板野サーカス

登録日:2009/11/09(月) 22:38:21
更新日:2024/03/13 Wed 11:05:53
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超時空要塞マクロスにおいて、メカニック作画監督を務めた板野一郎が編み出したアニメーション技法。


高速かつ複雑な軌道で飛び回る無数のミサイル、それからの回避行動をとる目標物、両者の行方を追うため激しく動くカメラワークを特徴とする。

簡単に言えば、「高速で迫るミサイルと、高速で回避する目標物を、高速で動くカメラで捉えた映像」


  • ミサイルにはそれぞれ
    目標に一直線に飛ぶ「優等生タイプ」
    標的の軌道を予測して先回りする「秀才タイプ」
    目立とうとジグザグに動く「劣等生タイプ」
    …etc.といった個性があり、それらが立体的かつ複雑に絡み合いながら目標へと殺到していく。

  • 目標物は迫り来るミサイルをダイナミックかつアクロバティックに、複雑な機動で回避する。

  • カメラは2つの対象を追い掛けるように高速で動きまくる。


これら3つの要素が揃うことで、初めて芸術的な「板野サーカス」が完成する。
「ミサイルが一本でも二本でも、流れが綺麗なら板野サーカス」と本人が述べているように、重要なのはカメラワークとデフォルメとなる。
またミサイルに限らず高速で動く物体ならば板野サーカスになりうる。

“無数のミサイルが目標に殺到する”点を再現した『板野サーカスリスペクト』は数あれど、こちらは固定カメラの場合が多い。
高速カメラまで再現しているものは極稀。



板野サーカスの最高傑作の1つとされるのがマクロスプラス
特に『YF-21vs.ゴーストX9』のシーンで、リミッターを解除したYF-21がゴーストの初撃を避ける5秒間は『伝説の5秒』と呼ばれている。


速すぎて何が起きているのか全く分からないが、コマ送りして見ると、

  • ミサイルの束の隙間に入ってやり過ごす
  • 翼を畳んで避ける
  • ミサイルがスラスターを噴かして方向転換する
…etc.

といった凄まじい動作の数々を5秒間に圧縮して描き切っている。まさにアニメーターの限界に挑んだ実に濃い5秒である。


一説によると板野氏はこれのお陰で死にかけたため、CG方面に移ったとかなんとか。
そりゃセル画でここまでやったら死にかけるわな……。

だがマクロスゼロでCGを駆使した新たなサーカスを見せつけてくれた。

特撮のウルトラシリーズでも『ウルトラマンネクサス』から『ウルトラマンメビウス』までの作品でCGに参加しており、ウルトラマンと怪獣の激しい空中戦を演出している。
特に劇場作品『ULTRAMAN』は飛翔体と光弾による素晴らしい板野サーカスを披露している。

余談だが、板野氏は怪獣・メカのデザインも担当しており、マックスではバグダラス、ケサム、分離状態のキングジョーを、
メビウスではケルビム、蛾状態のドラゴリー、サイコキノ星人、ファイナルメテオールをデザインしている。
またとある存在のベースデザインも板野氏だとか……。



板野氏によると、
「板野サーカスを完全に会得したアニメーターは自分を除いて3人だけ」とのこと。

庵野秀明
○後藤雅巳
○村木靖
がその3人である。

ちなみに3人とも上述のマクロスプラスに参加しており、
庵野氏にいたっては『超時空要塞マクロス』と『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』にも携わっている。

後藤氏はCOWBOY BEBOPにおいて美しいサーカスを作り上げた。
特に劇場版である天国の扉 では、たった一基だけのミサイルでサーカスを作り上げ、見る者を魅了した。

村木氏は交響詩篇エウレカセブンにおいて、4クール50話の週一アニメにもかかわらず素晴らしいサーカスを作り上げた。
映画交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱいにはその名シーンがいくつも使い回されているため、チェックしたい人にオススメ。

ちなみにマクロス生誕25周年記念作であるマクロスFにはこの内の誰も参加していなかったりする。そのためかサーカスが色々と中途半端。
だが、どうやら劇場版でその汚名を雪ぐことができた模様。


CGにおける板野サーカス会得者というのも存在し、バスカッシュ!の原田丈が免許皆伝、マクロスFの八木下浩史が卒業生中の優等生らしい。
実際、劇場版Fのサーカスは素晴らしいものであった。今後の作品に注目していきたいものである。



ゲーム版マクロスにおいては、
「板野サーカスをどこまで再現できるか」
が最大の課題となる。

中でも特に評価が高いのが、『マクロスVF-X2』。
河森監督や板野氏をはじめマクロス主要スタッフが開発に参加しており、素晴らしい出来に仕上がっている。
中古店でもなかなか手に入らず、「VF-5000 スターミラージュ」が使える限定版にいたってはプレミアがついているほど。

『マクロスエースフロンティア』や『マクロスアルティメットフロンティア』も上手くサーカスを再現していると評判。
買うなら完全版の後者がオススメ。



アニメ製作会社では、最近のマクロスシリーズを担当しているサテライトがよく演出に使っている。


おふざけで有名なufotableの作品にもかなり多い。カメラまできっちり再現している。



最近ではイナズマイレブンの必殺技「皇帝ペンギン2号」がかなりのサーカスっぷりを披露している。


ただし、
この演出(と、板野氏が関わってからのウルトラシリーズでよく出てくる「白煙を引いて飛ぶミサイル」)のせいで、
「空対空ミサイルは目標への命中までロケットモーターを噴かして飛び続けるものだ」という誤解を与える事になってしまった。
同時に「ミサイルはロケットモーターの噴射が切れたら落ちる」みたいな誤解も流布してしまっている。

現実の空対空ミサイルではロケットモーターを噴かすのは精々発射直後の5秒から10秒までの”加速”の段階のみで、
それから先は稼いだ運動エネルギーで滑空する(フィンなどを動かす事である程度の軌道修正は可能)だけであり、
またアニメ劇中では画面栄えするロケットモーターの噴煙も現実では撃たれた事が相手に分かり回避行動の手助けにしかならないので、
どんどん低視認性の物に代わっている。


こっちはそろそろ片が付く
追記・修正するのが楽しみだ
7年振りのアニヲタ帰還を祝して、編集さ


じゃあ、先に逝ってるぜ…!

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最終更新:2024年03月13日 11:05