葵の上

登録日:2009/11/11(水) 23:56:20
更新日:2023/03/09 Thu 07:16:04
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◎葵の上(あおいのうえ)

源氏物語の登場人物。

源氏物語の主人公である光源氏の正妻。
父は左大臣、母は桐壺帝の妹・大宮で、光源氏から見ると従姉にあたる。
光源氏の親友でありライバルでもある頭の中将は彼女の実兄。



父親は朝廷の実質的なトップである左大臣、母親は時の天皇の妹という生粋のお嬢様。
元々、東宮妃にと望まれていたためかプライドが高く、年下の光源氏になかなか馴染まなかった。
光源氏と葵の上が結婚した時、光源氏は元服したての十二歳、一方の葵の上は四歳年上の十六歳。
文句のつけようのない高貴な血筋と、美貌と才能から、皇后の座さえ狙えた葵の上にしてみれば、父親の意向とはいえ四つも年下の光源氏との結婚を不満に思うのも当然かもしれない。
光源氏もそんな葵の上に馴染まず夫婦仲は疎遠だった。
その結果、光源氏と葵の上は以後十年近くも仮面夫婦状態を続けることになる。

然し、第三者から見るとこの縁談、政略結婚の皮を被った善意の縁談である。
桐壺帝「有力な外戚が居ない息子の後見を妹夫婦に頼みたい」
左大臣「娘が東宮妃になったら弱い者虐めをする弘徽殿の女御が姑になる」
と、双方共に我が子の幸福を真摯に考えた結果、光源氏と葵上の縁談を取りまとめたのだ。
そもそも、光源氏の母も、唯一の有力な親族であった父・大納言が死んで、弘徽殿の女御に苛め抜かれた末に身体を壊して死んだのである。*1
有力な後見人の居ない貴族の不安定な立場と、天皇が止めに入ろうとしても巧みに虐めを繰り返す弘徽殿の女御の陰湿さ・冷酷さを桐壺帝も左大臣夫妻も理解しているので、我が子と甥姪の将来を真面目に考えたら、東宮よりも光源氏と葵上を結婚させた方がマシと結論付けるのも当然である。

彼女の兄である頭の中将は、光源氏とは良き親友でありライバルだったこともあり、何かと二人の仲を取り持とうと尽力していた節がある。
それがあったからこそ、政略結婚の側面があったとはいえ、どんなに夫婦の仲が冷え込もうとも別れるまでには至らず、二人の縁は長く続いた。
その時間こそが、葵の上をツンからデレへと変えるのに必要だったのだろう。

作中ではいつも光源氏にそっけない態度を取り、彼に他の女に走らせる言い訳をくれてやっているような葵の上だが、名前の由来であり彼女がヒロインを務める巻名『葵』では、光源氏の子供を妊娠し、侍女たちから賀茂神社の葵祭に光源氏が加わると聞き、周囲の勧めもあってその姿を見るために混雑の中を見物に訪れている。
昔の彼女だったらこのように自分の光源氏への好意を外に見せるような行動は絶対に取らなかったはずだ。
ここに至るまで実に結婚から十年近くかかっているが、さすがにこれだけ時間をかければ葵の上のツンツンぶりも角が取れ、多少はデレが見えてくるというわけか。

もっとも、この祭り見物の際に光源氏の愛人である六条御息所と見物場所を巡ってトラブルが発生。
葵の上の側が正妻の威光と親の権力で六条御息所から強引に場所を奪い恥をかかせたことで、結果的に六条御息所の恨みを買ってしまい、六条御息所がヤンデレパワーで生み出した生霊に祟られ苦しめられることに…。
その結果なんとか息子である夕霧を産むも、その直後に命を落す。

ツンデレもデレるタイミングを間違えると幸せにはたどり着けないということだろうか。



A葵上(あおいのうえ)
源氏物語の「葵」巻をもとにした能。


B葵上(あおいのうえ)
三島由紀夫の「近代能楽集」に収められている戯曲。

C葵上-あおいのうえ-
アニメ「喰霊-零-」第1話のサブタイトル。
放映開始前、公式ページなどでは原作に登場しない特戦四課のキャラクターが紹介され、このメンバーたちの活躍を描くかのように思われた。
そして第1話放映。
確かに中盤まで悪霊を倒す特戦四課の姿が描かれていた。
だが、悪霊を倒し終えて一息ついていた特戦四課の前に、諫山黄泉が突如現れメンバーを次々に惨殺していくという衝撃的なラスト。
黄泉のセリフ「諦めてって…言ったでしょ?」や、曲もなく炎が燃えるパチパチという音だけのEDなど大きなインパクトを与えた。


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最終更新:2023年03月09日 07:16

*1 加えて言うと、光源氏の母は元々「そこそこの貴族の奥方になるより、帝の皇子を産んで立派に育てる方が家と亡き父の名誉になる!」というガッツ溢れる性格である。その彼女が命を失う程の虐めの壮絶さは想像するのも恐ろしいし、光源氏の外祖母も亡くなる前に桐壺帝が虐めから娘を庇い切れなかった恨み言を遺している。