鷺澤頼子

登録日:2010/03/03(水) 22:25:44
更新日:2023/03/06 Mon 05:29:02
所要時間:約 7 分で読めます




D.C. 〜ダ・カーポ〜シリーズに登場するヒロイン。

Yoriko Sagisawa

CV:草柳順子(PC版)/松来未祐(CS版)



猫耳にメイド服…
その姿はまさに初音島の生ける神秘と呼ぶに相応しい。

特定の条件を満たす事で登場する隠しヒロインで、他のヒロインのルートでは一切登場しない。
また、初期ヒロインの中ではさくら同様、音楽に関係する設定が無い。



美春のお願いを聞いて、かったるいと思いつつも、木の上から降りられなくなった猫を助けた純一。

それは、1人の不思議な少女との物語の始まりを告げる、ほんの些細なきっかけであった―――。






以下ネタバレあり



少女と、猫と、恋心



微睡みの中、純一は「他人のを見る」、正確には「見せられる」という魔法で、とある少女と一匹のの夢を見た。

目の前には、窓辺に座っているどこか儚げな少女と、少女の膝に乗る一匹の猫。




少女は、をしていた―――。



名前も知らない、いつも家の近くを通る男の子。

少女は、話すらした事ない彼に想いを寄せていた。

あの人と楽しくお話が出来たら、それはどんなに素敵な事だろう。
しかし、少女は一歩踏み出す勇気が出せなかった。
だからいつも遠くから見つめるだけ。

厳格な家庭の下に生まれた彼女は、1人で外出する事も許されず、その内気な性格は、彼へ想いを告げるといった行動への妨げとなった。



なんとかあの人とお話がしたい―――
少女は、膝の上で丸くなっている猫に向かって、こう願った。



「どうか、あの人の気持ちを、私の方へ招いて―――。」



瞬間、猫は少女の前から姿を消し、

純一は微睡みから目覚めた―――。



メイドさんは突然に



うららかな春の日
少年は、ひとりの少女と出会った。



優しい雰囲気をした、おとなしい子。



公園で子供たちに化物呼ばわりされ、石を投げられていた所を純一に助けられた。

その小さな身体はぶるぶると震えていて、
上手に話せなかったけれど、
少女は助けてくれた男の子に向かって、



「私は……頼子、です。鷺澤頼子……。」



ちょっと人と話すのが苦手な女の子は、やっとの思いでその言の葉を紡いだ。

綺麗な長い髪をした、
顔立ちの整った可愛い子だった。

違う所と言えば、
青いメイド服を着ていた事と、
猫っぽい耳が「本物」だった事。



そして―――、彼女には帰る家が無かった。



普段は何事にも「かったるい」と愚痴を溢す彼ではあるけれど、
頼子さんの「置いていかないで…」と、まるで捨て猫のようにすがるような表情を、見捨てる事など出来るはずもなく、



この日少年は―――、1人の少女を拾った。







心優しい少年に拾われた少女は、家主にこう懇願した。



「私……私を……メイドとしてここに置いて下さい……!」






「頼子」という名前に聞き覚えがあった。
夢の中の少女が猫にそう名付けていたことを、純一は思い出したからだ。

だとすると、頼子さんは元は猫なのだろう。さしあたり『鶴の恩返し』、といった趣向なのだろうか。
恩を売った覚えはないけれど。



猫が少女に化けて自分の前に現れた事に、純一は然程驚かなかった。

ここは不思議な魔法の島「初音島」。
彼もそのことはよく知っている―――彼自身が、ふたつの魔法を使える「出来損ないの魔法使い」だから。


ずっと傍にいた妹がいなくなり、寂しさを感じていた純一。

しかし、頼子さんが来てからの毎日は、いろいろと大変な事もあったけれど、
楽しかった。
幸せだった。



料理も家事もさっぱりな彼女を

怖がりで1人で外に出られない彼女を

いつも危なっかしくて、だけど一生懸命な彼女を

いつしか純一は、そんな頼子さんの事を、好きになっていた。


嬉しい事に、頼子さんも同じ気持ちでいてくれた。

でも頼子さんは―――

その優しい瞳の奥には、強い決意が秘められていた。






願いと、別れと



それは―――、幸せな夢だった。

夢の中には風見学園の制服て、仲良く通学する2人。
まるで恋人同士のように―――

隣には制服を着ているせいか、いつもと雰囲気の違う頼子さん。
これは頼子さんの夢なのだろうか。
それとも、自分の願望が夢に表れたのだろうか。



どちらにせよ、そこには確かに幸せな2人がいた―――。



けれど、すべてのものには終わりがある。

それは避けられない運命で―――

頼子さんにかけられた魔法も終わりを向かえようとしていた。

それは、枯れない桜が枯れるから―――。
正確には、さくらがそれを枯らせるから。



さくらは多くを語らない。
しかし、その表情からは悲痛なまでの決意が読み取れた。
だから純一も理由を聞かない。
さくらにはさくらの事情があるから、幼なじみの決意に水を差すような真似は、彼には出来なかった。


消える事がわかっていても、いつもと変わらない日常を頼子さんは望んだ。

だから、純一も頼子さんが望んだ通り、いつものように過ごした。

朝、いつもと同じ時間に起きて

「いってらっしゃいませ」と学園に送り出してくれて

「おかえりなさい」と優しい笑顔で出迎えてくれて

最初に出会った頃よりも格段に上達した頼子さんの夕飯を食べて

そうして、普通の1日を終える。



大好きな彼女が望んだ事だから。



最後の夜、頼子さんは風見学園に行きたいと言った。

頼子さんが転校生で、

純一と同じクラスに転校して来て、

学園を案内してあげて―――

そんな『ごっこ遊び』を

いつまでも続けていたかった。



それでも
やっぱり時間は待ってはくれなくて
枯れない桜の前で最後の瞬間を迎えた。






…彼女は幸せだったのだろうか?
こんな自分の所に来てくれて。


もう彼女の姿を見る事は叶わないけれど、
その小さな猫の表情はとても幸せそうに見えた。











それはダ・カーポのように



「かったりぃ…」

朝倉純一は今日もお馴染みの台詞を吐きつつ、1人学園へ向かう。

あの日からもう彼女には会えないけど、いつまでも引きずっているわけにもいかない。

何の変哲もない、いつも通りの日常に戻っただけ。



でも、今日は違った。



登校中に杉並とバカやってたばかりに少し遅刻した純一。
いつもとは何か違った雰囲気。
今日はクラスに転校生が来ていた。



その子の名前は、

鷺澤美咲―――。



…美咲?



頼子さんにそっくりで、だけど少し違うその子は、
純一に向かってこう告げた。
「お久しぶりです」と―――。




あの時、純一と一緒の時間を過ごしていたのは
「頼子」という名の猫のものだったけど、
心は確かに美咲のものだった。

臆病なご主人様のために身体を貸してくれた一匹の猫。
美咲は「鷺澤美咲」として純一に近づく事が出来なかったから、
頼子がその背中を押してくれたのだった。

その猫は、桜の奇跡で、人間をも超越した。

純一の心は、
確かに美咲の下へと招かれていたのだ。
頼子という一匹の猫の真摯な願いによって―――。



美咲は、「鷺澤美咲」という1人の存在として、改めて純一に告白をする。



今度こそ、



自分の力で―――。












すべてのものにはいつか終わりが来る。

それは、誰もが避けられない運命。
純一と「頼子さん」、2人の関係ように。

でも―――
終わりがあれば、次の始まりもある。

純一が愛した「頼子さん」とはちょっと違うけれど、これからも2人は新しい旋律を奏でてゆくのだろう。
終わりのない、D.C.のように、いつまでも…


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最終更新:2023年03月06日 05:29