喪黒福造

登録日:2011/09/17 Sat 23:07:44
更新日:2024/04/19 Fri 15:48:55
所要時間:約 7 分で読めますよ





私の名は喪黒福造、人呼んで笑ゥせぇるすまん。ただのセールスマンじゃございません。
私の取り扱う品物は心、人間の心でございます。ホーホッホッ……。

この世は老いも若きも男も女も、心のさみしい人ばかり。そんな皆さんの心のスキマをお埋め致します。
いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたらそれが何よりの報酬でございます。

さて、今日のお客様は……。




喪黒福造とは、藤子不二雄A原作の漫画、「黒ィせぇるすまん」「笑ゥせぇるすまん」などに登場する不気味な男(主人公)。



CV大平透(TBS版)、玄田哲章(笑ゥせぇるすまん NEW)
TVドラマ版.伊東四朗

靴下以外黒ずくめのソフト帽、スーツ、靴を一年中着ている。
なお、靴下は白。

本人はセールスマンと名乗っているが、会社に出勤している描写が無い上、本人曰く『慈善事業』との事から、会社があるかどうか疑わしい。
(読み切り版「黒ィ」では「友愛事業団」なる団体の外務主任を務めている)

バー「魔の巣」によく出入りする事と、小田急線沿線に住んでいる以外は私生活の一切が不明。


【性質】


いつもにたにた笑っており、むしろ笑顔以外の表情は無い…が、アニメ版「愛妻弁当」では客のメシマズ嫁が作った弁当を食べて、表情こそ変わらなかったがみるみる青ざめて苦しむという姿を見せた。
眉毛は無く、タレ目で色白。小太りな体格。「福」と名にあるように福耳をしている*1
暗闇でも歯と目は認識できる為、歯磨きの丹念さがうかがえるというもの。
「黒ィせぇるすまん」時代はどこか悪魔を思わせるような骨ばった顔立ちをしていたが、「笑ゥせぇるすまん」ではおなじみの全体的に丸っこい顔に変化した。

口調は敬語。セールスマンとしては当然。
だが、お客様以外、例えば美少年クラブに出入りした時などは例外。年少者に対してはある程度くだけた調子で話すようだ。



『ココロのスキマ… お埋めします  喪 黒 福 造』


そう書かれた名刺と共に、喪黒は客に近づく。

喪黒の選ぶ客は、日常に満足していない、ある程度の社会的地位を得ながらそれに満足できていない、あるいは自分を偽っている人間。

客の悩みや願望を聞き出し、喪黒は時にはありふれた社交場や品、時にはどこかの青タヌキの様に未来チックな道具、
時には夢を叶えられるような遊び場の情報を提供する。

基本的には客から代金の類を受け取ることはないが、『ナマケモノ』では珍しく明確に「代金」として現金を徴収している。もっとも、オチで間接的ではあるが客に返金しているので、結局は喪黒自身が金を受け取っていないことには間違いない。

こうして喪黒のおかげでココロにスキマを持つ客達は、今まで意識していた、意識していなかったココロのスキマを埋める充実感を味わう。
……だが、客にとっての蜜月は客自身の過ちによって破られる事になる。

喪黒は客へ何かしらのアクセスを行い、それに伴い、その内容に応じた警告をする。

例えば、「そうですか……あの娘に会えましたか。そんなに喜んでもらえたなら、紹介した私も嬉しくなるというものです。

だけどいいですか……? あの娘と会うのはこれっきりにして下さい。
あなたはwiki籠りはされておりますが、まだまだ立ち直りのチャンスは残されている……!
どうぞ存分にリアルを追い続けて下さい……私はその姿を心から応援するものです」

という様な助言はするが、そこはやっぱりココロにスキマを持つお客様。
約束を「ちょっとだけなら」「バレなければ大丈夫」と簡単に破ってくれる!
約束を破ったら後述の「ドーーーーン!」が待っている。

まぁ、喪黒がそういうお客様を選んでいるから、なぜそこで約束破るかなぁ……というツッコミは無しね。

約束をきっちり守っても、「ドーーーーン!」と励まされた事で欲望が解放されてしまえば似た様なもの。
そっちの場合客は深く考えもせず暴走し、やっぱり身の破滅を招く。「黒ィせぇるすまん」時代や「笑ゥ」初期はこのパターンが多かった。
なおこっちのケースでは、「客の心理的にはハッピーエンドだが、身内目線ではほぼ破滅状態」(『たのもしい顔』〈アニメ版『湯けむり哀歌』である程度フォローされている〉、『家族あわせ』等)な変化球客もいた。
でもだからって、その度にわざわざご家族に身内の変わり果てた姿を見せつける喪黒はどうなのだろうか…

ちなみに、「ドーーーーン!」されなければ破滅しないと思ったらところがどっこい、別にされなくても客自らの手で破滅する事もしばしば。『的中屋』の末路はその1つである。

例外はあり、『昼下りの公園』では「客」では無く「相談相手」としてゲストと知り合ったせいか「転落」はしなかった(相手は変なオフィスラブに目覚めたが)。
この時は掛け声(「ドーーーーン!」ではない)で励ました後「相手が悩みを解決できず再び公園に来ること」を期待していたため、明らかに人の不幸を楽しみにしているのがうかがえる。
また、『住めば天国』ではそもそも最初から明確な訳あり物件を格安で売るという契約だったためか珍しく「約束」をしておらず、それどころか実際に住んでみて問題が生じた事を聞いた際には無償でアフターケアまで行っている。
あるいは「約束」を第三者によって妨害されて客がブチ切れたり(『切る』。ちなみにこの時の喪黒はオチで破滅理由を微妙に勘違いしていた)、
客が欲望に忠実になり過ぎて変人と化したり(『チ漢さん』・『ブルーアイ・ジャパニーズ』)、麻雀のせいで約束を破ったら身内が家族そっちのけで麻雀にドはまりしたり(『ザ・ガードマン』『家庭教師』)
「客の願い」自体は叶ったが別な意味で恐ろしい事態になったり(読み切り版『黒ィせぇるすまん』)、
破滅はしたが元に戻れる可能性を喪黒が示唆した(『化けた男』)ケースもある。
またアニメ版では「元の生活は失ったが『得たかった幸福』は手に入れた」という客(『ホームレスのすすめ』等)も登場した。
「ドーーーーン!」の影響を受けても元の性格に戻ることがあり、『見下ろす男』では180度転換した客が鍋をぶつけれられた影響か性根の部分が変わらなかったのか元の卑屈で上目遣いの性格に戻ってしまった。

『看板ガール』アニメ版の時は前向き過ぎで切り替えも早過ぎる客に対して、これ以上関わりたくない一心で「ドーーーーン!」して何とか済ませたことも(原作では呆れて放置)。
このエピソード、件のシーンでは大平氏の演技もあって喪黒が如何にその客の相手に手を焼いたかが分かり易くなっていた。

『今仁見手郎の秘密復讐計画表』のゲストキャラは「客」ではなく「観察対象」であり、「ドーーーーン!」もあくまで口封じのために喪黒を殺そうとした相手に対する反撃として行っている。

『フリーウェイ・ダンス』のゲストキャラに至っては「客」どころか(おそらく)プライベートの旅行中に向こうから襲ってきた犯罪者であり、この時は「約束」ではなく「忠告」を聞き入れなかった事で付き合わされた喪黒ごと酷い目に合っている。

「黒ィせぇるすまん」時代には『お客様を持ち上げておいて、何も言わずに破滅させる』という単なるいたずら行為(本人曰く趣味)も行っていた(『ともだち屋』『アルバイト(秘)情報』)。
喪黒自身も悪戯の協力者に「意味が無いのでは?」と聞かれることもしばしばあり、
そのたびに「こういう悪意の無いイタズラが好きでしてね」とか「ああ!我慢できない!」とか語っている。一番欲望に忠実なのはお前じゃねえか!!
中には、お客様が約束を破ったわけではなく、大きな悪事を働いたわけでもないのに、唐突にお客様の家や家族が消失するという、理不尽極まりない結果になった例も…(『夢のあと』『途中下車』)。


作品中唯一喪黒の約束を守り通した客は1名(『夜行列車』)だけだったりする。アニメ版ではこの客に無償のフォローもしていた。
但しこの時は「忠告」に従ったことで身内の不幸が判明したため、「手遅れ」にはならなかったものの全く無事ではなかった。
アニメ版では他にも『ワニオの怪奇料理』にて、喪黒自身が客とかわした約束を守れずに心のスキマを広げたため、客の知らないところで最善を尽くしていた。
加えて、客が悪意ある第三者のせいで喪黒との約束を守れなくなった場合は、極一部の例外を除いて大抵はその第三者を破滅させる(『カンヅメのペット』)。

また、憧れのタレントと交際する事になり「彼女の愛に応えるべきだ」と「ドーーーーン!」で背中を押したものの、「君の美貌と才能はファン皆の物」「君を愛しているからこそ、別れなくてはならない」と付き合うのを止めた高校生に対しては、その潔さで女性達にモテモテになったこともあり何の罰も加えていない(『大変愛』)。

【能力】



「ドーーーーン!!!」

右手の人差し指を、相手の額に突きつけ、「ドーーーーン!」と叫ぶ事で喪黒福造能力を発動させる。
これにより、対象の秘密を聞き出したり、社会的破滅をもたらしたり、肉体的に欠陥を与えたり、精神にも干渉する事ができるのだ。
さらに最近登場したパチンコ版では、なんとこれで地球に迫る隕石を破壊している(ただし当りの時)。

また変わったシチュエーションで「ドーーーーン!」を叩きつけたこともあり、アニメ版の『ガラス越しの愛』ではPCで再生される映像を通じて、『幻の遊園地』では客が抱き着こうとしたお姫様風の人に女装して
『帰ッテキタせぇるすまん』の『ローデンブルグの鉄の処女』では血塗れになって鉄の処女から現れ、客に引導を渡した。

ついでに言えば、別に指をささなくても可能であり、トマトをもったままの時もあれば真剣を構えたまま「ドーーーーン!」と言う事もある。
さらには、電話越し客がゴルフボールに幻視した虚像越し(『ゴルフ・ドミノ倒し』)にでも「ドーーーーン!」も行う。
『NEW』に至っては姿すら見せずにネットを通して相手に送ったドット絵プログラムで「ドーーーーン!」をしている。
予測不能で回避も不能。

一方、先述の『フリーウェイ・ダンス』でカージャックされた状態で大型トラックに襲われた際は、流石に「ドーーーーン!」が使える状況ではなかったのか犯人諸共川に飛び込むという物理的な対処でオチをつけている。


またアニメ版では作者の別漫画『黒ベエ』の話を原作にした『ワニオの怪奇料理』・『今仁見手郎の秘密復讐計画表』で、『黒ベエ』の影を媒体にした能力をそのまま行使している。


なおアパートを探しに来たり、酒を飲んだり、電車に乗ったり、色々と人間臭い所もあるのだが……。


死なない

すっぽ抜けたゴルフパター(ドライバー?)の直撃を受けても、投石を食らっても(血は赤)、常に笑顔で全く死を危惧させる描写がない。
作者も「人間ではない」と彼が人外であることを明言している。
その喪黒が顔色を変えて悶え苦しんだ『愛妻弁当』のメシマズ嫁の料理って一体…。
一方アニメ版の『今仁見手郎の秘密復讐計画表』では近距離からの銛の射出を、胸ポケットにスチール製の名刺を複数入れておくことで防いでいるため、まったく無敵というわけでもないらしい。



【余談】


喪黒には弟がおり、彼とは逆にあの手この手を使って人を不幸から救う。
その名は喪黒福次郎。外見は鼻と耳以外福造と似ていない。

連載紙が休刊した為、一巻しかないが、興味がある人は『喪黒福次郎の仕事』でググってみるなりしよう。
これは「トリビアの泉」でも紹介された為、既に知っている人も少なくないであろう。

また、喪黒のふてぶてしい容貌はタレントの大橋巨泉をモデルにしているが次第に担当声優の大平透に似てきたという。
なお、大平版はモデルとなった大橋巨泉が司会のバラエティ番組『ギミア・ぶれいく』の枠内で放送された。

17年春から放送されている新アニメでは玄田氏が演じる事になったが、これは大平氏が生前に後任として指名していたため。
玄田氏はかなり雰囲気を似せて演じており、声こそ微妙に違うが不気味な雰囲気はほぼそのまま受け継いでいる。


【類似キャラ&後継者達】

彼の様に「人の前に現れ、不可思議な力で人の『願い』を叶える謎の人物」というキャラはこの後のフィクションにも複数存在する。

「魔法」を売る会社『ポーラー社』のセールスレディ。様々なマジックアイテムを薦める。
本人としては100%お客様の「幸福」を願って魔法を売っているが、喪黒と違い「有料」でかつ本人が天然ボケ気味のため、
客本人が「幸福」になるまでに苦労したり、予想外の結果となりクーリングオフやキャンセル・苦情等を叩きつけられたりしている。

  • 通販大王(どおくまんプロ『摩訶不思議 通販大王』)
通販番組のMCセールスマンやバー『ハッピー』のママとして欲望や悩みを抱えた客の前に現れ、悩みにあった「商品」を売りつける関西弁の中国風商人で、
羽豚を引き連れ時に死神の代役も引き受ける怪人でもある。
純粋に「商売」として行っているため、代金を頂けば後は基本客のその後についてはスルーする(「金」になれば人助けもするが)。
連載誌の都合上Hな欲望に対して商品を売りつけるケースが多めだった。
まあ作中に「暗黒天」なる「厳しい罰則をつけたりして金を頂き、他人を平然と犠牲にする」商人もいるのでそいつよりはまあましである。

  • ザビエール(吉田ひろゆき『Y氏の隣人』)
その名の通りフランシスコ・ザビエルそっくりの姿をしたセールスマンで、自称「幸福伝道師」。
片言の日本語でしゃべり喪黒同様に無料で商品を提供するが、実はある目的のためであり、ある意味では喪黒の逆を行く存在。

問題を抱えた人々に『商品』を販売する露天商。
『商品』自体は「使い道や加減を誤らなければ」素晴らしい効果を発揮するものが大半だが、
大半の客は『商品』の効果を過信し過ぎて慢心し破滅してしまうことになる。破滅の度合いは客ごとにまちまちだが死んでしまった者も少なくない。
また、時々あまり役に立たなかったり使用者の破滅を前提としているような『商品』も見受けられる。
ただ喪黒ほど露悪的ではなく、客に対して『商品』を売る以上の干渉は行わないスタンス。欲をかかず『商品』を使いこなして成功したり、本人的には幸福と思えるような結末を迎えた客もそれなりにいる。

  • アンリ(山本まゆり『リセット』)
「やり直したい後悔」を抱えた者の前に現れ、無償で時間を「リセット」してくれる「堕天使」(原作では美少年だが、ドラマ版では風変わりな成人男性)。
但し「リセット」には厳しい回数制限があり、「リセット」して後悔が消えてもそれとは別に事件が必ず起こるためその結末は人によって異なる。

  • D伯爵(秋乃茉莉『Petshop of Horrors』シリーズ)
中華街に店を構え、客に不思議な(伯爵と客にのみ擬人化されて見えたり、超常的な力を所持したりする)ペットを斡旋する東洋人。「D伯爵」自体は彼の一族共通の名乗りで、先祖代々似た様な顔なため知らない人からは不老とも勘違いされたことも。
世代を超えて受け継がれる「血」から、動物種を次々絶滅させる人間を根本的に信頼しておらず基本動物側に立って行動するが、それゆえにペットと客が良好な関係を築いたり、動物に頼まれたら協力を惜しまない。

  • 河津チェリー(秋本葉子『蜘蛛女』)
「願い」を呟いた少女たちの前に現れ、「願い」を意識するしないに関わらず叶える美少女。
が、その麗しき姿は蜘蛛達を総べる巨大蜘蛛の擬態であり、本性は「願い」が裏目に出ての絶望も、
「願い」が叶っての歓喜も等しく調味料として人々を喰らう魔性少女。
彼女が「願いを聞き届けて」喰われずにすんだ人間は「願いが叶った直後に墜落死した少女」だけである。

願いを叶えるミセの店主。二つ名は『次元の魔女』。
普段は砕けた態度で周囲をおちょくり、時に和らげる。
願いを叶える時には彼女自身がルールの大切さ・命の重さ・依頼主の所有物の価値の重さを知っているため、
進んで背中を押したり、命の取引までに持ち越す事はないが、
場合によっては死ぬより重い長きに渡って支払い続ける対価を要求する。
西尾維新によるノベライズ版では、喪黒本人に対して遠回しながら言及し、話のネタにしている。

  • 哀川ショコラ(みづほ梨乃『ショコラの魔法』)
悪魔カカオと契約して「黒き魔女」となったショコラティエの少女。
チョコの材料となる「代償」と引き換えに魔法のチョコを売る。なお「代償」は買い手の態度・食した後の行動によってどれを貰うかをショコラ当人が自分で判断している。
買い手が誠実に対応したりやらかしても反省すれば「本人の弱い心」や「喪っても努力すれば補いが効くもの」といった「無い方が良いか、無くても問題ないもの」を頂くが、
悪事が動機だった場合や増長した態度を取った場合などは、「その後の人生」や「命」等の「冗談抜きで取り返しの効かないもの」を取り立てて、「黒き闇」へと突き落とす。
客であっても悪人に対してはかなり容赦しないが、これは悪党のせいで父が破滅に追い込まれ、それが彼の死の遠因となったため。
それを指し示すように、彼女が最初に黒き闇へ突き落したのはその悪党である。

少年達の「心の宝石」を代償に願いを叶えるアイテムを与える宝石商。
だが目当てとしているのは「アイテムの使い道を誤った客の絶望」であり、被害者たちは例外なく死ぬかそれに準ずるレベルの悲惨な末路を迎える。
そもそもの目的からして悪意100%な上に客を絶望に陥れることを心から楽しんでおり、ターゲットもまだ十分に分別のついていない子供ばかり。
その上与えるアイテムの中には使い道を間違えるどころか受け取った時点で破滅が確定しているような地雷まで混ざっているなど、この手のキャラの中でも悪質さはトップクラス。なんとこいつの客になって幸福になれたやつは1人もいない

「僕と契約して魔法少女になってよ」と少女たちに契約を薦める謎のマスコット型群体存在。
だが契約自体が確実な死亡フラグであり、契約者が「絶望の果てに宇宙維持のためのエネルギーを放出して怪物と化す」ことが真の代償(つまり人間を燃料扱いしている)。
しかも本人(?)は「感情は理解できないが、感情による反応は学習できる」ため、長年の経験から本当の目的や契約の詳細を言わずにメリットだけを言う事を身に着ける計算高さも持ち合わせる。
一応契約時の「願い」は「願いに合わせた魔法を与える」ことで叶えているのでギリギリ詐欺師ではないのだが…。

  • 「Bar白色天」の店主(森川智『Bar白色天 女と男 欲望の百物語』)
悩める人々が迷い込むシガーバー「Bar白色天」でバーテンダーの役割を果たす糸目の人物。名前や正式な肩書は不明。
客に彼らの願いに合う「葉巻」を薦め、それを吸わせることで客の要望に応える。また「客」が付喪神的何かでも夢越しであっても葉巻を吸わせられるというとんでもない店でもある。
客の願いに対しては中立的立場だが、客が葉巻で叶う願いからずれて間違った方向に行きすぎたり欲望を暴走させた時は悲しげな雰囲気を漂わせる。

  • リン(鈴木小波『燐寸少女』)
鬱憤を抱えた人々に、寿命1年分を代償として「妄想」を具現化させるマッチを売る少女。
叶う「妄想」は「望みに合わせたアイテムが出てくる」から「自分の体を作り変える」・「時を超える」まで正に万能(さすがに「マッチを増やす」だけは無理だが)。
但し「願望」ではなく「妄想」が具現化し、しかも具現化した妄想はマッチが消えても永続するため、使い手の望む結果や効果になるとは限らない。
作中には他にも「心から想う本当の願い」を叶える蝋燭を売る「チム」等類似キャラが登場している。

悪魔の動画クリエイター。目につけた人間に対して夢を叶える動画の企画を提案し、主にデビルツールという不思議なアイテムを使って出演者の望みを現実にしてくれる。
しかし真の目的は人間の負の面を動画に収めることであり、出演者達は大抵の場合望みが叶ったことに増長して醜い本性を暴かれ、痛い目を見ることになる。
ただし(企画段階から予見して、かつそれとなく誘導しているとはいえ)ブラックの側から強引に不幸に追いやるということはなく、あくまで痛い目に遭うのは出演者側の落ち度という形。
また死や精神崩壊など取り返しのつかない破滅に追い込むわけでもなく、人前で大恥をかく程度のことで済ませる場合がほとんど。撮影後の出演者は周囲の人間も含めて撮影中の記憶を消され、改心していい方向に向かうことが多い。
間違いなく悪意ある愉快犯ではあるが、一定のラインは弁えているし根本的にはターゲットのためになることをしている、という割と珍しいタイプ。

  • ババア(漫☆画太郎『ババアゾーン』)
まるでキノコのような毛髪と継ぎ接ぎのズタ袋を持つ謎の老婆。
悩みを抱えている人物(例:小心すぎてエロ本が買えない学生、嫁のいびりに悩まされている姑)に接触し、(無理矢理)お喋りに付き合わせ、そのお礼として悩みを解決できるアイテムを渡す(例:肝っ玉が大きくなる薬、付けると鬼のように強くなれるお面)。
漫☆画太郎作品ということで予想がつくと思うが、大抵碌な結末にはならず、顛末を見届けたババアが去っていくシーンで締めくくられる。
元々このシリーズが「笑ゥせぇるすまん」のパロディであり、去っていくシーンのババアの目、口、影が喪黒福造のそれになっている(特に影は喪黒福造そのまま)。

  • ミザリィ(光原伸『アウターゾーン』)
本作のストーカー(案内人)を自称するカラフルな髪とエルフ耳が特徴の妖艶な(まず間違いなく人外の)美女。
「案内人」を自称する通り基本的には読者へ不可思議な物語を紹介するという体裁を取っているが、自身もあの手この手で作中の人物・事象への介入をして物語を動かしている。
主な手段はアンティークショップの店員として、悩みや問題を抱える客にそれに見合った不思議な力を持った物品を売る・時には無償で提供するというもの。
ただ、少年誌のジャンプで連載するだけあってか、作者のスタンスが「基本ハッピーエンド」のため、
アイテムの使い方を誤って不幸になるのは悪人ばかりで、善人の場合はまずい使い方をした場合ですらアフターフォローをしてくれるなど、
悪魔的な外見に似合わず(悪人への制裁は過激なれど)基本的には善良な人格の持ち主だったりする。

  • アリス(なかむらさとみ『ブラックアリス』)
「不思議の国」に住む、大きな青いリボンをつけたエルフ耳の少女。悩みや叶えたい願いを持つ人間の前に現れ、望みを叶える力を秘めた不思議なアイテムを与える。少女漫画雑誌である「ちゃお」の作品なので、可愛らしいアクセサリーや文房具が多い。
しかしその目的は「愚かな人間が苦しむところを見る」ことであり、ターゲットは大抵の場合アイテムの使い道を誤り破滅することになる。
要するにちゃお版喪黒。「アイテムを渡して行動はターゲットに委ねる」というスタンスは「ストーリーランド」の老婆に近いか。
ホラー色の強い作品ということも手伝ってターゲットの末路はえげつないものが多く、バッドエンドの場合は大体死ぬか廃人になる。
渡すアイテムの中にどう考えても使った時点でほぼ破滅確定な欠陥品が混ざっていたり、事前の説明も嘘ではなくとも正確なところを伝えていなかったり*2とやることはかなり悪辣。
また、同時に複数の、場合によっては不特定多数の人間をターゲットにすることがあり、やらかすことの規模が大きめなのも特徴。エピソードによっては社会問題レベルの事態を引き起こすケースも。「平等の鐘」というエピソードに至っては最終的に日本がディストピアと化した。*3
反面あくまで陥れる対象は「愚かな」人間なので、アリス自身は誰かにアイテムを渡す以上の干渉はしておらず、破滅するのも基本的にはターゲット本人の行いが悪かったせい。
喪黒同様に「やってはいけないこと」を先に伝えているのにターゲットがそれを無視して破滅する、というパターンも多め。
そもそもそういう素質のあるやつを狙っているせいか、時々「アイテムなくてもそのうち犯罪やらかしてただろ」と言いたくなるようなやべーやつがターゲットになることも。
ターゲットが自分の行いを心から反省していたり、忠告を破って我が身を危険に晒してでも人のためにアイテムを使ったりした場合は救済してくれることもある。

何らかの悩みを抱えた「幸運のお客様」にだけ辿り着ける駄菓子屋「銭天堂」を営む女性。外見は中年っぽいが公式では年齢不詳とされている。
そのタイトル通り不思議な効力を持つ駄菓子を「幸運のお客様」にワンコインで販売するが、いずれも使い方を誤ったり悪用すると使用者自身にしっぺ返しが返ってくるという物*4。紅子自身はそのことについて客に忠告こそするが、「幸運になるのも不幸になるのもお客様次第」というスタンスから根本的には客の末路そのものについては無関心。ただしその運命が客の選択そのものによるものであることは重視しており、後述のよどみの介入などにより客が不当な条件での選択を強いられたり、前述の使い方そのものが誤った情報が与えられたりなどで客の選択以前の問題で不幸を引いてしまった場合には助けることもある。
彼女の宿敵としてやはり不思議な駄菓子屋である「たたりめ堂」を営むよどみというロリババアがいるが、こちらは客を陥れること自体を目的に動く悪意の化身で、彼女の取り扱う駄菓子を使用した末路は例外なく破滅である*5。その上よどみは銭天堂への営業妨害を何度か行っており、銭天堂の駄菓子の効果がたたりめ堂のものとすり替わってしまったことも*6
客の結末にあたっては「善人は報われ、悪人が落ちぶれる」というのが基本。たたりめ堂の客だろうと途中で改心すれば紅子が助けてくれた、というオチの話もある。紅子が駄菓子の力で破滅した悪人に復讐されかけたことは何度かあるが、彼らはもっと悲惨な末路を辿っている。しかし、たたりめ堂を訪れてしまったばかりに全く救われない結末を迎えた善人もいるのでワンパターンでは割り切れない。ただし母数の都合上、作中の描写の範囲では銭天堂のほうが不幸にした人数が多い

  • アンテン様(夜諏河樹『アンテン様の腹の中』)
巫女服を着た少女の姿をした、「招かれた者しか入れない」という神社に祀られた神様。
物に込められた人の想いを糧としており、持ち主にとって大事なものを対価として捧げることで願いを叶えてくれるが、願って手に入れたものは願った者の死後に全て消えてしまう*7
さりげなく欲望を煽ってもっと捧げ物を持ってこさせようと誘導したり、捧げられたものは生きた人間でさえ躊躇いなく食い殺したりと恐ろしく油断ならない面も備えているが、良くも悪くも「想いの詰まった捧げ物をたくさん食べたい」以上の下心はない様子。
捧げ物に見合うだけの願いは曲解したりすることもなくちゃんと叶えてくれ(込められた思い入れが不足だった場合でもそれで可能な範囲までは部分的に叶えてくれる)、判断の基準についても聞けば答えてくれるなど、対応は意外と公平かついい意味でビジネスライク。
そのため読者からは「この手の存在にしては真面目で誠実」「優しい」などと評されがち。
誠実に向き合ってくれる人間にはもののついでにアドバイスをすることもあり、どうやら願い以上の捧げ物に対してはこっそり追加で願いを叶えてあげているようだったりと、どことなく人情味のようなものを覗かせる一面も。
総じて破滅するか幸福を得るかは向き合う人間次第というところが大きく、危険性もあれば御利益もあるという日本の神様らしい存在。


項目のスキマ、追記・修正してお埋めします……。

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最終更新:2024年04月19日 15:48

*1 作者が「藤子不二雄」時代、本作開始前の1967年に発表した合作作品『チンタラ神ちゃん』のキャラに喪黒に似た目と唇をした「福の神」(こっちは貧乏神と仲の良い善良な神)が登場していた

*2 使った相手を自分に無関心にさせるアイテムを「口うるさい人を黙らせる」と説明するなど

*3 しかもこの回はアイテム自体が1回使ったらもう取り返しがつかなくなる地雷タイプである上、アリスも肝心なところをきちんと説明しないという悪質パターンの全部載せとなっている

*4 例:「型ぬき人魚グミ」…食べると人魚のように速く泳げるが、コップ1杯の塩水を飲み忘れると人魚になってしまう、「しわとり梅干し」…1日3個食べるとシワが消えるがそれ以上食べると逆にシワが増える、「がまんエンピツ」…書いたことを我慢できるようになるが取り消すと10倍になって返ってくる、など

*5 例:「わら人形焼き」…嫌いな相手に悪夢を見せられるが跳ね返されると自分が酷い目に遭う、「負け知らずアンズ」…食べるとあらゆる勝負に勝てるようになるが、必ず勝つと分かる以上勝負事がつまらなく感じてしまう、「先頭糖」…必ず行列の先頭に並べるが面倒な仕事も回されやすくなる、など

*6 作中では「ほしいイモ」(欲しい物を欲しいと言えるようになる)と「さもしいイモ」(相手の持ち物を何でも欲しがるようになり関係を壊してしまう)、「泣かんパイ」(泣くのを我慢できる)と「泣けんパイ」(涙が出てこなくなり、周囲から薄情な人間だと思われる)、「マスク・メロンパン」(どんな表情でも自在に演じられる)と「なげきのマスク・メロンパン」(廃人のような顔しかできなくなる)の効果が入れ替わってしまった

*7 「元々この世には存在しなかった」という形で歴史・現実の改変が発生する