色対策カード(MtG)

登録日:2011/08/05 Fri 15:42:38
更新日:2023/12/24 Sun 20:07:28
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色対策カードとは、TCG『Magic the Gathering』に登場する、特定の色(=属性)に対して強力な効果を発揮するカード群のこと。


概要

色対策カードは、フレーバー的には「自身と大きく異なる性質、思想を持つものを排斥する」といったもの。
そのため、色対策カードの多くは対抗色または敵対色*1に相当する色に所属している。

とはいえ友好色と対抗色の概念が崩れている特殊なブロック(オデッセイ、ミラディンの傷跡など)では友好色に対する対策カードも存在するし、最近では「草木は炎に弱い」というイメージから対緑の赤いカードが登場していたりする。

ゲームのデザイン的な面でいえば、これはMTGの黎明期に行われた「多色化の奨励」の一環である。
特定の色に対して極端に強いカードを用意することで
  • 土地事故が起きにくいが、できる事の幅が狭く色対策カードで壊滅する危険性がある単色デッキ
  • 色対策カードの影響を軽減でき、できる事も多いが土地事故のリスクが付きまとう多色デッキ
という形で住み分けさせるという意図があったのだ。
ただし、これ自体は成功したかと言われると若干微妙なところがある。

色対策の歴史


色対策カードがどれくらいその色を対策できるのかというと、2014年くらいまでのスタンダードでは冗談抜きで

それ一枚で単色デッキを相手に勝利が確定する

つまり「出せば勝ち」な程に強烈な効果を発揮していた。しかも指定色に対してのみ絶大な効果を発揮するという特性上、自分の色の守備範囲を超えた行動さえも許容されていたのも特徴。
例えば赤は本来エンチャントに触れないが、《赤霊破/Red Elemental Blast》は、青のエンチャントを含む全ての青いパーマネントを墓地送りにできる。
色対策というよりも「その色絶対殺すマン」という表現が合うかもしれない。

たとえばゼンディカー時代に赤を激烈に苦しめた色対策カードに、《コーの火歩き》というカードがある。

Kor Firewalker / コーの火歩き (白)(白)
クリーチャー — コー(Kor) 兵士(Soldier)
プロテクション(赤)
プレイヤー1人が赤の呪文を唱えるたび、あなたは1点のライフを得てもよい
2/2

当時の赤は「20点を削りきる為に徹底的に速度を高めて戦う」という思想でデッキを組んでいたので、ことある毎にライフを回復する能力は非常に厄介。

しかも「プロテクション(赤)」によって赤のクリーチャーとの戦闘では死なない無敵のブロッカーと化すのに加え、赤はクリーチャーへの対処手段を「ダメージ」か「クリーチャーを対象に取る手段」に依存しているので、赤単では全く対処できない*2
1枚出されただけで敗北の文字が脳裏をよぎり、2枚出されたら投了。こんなカードがたったの2マナ。しかも4枚フル投入が可能。これが往時の色対策カードである。
当時のプロプレイヤー、清水直樹が公式サイトの記事で「《コーの火歩き》を出されて投了なんてダサすぎる…」なんて書いていたが、本当に間違いでも何でもない。

一方で、赤を一切使わない相手からすれば単なる2マナ2/2のバニラにすぎない。ニッサファンクラブこと《ニッサに選ばれし者》(2マナ2/3)*3以下である。
そのためこのカードはあくまで「対赤のプロフェッショナル」という役周りに過ぎず、こういったカードは主にサイドボードからの採用が多くなる。

なのでプレイヤー側にとっての火歩き対策は「赤使用中は白と当たらないように祈る」「赤使用中に出されない事を全力で祈る」「赤のカードを使う事を諦める」というものだった。
環境の中に赤が増えれば火歩きが増える。火歩きが増えれば赤が減る。この様な「メタゲームの変遷」の役割を担う水位調節用の安全弁が色対策カードだったのである。
さらにこの時期の有用な色対策は、「刺さる相手には出されるだけで投了が視野に入るほど激烈に刺さる」一方で、「刺さらない相手には一切刺さらない完全な無駄牌と化す」という非常に極端な性質を持っている。
そのため多色化、特に黒や白をタッチして色の弱点を補うという方法も取れた*4

また、色対策カードにもそれぞれの色の動きを反映することが多いため、色対策として十分なものと不十分なものが混在する、つまりバランスの不均衡をもたらすということも起きてしまう。
たとえば《コーの火歩き》の場合、スタンダード時代に赤が持っていた対白のカードは《焼却》だった。

Combust / 焼却 (1)(赤)
インスタント
この呪文は打ち消されない。
白か青のクリーチャー1体を対象とする。焼却はそれに5点のダメージを与える。このダメージは軽減できない。

このカード自体はそこそこ強かったが、「軽減できないダメージを与えるといっても、対象を取るのでプロテクション(赤)を抜けられない」「そもそも環境にタフネス6以上のカードが多い」ということでさっぱり採用されなかったカードである。もちろん《コーの火歩き》にはまったく対処できない。
白はエンチャントやプロテクションが得意な色のため、白の色対策カードや致命的なカードを赤で対処ができないなんてことは多く、一方で赤は何につけてもダメージばかりなので白には決定打を与えられないこともしばしばあった。

サイドボードという概念があるBO3が基本ルールであるMTGでは、極端な対策カードは「対策の対策」をどうするかという駆け引きを生むため許容されることが多い。
しかし、そういったカードで完封される体験が楽しいわけはなく、特に新規プレイヤーを引き込む上では大きな障壁となりうる。

これではよろしくないということで、近年の色対策カードは
  • 2色に作用するが、他の色には効果が無い
  • 1色に作用し、他の色にも最低限の効果はある
といったデザインに落ち着き、「特定の色を完封こそしないが対処としては有効」といったところになりつつある。ポケモンで言えば「水タイプが草タイプ対策に持っている氷技」のような、いわばサブウェポンといったところ。
2色対策カードの代表例が基本セット2011のサイクルとそのリメイクの基本セット2020のサイクルである。

やりすぎた色対策カードが環境からデッキを消し去ってしまう事は依然としてあるが……

代表的な色対策カード


それでは、敵対色の説明と共に紹介してゆく。
参考に色の寓意も同時に掲載する。

性質:聖善、秩序
敵対:黒(邪悪)、(混沌)

秩序と純潔を尊ぶ白とあって大抵苛烈。
プロテクションやエンチャントによる対処が得意なため、「対象に取る除去に依存している」「エンチャントに触れることができない」という色の個性を持つ黒や赤には激烈に刺さるカードが多い。

Karma / 因果応報 (2)(白)(白)
エンチャント
各プレイヤーのアップキープの開始時に、因果応報はそのプレイヤーに、そのプレイヤーがコントロールする沼(Swamp)の数に等しい点数のダメージを与える。

黒殺し。単色なら出されて数ターンでライフが枯渇する。黒にはライフをコストとするカードが多いことも追い風となって効果は抜群。
しかも黒は基本、置物に触れないので壊される心配もない。
ただし、やや重い事と白単色ウィニーと相性が悪い事から、対策に採用されない場合もあった。

Warmth / 暖気 (1)(白)
エンチャント
いずれかの対戦相手が赤の呪文を唱えるたび、あなたは2点のライフを得る。

赤は火力で押すデッキが代表的だが、このカードが1ターン目に《モックス・ダイアモンド/Mox Diamond》などから出されると一気にパワーダウンする。
赤側も対策カードが無いわけではないが、それでも凶悪な一枚だった。赤単なら二枚貼られたら投了するプレイヤーも少なくなかった。
軽量呪文を次々と唱えるスライ系のデッキには悪夢そのものだが、赤のクリーチャーで押してくるタイプのデッキには若干効果が薄い。

Circle of Protection: Red / 赤の防御円 (1)(白)
エンチャント
(1):このターン、あなたが選んだ赤の発生源1つが次にあなたに与えるすべてのダメージを軽減する。

赤の永遠の天敵とも言える存在。由緒正しきリミテッド・エディション出身であり各色のサイクルがある。
これと黒の防御円がいわゆる対抗色の色対策にあたり、サイクルでもよく使われた。

Crimson Acolyte / 真紅の見習い僧 (1)(白)
クリーチャー — 人間(Human) クレリック(Cleric)
プロテクション(赤)
(白):クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時までプロテクション(赤)を得る。

1/1

自分と味方を赤から守れるクリーチャー。しかし赤くない相手には2マナ1/1バニラと悲惨な性能になってしまう。
だが同弾にはあの火炎舌のカヴー/Flametongue Kavuを筆頭に強力な赤のカードがずらり。インベイジョン=ブロック構築の環境が真っ赤に染まっていることを読み取り、赤以外の相手には役立たずになることを承知でこれをメインデッキから4枚採用するという恐るべき戦略によってプロツアー東京01で優勝を成し遂げたのが、白青で組まれた赤ガンメタデッキ、「ソリューション」である。詳細についてはメタゲームの項へGOだ。

Kor Firewalker / コーの火歩き (白)(白)
クリーチャー — コー(Kor) 兵士(Soldier)
プロテクション(赤)
プレイヤー1人が赤の呪文を唱えるたび、あなたは1点のライフを得てもよい
2/2

すでに上述した、ワールドウェイクで登場した対赤カード。当時の赤は《稲妻》の再録でお祭り騒ぎ、「ミラージュの再来」と呼ばれたほどに赤単が大流行した時期だったが、その安全弁として登場した。
出されるだけで赤がビタ止まりする。この時期の赤は本当に理不尽なレベルで強かったのだが、それがまったく勝てなかった理由がひとえにこのカードにある。
神ジェイスと石鍛冶が禁止されると、赤単はこれまでのうさ晴らしとばかりにスタンダード最後の3ヶ月で大暴れした。そのせいでメインから《コーの火歩き》を4枚投入するデッキが登場するなど、メタゲームにも大きな影響を与えた。

Celestial Purge / 天界の粛清 (1)(白)
インスタント
黒か赤のパーマネント1つを対象とし、それを追放する。

2マナで黒や赤のカードなら何でも追放できる。黒には放置してると面倒くさいことになるカードが山程あるし、赤は赤で《血染めの月/Blood Moon》があるし、単に破壊しても帰ってくるフェニックスとかもあるので環境次第では結構刺さる。


性質:思考、技術
敵対:(衝動)、(自然)

青の対策カードは直接処理するというより、時間稼ぎ的な役割を持つものが多い。しかしこの時間稼ぎがやたら強い。
そもそも青はできることが極めて多いため、色対策カードをものともせずに戦術を遂行できてしまうこともしばしばある。

Chill / 寒け (1)(青)
エンチャント
赤の呪文は、それを唱えるためのコストが(2)多くなる。

このカードの名前に「うげっ?!」となる人も多いのではないだろうか。それほど有名な赤対策カードである。
序盤の立ち上がりが遅いコントロールデッキが多い青にとって、天敵とも言える赤の低マナビートダウン、スライから身を守る重要なカードだった。
現在でも「赤が詰むカード」として有名。1枚貼るだけでほぼ敗色濃厚、2枚貼ったら投了である。ただし通るかどうかは別として、《赤霊破》のような対処手段があるだけまだ有情。
そんなもんがなかったスタンダード時代は、まぁ……

Blue Elemental Blast / 青霊破 (青)
インスタント
以下から1つを選ぶ。
  • 赤の呪文1つを対象とし、それを打ち消す。
  • 赤のパーマネント1つを対象とし、それを破壊する。

こちらも著名な赤対策カード。下記の《赤霊破/Red Elemental Blast》と対を成す。
青の代表的な打消し呪文より対象が絞られる分、たった1マナで赤のカードを一通り封じられる便利なカードであり、レガシー以下の環境では定番の1枚。
昔は【ゴブリン】を除けば《稲妻》くらいしか狙うものがないような時代だったが、最近では赤のカードが強くなってきたため評価が上がってきている。
いざとなれば《意志の力》のコストにもできるのも優秀で、対多色デッキが相手の時も無駄にならない。

Hibernation / 冬眠 (2)(青)
インスタント
すべての緑のパーマネントを、オーナーの手札に戻す。

緑対策。緑が主力とするクリーチャーがこれ一枚で手札に戻されてしまう。
特に緑お得意のトークンには除去として働くため威力絶大。
初出のウルザズ・サーガの頃には軽量クリーチャーを序盤に一気に並べるストンピィが流行していたため、青のサイドボードによく入っていた。
第8版でも再録されているのでモダンで使用可能。対緑を想定したサイドボードによく入っている。

Tidebinder Mage / 潮縛りの魔道士 (青)(青)
クリーチャー — マーフォーク(Merfolk) ウィザード(Wizard)
潮縛りの魔道士が戦場に出たとき、対戦相手1人がコントロールする赤か緑のクリーチャー1体を対象とし、それをタップする。そのクリーチャーは、あなたが潮縛りの魔道士をコントロールし続けているかぎり、それのコントローラーのアンタップ・ステップにアンタップしない。
2/2

赤や緑のカードをタップ状態にして封じ込めてしまうカード。2マナという軽さでありながら2/2と当時の青としては優秀で、ダブルシンボルなので青の信心を2つも稼いでくれる。さらに部族がマーフォーク。
現在でもモダンのマーフォークデッキでよく用いられている色対策カードであり、一時期はレガシーでも積極的に採用されていた。それでいて完封できるほどではなく、他のデッキで用いるには厳しいという、新時代の色対策のスタンダードとも言える1枚。
スタンダードの青単信心でメインデッキから採用されたが、これは前の環境がラヴニカという多色環境だったというメタに加えて青の信心を2点も稼いでくれるというところが大きい。当然封じ込められる側の赤と緑はたまったもんじゃない。

Flashfreeze / 瞬間凍結 (1)(青)
インスタント
赤か緑の呪文1つを対象とし、それを打ち消す。

対象が赤と緑に限定された代わりに青1つが不特定マナになった《対抗呪文/Counterspell》、あるいは確定で打ち消せる代わりに対象が赤と緑に限定された《マナ漏出/Mana Leak》とも言えるカード。
他のカウンターを差し置いて使われることはあまりないが、赤や緑の強い環境だとサイドに刺さっていたことがあったようである。赤や緑が含まれてさえいれば多色呪文であっても打ち消せるので多色環境でも見られた。


性質:邪悪、死滅
敵対:(聖善)、(生命)

白もそうだが、対色である黒もまた色対策カードはエグいものが多い。
緑に対しては極めてえげつなく、一方白には刺さってんのかないのか分からないというカードが結構多い。緑側も最近は呪禁やハンデス対策などで対抗するようになっている。

Gloom / 憂鬱 (2)(黒)
エンチャント
白の呪文は、それを唱えるためのコストが(3)多くなる。
白のエンチャントの起動型能力は、それを起動するためのコストが(3)多くなる。

黒版の「寒け」。だがこちらは3マナ増やす上にエンチャントの起動コストにまで影響する。《暗黒の儀式/Dark Ritual》から出せるので、1ターン目に貼れるのが強み。
ちなみにエンチャントにも影響する理由は元々は上記の防御円対策カードでもあったため。最初期のカードにははっきりと「防御円を使うには3マナ多く払う」と書いてある。

Perish / 非業の死 (2)(黒)
ソーサリー
すべての緑のクリーチャーを破壊する。それらは再生できない。

緑限定「神の怒り」。
クリーチャーが主戦力の緑にとって最悪に近い一枚。これまた《暗黒の儀式》からプレイできてしまう。あまりの威力に存在が疑問視されたこともある。
一時期はレガシーでもサイドボードの定番であり、《タルモゴイフ》やエルフなどがよく非業の死を遂げていた。そして出てくる《鉤爪の統率者》

Dread of Night / 夜の戦慄 (黒)
エンチャント
白のクリーチャーは-1/-1の修整を受ける。

シンプルな弱体化エンチャントで、逆《十字軍》。そして1マナ。シンプルながらレガシーのサイドボードの定番。
白ウィニーに激烈に刺さるというのは想像できるだろうが、タフネス1の白のクリーチャーが完全に否定される。《スレイベンの守護者、サリア》《ルーンの母》あたりが完全な機能不全を起こし、しかも1マナなので確実にテンポを取ることができる。

Lifebane Zombie / 生命散らしのゾンビ (1)(黒)(黒)
クリーチャー — ゾンビ(Zombie) 戦士(Warrior)
威嚇(このクリーチャーはアーティファクト・クリーチャーかこれと共通の色を持つクリーチャー以外にはブロックされない。)
生命散らしのゾンビが戦場に出たとき、対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーは自分の手札を公開する。あなたはその中から緑か白のクリーチャー・カードを1枚選び、そのカードを追放する。
3/1

基本セット2014で登場した色対策。出すだけで緑か白のクリーチャーを追放。さらにその後はブロックが難しい3点クロックとなるという無駄のない色対策。
クリーチャーに大きく依存する緑にしてみれば、手札を見られてハンデスまでされ、ハンデス対策を持つ《ロクソドンの強打者》のようなカードは誘発せず、あげくクリーチャー戦でも不利を被るという悪夢のようなカード。
当時隆盛を誇っていた緑系のデッキを衰退させた原因。緑の愛好家として知られる当時のプロプレイヤーのブライアン・キブラーはこのカードがスタン落ちするにあたってこのカードを集めて燃やす動画を投稿して物議をかもした。ゾンビが火葬にされてる!

その後もキブラーは《生命散らしのゾンビ》が嫌いというキャラを通しているなど、一人のプロプレイヤーのキャラ付けにもつながった1枚。また、他のTCGにおいてたまに見られる「プレイヤーが運営を批判すると処罰の対象になる」という事件がある際に必ず引き合いに出される*5

Deathmark / 死の印 (黒)
ソーサリー
緑か白のクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。

1マナで緑や白のクリーチャーを破壊できる。
非常に軽いが、現在は1マナのインスタントで2マナ以下のクリーチャー、条件を達成するとなんと4マナ以下までを破壊できる、「マジックを変えてしまった」とまで評価された《致命的な一押し/Fatal Push》があるので採用はかなり厳しい。
緑お得意のファッティを狙い撃てるという利点はあるが、そういうのに限って呪禁を持っていたりするというジレンマ。

Noxious Grasp / 害悪な掌握 (1)(黒)
インスタント
緑か白の、クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体を対象とし、それを破壊する。あなたは1点のライフを得る。

1マナ増えた代わりにプレインズウォーカーを破壊できるようになった《死の印》のリメイク。
スタンダードでは《王冠泥棒、オーコ》、《世界を揺るがす者、ニッサ》、《ドミナリアの英雄、テフェリー》あたりを退治するために使用された。
中でも相手のクリーチャーを緑の大鹿に出来るオーコは、対策される側でありながら使う側とも相性が良いため「オーコミラーで強いカード」という形でオーコデッキに広まり、このカードを使うために黒を採用したオーコデッキが登場することに。
オーコ対策として《霊気の疾風》も合わせてメインから採用された結果、「オーコ対策の対策」としてサイドボード常連だった《夏の帳》がメイン採用もされるようになり、スタンダードでメインから色対策カードを投げ合うという異常な時代を引き起こした。
環境末期にはこのカードがメイン4投されていることに誰も疑問を抱かなかいほどには定番カードと化していた。
99%ぐらいオーコのせいだし、《夏の帳》は《夏の帳》で単純にぶっ壊れだったがそれはそれ

性質:混沌、衝動
敵対:(秩序)、(思考)

赤も色の寓意に違わず、激しい対策カードが多い。
しかしその一方で、「プロテクションや軽減が得意」「高タフネスやライフ回復で持久戦に持ち込みやすい」という白や、「打ち消しが得意」「取れる戦術が非常に幅広い」という青に対しては空振りに終わることも多く、色対策という面だけでいうと割を食いやすい。
ただし最近は色に対するプロテクションが印刷されなくなったため、色対策カードも相対的に強くなった。

Flashfires/ 野火 (3)(赤)
ソーサリー
すべての平地(Plains)を破壊する。

相手が白単なら一方的な《ハルマゲドン/Armageddon》。決まるとそれだけで勝敗が決することも。
なお、複数の基本地形のタイプを持つデュアルランドにも影響する。デュアルランドの数少ない弱点である。

Boil / 沸騰 (3)(赤)
インスタント
すべての島(Island)を破壊する。

こちらは島を破壊するが、なんと同マナにも関わらずインスタント。敢えてキープしといて、一番効果が効くタイミングで放てる。
当然だが通ると青は終わる。そのため、青系デッキはこのカードの存在を常に気を配らなければならなかった。特にモダンではマナ基盤をフェッチランドとショックランドに依存しているため劇的に効く。
現在でもモダンのサイドボードで採用されることがあり、このカードの被害を軽減するするためだけに神河の伝説の土地が採用されているほど。
ちなみにソーサリーになった《沸き立つ海/Boiling Seas》もあるが、こちらは微妙な扱いである。

Red Elemental Blast / 赤霊破 (赤)
インスタント
以下から1つを選ぶ。
  • 青の呪文1つを対象とし、それを打ち消す。
  • 青のパーマネント1つを対象とし、それを破壊する。

MTGのすべての色対策カードの中で、恐らく最も使用されているカード。たった1マナで青のカード全てに対処できる。
青が中心のエターナル環境では赤が入っているならまずこのカードがサイドボードに入っており、下手すればメインから積まれることも珍しくない。
亜種に《紅蓮破》というカードがある。機能自体はあまり変わらないが細かい違いがあり、プレイヤーの趣味で選ばれる。

Combust / 焼却 (1)(赤)
インスタント
この呪文は打ち消されない。
白か青のクリーチャー1体を対象とする。焼却はそれに5点のダメージを与える。このダメージは軽減できない。

2マナで殆どの白や青のクリーチャーを(対象に取れれば)に焼ける。後に《丸焼き》も出たが弱いカードではないだろう。
ところで同時期のスタンダードにライフ4点を支払えば1マナで支払える上にプロテクション(赤)を抜けることができる除去があるんです。

Fry / 丸焼き (1)(赤)
インスタント
この呪文は打ち消されない。
白か青の、クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体を対象とする。丸焼きはそれに5点のダメージを与える。

2マナで5点。プレインズウォーカーも焼けるすごい火力。ライフこそ狙えないものの、赤の単体除去としての性能は随一。
先述した《焼却》の対象を広げて「軽減されない」を取り除いた相互互換だが、軽減されないというテキストが生きることがそもそもなかったので強化といっていい。
スタンダードではもちろん、パイオニア以下の環境でも赤のサイドボードの定番枠を射止めている。テフェリー、アショク、ナーセット、ジェイス……狙いたいプレインズウォーカーはいくらでもいる。

ちなみに当時のスタンダードでは一番殺したかった《王冠泥棒、オーコ》を焼ききることはできず《時を解す者、テフェリー》にも出た直後だと常在型能力で手出しできないと絶妙に危険なPWに刺さらないため評価はやや微妙だった。
このカードでオーコ対策が出来ていれば《夏の帳》の評価も変わっていたかもしれない。


性質:自然、生命
敵対:(技術)、黒(死滅)

緑は友好色より敵対色と組み合わせたデッキが有名だが、勿論例外なく色対策カードは存在する。
昔はえげつないレベルのエンチャントが多かったが、一時期は色対策が鳴かず飛ばずだった。

Choke / 窒息 (2)(緑)
エンチャント
島(Island)はそれのコントローラーのアンタップ・ステップにアンタップしない。

緑の青対策カードは土地をアンタップできなくさせる。青にとっては絶対に通してはいけない一枚だが、《極楽鳥/Birds of Paradise》などのマナ・クリーチャーから2ターン目と対策が限られる早期に出せてしまうため、かなり厄介な存在。

Compost / たい肥
(1)(緑) エンチャント
いずれかの領域から黒のカードが対戦相手の墓地に置かれるたび、あなたはカードを1枚引いてもよい。

地味に見えるが黒単の場合、出た瞬間にほぼ負けが決定するレベルのカード。かなり古いカードなので、これを見て拒否反応を示す黒使いはよく訓練された黒使いだ。
とにかく何かしら黒いカードが墓地に落ちるたびにカードを引かれてしまうため、除去や手札破壊を使ってもじわじわアドバンテージを取られ最終的にこちらが息切れしてしまう。
特に手札破壊の場合は一枚で複数の手札を捨てさせないとアドバンテージが取れないという悲惨な状態に陥る。その上マナクリから2ターンで出せる上に黒は置物に触れられないため壊せない。
黒コンが勢力を伸ばした時代に活躍したことで有名であり、特に黒をフィーチャーした「トーメント」の盛り上がりをたった1枚で完全に冷ましたすごいヤツ。レガシーでも一時期は定番だった。

Scragnoth / スクラーグノス (4)(緑)
クリーチャー — ビースト(Beast)
この呪文は打ち消されない。
プロテクション(青)
3/4

青の主なクリーチャー対処は「打ち消すこと」「バウンスすること」なのだが、このカードはそのどちらをも許さない。今となっては失笑もののスタッツだが、当時はこれでも脅威だった。
青単パーミッションはこのカードを対処するために様々な手段を講じていくことになる。……裏を返せば《寒け》とか《たい肥》とか《非業の死》と違って「対策を講じることができる」ってことでもあるんだけど。

Seedtime / 種蒔き時 (1)(緑)
インスタント
この呪文は、あなたのターンの間にのみ唱えられる。
このターン、対戦相手1人が青の呪文を唱えていたなら、あなたはこのターンの後に追加のターンを行う。

ジャッジメントで登場した、非常に珍しい「緑の追加ターン呪文」。自分のターンにのみ唱えられるインスタントという奇妙なテキストだが、これは青が得意とする「対戦相手のエンドフェイズにインスタントを打つ」ということへのメタ。
一見するとかなり理不尽に見えるカードだが、数ある色対策の中でも刺さる状況と刺さらない状況の差がものすごく激しく、たとえば有用なインスタントを多用しないデッキが相手の時はまったく刺さらない。
もちろん打ち消しメタに使えないこともないのだが、対青という用途でも限定的なので使われる環境はかなり限られてくる。青という色の柔軟性や、青対策の難しさがよく表れている1枚。

Autumn's Veil / 秋の帳 (緑)
インスタント
このターン、あなたがコントロールする呪文は青や黒の呪文によっては打ち消されず、このターン、あなたがコントロールするクリーチャーは青や黒の呪文の対象にならない。

1マナでハンデス・打ち消し・除去を全部シャットアウトできる。
基本セット2011の時代にしては珍しい、通ると即死に近いレベルの効果があるが、細かいところに穴があったりする。それでも対策カードとしては優秀で青の強い環境ではサイドボードに採用されていた。
ちなみにこれでも「通好みのカード、使いこなせたらかっこいい」レベルだったりする。それじゃよろしくないってんで出てきたのが《夏の帳》である。加減しろ莫迦


夏の帳/Veil of Summer (緑)
インスタント
このターンに対戦相手が青か黒の呪文を唱えていたなら、カードを1枚引く。このターン、あなたがコントロールしている呪文は打ち消されない。ターン終了時まで、あなたとあなたがコントロールしているパーマネントは青からと黒からの呪禁を得る。(それらは、対戦相手がコントロールしている青や黒の呪文や能力の対象にならない。)

基本セット2020で基本セット2011のサイクルのサイクル全体がリメイクされたときに、緑の《秋の帳/Autumn's Veil》に対応するものとして作られたのがこちら。
色々強化したらとんでもないぶっ壊れになった
環境が《王冠泥棒、オーコ》に代表される緑一強だったこともあり緑系デッキがこれを乱発しオーコの秋を更に加速。挙句の果てにはオーコが青絡みなため同系対策にもなった
登場当初から定番サイドボードだったが、オーコ対策に《害悪な掌握》、《霊気の疾風》、《神秘の論争》あたりがメイン投入されたオーコミラーを対策したオーコデッキが流行りだすと、それらに対策出来るこのカードもメイン投入され始め、スタンダードは帳ゲーと化すことに。

あまりの問題児ぶりを発揮したためパイオニアのフォーマット施行直後に緑系を抑えるために禁止カードになり、続いてスタンダードでも当然のごとく禁止カードに指定された。
今の所禁止カードになったことがある色対策カードはこれだけである。
ヴィンテージや統率者戦でも定番の呪文であり、モダンでもたまに禁止論が出てくる。八十岡翔太曰く「1マナのクリコマ*6」。


対抗色以外の色対策カードの例

■対無色
Ceremonious Rejection / 儀礼的拒否 (青)
インスタント
無色の呪文1つを対象とし、それを打ち消す。

「無色」という概念が補強されるに従って、無色に対する対策カードも登場した。無色に限定したら1マナ軽くなった《対抗呪文》。
エメリア様みたいなそもそも打ち消せない奴を除けば1マナでエルドラージだろうが打ち消せる便利な奴。色のついたアーティファクトは打ち消せないが、そのようなカードはそこまで多くないのでアーティファクト対策としても優秀で、登場から早速サイドボード要員としての活躍が目立っている。

■対同色
Mystical Dispute / 神秘の論争 (2)(青)
インスタント
この呪文が青の呪文を対象とするなら、これを唱えるためのコストは(2)少なくなる。
呪文1つを対象とする。それのコントローラーが(3)を支払わないかぎり、それを打ち消す。

エルドレインの王権の同色対策カードサイクルの1枚。青同士の打ち消し合戦に強いだけではなく、青以外の呪文に対しても及第点な打ち消し呪文として使える。
何よりオーコは青いので後攻で対処できる貴重な手段であった。

■対友好色
Burning Hands / バーニング・ハンズ (1)(赤)
インスタント
クリーチャーやプレインズウォーカーのうち1つを対象とする。バーニング・ハンズはそれに2点のダメージを与える。そのパーマネントが緑であるなら、代わりにバーニング・ハンズはそれに6点のダメージを与える。

フォーゴトン・レルム探訪の色対策カードは通例と異なり、白黒の相剋と青赤緑の三すくみという形で収録された。その結果世にも珍しい*7対友好色対策カードが生まれることになった。
当時のスタンダードの緑のファッティは《長老ガーガロス》《星界の大蛇、コーマ》などタフネス6が多く、ちょうど焼き殺すことができる。
MTGでは珍しいもののイメージ的には「炎(赤)は木(緑)を燃やせる」なので、他のゲームだと「どうして今までできてなかったの?」と首を傾げられるレベルの話だったりする。今後この手の友好色対策も、新しいフレーバーの拡張を兼ねて増えていくかもしれない。

■対特定の色「以外」
Quenchable Fire / 消しえる火 (3)(赤)
ソーサリー
プレイヤー1人かプレインズウォーカー1体を対象とする。消しえる火はそれに3点のダメージを与える。あなたの次のアップキープの開始時に、そのプレイヤーかそのプレインズウォーカーのコントローラーがそのステップより前に(青)を支払わないかぎり、これは、そのプレイヤーかプレインズウォーカーに追加で3点のダメージを与える。

コンフラックスで登場したカード。4マナでプレイヤーに6点のダメージを与えるという破格のカードだが、水をかける(≒青マナを支払う)と消されてしまうというもの。
単なるフレーバー重視のカードというわけでもなく、スタンダードには青の含まれていないデッキに【ジャンドコントロール】【ナヤブリッツ】【バーン】をはじめ様々なデッキが存在していたので、それらの同型対策に用いられた。
この手のカードは「特定の色には封じられてしまう」という印象になりやすいが、実際に使ってみると「特定の色がなければ十二分に活躍する」カードということもしばしばある。

他にも色対策カードは沢山存在するので、興味がある方は調べてみることをオススメする。

色対策カードに関しては、「それもまたMTGの魅力である」と考える層から、上述のようにあまりの憎さに集めて燃やすプレイヤーが出てくるまで様々な考え方がある。
こういった極端なカードを如何にして生かすかもマジックの醍醐味であるが、広義で見れば特定分野特化のカードのため流石に活躍できる状況は限られる。
さらに調整を一歩間違えると特定のデッキを駆逐するジャンケンゲーを助長する危険な要素を潜在的に持っており、実際に上述の《夏の帳》がそれをやらかした。
他にも多色環境では狙える範囲が理不尽に増えてしまったりなど、バランス調整がかなり難しいカードでもある。


また厳密には対策カードという訳ではないが効果や能力などによって事実上色対策カードとして扱われている物もある。

その一例
  • 打ち消されない(事実上打消しの役割を担う青の対策)
  • ハンデス対策(事実上の黒対策)
  • ライフの頻繁かつ恒久的な回復手段(事実上の赤対策)
  • 特定色に対しては効果が上昇したり、追加効果がある
  • ~渡り(特定土地を相手が持っているとブロックされない)



アニヲタは記事をうろつき、その内容の虚飾と無駄口に対して首を振った。
この項目を活気付けるには、追記一つで十分だ。

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最終更新:2023年12月24日 20:07

*1 カードの裏面に描かれた五色のマナのうち、隣り合っていない色

*2 一応対策カードは存在したが一時しのぎにすぎず、相手の方が圧倒的に有利なことには変わりないのでまったく現実的とは言えなかった。そもそも勝っている赤単のレシピを見ると火歩き対策を完全に諦めているなんてことも結構あった。

*3 当時のスタンダードで酷評されていたカード。詳細はニッサ・レヴェイン/Nissa Revane(MtG)へどうぞ。

*4 実際には赤の強みである速度が落ちるという欠点の方が大きかったため現実的ではなかった。

*5 だいたい「MTGの大らかさを見習え」という文脈で出されるが、そもそもWotCの公式ツイッターが「オーコを禁止にしろ!」というリプライでの意見に対して鹿の画像でクソリプを返すような「プロレス」が好きな文化だということもお忘れなく。

*6 《謎めいた命令》という非常に強いカードのことで、ここでは「打ち消しと1枚ドローを行える4マナのカード」というニュアンス。4マナのカードとほぼ同じことを1マナでできるカードなんだから強いよね、という意味。

*7 白の防御円サイクルやその派生形以外ではトーメントやミラディン包囲戦にあるくらい。ただしプロテクションや土地渡り程度ならそこそこある。