大食い甲子園

登録日:2012/02/26(日) 21:34:49
更新日:2023/08/31 Thu 18:32:00
所要時間:約 6 分で読めます




大食い甲子園とは、週刊漫画ゴラクに連載されていた漫画作品。
作者は『食キング』『極道めし』『ばくめし!』などで有名な土山しげる。

「大食い」(フードファイト)が競技として人気のある架空の日本を舞台に、
高校生達が「大食い部」と言う部活を通じ、大食い甲子園を目指していく内容。

大食いが野球やサッカーなどのようなスポーツ競技として認識されている世界観で、大食い勝負に青春をかける若者達のスポ根的ドラマが展開される。

一応、同じく大食いをテーマとした「喰いしん坊!」の続編であることが匂わされているが、
カルト的人気を得た「喰いしん坊!」と違い、早々と打ち切りとなってしまった。


■あらすじ

岡山県立桃太郎高校。かつては大食い甲子園への出場経験すらあった名門大食い部を擁するこの高校だったが、近年は一回戦敗退の常連となる弱小高校となってしまっていた…。

そこに新監督として赴任してきたのが、森山空太郎。彼の指導により、桃太郎高校は、強豪・鬼ヶ島高校との練習試合(おにぎり大食い)を互角に戦う健闘を見せた。

だが、その翌日、レギュラー部員全員が退部届けを出してきてしまい…。

それでもめげなかった空太郎監督による、新・大食い部が立ち上げられ、彼らの青春をかけて大食い甲子園挑戦への道が始まった!


■主要人物

◆盛山空太郎

桃太郎高校の新監督として赴任してきた男で、本作の主人公。
かつては山梨の名門・宝刀高校大食い部のキャプテンだったが、親友の妹の手術代を稼ぐため、試合前夜に無断で賭け大食いをしたため、試合は出場停止。
本人も退部した過去を持つ。
その事件さえ無ければメジャーリーグへの進出も夢では無いと言われていた。

そして、海外での大食い修業を経て、桃太郎高校の監督へ就任。
豪胆な性格ながら、従来の根性論に依らない論理的、生理学的見地に基づく大食いトレーニングにより、弱小だった桃太郎高校を成長させていく。

◆山本康太

三年生。かつては大将を務めたキャプテンだったが、大食いには適さない胃の持ち主だと空太郎に諭されその座を降りる。
だが論理的なトレーニングの組み方と統率力を見込まれ、キャプテンのままマネージャーとなる。
その後もレギュラー達を陰ながら支えていく。

◆坂野留美

二年生女子で大食い部マネージャー。
練習用の料理の調理等を担当し、メニュー等も彼女が組んでいる。
新旧ともに大食い部を支えてきた存在。
キャプテンの山本に惚れている模様。

◆矢沢拓也

一年生。空太郎就任時からの部員だったが、鬼ヶ島高校との試合後、「プレッシャーに弱いし飯は好きに食べたい。他の部活に入る」と一旦は退部するも、やっぱり大食い部が性に合っていると出戻った。
プレッシャーへの弱さも後に克服し、桃高の重要な戦力となった。

◆原満

一年生。肥満体型なために最初は入部を拒まれた(肥満だと胃が脂肪で抑えられるため)が、空腹の余り二升もの飯を平らげたのを見込まれ入部。
応援してくれる周囲や両親のため奮闘していく。
シュウマイ対決の際、グリーンピースが食べられなかったりして苦戦するが、フランクフルト勝負で二つに折って中身から食べると言う方法(普通に喰うと皮が固くて顎が疲れてくる)を使い勝利するなど、着実に戦力となっていく。

◆林屋彦助

二年生。落語研究会と掛け持ち。時そばの研究のためにざるそば十枚平らげた所を見込まれ入部した。
胃拡張のために池一杯のそうめんを食べさせられる地獄の特訓においても終始美味そうにそうめんを食べ続ける程の麺類好きであり、うどんなどの麺類勝負では無類の強さを誇る。

◆梅小路香

二年生女子。ぽっちゃりしているが、切り揃えた前髪の品の良いお嬢様風の少女。元茶道部員だったが、練習用懐石弁当十個を盗み食いして一人で平らげてしまい、それがバレて退部。大食い部へ入部。人目はばからず大好きなご飯をたくさん食べられるので気に入っている模様。
ペースを崩さない品の良い食べ方が持ち味で、勝負後には手を合わせて「ごちそうさま」と言う。
ここぞという勝負所ではペースを上げることもでき、その場合はメガネを外す癖がある。
ちなみに、試合においても相手から「女子だから」等と舐められた様子などもなく、女子校に名門大食い部があったりもするようなので、この世界では大食い競技が男女混合なのは普通の事のようである。

大食いの実力はかなり高く、県大会決勝戦まで出た試合では負け知らずであったのだが、
決勝戦、試合前に行った掃除中のトイレで脚を滑らせてしまい転倒、その際に手を負傷してしまう。
そのため決勝戦は戦うことができず、棄権せざるを得なくなってしまった。
(腕を吊っている描写があるので、最低でも手首の酷い捻挫、最悪だと骨を折っている可能性もある)

◆早味翔

二年生。茶髪の不良風の少年で、大食い部のエース。
取り巻きの女子から十個もの弁当を受け取り完食してしまう大食漢で、「ペースを崩さない」、「水分は500oペットボトル一本きっちり」、「食前三時間前に野菜ジュースを飲む」、「勝負前日も大食いして胃を拡張しておく」等の大食いテクニックを誰に言われるまでも無く行っていた「本能のアスリート」。
友人の家を助けるために鬼ヶ島高校大食い部と戦っていたが、彼らの下品な態度を見て大食い部に嫌悪感を持ってしまい、当初は入部を拒んでいた。
が、鬼高のOBとの対決で危機に陥った際、空太郎のアドバイスを受け逆転勝利。彼に恩義を感じると同時に、「アスリート競技としての大食い」の奥深さに惹かれ、「借りを返す」と言う名目で一年間の入部を約束した。
当初は「自分のやり方で訓練する」と部活での練習を放棄していたが、「個人トレーニングで勝てる程甘くは無い」と空太郎に諭され、同時に、校長の口から彼の過去を聞き、「かっこいい!惚れたぜ!」と空太郎に心酔。以後、真面目に部活にも参加し、桃高大食い部の主力として成長していく。


■大食い競技

この世界では、大食いが競技として人気があり、実在の野球の甲子園のような全国大会(大食い甲子園)が存在していたり、プロフードファイターやメジャーリーガーなどもいるらしい。

その競技は、だいたい以下のようなもの。

  • 競技は団体戦が主で、先鋒、次鋒、中堅、副将、大将の順番で一人ずつ争い、先に三勝得た方が勝ち。

  • 両陣営が交互にクジを引き、競い合う食材を決め、十分間でどれくらい食べられるかを競う。

  • 見苦しい食べ方をしたり吐き戻したりしたら審判により「食指導」「食警告」などが出る事もあり、その分判定で不利になる。なおもこれが続くと敗北となる。

  • 「喰いしん坊!」に出てきた邪道喰いに至っては全面禁止で、公式試合ではもちろん、対抗試合…つまり高校同士の練習試合においても使うのはダメ。もし破ると、その時点で敗北&対象の大食い部は三か月間全ての試合に出場停止という極めて重い処分が課される。

  • 礼儀にかなり厳しい。作中では「試合前に応援団の声援に応え、ピースサインを思わず出してしまった」選手に対し「食指導」が出てしまった例がある。挑発的な言動やジェスチャーなどもっての他。ただ、試合が終わって席を立った時点でピースサインなどを出すのはセーフな模様。

  • 食べた量が同じ場合、残り皿の計量により判定。それも同じな場合は食指導、警告の有無や食べ方の品度などで勝敗が決まる。


■作中に出てきたテクニック等

◆普段から一定量の大食いをし胃を拡張しておく

◆とにかく一定のリズムで、自分のペースを崩さない。スピードアップをしても一口の量は決して変えない

◆水分は一定感覚で一定量を補給。特にたこ焼き等の粉ものは水を吸うと腹で膨れるので注意。

◆フランクフルトやタコなど、顎を酷使する食材は終盤に疲れないよう、食べ方を工夫する。

◆天ぷらうどん天ぷらは食べやすいよう、椀の底に沈め柔らかくしてから食す(しかし、これをやると天ぷらがツユに溶けてしまうので、本来は残す事を許されるツユを飲みほさねばならなくなる)。


■余談

現在、大食い競技は、テレビを見て真似した子供が窒息死する等の事件もあり、控えられる傾向にある。なので、この世界観のような大食い競技のメジャー化はこの先も実現は難しいと思われる。
実際、大食い競技は窒息の危険の高い危ないものである。
皆様も、迂闊に真似をしないように。



本作には獅子戸錠二空界(空念)と喰いしん坊のキャラが年月を経て登場しており、ある意味喰いしん坊の続編と言える。
その割には社会の文化レベルは全然進歩してないが。

「邪道喰い」のないさわやかスポ根な世界ではあるのだが、それ故に
肝心の食バトルシーンのダイナミックさに欠けてしまった点は否めない。
打ち切りになってしまったのも、この辺りに一因があるのは間違いないだろう。


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最終更新:2023年08月31日 18:32