警視総監

登録日:2010/03/10 Wed 02:50:57
更新日:2022/10/24 Mon 13:57:21
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●目次

警視総監(けいしそうかん)(英称:Superintendent General)は、警察法に定められた警察官の階級のひとつ。警察法第62条に定められている警察官の階級の最高位にして、東京都警察本部たる警視庁の本部長の職名でもある。定員は1名。
現職は緒方禎己氏(第99代)。


概要

各都道府県には警察業務の中枢たる「警察本部」が置かれ、それぞれ「道府県警察本部」と呼称されるが、首都を管轄する東京都に限り、「東京都警察本部」ではなく「警視庁」という固有の名称が用いられる。
同様に、道府県警のトップは「道府県警察本部長」と呼ばれるが、東京都においては「東京都警察本部長」とは言わずに「警視総監」と呼ばれる。
この警視庁のトップを務める警察官の階級及び職名が警視総監である。
道府県警のトップたる本部長の階級が警視監か警視長*1なのに対し、警視庁のトップが最高の階級である警視総監なのは、明治時代からの由緒正しき名称であることはもちろん、日本の首都たる東京都を管轄する「首都警察」であること、皇居や行政機関・駐日大使館などといった重要な施設を擁していることから、道府県警よりも別格の地位にあるからであり、広大な面積を有して単独で地方を構成する北海道警とともに管区警察局の管轄から除外されているため、警察庁直々の指揮下にある*2

ちなみに、警視庁は名前に「庁」こそつくものの、公安調査庁や消費者庁といった府省の外局や特別の機関を意味する行政機関ではなく、あくまで東京都の警察本部に過ぎないため、警視総監を「警視庁長官」と呼ぶことはないし、もちろん副総監は「警視庁次長」でもない。意味合い的には東京消防庁などと同様である。
なお、警察庁は「内閣府の外局である国家公安委員会」の「特別の機関」である。


歴史

警視総監は1874年1月15日に発足した内務省直轄の「東京警視庁」のトップを起源としており、初代にいわゆる日本警察の父・川路利良が任命された。当時は「大警視」という名称*3で、1881年1月14日に警視庁が再設置された際に「警視総監」と改められて以来、現在に至るまで使われ続けている。
内務大臣直属として内務次官・警保局長(現在の警察庁長官)と並んで「内務三役」と呼ばれた重職になっており、中でも同じ勅任官の東京府知事より俸給が多く(内務次官・陸海軍中将と同額)、警視総監の方が格上とされていた。
退任後も貴族院議員に勅選されるなど優遇されており、大蔵省や外務省ではこのようなことは滅多になかったことから見ても、いかに内務省が別格だったかうかがえよう。

敗戦後の1948年には、内務省の廃止・解体による警察組織の抜本的な改革が行われ、旧警保局の流れを汲む「国家地方警察」と、各市町村で設置した「自治体警察」がそれぞれ発足した。東京都では、旧東京市(現:東京23区)を管轄する「警視庁」と、自治体警察を設けない地域(八王子市や町田市など、現在の23区外)を管轄する「国家地方警察東京都本部」の2種類に分かれ、警視総監は前者の長として引き続き存続したが、当時は東京都知事が所管する「特別区公安委員会」が任命する東京都の公安職公務員と位置づけられるなど、法律ではなく条令を根拠とする東京都の地方公務員のような扱いであった*4
また、1948年9月からはGHQの意向で「大阪市警視庁」が発足し、そのトップが警視総監を名乗ることになり、その風潮が全国に普及して警視庁や警視総監なる存在が日本に複数出てくる事態になった。

1954年7月1日の新警察法施行により、国家地方警察と自治体警察はそれぞれ警察庁・都道府県警察へと発展する形で再出発することになった。これにより、警視総監は東京都警察本部たる警視庁トップの国家公務員、および警察官の最高階級として位置づけられた。


役職として

地位

一般職の国家公務員で、地方警務官*5である。警察官の階級としては最高の地位にあるが、さらに上位職として、階級制度の適用を受けない警察庁長官が存在するため*6、警察官全体の序列としては長官に次ぐNo.2の地位である。
ただし、日本の警察組織を管轄する警察庁のトップである長官と異なり、警視総監はあくまで「東京都警察本部長」に過ぎないため、いくら最高位といえども基本的な役割は道府県警本部長と同様であり、他の道府県に指揮命令する権限はなく、基本的には警視庁(東京都)内部に限定される。
さらに、警視監の警察庁次長(指定職6号俸*7)は長官に次ぐ警察庁No.2のポストであるため、当然ながらその権限は全国の都道府県に及んでおり、何らかの理由で長官が不在の際は警視総監を含めた全国の本部長に対して指揮命令を出すことが可能である。そのため、「地位は警視総監、実質的な指揮系統や権限は次長」がそれぞれ勝るという一長一短の関係性である。
これは検察における、最高検察庁No.2の次長検事と高等検察庁のトップである検事長(特に東京高検検事長)との関係に類似している。次長検事は法令上、検事総長に次ぐ最高検No.2のポストと位置づけられているが、実務上の序列や俸給面では東京高検検事長が次長検事を上回るNo.2になっている。また、後述するが警察庁次長が警視総監を経ずに長官に昇格するのが基本なのに対し、次長検事から直接検事総長に就任したのは清原邦一氏のみで、基本的には必ず東京高検検事長を経由している*8

俸給は「指定職7号俸」(110万7000円)が国庫から支出される。これは事務次官ないし警察庁・金融庁・消費者庁長官、会計検査院・人事院・最高裁判所事務総長、内閣法制・宮内庁次長、統合幕僚長といった「指定職8号俸」(117万5000円)*9に次ぎ、各省審議官や公正取引委員会事務総長、拉致問題対策本部事務局長、TPP等政府対策本部首席交渉官、国土強靭化推進室次長、まち・ひと・しごと創生本部事務局地方創生総括官、特定複合観光施設区域整備推進室長、経済社会総合研究所長、地方創生推進事務局長、国税庁・海上保安庁長官、防衛大学校長、陸海航空幕僚長と同等である。
階級章は左胸につける警視監以下とは違い、制服の両肩に金属の日章4個が配置される特殊なデザインになっており、識別章の役割を果たしている(警察官の服制に関する規則)。
ちなみに、刑事ドラマなどの印象から「警視総監=制服」といったイメージを持たれやすいが、実際に着用するのは自ら陣頭指揮をとる場合や式典程度で、基本的には私服勤務であるという。


任務

警視庁のトップとして、東京都公安委員会の管理に服し、庁内の事務を統括し、職員を指揮監督する。また、警視以下の警察官およびその他職員を都公安委員会の意見を聞いて任免するほか、都公安委員会は警視総監に対し、職員の懲戒または罷免に関して必要な勧告をすることができる。また、特に必要があるときは各部課に対して、臨時にその部課の所掌に属しない事務を掌理させることもできる。
職員がその職務を遂行するに当たって法令または条例の規定に違反したり、職務上の義務に違反ないし職務を怠ったり、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行があったりした場合は、速やかに事実を調査し、事実と確認された場合は都公安委員会に対してその結果を報告しなければならない。
これに関連して、毎年度観察実施計画を作成して都公安委員会に報告し、4半期ごとに最低でも1回は監察実施状況を報告するほか、警視庁職員の懲戒事由に関わる事案について都公安委員会への報告が義務づけられている。
それ以外にも、部・課・部の附置機関・警察学校・方面本部・犯罪抑止対策本部・人身安全関連事案総合対策本部・サイバーセキュリティ対策本部・オリンピック・パラリンピック競技大会総合対策本部・警察署に配置する職員の定員の決定、警察署の分課およびその他内部の事務分掌についての決定、副署長を置く警察署の決定、緊急時における都公安委員長に対する都公安委員会の臨時会議の開催要請、重大事件の指揮命令、知事部局との折衝、議会答弁などの権限を持つ。


任免

任免には国家公安委員会が都公安委員会の同意を得た上で、さらに内閣総理大臣の承認が必要になっている。道府県警本部長は道府県公安委員会の同意を得て任免されるが、警視総監は「日本の首都東京を守る警視庁の長」であるという観点から、総理の承認も要している。また、都公安委員会は国家公安委員会に対し、警視総監の懲戒または罷免に関して必要な勧告をすることができる。
警視庁のトップではあるが警察庁で採用された国家公務員という扱いであり、実務上は警視庁への出向という形で就任している。そのため、東京都で採用された地方公務員ではなく、海外の警察とは違って東京都知事や都公安委員会の直接的な指揮下にも置かれていない。それゆえに両者の権限による任免や懲戒処分・勧告も不可能であり、必ず国家公安委員会が行っている。
これは警視総監を含めた本部長をはじめ、副総監 / 副本部長・部長・参事官・方面本部長・主要課長・首席監察官・警察学校長・大規模署長といった重要職を担う地方警務官全てに共通する事項になっており*10、国家公安委員会が都道府県公安委員会の同意を得て任免するため、都道府県知事や都道府県公安委員会には権限がない。制度上、都道府県公安委員会には拒否権があるため、人事案に同意しないことは当然に可能であるが、実務上は一度も例がない。
さらに、建前上は国家公安委員会が任免するといっても、実際には地方警務官の人事は国家公安委員会の管理のもとで長官が掌握していることから*11、報道では警察庁人事として報じられており、幹部人事・運営ともに警察庁の強い影響下にある国家警察色の濃い現状が垣間見える。
なお、警察官の給与支払者は階級を問わず都道府県知事である。

前職としては、主に長官官房長(前身の警務局長含む)や局長から就任する例が多い。後者は警備・刑事局長が多いが交通・生活安全局長からの就任例もあり、過去には警察大学校長や近畿管区警察局長からの昇格もあった*12
次長は基本的に次期長官のポストと定められていることや、人事上の慣例*13もあって警視総監に就任する例は一見少ないように見えるものの、実際には第70代土田國保氏・第73代下稲葉耕吉氏・第75代鎌倉節氏・第77代仁平圀雄氏・第79代吉野準氏・第80代井上幸彦氏・第95代三浦正充氏・第99代緒方禎己氏の8人が該当しており、むしろ旧警務局長と並んで1位タイなので決して少なくなく*14、必ずしも次長が次期長官になるとは限らない。
このように、いくら警視庁のトップといっても実際には警察庁幹部からの就任が多く、警視庁内部から昇格したケースは、現行法においては第69代の槇野勇氏と第97代の斉藤実氏が副総監から就任した2例にとどまる。
副総監以外では、第64代小倉謙氏と第65代原文兵衛氏が警務部長から、代理を務めた古屋亨氏が総務部長から就任しているが、いずれも現行法施行後10年以内の黎明期に限った話であり、近年では部長からの昇格例は全くない*15
定年を迎えた後は治安維持の手腕を買われ、国防を除いた危機管理を担当する内閣官房直属の内閣危機管理監に任命されることが多いほか、宮内庁に移って次長→長官を務めることもある。
出身大学はやはり東京大学法学部(一部は経済学部)卒が大半で、それ以外は京都大学法学部卒がわずかにいる程度である。

ちなみに、現行の警察法の政府案においては、警察庁は総理府(現:内閣府)の外局として、かつての防衛庁のようないわゆる大臣庁という位置づけで設置され、警視総監の任免は国務大臣である警察庁長官が総理所管の国家公安監理会の意見を聞いて行うことになっており、都公安委員会は長官と国家公安監理会に対し、警視総監の考課を具状し、罷免・懲戒を勧告し得るという構想になっていた。
また、警視総監は警察庁次長とともに新設の階級である警視監が就任するとされていた。

法律上の規定はないため、ノンキャリア(推薦組*16含む)・準キャリア・他省庁からの出向者・技官が警視総監に就任することは理論的には可能である。実際に、一部の小規模県警においてはノンキャリア(推薦組)・準キャリア本部長*17をはじめ、人事交流の一環で出向してきた経済産業省・財務省・外務省の官僚や警察官ではなく技官として採用されたキャリアの本部長が一時的に警察官の階級を与えられる形で誕生しているほか、創作でも『有閑倶楽部』の松竹梅時宗のように叩き上げで就任する例がある。
もっとも、前述したように警視庁は道府県警よりも別格の地位で「首都警察」という重責を担うことから、実務上は現在に至るまで例がなく、実質的には警察庁に入庁してさまざまな経験を積んできた生粋のキャリア警察官が着任する指定席になっている。
戦前はその職務柄、都道府県知事や内務官僚といった非警察官が就任するケースが多く、再任された人も一部いたが*18、現在は警察法において「警察官をもって充てる」と定められており、さまざまなキャリアを積んだ定年間近の人が就任することから、任期も1~2年程度に限られている。
ちなみに、官房長や局長以下の幹部とは違って警視総監の定年は長官・次長と同じく特例で2年長い62歳になっており、定例で天皇に進講をするほか、交代時は後任者ととともに皇居に招かれ、天皇陛下が出席して「お茶」を供される。
退職後は70歳以降の春秋叙勲で、長官だった人と同じく瑞宝重光章を授与される。

現在に至るまで、3人(土田氏・前田健治氏・矢代隆義氏)の懲戒処分が確認されている。いずれも戒告処分だが、警察の威信に関わる重大な事件であり、特に土田氏は「警視庁開闢以来の不祥事」とも称される事件だったため、引責辞任する事態に発展した。


警視総監表彰

道府県警本部長による「本部長表彰」と同様に、多大な功労を残した警視庁職員及び東京都民に対しては、警視総監から表彰が行われる。大きく分けて、職員や部署に対する警察功績章・賞詞・賞状・賞誉、民間人に対する感謝状がある。
これらは「警視庁警察表彰取扱規程」で定められている。厳密には表彰と賞は区別されるが、一般的にはこれらを総称して「警視総監賞」と呼ばれることが多い。

警察功績章:職員として特に顕著な功労があると認められる者に対して、退職時に行う表彰。警察勲功章警察功労章に次ぐ第3位の警察表彰。受章者本人に限り終身着用することができ、本人が死亡した場合は遺族に交付される。ただし、表彰者が禁錮以上の刑や懲戒免職になった場合は返納させられるほか、警察職員としてふさわしくない非行が見られた場合にも、着用停止か返納が義務づけられる
賞詞:職員として多大の功労があると認められる者に対して行う表彰
賞状:警察職務遂行上、顕著な業績があると認められる部署に対して行う表彰
賞誉:職員として功労があり若しくは成績が優秀であると認められる者に対し、または業績が優秀であると認められる部署に対して行う表彰
感謝状:警察上の功労があると認められる部外者またはその団体に対して行う表彰

いずれも、表彰者が表彰前に死亡・退職した場合は生前ないし退職の日に遡って表彰されるほか、表彰者が表彰前に刑事事件での起訴や懲戒処分など、表彰することが不適当と認められる事態が生じた場合は表彰を行わないことができる。


警察庁長官との比較

警視庁と警察庁を混同する人が多いのと同様に、警視総監と警察庁長官を混同する人も多いと思われるが、上記の通り一言でいえば警視総監は「東京都警察本部たる警視庁の本部長」、警察庁長官は「日本の警察を監督する警察庁の長官」であり、警視庁と警察庁の違いが分かればそれほど難しい話ではない。
一般企業で例えるならば警視庁は「東京支社」、警察庁は「本社」で、同様に警視総監は「東京支社長」、警察庁長官は「代表取締役社長」に相当する。

警察官の序列上、警視総監は長官よりも下位に位置するのは前にも述べたところで、道府県警本部長と同様に「警察庁の所掌事務」について長官の指揮監督を受ける。一例として、内閣総理大臣が国家公安委員会の勧告にもとづき、一部の都道府県か全国に対して警察法71条による「緊急事態」の布告を発した場合、総理が一時的に警察を統制し、その指示のもとに長官は布告された都道府県を管轄する警視総監や本部長に対して指揮命令を出すことが可能になるほか、布告区域以外の都道府県警察に対しても布告区域やその他必要な区域に警察官を派遣することを命ずることもできる。
ただし、あくまで「警察庁の所掌事務」に関することに限られる。警察庁はあくまで日本の警察を統括する行政機関に過ぎず、都道府県警察のような捜査機関ではないため、いくら長官といえども建前上は個別の事件捜査に関与することはない*19

一方で、「キャリア警察官の最終目標」という点では、全警察官の頂点にして他省の事務次官に匹敵する長官と、最高の階級にして首都警察たる警視庁を統括する警視総監は、いくら組織図上は長官の方が上位とはいえ、出世コースのゴールという点では同格の立場になっており、キャリアたちはこれらの職を目指して日々過酷な出世争いを繰り広げている。そのため、次長が次期長官になるのが慣例になっており*20、警視総監から長官に昇任することも、長官から警視総監に異動(実質的には降格だが)することもない。
よって、警視総監と長官の両方を歴任することは原則として不可能であり、自由に選択できないとはいえ、2つに1つしか選ぶことのできないポストである*21
上記のように警視総監は前職が幅広く、次長・官房長・局長をはじめとするさまざまな役職から昇格しているが*22、長官は基本的に必ず次長から昇格するため、警視総監のように官房長や局長の立場から次長を飛び越えて就任した例はない。

ちなみに、あくまで「日本の警察を統括する警察庁」の「長官」という命名法則や中央省庁のひとつであるという環境、警察制度の企画立案といった業務から、よくも悪くも事務的・官僚的・政治的な側面が強い長官に対し、「警視総監」という単なる「東京都警本部長」に留まらない特別な名称と、約40000人以上(警察庁職員の数は約8000人程度)という日本最大・世界有数の職員を束ね、日本の首都東京の治安と秩序を守る大規模な実働部隊を指揮できる警視総監の方が魅力を感じる人は少なくない模様。
テレビ朝日のテレビドラマ『桜の塔』ではこれが顕著で、登場人物の多くが「警察官の頂点」である警視総監の椅子を目指して邁進する一方、序列上の最高位である長官を志す者はほとんど見られない。

なお、内閣危機管理監は基本的に警視総監経験者から任命されるのが慣例になっており、長官出身者が就任した例はない。同様に宮内庁次長→長官も警察庁からは警視総監経験者が多いが、他方で内閣官房長官を助ける内閣官房副長官の事務担当は、警察庁からは長官経験者が多く、警視総監出身者が就任した例はない。
一方、同じく当初より警察庁(旧内務省含む)からの指定席である内閣情報調査室のトップである内閣情報官は、前身の内閣情報調査室長時代には政令を根拠とする一般職国家公務員だったが、1998年に法律を根拠とする特別職国家公務員に昇格し、2001年に内閣情報官に名称が変わってからは事務次官や各庁長官などと同等の立場に引き上げられている。
このため、過去には室長を経験後に警視総監に就任した例があったものの、現在では警察庁長官級の地位に向上したことにより、内閣情報官を経て警視総監に就任するというのは事実上の降格人事になっている。
また、逆に警視総監を経験後に内閣情報官に就任したケースは室長時代を含めて存在せず、警察大学校長など主に本庁局長級の役職からの就任が多い。

刑事ドラマなどの創作においては、警視総監は制服・長官はスーツで登場する場合が多い。逆に私服姿の警視総監や制服を着用した長官はあまり見られない傾向にあり、やはり「警視総監=警察官のトップ」という印象の一因になっているとも取れる。


消防総監との比較

東京消防庁のトップにして消防士の最高階級である「消防総監」とは似ているが、警視総監は「地方警務官たる国家公務員」であるのに対して、消防総監は「東京都の地方公務員」である点で異なる。
これは、警察が国家や都道府県主体で行われるのに対し、消防は各自治体主導で行われるからである。
両者とも大まかに言えば東京都の行政機関のトップである点で共通しているが、消防総監はあくまで都の内部組織である東京消防庁の長に過ぎず、俸給も都の主要局長と同等クラスで、都知事の権限で任免や処分ができる。一方、警視総監は警視庁のトップでありながら身分上は政府機関たる警察庁の国家公務員で、俸給も上記の通り各省審議官などと同額になっているほか、都知事の権限での任免や処分は不可能であるなど、実際には似て非なるものになっており、国家公務員と地方公務員の立場関係を考慮しても、一般的には警視総監の方が各上とされている。
また、階級章が両肩への肩章になっている警視総監とは違い、消防総監は他の消防士と同様に右胸に着用する。

ただし、これはあくまで現行法の話であって、旧警察法の時代においては前述の通り、いくら警視総監といえども都知事が所管する「特別区公安委員会」が任命する都の公安職公務員に過ぎなかったため、現在の東京消防庁や消防総監の構成に酷似していた。


副総監

警視庁には、警視総監に次ぐNo.2の役職として、「副総監」の職が設置されている。正式名は「警視庁副総監」で、階級は警視監。定員は1名。1969年10月15日に設置され、23日より槇野勇氏が初代副総監として就任。現職は田中俊恵氏。
普段は警視総監を助けて庁務を整理するが、警視総監が何らかの理由で職務を行えない際は、副総監が臨時で代行する*23。また、都公安委員長から要求があった時は都公安委員会の会議に出席しなければならない。
警視庁No.2の役職ではあるが、その地位は本庁局長や大阪府警本部長*24よりも下位であり、警察官の序列としては第10位に位置する。ただし、俸給は警察庁生活安全局長・交通局長・サイバー警察局長・警察大学校長などと同等の「指定職4号俸」(89万5000円)で、警察庁長官官房長・刑事局長・警備局長などの「指定職5号俸」(96万5000円)には劣るものの、「指定職3号俸」(81万8000円)の大阪府警本部長、警察庁長官官房総括審議官・政策立案総括審議官、皇宮警察本部長などよりも上位になっており、実質的には府省庁の局長級と遜色ない位置づけであると言える。
前職としては警務部長・公安部長からの昇格および大規模府県警本部長が比較的多く挙げられており、その後は本庁・管区警察局長級や大阪府警本部長に転ずることが多い。
副総監経験者が警視総監に就任する例は少なくないが、前述の通り副総監と警視総監の格差は大きいため、直接昇格する例は1972年の初代副総監でもある第69代槇野勇氏と第96代斉藤実氏の2人しか存在しない。よって、長官に対する次長とは違い、必ずしも創作によくあるような「次期警視総監の筆頭」というわけではなく、あくまで警視監の一役職に過ぎない側面が強い。
サイバーセキュリティ対策本部長は副総監が兼任するほか、状況によっては警務部長も兼務して事務を取り扱うことも比較的多い。

また、大阪府警と皇宮警察には副総監と同様の、警察本部No.2である「副本部長」職が設置されており(階級は(皇宮)警視監)、それ以外の道府県では人事・総務・会計など本部の中枢を担う警務部長(階級は警視長か警視正*25)が部長職の筆頭になっており、本部長に次ぐNo.2の立ち位置で実質的な副本部長級である*26
テレビドラマでは山梨県警和歌山県警・神奈川県警など、大阪府以外の道府県でも副本部長が置かれている作品もあるが、なまじ警務部長を出すより例え架空であっても副本部長を登場させる方が視聴者に対して分かりやすい側面もあるかもしれない。

創作において

刑事ドラマにおいては、権力や組織に従順し、警察の威信を守るためなら真実や不祥事の隠蔽もいとわない典型的な官僚気質の人物が多く、真実を明らかにしようとする主人公たちとしばしば対立するのがお約束。階級は言及されないことも多いが、警視長以下の人物はほぼ確認されていない。
また、前述したように実際には副総監が警視総監に直接昇格する例は少ないが、創作においては『相棒』の長谷川宗男(警務部長兼任)や坂之上慶親などのように「次期警視総監と目される副総監」がしばしば登場したり、『踊る大捜査線』では下記のように次長と次期長官争いを繰り広げられたりするなど、文字通り「警視庁No.2」という側面が強調されて現実以上の地位(官房長や刑事・警備局長級?)になっていると思われることもままある*27
一方、警視総監への出世争いを描いた『桜の塔』では、警視総監自らが副総監を指名するという言及があり、自らの手足として汚れ仕事を任せようとするなど、あくまで警視総監の腹心に過ぎない存在として描かれてもいるため、作品によってその待遇にはばらつきがある。

他方で、『踊る大捜査線』では副総監と次長が次期警察庁長官の座を巡って争う場面があるが、現実ではまずあり得ない。確かに両者は階級こそ同じ警視監であるが、上記の通り副総監の俸給が指定職4号俸なのに対して次長は6号俸であり、この時点でも2ランクの差がある。実務上は副総監から次長に就任した例すら存在せず、大阪府警本部長や局長などを経てステップアップする必要がある。
また、警察官の序列は第1位の長官を頂点に、警視総監→次長→官房長……の順に続いていき、副総監は第10位である。前述した通り警視総監は長官と並ぶ出世コースのゴールであり、実質同率1位であることから、警視監の筆頭職は第3位の次長である。しかし、副総監の上には次長や官房長など7人が存在する以上、百歩譲って警視総監ならまだしも次期長官にお呼びがかかることはまずあり得ない。
それ以前に警察庁長官は一貫して全員が次長から昇格しているため、副総監どころか官房長や局長が就任したことすらない。
その点、警視総監は次長から副総監まで比較的幅広く就任の可能性が残されており、対照的である。
ここまで少なからず差が生じる理由は不明であるが、長官は全国に数10万人存在する日本の警察官の頂点に君臨する存在である一方、警視総監は階級上最高位とはいえあくまで警視庁の本部長に過ぎない点が考慮されていると思われる。


階級として

一般的に警視総監は「警視庁のトップ」として認識されているが、前述の通り階級名も兼ねていることは意外と知られていないかもしれない。日本の警察には巡査・巡査長・巡査部長・警部補・警部・警視・警視正・警視長・警視監の9種類*29の階級があり、その上に位置する最高位が警視総監である。前にも述べたように、長官は確かに警視総監以上の地位にあるが正式な階級ではないため、あくまで「警察官の階級」としては警視総監が最高位である。
法律上は階級であることから、理論上は警視長や警視監が殉職すれば警視総監に特進し得るが、実際には役職名としての側面が強く、定員は1名のみに限られているため、実例は未だにない*30
無論、警察庁長官は階級ですらないので万が一警視監や警視総監が殉職しても特進したりもしない。

数多いる警視監の中から優秀な1名が国家公安委員会からの任命により、階級が警視総監に昇任すると同時に、警視庁のトップたる警視総監の職に就任する。
そのため、職名と階級が一致する唯一の警察官であり、実際に辞令では「警視総監に任命する」という任命辞令のみ書かれており、当然役職名も同じことから補職辞令はない*31。つまり、警視総監の階級で他の役職に就くことも、警視監以下の階級で警視総監の職に就任することもない。


創作において

刑事ドラマに限らず、創作では現職・経験者問わず警視総監(およびそれに相当する役職)が登場する作品が非常に多く、ゲストキャラや名前すら明かされないモブ同然のキャラから、物語の本筋に大きく関わるキャラまで幅広い。
副総監と同様に主人公視点では比較的悪役の印象が強いが、中には真っ当な人格者もいるため、個性は千差万別である。
作品によっては経歴が描写されることもあるが、フィクションゆえか現実的にはなかなか考えにくい職歴になっていることもある*32

他方で、『桜の塔』では従来の刑事vs犯人という構図から一転、刑事部長・警備部長・警務部長の3人を中心とした警視庁のキャリア組が警視総監の椅子を賭けて熾烈な権力争いを繰り広げるのが当初の展開だった。同作では警察庁の存在はあまり考慮されておらず、副総監もあくまで警視総監の補佐役に過ぎない存在のほか、部長職自体はほぼ同等の序列のようで*33、代わりに地方大学出身の「外様派」で構成される刑事部・九州出身者の「薩摩派」で構成される警備部・東大出身者の「東大派」で構成される警務部と、部ごとに出身にちなむ派閥が形成されるという、独自の設定があった。
後半からは、「薩摩派」は内輪揉めで強硬派と穏健派に内部分裂しており、代わって「外様派」から一大勢力に成長した「千堂派」と「東大派」が庁内を二分し、さらに警察を「人を助ける存在」にすべく主人公たちが「改革派」が旗揚げするなど、物語は新たな局面を迎える。

また、警視総監(およびそれに相当する役職)を親族に持つ人物が登場することもある。主に子や孫が多い。
全員ではないが、父 / 祖父譲りの優秀な能力を持つ人や、その権力を笠に着て傍若無人な言動をする人も多いほか、刑事ものでは彼らの犯罪や不祥事を組織ぐるみで隠ぺいしようとする光景も多々見られる。

前述の通り、警視総監はあくまで警視庁の本部長に過ぎず、警察官のトップは警察庁長官だが、響きのよさや登場のしやすさからか、出番はこちらの方が多い傾向にある。
あまりに多用されたせいか、警視総監が警察官の頂点であると勘違いしている人も多いかもしれない(上記の通り、階級という点では間違っていないが)。


追記・修正は警視総姦、いや警視総監に就任した方がお願いします。


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最終更新:2022年10月24日 13:57

*1 基本的に道府および大規模県は警視監、それ以外の県は警視長。

*2 警察通信に関する業務は警察庁の地方機関である「都道警察情報通信部」が行っているが、警視庁に関しては1954年7月1日~1958年3月までの期間は関東管区警察局の管轄に属していた。また、それ以外の府県はエリアごとに管区警察局の指揮下にある(警察法30条)。

*3 1874年8月4日~10月15日は「警視長」。もちろん、現行の同名の階級とは名前以外関係ない。

*4 ただし、特別区公安委員会が警視総監をはじめとする「特別区の存する区域における自治体警察の警察長」を任命する際は、内閣総理大臣に対して意見を聴取する必要があった。

*5 採用区分を問わず、都道府県警察に所属する警視正以上の階級にある警察官は「地方警務官」と呼ばれる一般職国家公務員で、国家公安委員会に任免などの権限がある(大多数を占める警視以下は「地方警察職員」という地方公務員で、こちらは警視総監を含めた本部長が任免する)。ノンキャリアからたたき上げで昇任した場合は「特定地方警務官」ともいい、国家公務員法第106条(一般職国家公務員などが他の職員を営利企業に再就職させるあっせん行為の禁止)が適用されないなどの相違点がある。なお、身分上はキャリア・準キャリアともに採用時点で国家公務員であるが、警視以下の場合はもちろん地方警務官には当たらない。

*6 しかし、長官の制服は「警察官の服制に関する規則」に基づいて警視総監と同じデザインで、階級章の代わりである「警察庁長官章」という金属の日章が両肩に5個(警視総監は4個)配置されており、階級外と言いつつも警察官の最高位であることを示している。

*7 103万5000円。郵政民営化推進室長、内閣衛星情報センター所長、知的財産戦略推進事務局長、金融国際審議官、消防庁・出入国在留管理庁・公安調査庁・スポーツ庁・文化庁・林野庁・水産庁・資源エネルギー庁・特許庁・中小企業庁・観光庁・気象庁・原子力規制庁・防衛装備庁長官、財務省主計局長、医務技監、国立感染症研究所長、国土交通省技監、会計検査院事務総局次長と同等で、警察庁では次長ながら一部庁の長官に匹敵する立場である。

*8 ただし、検事総長・次長検事・検事長はいずれも天皇陛下の認証が必要な「認証官」で、俸給も検事総長は146万6000円で国務大臣級・東京高検検事長は130万2000円・次長検事とその他の検事長は119万9000円で大臣政務官級の立場になっており、特別職であることを考慮しても警察庁長官以上の地位である。

*9 特別職の内閣官房副長官補・内閣広報官・内閣情報官、常勤の内閣総理大臣補佐官・国務大臣補佐官、常勤の国家公務員倫理審査会委員、公正取引委員会委員、原子力規制委員会委員、式部官長とも同等。

*10 ただし、警視以下の地方警察職員に関する任免・懲戒権は警視総監を含めた本部長が、広域捜査・公安捜査・警備実施・全国交通取り締まり運動といった全国的な警察活動の指揮命令権は警察庁が握っているため、いくら各都道府県が設置した機関といっても、地方警務官と同様にこれらの面でも都道府県知事や都道府県公安委員会には権限がない。あくまで都道府県警察を所管するだけである。

*11 実際に、国家公安委員会の運営や庶務・会務全般は長官官房に置かれている課長級の国家公安委員会会務官によって行われているほか、長官は国家公安委員会の管理のもとで警察庁が有する監察権に基づき、警視総監を含めた地方警務官の懲罰議案を国家公安委員会に申し立てる権限も持っている。

*12 なお、サイバー警察局の前身である情報通信局時代は、局長を筆頭に幹部ポストは警察官ではなく「技官」として採用されたキャリアが就任する指定席であった。後述するように技官出身の本部長や部長も存在するが、警視総監は日本の首都東京を守るその重責から技官が就任した例は一度もない。

*13 次長は現職の警視総監よりも入庁が数年早い人が割り当てられるのが通例とされており、後年長官に昇格した際に警視総監との上下関係が正常に戻るようになっている。

*14 警務局長と官房長を同一視した場合は11人になるので2位になる。

*15 なお、警視庁の他の部長も階級こそ副総監・警務部長・総務部長と同じ警視監であるが(交通部長・地域部長・生活安全部長・組織犯罪対策部長はノンキャリア警視長が就く可能性あり)、副総監はもちろんのこと、同じ部長職である警務部長・総務部長よりも序列が低く、これらを飛び越して警視総監に就任するのは不可能であるため、現在のところ直接の就任例はない。

*16 かつて存在した、都道府県警察が優秀なノンキャリア警察官を警察庁に推薦して中途採用するシステムで、転籍後はキャリアと同様に無試験で昇任していく。本庁勤務というのは非常に名誉なこととされたが、時代の変遷によって価値観が変わり、身分も国家公務員に変わることから全国異動も生じるため、次第に地位や名誉よりも激務や転勤を敬遠する傾向が見られるようになったことで形骸化した背景がある。現在では最初から警察庁の警察官(巡査部長)で採用する「準キャリア」(国家公務員II種試験)の制度が確立されている。

*17 推薦組に代わって登場した準キャリアはまだ歴史が浅いため、長らく準キャリア本部長は存在しなかったが、2022年4月8日付で丸山彰久氏が山形県警本部長に就任したことで初の準キャリア本部長が誕生した。

*18 最多任免者は3度の再任(初回含めて4回就任)を経験した安楽兼道氏。

*19 あくまで本庁の話で、附属機関である皇宮警察本部は特別司法警察職員としての権限が与えられており、捜査・逮捕や各種令状請求などの執行が可能。また、2022年4月に関東管区警察局で発足した「サイバー特別捜査隊」も、皇宮警察本部を除けば警察庁では初の捜査機関になった。

*20 長官は正式な階級でこそないが、実務上は警視総監よりもさらに上位職であることから、階級的な観点では実質警視監から2階級昇任していることになる。

*21 唯一の例外は斎藤昇氏で、彼は第60代警視総監を務めた後、警察庁の前身である国家地方警察本部長官を経て、新警察法施行によって発足した初代警察庁長官に就任した。あくまで現行法施行時の特殊な例外ということに留意すべきである。

*22 人によっては裏返し的に、「長官になれなかった上がりポスト」と揶揄されたりされなかったり。

*23 万が一副総監も職務不能の場合、警務部長>総務部長>公安部長>刑事部長>交通部長……の順位で代行する。

*24 警視総監を除いた道府県警本部長では兵庫県・愛知県・神奈川県を上回る最上位であり、本庁局長級である(序列第9位)。いわゆる「上がりポスト」なのでその後は退職することが多いが、中には局長・官房長・次長として本庁に帰任し、さらに警視総監や長官に進む人も多い。ただし、いくら局長級といっても直接警視総監に昇任した例はない。

*25 大半が警視正で、警視長が就任するのは警視監が本部長の道府県でも北海道・埼玉県・神奈川県・愛知県・大阪府・兵庫県・福岡県に限られる。警視庁は警視監で、大阪府警ともども副総監 / 副本部長に次ぐ本部No.3の地位。いずれの都道府県でもキャリアや準キャリアを中心に、キャリア技官や他省庁からの出向者が就任する。

*26 これは同様の業務を行う警察庁長官官房長や所轄署警務課長も同様で、それぞれ長官・次長 / 署長・副署長に次ぐNo.3のポジションになっており、他の局長や課長よりも筆頭格である。ちなみに、長官官房は1994年7月1日の警察法改正までは警務局だったルーツがあり、再編されてからも俸給自体は刑事・警備局長と同等だが、実務上では他の局よりも格上である。さらに、1948年の新警察法施行以前の警視庁は内務大臣直々の指揮下に置かれていたため、「総監官房」が設置されていた。

*27 上記のように副総監が警視総監に昇格するのは決してあり得ない話ではないため、視聴者への分かりやすさという点でも長官に対する次長のような扱われ方になっているかもしれない。

*28 スピンオフ映画『相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿』の原作に登場し、ドラマでは未登場。

*29 ただし、巡査長は警察法に定められている正式な階級ではなく、一種の名誉職である。階級章や俸給の面では巡査と異なる扱いになるが、法律上は巡査と同じく「司法巡査」(巡査部長以上は「司法警察職員」)であり、逮捕された犯人の受け取りや証拠品売却・還付、告訴・告発・自首の受理や調書の作成などに制限がある。捜査上必要がある場合、巡査および巡査長を司法警察員に指定することも可能。

*30 管理職で殉職した警察官はあさま山荘事件の警視庁第二機動隊長や東日本大震災岩手県警大船渡署高田幹部交番所長(いずれも警視→警視長)など少数で、ましてや警視正以上の幹部にもなれば現場や最前線に出向くこと自体が非常にレアケースである。

*31 警視監以下の階級で例えば昇任と同時に発令する場合、「○○に任命する」「△△を命ずる」と、新階級への任命辞令に続いて異動先の補職辞令が併記される。

*32 一例として、『相棒』の四方田松榮は警視庁公安部長→警務部長→第八方面本部長兼参事官→千葉県警本部長→警視庁警備部長を経て警視総監に就任しているが、上記の通り近年では警視庁部長からの昇格は全くない。そもそも、警務部長は副総監に次ぐ警視庁No.3だが(警視監)、第八方面本部長は現実ではノンキャリア警視長が充当されるため(実際にキャリアが任命されるのは第一方面のみ)、警務部参事官兼任であることを考えてもなぜか警務部長から降格した形になっており、千葉県警本部長に就任した際に再度警視監に昇任したことになる。もちろん警備部長も警務部長より地位は低いため、現実的な観点から見れば彼の人事はあり得ない。

*33 前述の通り、人事・総務・会計などを担う警務部長は副総監に次ぐ事実上の警視庁No.3で、現実に即せば刑事部長や警備部長よりも明らかに格上の存在になるはずである。他方で、警務部自体は「警察の中枢」「出世街道」と現実と同様にエリートコースであると評価されている。

*34 「外務省公邸人質籠城事件」が発生した1987年の警視総監。

*35 岩田と同様、スピンオフ映画『相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿』の原作においての登場人物である。

*36 S.13-4より。本人は未登場。背景にある警視総監賞に書かれたものであるため、一時停止してアップにしなければ確認するのは容易ではない。

*37 S.15-2より。。本人は未登場。こちらも組織犯罪対策部組織犯罪対策第5課の部屋にあった警視総監賞に書かれたものであるため、一時停止してアップにしなければ確認するのは容易ではない。

*38 後者2人は劇中で描写された警視総監賞より、本人は未登場。

*39 紅子のみ、シリーズの原点である『悪いオンナ「ルーズソックス刑事」』に登場。

*40 作中における「警偉総監」の娘。