JR北海道

登録日:2013/02/19 (火) 16:02:18
更新日:2024/04/09 Tue 10:07:48
所要時間:約 7 分で読めます




北海道旅客鉄道(JR北海道)とはJR旅客鉄道会社のうち、北海道全域と青森県の一部をエリアとしている。本社所在地は札幌市中央区。

JR貨物を除くJR6社の中で、未だに完全民営化できていない所謂JR三島会社の一つである。
沿線人口の少なさや豪雪地帯のために除雪や車両の維持費や設備費用が他のJR各社と比べて馬鹿にならない程(他のJRグループの2倍以上)かかっており、JRグループ約200路線の営業係数*1でワースト上位に入る路線(留萌本線釧網本線など)をほぼ独占している状態である。
営業収益だけでは大赤字であり、鉄道建設・運輸施設整備支援機構から経営安定基金(厳密に言うとこの基金の運用益収入)の支援を受けて辛うじて黒字を保っている状態である。

と思われていたが、2016年1月末に発表した2014年度の収支状況が…

札幌都市圏を含む全路線で赤字

なんと、最大の利益を上げる札幌近郊の通勤区間ですら黒字に出来ないという最悪の状況だということがわかった。
もはや自力で黒字化は絶望的なレベルになっている…。

そんな経営状態もあってか、2011年には石勝線の特急列車が脱線し全焼する事故が起きている。
それに関連してか当時の社長が行方不明になり後に遺体となって発見される等、安全管理、経営管理・状況は以前から杜撰であったが、2013年7月に入ってから2013年7月6日の特急「北斗」のディーゼルエンジン発火を口火に切って不祥事のお祭り騒ぎに突入。

  • 7月6日の特急「北斗」のディーゼルエンジン発火

  • 7月14日に快速電車「いしかりライナー」で異臭が発生

  • 7月15日に特急「スーパーおおぞら」の配電盤から出火

  • 7月17日に特急「スーパー北斗」が乗客の腕を乗降扉に挟んだまま発車…!

  • 7月22日に特急「スーパーとかち」のエンジンから白煙が上がる

特に7月6日の「北斗」のエンジン発火の影響が大きく、事故車両と同型のエンジンを使用した車両を全車運転を取りやめた。
このため、特急「北斗」と「サロベツ」は全列車、「スーパー北斗」と「スーパーおおぞら」の一部列車が8月31日まで運休となり、夏休みに致命的な影響を与える事になってしまった。
当然予備車両の確保もできず、リゾート列車の「ニセコエクスプレス」と「ノースレインボーエクスプレス」を臨時特急として使用せざるを得ない状況に…。
その後の運転計画でも列車の運休は続くことになり、特に札幌~函館間については通常の半分の本数に減った。


と怒濤の不祥事騒ぎであったが、まだここまでは良かった…


・7月30日現役運転士が覚醒剤使用容疑で逮捕されるという前代未聞の事件が発生!
おまけに覚醒剤を使用した状態で「特急スーパーカムイ」や「快速エアポート」を運転してたとか…。
おい、客殺す気か?

折しもスペインで高速鉄道で運転手が自慢したいが為だけに200km以上出して脱線、多数の死亡者が出た大惨事の直後なだけに、薬物使用の運転手がいたJR北海道の安全性に信号が点灯している。

さすがにこれで終わりかと思いきや、運転手によるトラブルはまだ続き、9月7日には寝台特急「北斗星」の運転手がハンマーでATSを破壊するという事件が起きた。
こうなった理由は、「後輩が乗っている前で自分のミスを隠したかった」という事だったとか。
そのミスのために列車に不可欠な安全装置を自ら壊すということは、客の安全などどうでもいいというのか…?

さらに9月19日に大沼駅構内で発生した貨物列車の脱線事故を皮切りに、補修が必要なレールを放置していたことが発覚。
当初は全線で97ヶ所と言われていたが、後の調査で新たに170ヶ所見つかり、合計で267ヶ所ものレールの補修を放置していた事がわかった。
しかも、レール幅の基準が新旧の2種類あったにもかかわらず、旧基準を適用しなければならない1985年以前に設置されたレールで新基準を適用する、
補修基準が2種類あることを知らなかった保線担当がいるなど、あまりにも杜撰な管理体制が明らかになった。
ここまで来て国土交通省も黙っているわけが無く、本社だけではなく全支社も対象にした大規模な特別監査が行われる事となった。

そしてこの件に関連してか翌2014年1月15日、元社長で現相談役が自殺しているのが発見された。
同じ会社で2人も社長歴任者が自殺を遂げると言う非常に深刻な事態になっている。
そして当然の如く社長&会長は解任に追い込まれ、社長には左遷させられていた元常務が、新会長にはJR東日本から元常務が出向という形で就任し新体制となった。

北海道は全国有数の自動車社会であり、ただでさえ少ないローカル線の鉄道利用客は、民営化後も減る一方である(札幌周辺だけは増えているが、短距離客なのであまり収入は増えない)。
さらに自動車専用道路は、留萌本線に並行する深川留萌自動車道、日高本線に並行する日高自動車道など、廃止が取り沙汰される並行路線が、JR北海道への当てつけのように無料開放されている
こういった状況なので、北海道も沿線自治体も、ごく一部例外はあるが、JR北海道には金を出そうとしない。

上記の通り厳しい状況であるJR北海道であるが、朗報もある。
2016年3月に北海道新幹線が新青森駅~新函館北斗駅において部分的に開通し、九州新幹線に続く新幹線が誕生した事である。
これにより大幅な利用客の増大と利益が見込まれており、期待が寄せられている。
(但し新函館北斗駅~札幌駅間が完成するのは2031年…どうしてこんなに差がある?)
その反面、並行在来線の存続問題も出ている為、手放しに喜べるとは言いがたい。
他にも、上記のトラブル多発の状況で本当に新幹線が維持できるのかというのも不安材料である。

そして2017年1月24日に開かれた北海道議会の特別委員会とJR北海道との意見交換会。
ここで出されたJR北海道の試算が…


北海道のJR全路線が、3年後には運行不可能


もはや鉄道の維持そのものが危ういという、最悪の事態となってしまっている。
国からの支援を含めても、資金繰りが苦しいどころの話ではなくなってしまった…。
鉄道をゼロにするということはない方針ではあるらしいが、今後どうなっていくのか…。

2018年、JR北海道は2016年に「単独で維持することが難しい」と挙げた13線区のうち、

  • 石勝線夕張支線

  • 日高本線 鵡川~様似

  • 根室本線 富良野~新得

  • 札沼線 北海道医療大学~新十津川

  • 留萌本線

について、ついに国の支援を求めない=廃線にすると表明した。

自治体が廃線に合意した石勝線夕張支線が2019年4月1日、札沼線北海道医療大学~新十津川間が2020年5月7日*2に、日高本線鵡川~様似間が2021年4月1日に廃止となった。
2023年4月1日には留萌本線石狩沼田~留萌間が廃止。残る深川~石狩沼田間も2026年3月末に廃止する予定。
台風の影響で長らく運休となっていた根室本線東鹿越~新得間を含む富良野~新得間も、2024年4月1日に廃止。これにより整備新幹線の並行在来線や第三セクター化とは別の理由で、初めて「本線」が分断されることになった。


国、北海道、沿線自治体、そしてJR北海道の明日は…。



2016年当時の路線図
*3

2021年4月1日現在の路線
路線名 区間 営業キロ 備考
新幹線
北海道新幹線 新青森駅~新函館北斗駅 148.8km 新中小国信号場~木古内間は海峡線と線路共有
幹線



本線 函館駅~旭川駅 423.1km

砂原線 大沼駅~渡島砂原駅~森駅 35.3km
藤代線 七飯駅~大沼駅 営業キロ設定なし 下り列車専用線


本線 沼ノ端駅~白石駅 60.2km
空港支線 南千歳駅~新千歳空港駅 2.6km
石勝線 南千歳駅~新得駅 132.4km



本線 長万部駅~岩見沢駅 211.0km
室蘭支線 東室蘭駅~室蘭駅 7.0km
根室本線 滝川駅~富良野駅 54.6km 富良野~新得間は2024年4月1日に廃止
新得駅~根室駅 307.5km 釧路~根室間の愛称は「花咲線」
地方交通線
海峡線 中小国駅~木古内駅 87.8km 在来線の定期列車の旅客営業なし
札沼線 桑園駅~北海道医療大学駅 28.976.5km 愛称は「学園都市線」
北海道医療大学~新十津川間は2020年5月7日に廃止
日高本線 苫小牧駅~鵡川駅 30.5km 鵡川~様似間は2015年1月以降高波被害により運休、以降バス代行輸送も2021年3月限りで廃止
留萌本線 深川駅~石狩沼田駅 14.4km 石狩沼田~留萌間は2023年4月1日に廃止
富良野線 富良野駅~旭川駅 54.8km
宗谷本線 旭川駅~稚内駅 259.4km
石北本線 新旭川駅~網走駅 234.0km
釧網本線 東釧路駅~網走駅 166.2km

JR民営化後廃線になった路線
路線名 区間 営業キロ 備考
幹線
函館本線 上砂川支線 砂川駅~上砂川駅 7.3km
石勝線 夕張支線 新夕張駅~夕張駅 16.1km
根室本線 富良野駅~新得駅 81.7km
地方交通線
幌内線 岩見沢駅~幾春別駅 18.1km 貨物支線(三笠~幌内間)も同時に廃止。
松前線 木古内駅~松前駅 50.8km
歌志内線 砂川駅~歌志内駅 14.5km
標津線 標茶駅~根室標津駅
中標津駅~厚床駅
116.9km
名寄本線 名寄駅~遠軽駅
中湧別駅~湧別駅
143km
天北線 音威子府駅~南稚内駅 148.9km
池北線 池田駅~北見駅 140km 北海道ちほく高原鉄道に経営移管後、2006年4月21日に全線廃止。
深名線 深川駅~名寄駅 121.8km
江差線 五稜郭駅~江差駅 79.9km 五稜郭~木古内間は道南いさりび鉄道に経営移管。
留萌本線 石狩沼田駅~増毛駅 52.4km 留萌~増毛間(14.6km)は2016年12月5日廃止。
石狩沼田~留萌間(37.8km)は2023年4月1日に廃止。
札沼線 北海道医療大学駅~新十津川駅 47.6km
日高本線 鵡川駅~様似駅 116.0km

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最終更新:2024年04月09日 10:07

*1 100円の営業収入を得るのに、どれだけの営業費用を要するかを表す指数

*2 公式に届が出された廃止日。列車の最終運行日は2020年4月17日で、4月18日~5月6日は全列車運休という形を取っている。

*3 出典:Wikipedia URL: http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/cc/LineMap_JRhokkaido_jp.png 日時:2016/01/03 出展者 RailRider