ハーメルの悲劇

登録日:2012/02/12(日) 22:51:23
更新日:2023/09/09 Sat 16:44:04
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日本ファルコムから発売されている軌跡シリーズに登場する、事件の通称。
エレボニア帝国に存在するハーメル村が、一晩にして地図上から消えた事件。数多くの登場人物がこの事件に関与しており、軌跡シリーズを語るうえでかかせない事件である。
特にシリーズ二作目の空の軌跡SCと八作目の閃の軌跡IIIでは、この事件がシナリオの根幹をなしている。

ちなみに、「ハーメル」の名前自体はシリーズ一作目である空の軌跡FCに登場し、以降に発売された作品で順次事件の概要や真相が語られた。





以下、ネタバレのため注意。










概要

ハーメル村は、もともと帝国南部のサザーラント州、リベール王国との国境近くに位置する小さな村であった。
しかし、七耀暦1192年4月23日の夜、突如として村人のほとんどが死亡。原因は山津波と発表され、村に至る道は安全のためすべて封鎖されてしまった。
その後、徹底した情報管理が敷かれたこともあり、人々からは「ハーメル」という名前すらもが忘れ去られていった。

なぜ、ここまで徹底した情報管理が行われたのか。
それは、ハーメル村を襲った悲劇の真実を隠蔽するためであった。
そしてその真実とは、

リベール侵略の口実をつくるため帝国軍の主戦派が企てた、自作自演の村人虐殺というものであった。


事件発生までの経緯

そもそもの発端は、帝国軍内部に存在した派閥争いである。もともと、エレボニア帝国には厳格な貴族制が存在しており、帝国軍においても貴族出身の将校が大きな発言力を持っていた。
しかし、当時はすでに軍の将校には平民出身の者が多く、彼らの発言力が高まっていた。自らの権勢が脅かされていたアランドール准将を始めとする貴族派将校たちは、その打開策を軍事的成功に求め、対外戦争を主張していた。
そこで目をつけられたのが、国境を接する小国リベール王国とリベールの近くに位置したハーメル村であった。彼らは自国の村を襲撃させその罪をリベールになすりつけることで、戦争の口実を作り出し、小国リベールを相手に戦争を仕掛けようと考えたのである。

そんな中、帝国軍のギリアス・オズボーン准将が貴族派将校の中に不穏な動きがあることを察知。彼は、平民出身で上官や部下からの信頼も厚く、平民出身の若手将校たちのリーダー的存在であった。オズボーンは、帝国軍内部で対立することをよしとせず、あくまで同胞として貴族派将校たちに陰謀をとどまるよう説得を行った。
しかし、その成果は最悪な形で現れた。貴族派が雇ったと思しき武装集団がオズボーンの自宅を襲撃したのである。この襲撃により、オズボーンの妻カーシャが死亡、重傷を負ったと思しきオズボーン本人とその息子リィンは行方不明となった。

かくして、邪魔者を排除した貴族派将校たちは、いよいよ陰謀の実行に乗り出した。


事件経過

七耀暦1192年4月23日の夜、猟兵崩れと思しき謎の武装集団がハーメル村を襲撃。彼らはリベール王国軍と同様の装備で武装していた。
彼らは一方的な虐殺を行い、住人は殆どが殺害され、女性の中には殺されるまでに性的暴行を受けた者も多くいた。

また、襲撃される村人の中にはヨシュア・アストレイとその姉カリン、そしてカリンの恋人レーヴェの3人の姿があった。
遊撃士を目指しており武術の心得があったレーヴェは、恋人とその弟を逃がすため猟兵崩れの一人と交戦し、なんとか撃退。
始めて人殺しをした事実に恐怖しながらも、なんとか生き延びる。

一方カリンとヨシュアは包囲網の緩い箇所を狙って村からの脱出をはかるも、見張っていた猟兵崩れの一人に遭遇してしまう。
カリンが襲撃者に性的暴行を加えられそうになるのを止めようとしたヨシュアは、地面に落ちていた導力銃を広い襲撃者に発砲する。
なんとかカリンを救い出すことに成功したヨシュア。しかし、致命傷を与えるには至らず、猟兵崩れが逆上してヨシュアを殺そうとする。
それをカリンが身を挺してかばい、その隙をついてヨシュアは二度目の発砲を行う。
レーヴェが駆け付けたとき、その場にはカリンと猟兵崩れの遺体、そしてそのそばで呆然とするヨシュアの姿があった。


事後処理

村人虐殺をリベール王国によるものと断定した帝国軍は、リベールに対し宣戦布告。かくして、のちに「百日戦役」と呼ばれる戦争が開戦した。
当初、兵力において圧倒的に勝る帝国軍は、王国軍を圧倒。一時は王都グランセルとレイストン要塞を除く、王国全土の制圧に成功する。
しかし、リベールのラッセル博士によって世界初の導力飛行艇が発明されると戦況は一変。王国軍は、カシウス・ブライト大佐が考案しモルガン将軍が実行した電撃作戦によって、帝国軍を各個撃破していった。

そんな中、帝国軍上層部において、さきのハーメル虐殺が貴族派将校による自作自演であったことが発覚。帝国そのものを揺るがしかねない事実に、上層部は動揺する。
そこへ、行方不明となっていたオズボーンが突如として姿を現す。彼は上官であったヴァンダイク元帥の仲介を経て、皇帝ユーゲントIII世に謁見。事件解決の全権を任せられることになる。

手始めにオズボーンは陰謀の首謀者であった、アランドールを始めとする貴族派将校らを捕縛。極秘の軍事裁判のすえ、処刑した。
次にリベール王国の女王アリシアII世と停戦交渉を開始。ハーメルの件を公表しないかわりに帝国軍を撤退させることを持ち掛ける。
当時、リベールにおける戦況は王国軍に傾きつつあった。しかし、いまだ帝国本土には大軍が控えている。両国の国力の差を冷静に考慮したアリシアは、その条件をのみ停戦交渉は成立。百日戦役は終結し、ハーメルの悲劇は闇に葬られることとなった。

以後、オズボーンを始めとする帝国政府はハーメルに関する情報管理を徹底する。その甲斐あって、人々の記憶からハーメル村は次第に忘れ去られていった。
10年以上たった閃の軌跡IIIの時系列では、近郊の町も含めた人々のほとんどが、そこに村があったという事実すら忘れてしまっている。

なお、ハーメル村を襲った猟兵崩れの連中達は、閃の軌跡IIIでフィーが小さい頃にルドガーから聞いた話に寄ると「一つの村を滅ぼした外道たち」として知られ、しばらくして皆殺しにされたとの事。
首謀者達が口封じの為に行ったか、オズボーン主導の下で事実上の死刑判決を受けての結果か…どの道行った所業を考えればある意味当然の末路ではあるが。

背景

侵略口実のための軍主謀による自国民の虐殺。普通ならばリスクの大きさや理性によって、押しとどめられてしかるべきものである。しかも、これらを計画・実行した貴族派将校たちは、人格や精神に大きな問題があるわけでもなく、いわばどこにでもいる平凡な人間であった。
なぜこのような陰謀が発案されたのか。そして、なぜこのようなおぞましい陰謀が実行にうつされたのか。その原因は大きく2つあった。

1つは、この自作自演の虐殺計画を提供した人物、結社《身喰らう蛇》に所属する《白面》のワイスマンの存在である。
暗示にも精通し人を操ることに長けた人物である彼は、貴族派将校らに接触し今回の計画を示唆した。

もう1つは、この帝国を蝕む「呪い」の存在である。
1000年も前に至宝をめぐる争いの末帝国に誕生したこの「呪い」は、とりついた人物たちの理性のたがをはずすものであった。
そして、人々の暴走を引き起こし、帝国史に暗い影を落としてきたのである。
今回この「呪い」に貴族派将校たちは侵されており、そのために理性を失いワイスマンの甘言を享受することとなったのであった。
そしてこの「呪い」は、新たな寄生先を見出し、次の悲劇を引き起こすこととなる。


関係者


陰謀の首謀者及び実行者

  • アランドール准将
もともと、彼は貴族とは名ばかりで爵位も持たぬ騎士階級であった。また、凡庸な人物であり、このような大それた陰謀を企てる性格ではなかった。
しかし、「呪い」に侵されたことにより暴走、この陰謀を実行に移してしまう。
事件後は「呪い」から解放され、正気を取り戻した模様。一人息子に謝罪しながら、処刑された。

彼の一人息子であるレクターは、生来持っている直感によってハーメルの事件の全貌を察知していた。
そのため、貴族勢力によって口封じされる予定であったが、彼の能力に興味を持ったオズボーンに救い出される。
以後、レクターはオズボーンの子飼いの部下《鉄血の子供達》として、その野望達成に貢献していくこととなる。
  • ゲオルグ・ワイスマン
貴族派将校たちを唆して、この陰謀を実行させた黒幕。
事件後、彼は遺児の一人であり心が壊れてしまっていたヨシュアに接触。その心を弄り回し、自らに玩具兼手駒の暗殺者に仕立て上げた。

被害者

  • カリン・アストレイ
前述のように、襲撃者からヨシュアをかばって死亡する。彼女の死はヨシュアとレーヴェのその後の人生に大きな影響を与えることとなる。
  • ヨシュア・アストレイ
この事件で、姉を失い、心に大きな傷を負う。そのうえ事件の真実を知ってしまったことで、心が完全に壊れてしまう。
それ以降、彼は言葉を失い、飲まず喰わずで姉の遺したハーモニカを吹くだけの日々を送る。
そんな彼らの前にワイスマンが現れ、「ヨシュアの心を治してあげよう」と持ち掛ける。
レーヴェでは日に日に衰弱するヨシュアに手の施しようがなかったため、やむを得ずレーヴェはワイスマンにヨシュアをあずけることとなった。
ヨシュアはワイスマンによって内面を好き勝手に作り変えられ、作り物の人格を得た代わりに様々な殺しの技術を仕込まれていく。
やがて、彼はかつての穏やかな性格からは想像も付かない人間兵器へと変貌。数多くの人命を奪った果てに、執行者No.ⅩⅢ《漆黒の牙》となった。

彼が人間としての心や生き方を取り戻し始めるのは、事件から数年後、とある少女との出会いまで待つことになる。
  • レオンハルト
ヨシュア同様、大切な人を失った挙句、事件の真実を知ったことで世界に絶望する。
そんな中、結社のカンパネルラが彼に接触。この世界は今も昔も欺瞞に満ちていること、そしてその欺瞞を暴くための計画が存在することを教えられる。
その話を聞いた彼は、その計画「福音計画」に参加することを決意し、結社に加入。執行者No.Ⅱ《剣帝》となり、人の道を捨て修羅として裏の世界を生き、その名を馳せていくこととなる。
  • アッシュ・カーバイド
長らく存在が明かされていなかった3人目の遺児。
本名はヨハンでジャンとエミリアの息子。パンプディングが好物だった。
ヨハンはヨシュアより3歳下だったので、あまり一緒に遊べなかったが、赤ちゃんの頃から面倒を見ていたとヨシュアが言っていた。そのためか、カリンがヨハンを抱っこしている一枚絵がある。
事件当日、血だらけで気絶していた。ヨシュアとレーヴェはヨハンが生きていることに気が付かないまま、逃げて行ってしまった。
直後、村を一人でさまよっているところを、たまたまパルムのほうの街道にいた当時行商人だったミゲルに連れ出される。
その後、鉄血宰相が主導していたハーメルの悲劇の隠蔽工作の一環で軍関係者から拾った子供を手放すように脅されていた。
ミゲルは二つ返事でミラを受け取り、拾った子供をラクウェルの水商売の女性に預け、アッシュはそこで育てられた。

事後処理の関与者

  • ギリアス・オズボーン
隠蔽工作を完璧に行い停戦をわずか10日で実現させた彼は、その功をもって、史上初の平民出身の帝国宰相に任じられた。
以降、平民が主導権を握った帝国軍を支持基盤として、大胆かつ強引な改革を推し進めていく。

もともと有能な人物であったが、事件後は能力・雰囲気ともに怪物じみたものとなっており、事件前後で人柄が変貌したことが示唆されている。
IVでドライケルスの生まれ変わりだったこと、事件の際に《黒の騎神》イシュメルガの起動者となったことが明かされたが、結社との関係は曖昧にぼかされている。

  • ユーゲントIII世
オズボーンに事件解決の全権を託した。
戦争終結後は、ある意味で同じ境遇の同志ともいえるオズボーンを宰相に任じ、彼に政策を一任する。
  • ヴァンダイク元帥
開戦から3カ月後、部下であるオズボーンを皇帝に謁見させた。
  • アリシアII世
ハーメルについて口をつぐむ条件をのみ、帝国と停戦した。
しかし自国の安全のためには仕方なかったとはいえ、罪無き村への非道に口をつぐまねばならなかったことを、現在も後悔し続けている。


残された謎

  • オズボーンの真実
オズボーンが行方不明になってからヴァンダイク元帥のもとに現れるまでの間、いったい何があったのかは元帥やオズボーンの部下だったクレイグ将軍にもわかっていない。
この空白の3ヶ月の間に、結社や黒の工房との接触があったと思われるが、この辺は閃の軌跡Ⅳでも明かされることなかった。


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最終更新:2023年09月09日 16:44