國鐵廣島(JR西日本広島支社)

登録日:2010/04/21(水) 15:19:38
更新日:2023/08/13 Sun 02:51:02
所要時間:約 9 分で読めます




國鐵廣島(こくてつひろしま)とは、2ちゃんねるの鉄道系スレや動画サイト、鉄ヲタの間などでのJR西日本広島支社の俗称である。
諸事情により、かつては国鉄時代のオンボロ車両しか走っていなかった事から、この名前で呼ばれるようになった。


★広島支社の管轄路線一覧

(左はラインカラー ← 一番近い色を使っています)
山陽本線 糸崎~広島、広島〜岩国、岩国〜下関
芸備線 備後落合~広島
福塩線 府中~塩町・三次
呉線(瀬戸内さざなみ線)
可部線
岩徳線
山口線
宇部線
小野田線
美祢線
山陰本線 幡生~益田、長門市~仙崎


ラインカラーが設定されているが、使用を徹底していない上認知度は低い。
そもそも隣の岡山支社と設定色が違っている。
山陽本線・芸備線・呉線・可部線に「広島シティネットワーク」と名付けた。

★広島支社がこうなってしまった経緯

JR東日本JR東海JR西日本の3社は、「本州三社・御三家」と呼ばれ、日本を代表する大企業である。

…しかし実際のところ、JR西日本はこの三社の中では一番経営が苦しい。
JR東日本の山手線をはじめとする首都圏の通勤路線、JR東海東海道新幹線のようなドル箱路線がJR西日本には存在しないからだ。

一応、JR西日本も京阪神地区や山陽新幹線がドル箱路線となっているものの、
近畿地方は並行私鉄(阪急阪神近鉄京阪)との激しい客取り合戦があり、中国地方・北陸地方は車社会であるため、在来線に安定した収入源が無い。
さらに頼みの山陽新幹線も、近年では高速バスや格安の飛行機にシェアを奪われていて、JR西日本の経営状態は非常にシビアなものになり、
福知山線で脱線事故が起きた要因にもなっている。
そのため、私鉄との競争が激しい京阪神エリア「アーバンネットワーク」には、
221・223系などの高性能新型車両を大量に配備して速度とサービスの向上を図っているが、地方にまで手を回す余裕が無いのが実情なのである。

JR西日本としては、不採算路線ばかりの中国地方に新型車両を導入するための出資を抑えたい(というか0にしたい)ため、
新型車両導入の要望に対しては沿線自治体に財政援助を要求している。

輸送改善を要望して財政援助を呑んだ西播・福井・北近畿・山陰地方には、521系・223系5500番台・キハ126系などの新型車両が導入されている一方で、
財政難の北陸(北陸本線を除く)・南紀や高速道路にばかり注力する中国地方(山陰除く)には新型車両が一切導入されない。

つまるところ、広島県が財政援助をしない為に、広島には寄せ集めのオンボロ国鉄車両ばかり集まってしまうのである。

それだけならまだしも、さらに車両の管理費をケチるために「国鉄車両を新車風に魔改造する(別名『ニュータイプ』)」、「前照灯が片方消えてても無視」、
「車両や駅設備をガムテープで修理」など、鉄道マニアやNゲージ派は大喜びだが、一般人にはとても理解出来ないような光景が日常的によく見られる。


こういった芸術的なまでの惨状で「國鐵廣島」の名称が付けられたのである。


★広島支社の車両一覧

☆電車(※227系登場前)

◆105系

*1

奈良線などでよく見かけるローカル線用の車両。
冷房が付いて無かったため、バス用の簡易冷房を無理矢理搭載。効きが悪く、雨漏りも起きる。
新造の3ドア車と103系から改造された4ドア車があり、トイレはあったり無かったりする。3ドア車は全車リニューアル工事を受けているが、4ドア車は戸袋窓が残っており、往年の103系の姿をそのまま留めている。

◆113系

*2


関西エリアから飛ばされて来た車両。広島への転属以前(関西にいた頃)にリニューアル工事を受けている。のちに115系に編入した車両も存在する。
JR東日本、JR東海では完全消滅。

◆115系

*3


113系の山岳版で寒さに強い。227系導入以前の新型車両も実はこの車両(1982年製造の2ドア車両)。
広島周辺の8割がこの車両で、3ドアと2ドアが混在している。
「余り物の中間車に運転台を付けて先頭車にする」、「運用年数が40年を突破」、「09年の新車は冷房無し」「223系仕様の転クロを装備」など、もはや伝説になりつつある。
こちらもJR東海にはいない。
227系の導入に伴い今後(ようやく)引退できるらしい。
2ドア車両は使い勝手が悪いため岩国以西に飛ばされ広島からは姿を消した。



◆123系

*4

「手荷物・郵便輸送」に使われた荷物列車が廃止され、ローカル線向けに改造された車両。
2~4番と5・6番で形状が異なる。
これもJR東日本、JR東海では廃車。

◆117系

*5

アーバンで新快速として使われた車両。
2ドアなので使い勝手が悪く、広島に飛ばされて来た。JR東海では定期運用が終了している。
227系導入に伴いやっぱり使い勝手が悪かったため岡山地区と紀勢本線に飛ばされ広島からは姿を消した。

☆気動車

◇キハ40系

*6

日本のローカル線全域で見られる車両。國鉄廣島終焉後も引き続き広島駅に乗り入れ。全車両にリニューアル工事を受けている。

◇キハ120系

*7

227系導入前までは広島支社唯一のJR型車両だった。
中国地方の非電化ローカル線の主力車両…なのだが、実際はコストダウン車両。
昔はトイレすら無かった。
方向幕が手回しというのは路線バス以下だと思わんか?
実際レールバスだが。
快速列車運用もあるが[快速]と言う紙を貼るだけ。

この様に、広島支社には全国各地からの寄せ集めの車両が在籍している。
バラエティに富んでいてNゲージ化の題材に向いていると言えば聞こえは良いだろうか…

他にも、戦前に作られたクモハ42(鐵道省型)を2003年まで運用していたり、宮島航路の連絡船「みやじま丸」の方がどの車両より新しいなど、ネタは尽きない。

★魔改造とガムテープ

國鐵廣島の真骨頂とされる。
どうしても古さが目立つ国鉄車両を新車風にしたり、経年劣化の補修にはガムテープを使ったりと、
「悲惨な光景」を通り越して「奇跡の芸術」となってしまっている。

◆一例

  • 「体質改善車」という名目の改造で40年前の車両も現役という某愛知の私鉄も真っ青!
  • バス用・廃車になった旧型車両の冷房を取り付け
  • 大きな前照灯(白熱球→○)を小径のもの(シールドビーム→。)に交換する時に、めんどいので鉄板で白熱球の跡を埋めてしまう
    • その結果(こんな感じ→◎になる)、「チクビーム」と呼ばれる事に
  • クーラーから雨漏りが発生するので、オムツを貼り付けて吸水させる
  • 塗装がハゲたらガムテープ
  • 車体がサビたらガムテ(ry
  • 配管が破損したらガム(ry
  • 雨漏りしたらガ(ry
  • 隙間風には(ry
  • 駅設備にも(ry
  • 方向幕を使うのがめんどいので常に方向幕は白幕
  • ↑それもめんどいので代わりに白紙を貼る
  • ↑これもめんどいので方向幕の窓ごとガムテで埋める
  • ↑最近は編成番号を書いたのもある。
  • 因みにキハ120は唯一方向幕を使用

  • 2011年、とうとうガムテクニックの最新型「ガムテープ段ボール方向幕」が誕生した!
衝撃の映像が これだ

  • ガムテの色をTPOに合わせて使い分けられる
…etc
ごらんの有様だよ!
まさにNゲージ派泣かせ。
おかげで模型化すると、実車より模型のほうが車体がきれいなことに…

★迷走する広島支社

上記のように、お涙頂戴な魔改造&ガムテで様々な困難を乗り切って来た(ように見えた)広島だが、近年はその迷走ぶりに拍車が掛かっている。

ダイヤ「だけ」はまともだったのだが、近年のダイヤ改悪によりライナー(快速)がどんどん減便されており、遂に(呉線以外の)快速は朝だけの存在に。
相次ぐ減便によってダイヤが崩壊し、乗り換えに長い間待たされるようになった。
まあそれでも15分ヘッドは維持してるため、國鐵時代よりはよっぽどマシなんですけどね。

因みに貨物列車のダイヤは正常。
しかも本数も多かったりする。

まあ、貨物輸送はJR西日本とは別の会社(JR貨物)だからな…。
また、近年では資金難の為か、「体質改善車」と言っておきながら再塗装しただけという詐欺まがいの車両も続々登場していて、利用者をやきもきさせている。

快速の大幅減便、車両のオンボロ度の進行などの更なるサービスの低下に伴い、
山陽本線は「惨酔本線」、可部線は「(アーバンとの)壁線」、呉線は「(未来が)暮線」などと皮肉られている。

★末期色(まっきいろ)

09年12月、JR西日本は「広島支社の在来線を走る車両の塗装を8年間かけて更新する」と発表。
これにより、広島支社の電車は「瀬戸内海に輝く太陽」のような黄色に、気動車はオレンジ色の単色塗りに変更(退化)することとなった。

その後の追加発表で、アーバンネットワーク圏外の非ステンレス車両を全て単色塗装にする事が明らかになった。
ちなみに、京都・福知山支社が抹茶色、和歌山支社が青緑色、金沢支社の北陸本線・湖西線が青色、七尾線が輪島塗りレッドとなる。

…要は経営の苦しいJR西日本の露骨なコストカットの為だったのである。

この事から、JR西日本が「もはや末期」*8と思われ、広島支社の黄色塗装が末期色と呼ばれるようになり、JR西日本側も公式で言及するまでに至った。

尤も、単色化は単なるコスト削減だけではなく、塗装工程が減る分工場への入場日数を削減でき、車両の回転を早くすることができるというメリットも存在した。折しも213系や221系など、国鉄末期~JR初期に登場した車両の体質改善も計画されていた時期であり、車両運行のメドをつける大技でもあったのだ。


★國鐵廣島(ようやく)終了

その後、以上のようなコスト削減に目途がついたことから、JR西日本ではアーバンネットワーク以外でも新車の導入が自前で開始されるようになった。

227系…2015年3月14日から広島地区で初めて導入された最新型車両。広島地区で初めてのJR形電車(新車)である。2/3両編成、またはその組み合わせによって運用される。室内はセミクロスシート
車体に「広島らしさを象徴する親しみを感じさせる『赤色』配色を採用している事から
Red Wingというなんとなく厨二病っぽい愛称が付けられている。*9
仕様としては225系のコンパチ。広島地区以外のファンにも人気のようで、KATOとTOMIXの双方からNゲージが発売されている。

なお、227系の登場に伴い土休日限定で昼間の快速が西条→広島~岩国間で復活した。
普通列車の本数は変わっていないので純粋な増発である。
可部パラメーターを正しく指定してください。線も復活延伸したりと明らかに広島地区に向き合い方が変わってきている。
*10

*11

そして2019年3月16日ダイヤ改正にて、山陽本線の三原~岩国駅間、呉線、可部線は全ての快速・普通列車が227系での運行になった。
長きにわたり君臨してきた國鐵廣島の完全終了…と言いたいところだが、引き続き国鉄型のキハ40 ・47形が芸備線の列車として広島駅に乗り入れているほか、広島支社管内では岩国駅以西の山口県内でも未だに国鉄型が使用されている。
また、岡山支社管内も快速マリンライナーを除き、国鉄型がほとんどであるが、こちらも置き換えがアナウンスされた。
末期色自体も、すでに青緑と輪島塗りレッドが姿を消している。
完全に終わるには、まだまだ時間がかかりそうだ…。

…なんて言ってたら岡山では2023年からピンク色の227系の導入が発表された他、2024年には特急やくも号を新型車両の273系に置き換えると発表されている。また、気動車も新型の「DEC700形」なるものが試験的に製造され、所属先は山口支社となったので山口地区の非電化区間や芸備線の気動車を置き換えると考えられるため、周辺でもJR化が徐々に進んでいる模様。


追記・修正はガムテープでお願いします。

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最終更新:2023年08月13日 02:51

*1 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/alltrain/ec/105chugoku.jpg 日時:2016/01/08

*2 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/alltrain/ec/113hiroshima.jpg 日時:2016/01/08

*3 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/alltrain/ec/115hiroshima.jpg 日時:2016/01/08

*4 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/alltrain/ec/123sanyo.jpg 日時:2016/01/08

*5 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/alltrain/ec/117chugoku.jpg 日時:2016/01/08

*6 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/alltrain/kiha/kiha40.jpg 日時:2016/01/08

*7 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/alltrain/kiha/kiha120mine.jpg 日時:2016/01/08

*8 国鉄末期にも、気動車の朱色5号化や赤一色の50系客車の導入など単色化が進められていたこととも掛けている。

*9 なお、LED式の行き先表示器はカープ坊やを表示できるようになっている。運用開始早々、カープの優勝を祝ってこの隠し機能が使用された

*10 115系の4両を本系列の3両で置き換えている、またはロングシートの103系をセミクロスシーとの本系列で置き換えた、などの理由で混雑が悪化したと感じる…という現地からの報告もあるあたり、完全ではない様子

*11 出典:日本の旅・鉄道見聞録 URL: http://www.uraken.net/rail/alltrain/ec/syanai/227red.JPG 日時:2016/01/08