ジョジョの奇妙な冒険 Part3 スターダストクルセイダース

登録日:2012/09/27 Thu 15:13:34
更新日:2024/02/11 Sun 21:10:01
所要時間:約 16 分で読めます




見えたか? 気付いたか?
こ れ が 悪 霊 だ








【概要】

荒木飛呂彦のロマンホラー漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の第3部。
サブタイトルは『空条承太郎 ―未来への遺産』。また、ジョジョの初期構想では『スターダストトラベラーズ』というタイトルだった。


当初3部作構成を想定していたジョジョの完結編として予定されていた部。これにてジョースター家とディオの因縁はひとつの決着を見るに到る。
逆に考えれば、第3部がジョースター家とDIOの新たな因縁のスタートラインとも言え、
以降の部は(宇宙が一巡するまでは)第3部の外伝と捉えられなくも無い。

舞台は現代日本(連載当時の1980年代)に移り、主人公もごく普通の高校生である。
同時に波紋に代わる超能力を『絵』で表現する(いわゆる擬人化)という新たな能力『幽波紋(スタンド)』(後述)の誕生により、
ジョジョという作品内に留まらず『能力バトル』というジャンルにおいて多くの作品に影響を与えていくことになる。

個性的な仲間たちと共に旅をする展開は当時流行のRPGを彷彿とさせ、ジャンプ作品らしい明快な王道を感じさせる構成となっている。
それに伴い、主人公が一極で活躍していた従来の部と異なり、適材適所の長所を発揮して仲間同士の連携で危機を切り抜ける団体戦の要素も強まっている。

当時はまだカルト的人気だったジョジョが一躍ヒット作になったきっかけとなった部で、全シリーズでも随一の人気や知名度を誇る。
主人公の承太郎はジョジョシリーズの代表キャラクターとなり、ドラマCD/カセットブック、ゲーム、小説、アクションフィギュア、アニメ(OVA・TV。前者は後述する問題が……)
と他メディアとのリンクの機会もジョジョでは最も多い。



【回収騒動】

上述のOVA版を違法アップロードしたものがインターネット上で閲覧可能だった。
これだけならよくある話なのだが、2008年5月、それが原因で外交問題になりかけた事がある
劇中で悪役が読んでいたアラビア語の書物がたまたまコーランだった事、それをたまたまイスラム教徒が視聴してしまった事で、
「コーランを読む者は悪党だと言うのか!」とネットを中心に抗議や反日運動が展開されてしまったのだ。
この一件に、イスラム教スンニ派の最高権威機関・アズハルの宗教勧告委員長アトラシュ師も正式に抗議のコメントを表し、
テロを仄めかす書き込みまで見受けられるようになった。
日本では1991年に、イスラム教を批判する内容の小説を翻訳した筑波大学の助教授が、
実際にイスラムの手によって暗殺される事件が起きていた事(悪魔の詩事件)もあり、
事態を重く見た集英社は公式に謝罪声明を出し、以下の措置をとった。

  • OVAの販売及び公式配信中止、流通分の回収
  • 第3部(単行本12巻から28巻までと文庫本)および画集2冊の回収
  • 上記回収後、イスラム教を連想させるコマを全て描き直して再販(第3部は中盤以降ずっとイスラム圏を旅しているので、修正箇所は多岐に渡る)
  • OVAと同じくA.P.P.P.が製作した第1部劇場版のソフト化中止(劇場公開から今回の騒動の間にDVD発売は発表されていなかったが、公開から1年以上経過しても映像ソフト化されてなかったため、当時から事実上の封印作品となっていたのではという指摘は少なくなかった)

このような早期の謝罪、対応が功を奏したお蔭で、大事に至る事無く現在まで至っている。
現在流通している単行本は、上述の回収後に修正された物なので、もし暇があったら見比べてみると面白いかもしれない。
実は作者のミスで、一ヶ所だけ修正前と後とで次ページのコマとの繋がりが不自然になった箇所があるので、間違い探しの要領で探してみてほしい。

もっとも、2012年に1・2部、2014年に3部がテレビアニメ化された影響で、
BOOK OFFなどの古書店から中古本が大量に消えてしまったため、修正前の版を入手する事は少々難しくなってしまったかもしれないが。


【あらすじ】

第2部にてジョセフが柱の男の脅威から世界を救ってから、およそ50年の年月が経った現代(1987年)の日本。
ジョセフの孫、空条承太郎に突如奇妙な能力が発現する。来日したジョセフから、
承太郎が『悪霊』と呼ぶそれは、生命エネルギーの生み出す力あるビジョン『幽波紋(スタンド)』であること、
その発現が100年前にジョナサン・ジョースターにより倒されたはずのディオ・ブランドー=DIOの復活の影響によるものであることが明かされる。
復活したDIOはジョースターの血統を根絶やしにするべくスタンド使いの配下を差し向け、
時を同じくして承太郎の母・ホリィにもスタンドが発現。闘争心を持たぬ彼女はその影響で危篤状態に陥ってしまう。
ホリィの死まで50日、この呪縛を解くには元凶であるDIOを倒すしかない。

承太郎とジョセフはジョセフの友人アヴドゥル、DIOの洗脳から開放された花京院・ポルナレフら仲間たちと共に
DIOの潜伏するエジプト・カイロを目指し旅立つのだった……



【用語】

☆『幽波紋(スタンド)
詳細はリンク先にて。
第3部の時点ではまだ未分化・未発達な印象が多く、特にこれといった能力が無かったり、規模や内容が非常にアバウトだったり、
ビジョンが単純な怪物然としたものが多いのが特徴。
また、スタンド名は以降の洋楽モチーフのものはティナー・サックスとクリームの二つのみで、
タロットの大アルカナとその起源とも言われる『エジプト九栄神』由来のものがほとんどとなっている。

☆『DIO』
100年の時を超え甦った邪悪の化身。初代JOJO、ジョナサンの首から下の肉体を乗っ取り、
新たにスタンド能力に目覚めたことで、ジョナサンに連なるジョースターの血統の者たちに大小さまざまな影響を及ぼした。
3部以降、ディオ・ブランドーの名前は用いられることなくDIOという呼称がスタンダードとなる。

☆肉の芽
信用の置けない部下を強制的に支配下におくため、脳に打ち込まれるDIOの細胞。
打ち込まれるとDIOに対するカリスマを呼び起こされ、どんな強靭な精神の持ち主もDIOの言いなりになってしまう。
それ自体が生きており、吸血鬼の一部なので日光や波紋には弱い。
植えつけられると数年で脳を食い尽くされて死に至る。摘出は可能だが、摘出しようとした者には寄生するべく襲い掛かってくる。摘出するには相当な正確さとスピードを併せ持ち、かつ肉の芽の反撃にも動じない精神が必要で、実行できるのは承太郎の『星の白金』くらいのもの。
格闘ゲーム版では超必殺技として登場。



【登場人物】


☆ジョースター一行

それぞれの思いを胸に宿敵DIOを倒すためエジプトを目指すスタンドの戦士たち。
時にはぶつかり合い、悲しき別離を味わいながらもその結束を強めていった。
一行の面々はキャラの方向性は別々だが、基本的には全員頭脳明晰であり、戦闘においては各々機転を利かす場面も多い。

スタンドに関しては、後に無敵とまで称されたスター・プラチナをはじめとして、戦闘能力に優れたスタンドが揃っており全シリーズでも攻撃力は歴代最強の主人公チームである。
一方でスタンドシリーズの最初期ということもあって設定が固まりきっていなかったためか、スタンドの固有能力についてはあるのかないのか不明確で不安定である。
それ以外にも後の部との明確な違いとして一行内に回復役が存在しないため怪我の治癒手段がなく、重傷者は病院送りとなってしまうことが弱点としてあげられる。
よって怪我の治癒による継戦能力まで含めた総合的な戦闘力で考えると他部と明確な差はないかもしれない。

空条承太郎『星の白金』(スタープラチナ)
17歳。タフ&クールを地で行く3代目JOJOにして最強のスタンド使い。
いかなる時も取り乱すことなく大胆かつスマートにピンチを切り抜けるスタンスは『神話の英雄』、
豪快なパワーと目にも留まらぬスピード、機械以上の精密さを兼ね備えた星の白金は『バトル漫画の王道』を意識してそれぞれデザインされたもの。
とはいえこの頃は血気盛んな高校生。以降の部と比べると短気で無鉄砲な言動も多く、見返すと微笑ましい一面も。
ジョセフのことは初めの頃は「おじいちゃん」と呼んでいたが、数回呼んだ後は「じじい」呼びになる。

ジョセフ・ジョースター『隠者の紫』(ハーミットパープル)
69歳。老いてなお盛んな2代目JOJO。DIO復活の影響で彼にも物語開始から遡る事3年前に念写能力を持つスタンドが発現している。
戦闘向きでないため、活躍場面は少ないが、その豊富な経験からくる人間力と周到な手配で常に一行の旅を支え続けた陰の立役者。
誇り高き血統の継承者として、そしてひとりの父親として宿敵DIOに立ち向かう姿はまさに人間讃歌。
しかしこの時点で日本に隠し子がいる。
公式の声明は特にないが、度々負傷する一行の立場に反して後の部のような回復を担当する能力者が不在であったため
「ジョセフが波紋法で傷の治療をしてくれていたのでは?」という憶測がファンの間ではよく話題になる

モハメド・アヴドゥル/『魔術師の赤』(マジシャンズレッド)
ジョセフの友にして生まれついてのスタンド使い。スタンドに関する知識と仲間のためなら自己犠牲も厭わぬ行動力を持ったナイスガイ。
あまりにも強すぎて作者すら持て余し、戦闘のたびに退場させられる逆補正に悩まされる。
長い事年齢についてははっきりした情報がなかったが、作者によると20代後半とのこと

花京院典明/『法皇の緑』(ハイエロファントグリーン)
17歳(承太郎が遅生まれなので学校では2年生=承太郎の後輩にあたる)。
レギュラー格の登場人物ではシリーズ初の純日本人。承太郎の通う学校に転入してきたが、その正体はDIOの肉の芽に操られた刺客だった
承太郎に命を救われ、JOJOとDIO、双方に借りを返すために同行する。
繊細そうな外見に恐怖を克服する強い意志を秘めるが、それが生き急ぐ結果にもなった悲運の戦士。
儚くも熱い生き様に惹かれるファンは多い。

ジャン=ピエール・ポルナレフ『銀の戦車』(シルバーチャリオッツ)
24歳。妹を殺した『両右手の男』を追う、陽気な三枚目風の顔の裏に悲しみと怒りを隠した復讐者。
花京院同様DIOの呪縛の支配下に置かれ香港で一行を襲撃したが、承太郎に肉の芽を取り除かれたことで正気を取り戻し仲間になった。
動かしやすいキャラゆえか、活躍シーンが非常に多く、ある意味第3部裏の主役といえる人物。5部にも登場。

イギー/『愚者』(ザ・フール)
エジプト上陸直後に加わったスタンド使いの犬。
犬ながら高い知性と抜け目のない観察力を持っており、決して人間には心を開かない。
助っ人としても無理やり連れてこられただけなので基本一行の戦闘には無関心であったが、
彼がいたことで加わる偶然の要素が知らず知らずのうちに一行の命運を繋いでいることも多い。
仲間として戦うのは最終盤ではあったが、命を懸けてポルナレフを救うことに。
誇り高き野良犬の帝王らしく己の信念を最期まで貫き、散っていった。



★DIO一味

DIOを頂点に金で雇われ、また忠誠ゆえに一行を狙う邪悪なスタンド使いたち。
基本的に本体は怪しい外国人風で、不気味に登場→マヌケに退場がお約束。

●DIO/『世界』(ザ・ワールド)
邪悪な吸血鬼。ジョジョのライバルでありもう一人の主人公だった1部とは一転、
純粋な『倒すべき絶対悪』として描かれ、深遠なカリスマを漂わせるようになった。
スタンド・世界の真の能力は初見の読者を驚愕と戦慄の坩堝に叩き込んだ。
経験を積んだためか承太郎の心臓が止まってるか確認したり距離を取ったり1部の頃より行動が慎重になっている。
また1部同様に、新しい能力の研究や実験に熱心だったり、どんな手段を使ってでも生と勝利に執着している。
承太郎から正々堂々と決着をつける申し込みを拒否し、悪道から改心することは無かった。
名言・迷言や名シーンを大量に生み出しているが、「ゴールであるDIOを出すと読者の注意がそっちにしかいかなくなる」という理由から、
荒木先生は極力DIOを前面には出さないよう工夫していたとか。


エンヤ婆/『正義』(ジャスティス)
DIOにスタンドを教えた魔女にして、ポルナレフの妹の仇J・ガイルの母親。
DIOの側近的存在で以降の部でも登場するスタンド編のキーパーソン。

ホル・ホース/『皇帝』(エンペラー)
『1番よりNo.2』が人生哲学の軽い性格のスタンドガンマン。一時期仲間入りする予定もあった。

ンドゥール/『ゲブ神』
DIOに固く忠誠を誓う盲目の刺客にしてエジプト九栄神の急先鋒。承太郎が唯一敬意を払った敵。

テレンス・T・ダービー/『アトゥム神』
DIO館で執事をしている。ゲーマーであり、花京院と承太郎と魂をかけたTVゲーム対決をした。

ヴァニラ・アイス/『クリーム』
DIOを妄信する狂気のスタンド使い。全てを消滅破壊する暗黒空間を武器にポルナレフと死闘を繰り広げた。



【アニメ版】

1993年~94年にかけて、原作後半にあたるゲブ神戦~DIO戦がOVA化された。
それが好評を博したため、2000年~02年に原作前半も制作するという変則的な順番で発売された。

作画やアクションはOVAなので高クオリティ。
承太郎やDIOの声に違和感を覚えるという意見もあるが、それも慣れである。

端折られたり、改変されたシーンもあるが、それらはいずれもアニメでの見栄えを重視したが故の必然的なものであり、
漫画とアニメというメディアの違いを検討する上でも良好な教材と言える。
特に、最終戦でDIOが落とすロードローラータンクローリーになっていることは有名。
詳細はジョジョの奇妙な冒険(OVA版)を参照。


2014年には第1部・2部に続いて待望のテレビアニメ化。
4月から10月にかけて前半のエジプト到着まで、2015年1月から6月までは後半のエジプトでの戦いを描く分割4クール形式。
ほぼ原作通りだが、要所要所で原作を補完するオリジナルシーンが挿入されている。
原作未読だと勘違いするレベルで違和感が無く、原作ファンからも概ね高評価。
(例:家出少女やスージーQの出番増加、スモーキーの現在、ポルナレフとイギーの交流の増加など)
「おいスタッフ、原作を補完するアニメオリジナルを挟むなんて、よくぞ思いついた!」
「これですよ、これ!これこそアニメオリジナルの正しい使い方!こういう作風こそ良アニメです!ハハハハハハ」
なお、整合性よりも勢いを重視した一部の場面は補完がされず、それらは原作通りのアニメ化となった。
(例:承太郎が自身の攻撃で重傷を負ったDIOが地下への逃走を試みている事に気付き、それと同時にDIOに気付かれる事無く僅かな時間でマンホール下へと先回りできた経緯だったり、DIOはロードローラーをどのようにして空中に持ち上げたのかなど)
また、承太郎の喫煙はキャプテン・テニールに変装した刺客の正体を暴くきっかけにもなるためか、テレビ放送時に口の周りを影で修正する事で原作通りに放送されたが、さすがにマニッシュ・ボーイの喫煙はカットされた。



【ゲーム】

スーパーファミコンで1993年にゲーム化。制作はウィンキーソフト、発売はコブラチーム。
原作との乖離が著しいことで悪名高い作品で、特にポルナレフが本屋の店員をやっていることは有名。
ただしクソゲーの例に漏れず、BGMは評価が高い。

その後、1998年にアーケード用対戦格闘ゲームがカプコンからリリースされた。
コブラチームとは打って変わって、擬音、ポーズ、戦闘システム、演出など、原作の世界観を十二分に再現しており、
また一本の格闘ゲームとしても評価が高い。
翌年にはプレイステーションに移植された。このソフトは生産本数が少ないためにプレミアがついており、中古でも意外なほどの高値で取引されている。



【余談】

承太郎達はエジプト上陸後、スピードワゴン財団から「謎の九人の男女が、ディオが潜伏しているらしい建物に集まり、何処かへ旅立った」と報告を受けたが、ペット・ショップは鳥である事に加え、イギー以外は知らない。
また、一行はオインゴ・ボインゴ兄弟の襲撃には気付いていない事等もあり、ファンの間では様々な仮説や見方などが立てられている。
例としては、オインゴ・ボインゴ兄弟とペット・ショップを抜き、空いたポストにヴァニラ・アイスケニー・Gヌケサク或いはアブサロムミカル、書記アニを入れて九人にする、等がある。




オラオラオラララ
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オララララオラ追記・修正するのは
俺の『スタンド』だッー!!
ボッゴォーン


To Be Continued
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