ハデス(ギリシャ神話)

登録日 :2011/05/13(金) 20:19:40
更新日 : 2017/05/15 Mon 13:25:56
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【概要】

ハデス (Hades)とはギリシャ神話における冥界の神。
本名は縁起が悪いということ“富める者”を意味する プルトーン (Pluton)とも呼ばれる。
何しろオリュンポスのトップ3の1人にして、死を統べる最恐の神だと考えられていたからである。
実際の神話内での主な役割は生前の行いから死者の死後の運命を決定すること。早い話が閻魔様と同じ役割。
この呼び名は本人ごとローマ神話に取り入れられ、 プルートー (Pluto)の語源となった。
後に冥界が地下にあるとされるようになった事から鉱物の支配者にもなった。
“富める者”とは、そうした所から付けられた御名である。

親はクロノスとレア。
ゼウス 等の長兄 *1 で妻は ペルセポネ 。ペットは冥府の番犬 ケルベロス
従者は三途の川の渡し守の カロン や死の神 タナトス 、あと侍女兼実務担当兼攻撃隊長の魔術の女神 ヘカテー
死を忌避する神話から威厳ある支配者として顕されるゼウスらに対して暗い表情の青年として顕されたり、絵画では恐ろしい怪物の様な印象が付けられたりしている。 *2
神格的にもオリュンポス十二神から外れる様な神では無いのだが、後に冥界を畏れる信仰が一般化した為か外されてしまったらしい。
……姿といい、後のキリスト教世界の影響による魔王的な扱いといい、 風評被害が甚だしい


【神話・伝承】

■ティタノマキア ~神々の戦い~

生まれた直後にガイアおばあちゃんとウラノスおじいちゃんの「産まれた子に権力を奪われる」という予言を恐れた父クロノスに、
姉弟共々飲み込まれてしまう。
しかし、唯一飲み込まれなかった末っ子のゼウスによって助けられる。なお、この際に『産み直し』の扱いをされ、長兄から末弟にされてしまった。

クロノスらティタン神族との戦いでオリュンポス軍が苦戦する中、ゼウスは大いなる大地の予言に従い、
冥府タルタロスに幽閉されていた一つ眼巨人キュプロクスと百腕巨人ヘカトンケイルを解放した。

ハデスはこの時解放されたキュプロクスから姿隠しの兜を貰った。

(`・ω・´)「よし、ステルス装備でクロノスたちの武器を奪ってやる」

てな感じでハデスの活躍でクロノスたちは武器を失い、ティタン神族は大幅に戦力低下し、オリュンポス軍が勝利した。
とまあ、いろいろあって戦いに勝利したオリュンポス軍だったが、何よりハデスがクロノスの武器を奪った事が大きく、実質的なMVPとも言える存在だが、
その功績の褒美は思わぬ形で帰ってきた。


■くじ引きでの転落 ~ハデススパイラル~

ティターン神族との戦いの後、天界、海、冥界の三界の支配権を選ぶ際に 何故か知らんがくじ引き で決め、冥界を引き当ててしまい、
地下の世界に押し込められ、神々からも敬遠されて誰も遊びに来ず、仕事が忙しすぎて宴会すら行けない逆VIP待遇。

ティタノマキアじゃかなりの功績を挙げたのにあんまりではないだろうか?

なお、冥界の支配権は誰もやりたがらないために、仕方なくハデスが引き受けてやったというバージョンもある。


■ハデス恋の季節

冥界でケルベロスと共に寂しく支配するハデス。ある日、大地の裂け目から地上を見ていたら花を摘んでいたペルセポネに一目惚れする。

しかし、内気な性格なハデスはどう告ったらいいか分からず、 よりにもよって 弟でペルセポネの父親のゼウスに相談した。
後にこれが…

ゼウス「女は多少強引な男に惚れるもんだぜ兄者☆」
ハデス(´・ω・)「そっか、分かったやってみる!あと、一応結婚の許可出してほしいんだけど」
ゼウス「(デメテルに聞いてないけど、別にいいよな)どーぞどーぞ」

みたいなやり取りでゼウスの言葉を真に受けたハデスは水仙の花を使ってペルセポネを誘い込み、地下へとさらってしまった。

が、母デメテルと地上を恋しがって泣くペルセポネに対し、ハデスはそれ以上強引な行動を取れなくなってしまい事態は膠着状態になった。
ここで強引に行かないのがゼウスやポセイドンとの違いである。
一方地上では、デメテルがハデスの誘拐劇を知り、首謀者であるゼウスの元に怒鳴りこんだ。

ゼウス「俺じゃねーよハデスがやったんだよ」

と兄を売って責任逃れしようとするゼウスであったが、

デメテル「真面目なハデスがそんなことをするわけがない。どうせアンタが唆したんでしょ!」

と、デメテルは真相を一発で見抜いた。さすが信頼と実績のゼウスである。

「あいつ王だし別にいいじゃん!」と開き直るゼウスに、デメテルはぶちギレて豊穣神としての役割をストライキ。
地上は大飢饉に見舞われた。

さすがのゼウスも…これには猛省っ!
ゼウスは自分の提案である事を棚に上げて「娘さん帰してやってよ」と相談し、ハデスも「仕方ないね」と承諾した。

だが、ハデスも一目惚れしたペルセポネを手放したくなかったのか、
お迎えとしてヘルメスがやって来た際に喜ぶペルセポネは、冥界の果実ザクロを食べてしまっていた。

冥界の食物を食べた者は地上に還れないという規則があり、ペルセポネも晴れて冥界ファミリーの仲間入り!やったねハデス家族が増えたよ!


という訳にもハデスの性格上いかず、裁判の結果「1年の3分の1だけ冥界に住む事」となった。
まぁ、ハデスは元々強引な性格では無くゼウスに騙さr…もとい唆されただけなので、それを快諾して事は片付いた。

このため、デメテルは愛娘が嫁ぎ先に行っている間は仕事をする気にならず、地上は1年の3分の1は作物が実らない季節になってしまったという。
これが冬の始まりとされる。

ちなみに、話によってはハデスの誠実な人柄に惚れたペルセポネが自分から冥界のザクロを食べたというケースもある。



■他のハデスの物語


  • 蛇使い座アスクレピオス
アポロンの息子で賢者ケイロンの弟子である医学の神・蛇使い座アスクレピオスの腕が死者さえも生き返らせる程に上がってしまい、

ハデス(´・ω・)「最近、冥界に人(魂)が来ないんだけど…ヤバくね?」

とゼウスに相談、ゼウスは雷霆でアスクレピオスを撃ち殺した。しかし、医学者としての偉業を讃え、星座にした。


  • オルフェウスの悲劇
吟遊詩人オルフェウスが毒蛇に噛まれて死んだ妻エウリュディケーを取り戻しに冥界を訪れた。
オルフェウスの奏でる竪琴に冥界の人々は魅了された。

ハデス(´;ω;)「感動した!! 連れ出しを許可する!」

『冥界から抜け出すまで決して後ろを振り替えるな』という条件で蘇らせる約束をした。
しかし、冥界からもう少しで抜け出すという所でオルフェウスは後ろを振り向いてしまい、それが最期の別れとなってしまった。
あれ? なんか似たような話聞いたことあるような……。
見るなよ!見るなよ!絶対見るなよ! 」のタブーは古今東西共通なのであろう。

  • ヘラクレスの十二の功業
最後の冒険でケルベロスをミュケナイ王エウリュステウスに見せることとなったヘラクレスがハデスに謁見した。
ヘラクレスがこれまでの経緯を話すと、

ハデス(´・ω・)「ケルベロスを連れて行かれるのは困るけど、神託だったらしょうがないね、でも苦しませないでやってね」

と傷つけないことを条件に快諾したという。

  • メンテとミント
数少ないハデスの浮気話。
ハデスは地上のメンテというニンフ(妖精的な存在)に惚れ、淡い恋をしました。が、それに気付いたペルセポネが嫉妬から踏み潰して雑草にしたと言われる。
また、一説ではまたハデスが誘拐劇をするかもと危惧したペルセポネがメンテをミントに変えてハデスの目から隠してあげた、とも言われている。
ハデスが極悪に描かれている作品では、後者の理由。
またメンテのほうが先にハデスの愛人であり、後から来たペルセポネの不興を買って雑草にされたという説もある。

  • レウケー
水のニンフであったレウケーはハデスに見初められて冥界に連れて行かれたが、不完全な不死の神だった為、死んでしまった。
それを悲しんだハデスはレウケーを白ポプラに変えた。それ以来、エリシオン(庭みたいな場所)には白ポプラが咲き誇っているという。
後に冥界へケルベロスを捕まえに来たヘラクレスによって 冠にされる という悲劇に見舞われる。
恋人への想いが宿る木を傷つけられたハデスの心中はいかばかりか…。


  • ペイリトオス
珍しくハデスが怒った話。
ペイリトオスという男が、ペルセポネを我が物にしようと英雄テセウスを伴って冥府に降りてきた。
これを事前に知っていたハデスはやってきた2人を応対し、椅子に座らせる。
もちろんこれは罠で、2人が座った椅子は、座った者が全てを忘れてしまう「 忘却の椅子 」であった。
元々巻き込まれたテセウスだけはその後、ケルベロスを捕らえに来たヘラクレスによって救い出されたものの、
ペイリトオスは苦しみすら忘れて永遠に椅子に座り続けることになる。

…あれ、ぬるくね?



逸話や神話から分かるように仕事に関しては真面目だが、普段はやや内向的な性格。
死者に対しても生前の功業や悪行を公正に評価する仕事熱心な一方でオルフェウスの竪琴に感動し、チャンスを与えたり、
自分のせいで死んだレウケーを花に変えたりなど、基本的には優しく善良な人。

また、弟のポセイドンやゼウスが浮気や強姦しまくっているのに対し、ハデスにはその手の話がない。

3兄弟の中でも一番マシなのに冥界の王という肩書きだけでいろいろ苦労してらっしゃる不遇な神様。


【近代~現代のハデス】

■価値観の変遷

とここまで閲覧してきて思うことがあるだろう…
「あれ? 俺の知っているハデスじゃなくね?」
「一番マトモじゃねぇか!!」
と。

現代においてハデスが魔王のように扱われるのは、なにより キリスト教の影響が大きい。
ギリシャ神話の「冥府」とキリスト教の「地獄」が混同された結果なのである。
またキリスト教においては死とは「罰」であり、最後の審判の日にその罰から人々を救うのが救世主イエスである。
なので死にかかわるものを神聖視するのはキリスト教にそぐわない価値観なのだ。
ちなみにキリスト教で「ハデス」という言葉は「地獄」そのものを指す。

加えて 某アニメーション映画にヴィランとして登場したのが決定打となった。
まぁ、ラスボスの地位を与えられているだけマシかもしれない。
あと日本では某聖闘士の漫画も割と決定打になってる感じである。
最近では世界中で人気のようなので更に風評被害は拡大することであろう…。

ハデス(´;ω;`)「どうせ俺なんか…」
ハデス…貴方は泣いていい…

……皆さんもこの機会にハデスさんを再評価していただきたい。

少なくとも、 三兄弟の中で一番の常識神である事だけは疑いようがない。

まあ、単純に人気が無くて神話が少なかっただけかもしれないが。
……悪役とはいえ現代で活躍や名前が知れ渡っているのを喜んでいる可能性も……?

■登場作品ほか

「死後の世界の王」としてはおそらく世界で最もメジャーな神だけあって、現代でもあちこちでその名を見ることが出来る。
ただどちらかと言えば概要で挙げたの理由からか、ハデスよりもプルートーの名のほうが広く使われている。
最も有名なのは近年小惑星に格落ちした 冥王星 (Pluto)だろう。

そして恐らく次点を争うのは、その惑星から名前を取ったミッキーマウスの飼い犬 プルート
天王(ウラン)から生まれる、莫大な富と膨大な死を同時にもたらす冥王の宝 プルトニウム (plutonium)。
また上記のディズニーアニメでもヴィランを務めている。

日本では鉄腕アトム「地上最大のロボット」に登場するアトム最大のライバルのひとり プルートゥ
「セーラームーン」の セーラープルート こと 冥王せつな 、「聖闘士星矢」に登場する 冥王ハーデス あたりが有名だろうか。

あとはギリシャ神話をモチーフにしたゲームにも多数参戦している。
有名なところでは「 半熟英雄最強エッグモンスター としての出演
ハデデス というパチモンもいる)の他に、
ヘラクレスの栄光 」シリーズ、「 新・光神話 パルテナの鏡 」、 遊戯王シリーズ の冥界の魔王 ハ・デス、
パズル&ドラゴンズ 」「 モンスターストライク 」などが有名。
ただいずれの作品でも傲慢にして野卑な冥界の暴君として描かれてしまっているが…





(´;ω;`)「そんなのやだ! 神話に出てたかっこいいハデス様が見たい!」





…そういう人は 素直にギリシャ神話を読むことをお勧めする
読めば読むほど、恐るべき力を持ちながらけして軽挙妄動に走らず、
死の掟を粛々と執行する厳格さと深い思慮・情愛を兼ね備え、
さらには妻に甘く純情でお茶目な一面もある魅力的な冥府の王の姿が浮き彫りになってくるはずだ。

次点で ギリシャ神話をそのまま漫画・映像化したもの 、あるい神話ではなく 古代ギリシャの人々を題材にした作品 を読むのもいい。
『「世界の神々」がよくわかる本』のギリシャ神話編を漫画化した ティタノマキア戦記 では神々一の剣士として登場し
ヒューペリオンを圧倒する活躍を見せている。

またソフォクレスの悲劇『アンティゴネ』では主人公アンティゴネが内乱の末に刺し違えた兄ふたりのうち一方は国葬をもって葬られたのに対し、
内乱を起こしたもう一方の兄は国の法に基づき見せしめのため野ざらしにとされたことにこう抗議する。


死者はハデスの物であり、生前の行いのために辱めることは神々の掟に反する


彼女はこう訴えて野ざらしにされた兄の遺体に砂をかけ、法を犯したとして処罰される。
国の法よりも古くより存在した神の掟の執行者として、ハデスは人心の上に君臨していたのだろう。



余談


  • 生前の行いが良く、優秀であればハデスの部下としてスカウトされることがある。生前は高潔なる王でありゼウスに愛された アイアコス
    クレタ島の王にして優れた立法家である ミーノス 、厳格かつ公平な裁定を下す裁判官 ラダマンティス らが彼に仕えている。

  • またハデスをオリュンポスの神々に含まないとする事もあるが、
    これはゼウスの誘いを「 オリュンポスに行けば冥界の運営に支障が出るから 」と断ったためと言う説がある。
    これに限らず冥王になってからのハデスは 無闇に冥府を離れない ようになり、助言を行ったり道具や部下を貸したりすることが多くなる。
    ティタノマキアに続く神々の戦である ギガントマキア では、自らは参戦せず配下の ヘカテー を指し向け、また姿隠しの兜をヘルメスに貸し出している。
    ただこのヘカテーは戦力では主をもしのぐと言われるゼウスも一目置く大地母神で、かなりえげつない活躍をしているのであるが…( ヘカテーの項目参照

  • 何にせよ、冥府の王が分別のある神であったのはすべての生命にとって幸福なことであったろう。
    海王ポセイドンの怒りは大地を揺るがし海をあふれさせ、豊穣神デメテルの怒りは飢饉となって降りかかる。
    ならば冥王がもしほんとうに我を忘れるほど怒り狂ったとしたら何が起こるのだろうか…

(´・ω・)「ペルセポネた~ん追記・修正ぃ~」
ペルセポネ「もう、ダーリンたら仕方ないわね♪」

追記修正は自らの命で冥界を賑やかにしてからお願いします。

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