GSG-9

登録日:2011/11/17(木) 13:34:55
更新日:2023/04/04 Tue 13:24:49
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【概要】
GSG-9とはGrenzschutzgruppe9(第九国境警備隊)の略で、
1972年に起きたミュンヘンオリンピック事件(後述)の対処に失敗した西ドイツ(当時)が同事件を教訓に国境警備隊内に創設した対テロ特殊部隊である。
創設者はウルリッヒ・ヴェーゲナー警視(当時)。部隊の創設の際には英陸軍特殊部隊SASから指導を受けている。
部隊のモットーは「完璧なる優秀さ」
警察系特殊部隊としては世界一ィィィィィの実力と名声を持つ。
なお英語読みではジーエスジーナインだがドイツ語読みではゲーエスゲーノインとなる。


【ミュンヘンオリンピック事件】
GSG-9が創設される直接的な原因となった事件。
1972年9月5日、パレスチナ武装組織「黒い九月」によりオリンピックが開催されていた西ドイツ(当時)のミュンヘンで起きた人質事件。
事件の詳細な経過は省くが西ドイツは武力手段による解決を決行。
結果として人質となったイスラエルのアスリート11名(全員)犯人5名警察官1名が死亡する最悪の結果となった。
その後イスラエルが報復したのは言うまでもない…。

失敗の主な原因として
①作戦に従事した警察官のほとんどが地元の一般警察官であり、指揮官側にも対テロに関する知識を持つ者がいなかった。
②それでも必死の努力の末に突入寸前にまでこじつけるが、その様子をマスコミがテレビやラジオで放送し犯人側に筒抜けになる。
③狙撃に使用した銃が一般的なアサルトライフル。
等々であり西ドイツは対テロ特殊部隊の必要性を痛感することとなる。


【入隊資格】
GSG-9に入隊するには以下の条件を満たさなくてはならない。
①志願者であること。
②連邦警察局に二年半以上在籍し勤務成績が優秀な者。
③ドイツ連邦国籍またはEU加盟国の市民権を有する者。
④18~24歳以内であること。
⑤男性165cm、女性163cm以上の身長
⑥約6ヶ月間行われる選抜訓練に落伍せず通過した者。


【編成】
GSG-9は以下の四個中隊から成ると言われている。総隊員数は約300人ほど。

第一中隊(1./GSG-9)
主に対都市テロ(人質救出や拠点制圧)を想定した訓練を受けている。

第二中隊(2./GSG-9)
主に海上テロ(シージャクや海上施設に対するテロ)を想定した訓練を受けている。

第三中隊(3./GSG-9)
空挺降下訓練や各種銃火器類の取り扱い、医療、交渉等の訓練を受けている。

第四中隊(4./GSG-9)
上記三部隊の予備部隊。


【任務】
GSG-9の隊員は5人を最小行動人数としており、平時はテロリストの監視や情報収集、大使館や要人の警護、その他対テロに関する様々な訓練を受けている。
暴動やデモが起きた際にも出動し事態の鎮静化をはかる場合もある。
GSG-9が出動する場合は事件になんらかの政治的背景が絡んでいる場合のみである。
解りにくければただの立て篭もり事件なんかには出動しないと思えば差し支えない。


【ルフトハンザ航空ハイジャック事件】
さてGSG-9を語る上で欠かせない事件がもう一つある。
それが1977年10月に発生したルフトハンザ航空ハイジャック事件である。
この事件は4名のパレスチナ解放人民戦線のメンバーによって引き起こされた。
西ドイツ政府はテロリストと交渉。その結果、政治犯1名を釈放するからソマリアのモガディッシュ空港に来るようテロリスト側に指示をだした。

そう指示をだしたのだ。
この時西ドイツ政府側はテロリストの要求に応じる気はサラサラ無く、むしろGSG-9を投入し、殲滅することを画策していた。
そしてその舞台に選ばれたのがモガディッシュ空港なのである(もちろんソマリア政府側からGSG-9が暴れ回る許可を得ている)。

そして10月18日。
SASから派遣された2名の隊員を側面支援に、SASから提供された閃光手榴弾*1とH&K社のMP5を装備したGSG-9隊員が突入。
突入からわずか10数秒で犯人3名を射殺。1名を逮捕。人質90名を無傷で救出するという驚異の戦果をあげ、世界中にその名を轟かせた。
余談だがこのGSG-9の活躍により、世界中で様々な対テロ特殊部隊が創設されることとなる。
米国デルタフォースや警視庁特科中隊、大阪府警零中隊、フランスのGIGNなど)

さらに余談だがこの前月に日本赤軍のダッカ日航機ハイジャック事件が発生。
日本政府は「生命は地球より重い」としてテロリストの要求を呑み、多額の身代金を支払い日本赤軍のメンバーを釈放した。
そのため、世界中から「テロ輸出国」と非難され、後にSATが創設される切っ掛けになった。
よく言われるが、普通、ハイジャック犯の要求通りにするのはどこの国でもやっていることで、特別日本が弱腰な訳ではない。


【余談】
当初GSG-9は国境警備隊ではなくドイツ軍内に創設される予定であったが、
軍の最精鋭部隊という構図が第二次世界大戦中の武装親衛隊を連想させられるため、世論に考慮し準軍事組織である国境警備隊に創設されることとなる。

使用している装備品は専門家がフルオプションの高級車並と表現するほど高価なものである。
またGSG-9が採用した装備品は他の特殊部隊も参考にするほどである(H&K社のMP5とか)。

全米SWAT大会に参加し優勝している。

警視庁が誇る特殊部隊 (SAT) も同部隊を参考にしている(装備品とか訓練内容とか)。
実際SATの前身部隊創設の際にはGSG-9に隊員を派遣したり教官を招聘している。

上記のルフトハンザ航空事件のように(超法規的手段だが)海外に出張ることもあったが現在活動は国内のみとなっている。
(海外での案件は1996年に創設されたドイツ陸軍の特殊部隊KSKが担当)


2007年にドラマ化された。

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最終更新:2023年04月04日 13:24

*1 当時はまだSAS専用機密装備扱いでこれを使わせてもらうためだけにSASが加わったようなもの