家鳴将軍家御側人十一人衆

登録日:2010/12/27(月) 00:25:24
更新日:2023/12/14 Thu 01:06:07
所要時間:約 5 分で読めます






「虚刀流七代目当主鑢七花」


「我ら家鳴将軍家十一人衆が」


「相手に立とう!」



やなりしょうぐんけおそばにんじゅういちにんしゅう

刀語に登場する組織。
登場は刀語最終話『炎刀・銃』。

【概要】

尾張幕府八代目将軍家鳴匡綱に仕える側近、護衛兵の一団。
一人一人が代々家鳴将軍家に仕えてきた腹心揃いで、各人の能力は極めて高い。
将軍からは「自分と一心同体。自分の手足同然の存在」と太鼓判を押され、全幅の信頼を寄せられていた。
それ故に尾張城に単身乗り込んできた主人公、鑢七花の前に四季崎記紀が作りし完成形変体刀を携えて立ちはだかる。


……と思いきや、その活躍は原作では一人あたり2頁程度、アニメでも十一人合わせて約9分ほどしか出番がない。

一人一人の個性が溢れていたかませ犬集団真庭忍軍と比べるとあまりにも酷い扱いである。
まあ、最終話での登場だから仕方ないのだが……


【構成員】

般若丸(はんにゃまる)

声:松井尚吾
新しく絶刀・鉋の所有者となった人物。
鋭い目と前髪を不揃いに垂らした男。
鼻から下に面頬を装着している。
七花が絶刀・鉋を折ることも曲げることもままならないと甘くみて真庭蝙蝠と同じように『報復絶刀』を繰り出した。
しかし蝙蝠戦の時には未熟かつ本気を出してなくて決まらなかった虚刀流『菊』が炸裂し、絶刀・鉋は折られ、最期は虚刀流最終奥義『七花八裂(改)』を喰らい死亡した。

ちなみに虚刀流『菊』は、絶刀・鉋を折るために特化された技である。
初代虚刀流伝承者はこの技をひたすら鍛え続け、鉋を折る域にまで昇華したらしい。


鬼宿(おにやどり)不埒(ふらち)

声:宮原弘和
新しく斬刀・鈍の所有者となった人物。
坊主頭で髭面の男。
宇練銀閣と同じく居合の使い手。
七花との戦闘前に城の人物を5人斬り殺し『斬刀狩り』を発動させ、自分の居合は音速を超えると豪語した。
しかし、その居合は「虚刀流の名前さえもない基本技術」の前にあっさり掴まれ、とるに足らないと吐き捨てられ、最期は虚刀流三の奥義『百花繚乱』を喰らい死亡。

即席で渡された刀でありながらきちんと『斬刀狩り』を発動させるところまで準備した点は優秀だが、一度あの達人級の居合いと対峙した七花を破れる道理は無かった。
素の実力、特に居合における技量は銀閣には遠く及ばないレベルと目されるが、それ以前に、銀閣と比べて不利な要素も複数あった。
まず、『斬刀狩り』は斬れば斬る程に居合の速度が上がる刀とされているのに、鬼宿は5人斬って発動可能にした程度。
累計一万という数多の人間を斬りに斬って『斬刀狩り』が最高潮に達している銀閣と比べれば準備不足は否めなかった。
また、アニメ版の描写ではそれなりの広さの部屋で七花と対決していることもあり、狭い室内で己の得意とする間合いから迎撃できた銀閣とは異なり戦闘環境の面でも不利だったと言える。


(ともえ)(あかつき)

声:勝呂美和子
新しく千刀・金殺の所有者となった人物。
左目に眼帯、ポニーテールの女。
敦賀迷彩と同じく千刀流の使い手(本人の談では自分こそが正統だとのこと)で『千刀巡り』を駆使して戦う。
しかし、そもそも前所有者は広大で入り組んだ神社境内全域を活かした戦術を用いたのに比べ城内の一室ではあまりに狭すぎ、かつ「壊さず回収」というハンデのない千刀ではただの千本の刀に過ぎず、最期は虚刀流一の奥義『鏡花水月』を喰らい死亡。
この条件の差を「自分は迷彩本人の性格が苦手だった(千刀流云々の問題ではない)」と七花には一蹴された。

原作では巴の持つ一本が破壊されたことにより、「千本で一本」が売りの金殺は一本でも欠けてしまえば事実上すべて破壊されたも同然、という評が成されていた。
アニメでは巴に向かって突っ走りながら豪快に全てへし折っている。


浮義(ふぎ)待秋(まつあき)

声:高橋研二
新しく薄刀・針の所有者となった人物。
総髪の白い髪を全て後ろに流した男。
日本最強の剣聖錆白兵を一方的にライバル視している。(七花曰く「あんたみたいな奴には旅先で二十人は出会った」)
ただ、一応錆の好敵手扱いする者も世間に居るらしいだけのことはあり、振ることすら難しい薄刀・針をちゃんと刀として扱えるだけの力量はあった。かなりスゴイ。
錆の使用した『薄刀開眼』とは似て非なる『白兔開眼』という対象を一刀両断する奥義を使用するも七花は筋をずらして刀を受け止め回避。
最期は虚刀流二の奥義『花鳥風月』を喰らい死亡。
なお、この筋をずらした戦法をもし錆白兵相手に使っても通用しなかったであろうと七花は語っている。
これは実力差もあろうが、そもそも「どんなものでも刀として不足なく扱える全刀【錆】たる全刀流」である錆白兵とは、この刀における相性が違いすぎたといえる。
こいつにはちっともときめかない。


伊賀(いが)甲斐路(かいろ)

声:佐々木啓夫
新しく賊刀・鎧の所有者となった人物。
伊賀忍者。
伊賀忍法『筋肉騙し』を駆使して『鎧』を着用しているため外見は不明。
七花は校倉必戦では効かなかった破壊力透徹の技、虚刀流四の奥義『柳緑花紅』を、足払いで伊賀を空中に浮かせ、衝撃の逃げ場を無くしてから使用。
伊賀は内部で爆発した衝撃により死亡した。
『筋肉騙し』で体型を変えていても重さは変えられず元の所有者の校倉必と比べると雲泥の差で軽い。

尚、中からしか開かないようにできているため使用者の死亡=刀が折れたことを意味する。
アニメではさらに『柳緑花紅』の衝撃により『鎧』がまるで内部から沸騰するかのようにいびつに変形している。
想像するにおぞましい最期だったと言える。


真庭(まにわ)孑々(ぼうふら)

声:江口拓也
新しく双刀・鎚の所有者となった人物。
祖先を辿ると真庭忍軍縁の忍者にあたるとのことで、現将軍家に仕えている。当人曰く現頭領を超えたとの自負あり。
虫組の頭領である真庭蝶々が使用する『忍法足軽』を駆使して双刀・鎚の重さを消し『双刀之犬』を繰り出した。
しかし、凍空こなゆきがその重さをものともしないが故に効力を発揮した『鎚』であり、
重さを消した『鎚』はただのなまくらになってしまう。
最期は虚刀流一の奥義『鏡花水月』を喰らい死亡。
「あんたより弱いまにわにってのは流石にいなかったよ」と七花に酷評された。

真庭忍軍とはもう縁浅いだろうに頭領の扱う真庭忍法を使いこなしていた辺り、
実力はあるのだろうが、彼以外誰も持ちあげることすら適わない武器を宛がわれた時点で、戦う前から後述の皿場並に詰んでいた。
「重さをなくしたらその刀に何の意味がある?」と言われた際に「しまった!」と漏らしているあたり、迂闊さが過ぎたとも言えよう。


胡乱(うろん)

声:菊本平
新しく悪刀・鐚の所有者となった人物。
西洋眼鏡をかけた奇抜な男。
拳法の使い手であり、鑢七実と同じく胸に悪刀・鐚を刺して身体を活性化した。
健康な肉体による増強だったが、かつて七実が七花に繰り出した『「雛罌粟」から「沈丁花」まで、打撃技混成接続』を七花は完全再現して二百七十二回の致命撃を与え、活性効果を使い果たし死亡した。

如何せん素の戦闘力が七実とは天地の差だったことと、肉体強化&不死性付与による慢心が増長していたことが祟り、
「単にライフストックが多いだけの敵」というレベルの脅威に過ぎなかった。
二百七十二回の死亡体験という、甲斐路以上に凄惨な死に様を飾る羽目になり、七花も悪刀という刀のえげつなさ・おぞましさに言及する程であった。


灰賀欧(はいがおう)

声:儀武ゆう子
新しく微刀・釵の所有者となった人物。
豊かな髪を左右に振り分けた女。
鈎爪を両手に装備している。
日和号の設定を自分の命令にだけ従うように書き換えた。江戸時代の人間がどうやってプログラムいじったとか聞くな
日和号は『微風東風』を駆使して戦うも、所有者と共にいる事で本来の力が発揮できなかった。
七花の虚刀流奥義『七花八裂・応用編』が炸裂、日和号に四つ、灰賀には三つの技が浴びせかけられ忽ち敗死に至った。
七花はここで奥義を使った理由として、実際日和号が手強く、足手まとい*1がいる内にさっさと倒しておきたかった旨を挙げている。

確かに持久戦以外の方法で無力化が出来なかったのは事実であり、彼女の言っていた「七花は日和号に苦戦していた」は一応間違いではなかったわけである。
ただ、そもそも七花にとって厄介だった「回収する刀を破壊してはいけない」という制約があったからこそ苦戦したのであって、今回はその限りではない。
また、日和号は単騎で領域を守護する自動戦闘兵器であり、それ故に戦場を縦横無尽に動き回る戦い方ができる刀である。
すぐ傍に命令者が居る状況では当然単騎の時のような戦い方はできないのだが、その点を考慮せず安易に設定を書き換え同じ戦場に立ったことが、灰賀欧の命取りとなった。


墨ヶ丘(すみがおか)黒母(こくぼ)

声:國分和人
新しく王刀・鋸の所有者となった人物。
厳しい表情の男。
尾張一の獰猛者らしいが王刀・鋸の『王刀楽土』が発動し、穏やかになった。
だが、汽口慚愧とは違って芯がない人間で口先だけ。
彼の中身であり、彼その物である獰猛さ、いわば「毒気」を抜かれるのだから、当然と言えば当然。
獰猛さを活かした剣術もスカスカの型だけにされ、最期は虚刀流六の奥義『錦上添花』を喰らい死亡。
七花に「ムカつく」とさえ言わしめたそれが、ある意味王刀の本質であったのかもしれないが。


皿場(さらば)工舎(こうしゃ)

声:早見沙織
新しく誠刀・銓の所有者となった人物。
法被に鉢巻を巻いた少女。
そばかすにタレ目というなんとも幸薄な印象。

彼我木輪廻と同様誠刀・銓の特殊効果『誠刀防衛』により己自身に向き合ってしまっている。
「決戦でこんな戦いようのない武器(?)渡されて、長年の忠誠も尽きる」と、将軍の親衛隊としてはあるまじき発言までしてしまっているのはその結果であろう。
どうしようもできず、七花の提案を聴き入れとりあえず『銓』を投げ、呆気なく壊される。

原作では一気に七花の懐に飛び込むなど、一応十一人らしい動きは見せたが、殺傷力の低い虚刀流五の奥義『飛花落葉』を喰らい

「不幸すぎます……」 

と悲鳴の代わりに呟いて生死不明で終わる。*2
アニメでは投げた『銓』を弾き返されて頭に喰らって倒れただけで出番終了。
死屍累々の中グルグル目で気絶している姿も描かれており、確実に生存を果たした。

「ぎゃいんっ!!」


呂桐(ろぎり)番外(ばんがい)

声:中田隼人
新しく毒刀・鍍の所有者となった人物。
恰幅がよく、肌が黒い男。
真庭鳳凰と同じく毒刀・鍍の特殊効果『猛毒刀与』の影響により自我を失い、人格が崩壊してしまっている。
本来彼は王刀が不要なほどの善人であるらしいのだが、完全に見る影もなく狂人と化していた。(明らかに王刀と毒刀は渡すべき相手が逆である、ここに否定姫の意図があるのであろう)
哀れに思った七花は虚刀流七の奥義『落花狼藉』で楽にしてやった。

『記録辿り』の腕で刀を握ってしまった鳳凰とは違い、四季崎の人格がそのまま出てくる事態にはならなかったものの、
己の名と四季崎の名をひたすら呟くだけの不気味な様相となり、アニメ版の描写を観る限りでも狂ったように刀を振り回して突っ込む位しかできない程に精神がやられてしまっていた。


【まとめ】

まにわに以上のかませ犬集団───家鳴将軍家御側人十一人衆。

七花が今まで収集した四季崎記紀の変体刀十一本を折り、完了形変体刀となるという否定姫の思惑通りとなった。

先代においては、11人が揃えば、歴史上最強の剣聖、錆黒鍵にも並ぶ力を持つとされ、
その継承者として認められた彼らも相当の猛者揃い。
否定姫の見立てでは、彼女の懐刀である左右田右衛門左衛門でもまともに戦えば苦戦は避けられない手練れであり、七花も同様の可能性が濃厚である。
が、個々に慣れ親しんだ本来の得物でなく、否定姫に促された将軍の意向で変体刀十一本をそれぞれ宛がわれた上で戦った上、明らかに相性の悪い組み合わせの者も居た結果、この瞬殺劇へと結びついた。
結果的に、元の持ち主たちの強さ(技量的な面でも、精神的な面でも)を再認識させると同時に、リミッターの外れた七花の実力を存分に描き出すという役目を果たしたと言えるだろう。
彼らの敗因をざっと大別すると以下の3つになる。


理由その1 単純に技量不足

般若丸→瞬殺される程度の実力しかない。
鬼宿不埒→斬刀狩りを発動させても尚、銀閣の素の剣速にすら遠く及ばない。*3
浮義待秋→あっさり見切られる程度の剣術しかない。*4
伊賀甲斐路→校倉との勝負でとがめにより『鎧』の特性や対処法は見抜かれていた
胡乱→ただ死に難いだけ

理由その2  そもそも使い方を間違えてる

巴暁→使い手の相性的な問題も大きいが、そもそも千刀巡りは数の多さを利用して戦場全域でいきなり予想外の攻撃を仕掛けてくるというのが厄介な点である。千刀の全てを一室に配置して最初から全部見えてるんじゃ不意打ちにならない。
灰賀欧→日和号は千刀と同じく広い場所で十全に機能を振るってこそ活きる刀なのに、制限のかかる条件で勝負してるのが悪い。
皿場工舎→『誠刀防衛』はする必要のない戦闘ならしなけりゃ良いじゃないという「逃げるが勝ち」を選ばせるような刀なのに、敵の侵攻をその場で押し留める『防衛戦』を行っている事自体が間違い。

理由その3 刀と使い手の相性が最悪

真庭孑々→重さが重要なのに重さを消すという本末転倒な悪手を打ったが、そもそも重さを消さないと持つことすら出来ないので、渡された時点でこうするしかなかった。七花に指摘されるまで気付いてなかったのはアホとしか言いようがないが。
墨ヶ丘黒母→獰猛さだけがウリなのに獰猛さが消されて何も無くなった。
呂桐番外→善良さがウリなのに善良さが消されたうえに自我を喪失。

結論 刀を手にしてから実戦までの時間が絶望的に足りない

上記の要因全てを包括する、最大にして唯一と言っても過言でない問題である。
否定姫の提案を真に受けた将軍によって十一人衆に刀が手渡されてから、十一人衆は皆、大した習熟や模擬戦の時間をとれないままに強敵たる鑢七花との戦いに臨んでいる。
仲間内で多少なり模擬戦を重ねる時間を確保出来ていれば、「いや、お前どう考えても弱くなってね?」「これでどうやって戦えって言うんですか…」という具合に、上記の問題点にはお互いがすぐさま気付くであろうものばかり。
単純に力量不足な面々も、年単位で刀を扱っていたならば多少なりとも技量が向上していただろう。
全刀・錆を体現した一族でもあるまいし、いかなる達人だろうと、唐突に下げ渡された癖が強過ぎる刀を手にして殆ど即実戦投入、などという無茶振りをされて本来の実力をまともに発揮出来る訳が無い。
考えるまでもない程に当然の話である。



もし各々に的確(戦闘に扱えるものを、個々の技量にあった使い方を、という意味)な刀を与え、合わぬ者には持たせぬままに戦わせていれば、七花であろうと苦戦以上は必至であったろう。
そもそも一対一である必要も無い、この結末が既に確定したものであるとさえ言える。

将軍は、彼ら十一人が「自分と一心同体で手足同然」と豪語したが、戦において頭脳が判断を誤れば、手足は死んだも同然。
その辺も彼女の狙い通りであり、彼女曰く「十一本の癖の強い刀を最強の刀と称して、将軍の懐刀に使用を強要することで彼らを速やかに無力化すること」こそが完成形変体刀十一本に込められた真の使い道だと言う。

所詮は左右田右衛門左衛門の前座に過ぎなかった。








「追記・修正……」


「─── 一項目目」

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最終更新:2023年12月14日 01:06

*1 この時七花は「あんたが邪魔で、日和号が性能を発揮できてねえよ」とはっきり告げている

*2 一応『飛花落葉』ならば喰らっても命までは落とさない可能性があるとは七花も分かって使用しており、ある意味これも『誠刀防衛』の恩恵ではないかと推察されていた

*3 七花は銀閣との勝負の際、最後まで刀身を目にする事は出来なかった

*4 ただし白兵との戦いは受け止めたら破壊されるという針の特性に考慮したうえでの制限だったので、それがなければ七花は白兵の斬撃も白刃取り出来たかも知れない。事実、銀閣の零閃と違って白兵の斬撃は見て躱すことが出来るので白刃取りも可能なはずである。