うはっ チッ 馬鹿なっ!








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最終更新:2024年02月17日 08:54

*1 「ARMS」ではこれを逆に利用し、先に消火器で煙幕を張って見せてから室内に誘導して『また消火剤か』と思わせている。

*2 原作では粉砂糖をぶちまけた部屋で蝋燭に火を付けようとして引火。ドラマでは運搬コンテナ内に積んであった小麦粉に着火